本研究においては、児童生徒が社会の仕組みや制度だけではなく、「社会全体にとってよいことか」という社会的な価値を意識した見方や考え方を獲得させることに主眼をおいています。このように、社会的な価値を意識し、様々な立場や観点を踏まえながら社会的事象を見たり考えたりできるようになることを「深まり」ととらえ、目指す社会の在り方を考えさせることで、児童生徒の社会的な見方や考え方を深める指導の在り方を探ってきました。
近年、特に「指導と評価の一体化」ということが大切にされています。しかし、児童生徒の知識・理解の習得に比べ社会的な見方や考え方の変容や伸びは、測ることが難しいという問題があります。しかしながら、ぜひ育成したい大切な力であるからこそ、的確に評価を行い、その評価情報に基づいて、適切な指導をしていくことが重要となります。社会的な見方や考え方を評価するためには、できるだけ、具体的な評価規準と評価の基準を設定し、それらを見取っていくための方法を明らかにしておく必要があります。社会的な見方や考え方は質的なものであり、見えにくいことを考えると、それらを児童生徒の考えとして、発言や記述などの形で表現させ、それを見ていくことが有効であると考えます。
ここでは、評価の手順とポイントについて述べたいと思います。
【手順】
@学習指導要領を基に、評価規準と評価方法を決める。
評価規準は、子どもにつけたい力(目標)を示すもので、質的なものといわれます。4観点の中の何を、どの
ような学習場面で
、何を基に評価をするのかを考える必要があります。
社会的な見方や考え方の評価については、社会的な思考・判断の観点で、児童生徒が意思決定した理由
を記述したノートやワークシート、意見交換場面での発言等を見取っていくことになると考えます。
A評価の基準を設定する。
評価の基準は、評価規準で示したつけたい力(目標)がどの程度達成されたか判断するための目安となるも
ので、「ものさし」のようなものです。具体的には、Aは十分に満足できる状況、Bはおおむね満足できる状況、
Cは努力を要する状況と考えます。
まずは、全ての児童生徒につけたい力として、B基準から考えることをお薦めします。その際、できるだけ具
体的な状況を量的な面(意識した立場や観点の数、理由を支える資料の数など)に目を向けながら設定して
おくと評価がしやすくなると考えます。その際、CについてはBに達していないものとして考えられる児童の実
態の例を考えておく必要があります。また、BをAに、CをBに引き上げるための手立てまでを考えることが大
切です。
本研究においては、評価の基準をA・B・Cの3つに設定していますが、A・Bの2つで設定する場合もありま
す。
【評価規準と評価の基準の例】
単元名 「循誘公民館の利用者がふえるアイデアを考えよう」(小学校3年生)

B児童生徒の記述内容や発言を基に、評価する。
実際に、評価する際には、児童生徒の記述内容や発言を基に、その状況を見取っていくことになります。意思
決定場面においては、それぞれの児童がどのような考えなのか(どのような立場を選択しているのか)が一目で
分かるように、ネームプレートを黒板に貼らせたり、選択した立場ごとにワークシートの色を変えたりするなどの
工夫も有効です。
【ポイント】
評価の基準に基づいて、形成的な評価を行うことが基本です。加えて、社会的な見方や考え方の深まりを見て
いくためには、単元の始めと終わりや授業の前後、前単元との比較などをしながら継続的・総合的に評価していく
ことが必要です。
どちらにしても、次の6つの視点で、児童生徒の記述や発言を見ていくことで、社会的な見方や考え方の深まり
を見ていくことができると思います。