小学校生活科におけるこれからの「学び」について提案します

2 研究の実際

 (4) 実践事例

実践事例 @ 

 本単元では、授業モデルを基に導入、展開1、展開2、終末のそれぞれの学習過程に「表現する活動」と「伝え合う活動」を位置付けました。特に、展開1と展開2では、互いの気付きを付せんに表現し、それを手掛かりに「伝え合う活動」を位置付けています。
また、終末では、それまで表現してきたワークシートの綴りを活用し、単元全体における自分の活動を振り返り、自分自身の特徴や成長に気付いたことを「表現する活動」を位置付けました。
 
 単元名   「作って わくわく あそんで にっこにこ」  (第2学年10月実施)
 
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 単元の目標
   身近にある物を使って遊びや遊びに使う物を考えてつくり、友達と一緒に遊びを楽しむことができる。
   
 単元の評価規準
  ・身近にあるいろいろな物や遊びに関心をもち、友達と交流しながら楽しく遊ぼうとする。(生活への関心・意欲・態度)
  ・身近にある物を使って遊ぶ物を工夫して作り、遊び方を考える。(活動や体験についての思考・表現)
  ・身近にある物を使って遊べることや遊ぶ楽しさ、友達や自分のよさに気付く。(身近な環境や自分についての気付き)
   
 単元の指導計画(全11時間)     ※ 「学習のめあて」の各項目は、各時間の指導略案にリンクしています。
 
学習過程
時数
学習のめあて
主な学習活動
具体的な評価規準
【関】・・・関心・意欲・態度
  【思】・・・思考・表現
  【気】・・・気付き
導入
1・2
「ともだちとあそべるもの」を考えよう
素材を使って遊びや作れそうなものについて作ったり遊んだり試しながら、自分で考える。
考えたことをワークシートに表現する。
表現したことを基に、友達同士で見せ合う。
【関】 身近にあるいろいろな物に関心をもち、遊ぼうとしたり遊びに使う物を作ろうとしたりする。(発言・行動観察・対話)
【気】 身近にあるいろいろな物の特徴に気付く。(発言・ワークシート・対話)
作る「あそぶおもちゃ」をきめよう(けいかく書をかこう)
前時のワークシートを使い、どのような遊びにするか、どのような物を作るか、計画を立てる。
【思】 遊びに使う物を考え、絵や言葉で表す。(行動観察・ワークシート・対話)
展開
4・5
ともだちとあそべるものを作ろう
計画書を見ながら作る。
工夫や修正を加えながら作り進める。
【思】 遊びに使う物を自分や友達の考えを生かし、作る。(行動観察・作品・対話)
 
「ちょこっとあそびまつり」で気づいたことを教え合おう
「ちょこっとあそびまつり」をする。(ペアの班のところで遊ぶ。)
ペアの班の友達のよかったところやアドバイスなどを書き、伝え合う。
【関】 友達と一緒に遊ぼうとし、思ったことを伝えようとする。(発言・行動観察・対話)
【気】 友達の遊びのよさや、自分の遊びのよさなどに気付く。(付せん・ワークシート・対話)
展開
7・8
あそびやあそぶものを「しんか」させよう
友達からのアドバイスや一緒に遊んだ中から気付いたことを基に、遊びをさらに工夫する。
試しながら作り替える。
【思】 遊ぶ物や遊び方を工夫・改善し作る。(行動観察・作品・ワークシート・対話)
9・10
「あそびまつり」で 『よかとこ』 はっけん!
「あそびまつり」をする。(1回目と別のペアの班のところで遊ぶ。)
友達の遊びや遊ぶ物のよかったところをカードに書き、伝え合う。
【関】 友達と一緒に遊ぼうとし、思ったことを伝えようとする。(発言・行動観察・対話)
【気】 友達の遊びのよさや自分の遊びのよさ、友達と一緒に遊ぶ楽しさに気付く。(付せん・発言・ワークシート・対話)
終末
11
ぼくの・わたしの 『よかとこ』 はっけん!
単元の活動を振り返り、自分の成長やこれからの活動について、振り返りカードに記録する。
【思】 本単元全体を通して自分の活動を振り返り、自分の頑張りや成長などについて考え、絵や言葉で表す。(振り返りカード・対話)
【気】 単元を通した自分の頑張りや成長などに気付く。(振り返りカード・発言・対話)
   
   
 授業後の考察
  (1)導入段階における表現する活動と伝え合う活動
 
 導入段階における表現する活動と伝え合う活動について、自分の思いや願いをもつ場面で表現する活動と伝え合う活動を位置付けました。
 「この材料なら何かできそうだ」「転がして遊べそうかな」など漠然とした思いや願い、曖昧な見通ししかもつことができずにいた児童にとって、表現することで自分の思いや願いが明確になったり、見通しをもったりすることができたのではないかと考えます。そして、伝え合う活動で友達の考えに触れ、「○○さんの、プリンの入れ物の中にペットボトルのキャップを入れているのがおもしろそうで、まねしてみようかなと思いました。」のように、友達の考えのよさやプリンの入れ物やペットボトルの使い方に気付き、自分が作りたい物への工夫を考えるきっかけになったと考えます。
 活動や体験を通して身近にある物について「遊ぶものに使えそうだ」という気付きは、ほとんどの児童がもつことができたとワークシートから把握できますが、身近にある物(素材そのもの)についての詳しい特徴はワークシートに表せず、ワークシートを基にして対話によって児童の気付きを引き出し表現させておくと、展開段階での活動や広がり、気付きの質を高めるきっかけになったのではないかと考えます。
 
  (2)展開段階における表現する活動と伝え合う活動
 
 展開1と展開2では、遊んでみた感想や意見、気付きなどを付せんに表現し、伝え合う活動を設定しました。
 展開1では、互いの遊びについて表現し伝え合う活動の楽しさについては、ほとんどの児童が味わうことができていましたが、互いに表現し伝えるものの数が少なく、気付きの質を高める活動とはなりませんでした。記述内容についても、事前に、モデルや視点を示していたにもかかわらず、「どこがどのようによかったのか」という詳しい記述をしている児童は54%の児童にとどまりました。
 これは、 互いに気付いたことを伝え合う活動の時間も含め遊ぶ時間を10分と限っていたこともあり、遊ぶ時間や表現し伝え合う活動の十分な時間が不足していたためと思われます。やはり対象に働きかける時間の確保が重要だと思います。
 展開2では、展開1の反省を生かし、気付きを表現し、伝え合う活動の時間も含め遊ぶ時間を10分としました。時間の確保により、付せんに書く内容について
   ・ ビー玉を投げるのがおもしろかったです。
    ・ とっても難しかったけど、点数がいっぱい書いてあって楽しかったです。
などのように、具体的な記述(文中下線部)があり、展開1よりも詳細な部分への気付きが多く見られました。84%の児童が詳しいところまで記述することができていました。
 遊ぶ活動の時間を確保したことにより、友達や友達が考えた遊びにじっくりかかわることができ、充実した体験となって詳しいところまでの記述ができたのではないかと考えました。
 さらに、展開2では、伝え合う活動の後の表現する活動として振り返りの時間を設け、ワークシートに記入欄(自由記述)への記入をさせましたが、その中には、数名の児童が
   ・ 今日、新しい遊び方を考えられたのでよかったです。
   ・ サッカー(型の遊び)を作ってよかったです。
などのように、自分自身への気付きをもち始めていました。伝え合う活動により、「考えられるようになった自分」「考えて作ることができた自分」に気付いているということだと考え、気付きの質が高まってきたと考えます。
   
  (3)終末段階における表現する活動と伝え合う活動
 
 終末段階では、単元全体の自分の活動について振り返りの時間を中心に表現する活動を位置付けました。(伝え合う活動については、個人での振り返りの結果を全体の場で紹介する程度でした。)
 前時の伝え合う活動で表現した付せんなどを含めて、これまで表現してきたワークシートの綴りを活用し、自分の学習の足跡をたどりながら、自分が苦労したことや頑張ることができたことなどに気付かせるようにしました。振り返りカードの記述には「最初は・・・だったけど、だんだん・・・・ができるようになりました。」のように、単元の最初や途中の自分の姿と比較しながら、児童全員が自分の成長に気付くことができました。(文中下線部、及び下の資料1参照 
 振り返りカードには、「がんばったよ」や「じょうずになったよ」などの項目を設けたことにより、視点が明確になり、自分のよさや特徴に気付くことができたのではないかと考えます。(下の資料1参照)
 自由記述式の振り返りカードも資料1への記入後に使ってみましたが、絵に表すことで、そのときの様子を思い出し、自分への気付きを見つけることができたので、有効であったと考えます。(下の資料2参照)ただ、2枚の学習カードの記入は、時間が掛かり、児童の負担にもなるということを踏まえると、振り返りの時間の表現する内容を精選しなければならないと考えました。
   
 
  
 
 資料1  「11/11時」で使用した振り返りカード1の作品例
   
 
 
 
資料2  「11/11時」で使用した振り返りカード2の作品例
   
 
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最終更新日:2011-03-30