4技能「聞く・話す・読む・書く」を関連付けた中学校英語科学習指導の工夫 |
|
||||||||||||||
○ 複数の領域を関連付けた言語活動例 |
1 | 教科書のトピック例 |
|||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
現在、佐賀県の中学校では「New Horizon(東京書籍)」と「Sunshine(開隆堂)」の2つの教科書が採用されている。 | ||||||||||||||||
次の表1は、それらの教科書で扱われるトピックの一覧である。 表1 2社の教科書 「New Horizon(東京書籍)」 と 「Sunshine(開隆堂)」 で扱われるトピックの一覧 |
||||||||||||||||
上記の表1のように、教科書で扱われるトピックは幅広い。相手の意向を理解し、自分の考えを伝える力を育成するためには、言語材料の理解と定着のための練習的な言語活動と、実際にコミュニケーションを図る活動のバランスが大切である。日常の授業では、新出文法事項や表現事項の理解と定着を図るためのドリル的な学習や、リハーサル的な言語活動として、ある場面を設定した言語活動を取り入れる。しかし、相手の意向を理解したり、自分の考えを伝えたりする力を養うためには、複数の単元で学習した文法事項や表現事項を総合的に活用する言語活動、すなわち、複数の単元で学習した文法事項や表現事項などを生徒自身が駆使してコミュニケーションを図るような言語活動が必要だと考える。このような言語活動が、本来のコミュニケーション活動につながる活動であると言える。年間の指導に当たっては、下の図3のように、日常の授業において、新出文法事項や表現事項の定着を図るためのドリル的な学習やリハーサル的な言語活動に取り組ませるとともに、いくつかの単元が終了した後に、意図的・計画的に前述したような言語活動を位置付けることが大切である。
図3 年間の授業における「学習事項を総合的に活用する言語活動」位置付けのイメージ
現行の学習指導要領では週当たりの授業時数は3時間であるが、新学習指導指導要領では週4時間となる。しかし、新しい指導事項はほとんど追加されないことからも、このプラス1時間の授業において、複数の単元間につながりのあるコミュニケーション活動に取り組ませることが、現行の学習指導要領以上に可能となる。 |
||||||||||||||||
2 | 複数の領域を関連付けた例 |
|||||||||||||||
次の表2とその説明は、岡(2004)の考えを基に、中学校で実践可能な言語活動例を示したものである。 | ||||||||||||||||
|
表2 複数の領域を関連付けた言語活動
|
|||||||||||||||
@ |
Listening と Speaking を関連付けた例 : | ・ | この例では、まず授業における教師と生徒のインタラクションなどが考えられる。授業の始めにSmall Talk の活動で実際に行われていることが多い。 | |||||||||||||
・ | 聞いたものを自分の言葉で再現する。教科書では「電話での場面」などが例として考えられる。 | |||||||||||||||
A |
Listening と Reading を関連付けた例 : | ・ | この例では、最初に教科書の本文を見ずに、教師やCDによる範読を聞き、その後に本文を読む活動などが考えられる。聞き取れなかった部分を教科書で確認する。 | |||||||||||||
B |
Listening と Writing を関連付けた例 : | ・ | この例では、ディスカッションやディベートの記録を取ったり、ポイントをメモする活動などが考えられる。 | |||||||||||||
・ | 「電話での場面」で伝言を聞き取る活動も、この例となり得る。 | |||||||||||||||
C |
Reading と Speaking を関連付けた例 : | ・ | この例では、教科書の本文を読んだ後、内容に関するQ&Aをする活動などが考えられる。特に、読み物教材などで行うと有効である。その発展として、本文を読んで、内容に関する事柄について、調べたことを発表する活動なども考えられる。 | |||||||||||||
D |
Writing と Speaking を関連付けた例 : | ・ | この例では、スキットを作ったり、スピーチの原稿を書いたりして、それを発表する活動などが考えられる。本研究の1年次の取り組みとして、多くの授業実践に取り組んだ。 |
|||||||||||||
E |
Reading と Writing を関連付けた例 : |
・ | この例では、受け取った手紙やEメールを読み、返事を書く活動などが考えられる。その他にも、自分が読んだ英語の文章についての感想を書いたり、その文章の続きを書いたりする活動なども考えられる。読み物教材で、物語の続きを書く活動も、授業の中に入れることは可能である。 | |||||||||||||
![]() ![]() |
||||||||||||||||
以上のような@からEまでの例が考えられる。これらの活動例は中学校の英語の授業で、実践可能と考えられる活動であり、すでに実践されている例も多くあると思われる。例@と例Aについては、日ごろの授業で日常的に実践されていると思われる。例Cは本文の内容についてのQ&Aの他に、内容の背景となったことについて調べ、それを発表する例であり、このように、本文の内容をより豊かにする例なども考えられる。しかし、この中ではやや高度な活動となる。 本研究の1年次の授業実践では、上記の例Dについて取り組んだ(実践事例その1、その2、その3、その4)。 |
||||||||||||||||
3 | 年間を通しての言語活動例 |
|||||||||||||||
|
次の表3は、複数の単元終了後に、それまで学習した事項を総合的に活用できる言語活動のテーマ例を示している。これは年間を通して実施できるものである。 表3 複数の領域を関連付けて取り組むことができる「学習事項を総合的に活用する言語活動」のテーマ例 このように、ある単元で扱った文法事項などの学習内容をそのときだけで終わらせるのではなく、一度扱った内容についても、他の既習事項と合わせて、何度も繰り返して使用させることが定着を図るための有効な方法である。また、新出文法事項の定着のためにリハーサル的な言語活動を行うとともに、複数の単元で学習した文法事項や表現事項を総合的に活用する言語活動を位置付け、その活動において複数の既習事項を活用させるような手立てを工夫することで、学習した内容の確実な定着を図ることができる。 言語活動例としては、「書くこと」の活動を中心としているが、書いた英文を読んだり、書いた英文を基に話したりして表現するという活動を通して、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」にもつなげることができる。教科書で学習する単語や文法事項、英語特有の表現などはすべてコミュニケーションのためのツールであり、自分と相手をつなぐための手段であるということを、生徒が理解し、意識できるように指導していく必要がある。 |
|||||||||||||||
4 | 参考文献 |
|||||||||||||||
・岡 秀夫・赤池 秀代・酒井 志延 「英語授業力強化マニュアル」 2004年 大修館書店 |
Copyright(C) 2009 SAGA Prefectural Education Center. All Rights Reserved. | |
最終更新日: 2009-03-18 |