社会的な見方や考え方を深める社会科学習に取り組んでみよう!

社会科 実践事例その5 小学校第5学年

1 単元名 水産業がさかんな銚子港 〜日本の水産業は輸入に頼るべきか?〜【A:発展型】
  
 
2 教材観
 日本近海はよい漁場であり、水産業にかかわる人々が漁港や運輸、消費地などで様々な工夫や努力をしている。 
 日本の水産業は、後継者不足、高齢化、200カイリ水域など問題も多く、水産資源の多くを輸入に頼っている。
 水産業にかかわる人々の工夫や努力だけでなく、問題点にも気付かせ、今後の日本の水産資源確保について考えさせることは意義あることと思われる。
 
3 児童観
 児童が住む地域は、海から離れているため、水産業の様子を見たことがある児童は少なく、関心も高くはない。
 これまでに「気候を生かした地域のくらし」の単元で、「沖縄と新潟ではどちらが得か」というテーマで1回意思決定型の学習を取り入れた授業を経験している。このときは、自然環境、安全、予算などが論点として出された。
 インターネットや百科事典などを使って情報を進んで調べる様子があまり見られず、教科書や資料集を基に調べ活動を行う児童が多い。
 
4 指導観
 日本は、よい漁場であり、水産物の消費量が多いことに気付かせる。
 魚のとり方や釣った魚を店まで運ぶ際の水産業にかかわる人々の努力や工夫について調べさせる。
 後継者不足、高齢化、200カイリ水域など、現在の水産業の問題点とその対策として行われている養殖や栽培漁業について調べさせる。
 これからも安全でおいしい魚を食べられるような社会にしていくためには、日本の水産業は輸入に頼るべきか、生産力を上げるべきか考えさせる。
 
5 単元の総括目標

水産業が盛んな地域について、従事する人々の工夫や努力を調べさせ、日本の水産業の特色や自分たちの生活とのかかわりを理解させるとともに、今後の水産資源の確保について考えをもたせる。

 
6 単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断
技能・表現
知識・理解
自分たちの生活と水産業のかかわりについて関心をもち、水産業の盛んな地域について調べようとする。 水産業を取り巻く様々な問題をとらえて、水産業に携わる人々の願いや問題に対してどのように対応しているかについて考えることができる。 統計資料や地図帳などを活用して、水産業を取り巻く問題について具体的に調べることができる。 資料を基に、日本の水産業の特色や自分たちの生活とのかかわりを理解している。
水産業を取り巻く様々な問題を理解している。
 
7 単元の指導計画
主な学習活動
ワークシート・資料
1 日本の魚の消費量は多いか、資料から考える。  
2 日本がよい漁場である理由は何か、資料から考える。  
3 魚のとり方の工夫には、どのようなものがあるか調べる。 ワークシート1
4 魚が店に届くまでには、どんな人がかかわり、どんな工夫がされているか調べる。  
5 水産業に携わる人々が抱える問題について調べる。  
6 「とる」漁業から「つくり育てる」漁業へ水産資源確保のためにどのような努力をしているか調べる。  
7 「日本の水産業は輸入に頼るべきか」について、自分なりの考えをもつ。
【意思決定1】
ワークシート2
8 「日本の水産業は輸入に頼るべきか」について話し合い、自分の考えをまとめる。 【本時】
【意思決定2】
 
 
8 実践を終えて
【成果】
 本授業は、単元の終わりに意思決定の場面を置く「発展型」である。この型の授業は、これまでの学習の内容を振り返るため、児童の理解を深めるために有効であった。
 今回の学習課題は、水産業の問題点にかかわるものであり、課題を考えることが、これまでの学習内容を更に深く考えることにつながり、よい課題であったと考える。「輸入に頼るべき」派は日本の水産業が抱える問題点を挙げることになり、「生産力を上げる」派はいかに現在の水産業の問題点を解決するかを考えることにつながった。このことから、教科書で挙げられていない水産業の問題点にも触れることができた。
  黒板を二分し、それぞれの主張に対する考えを書かせたので、どのような考えが出されたのか一目で分かった。このことが、児童に反対意見を書かせるときに役立った。
  話し合いで出された主な視点は、「安全面」「予算面」「食料自給率」だった。児童に考えを板書させた際、それぞれの考えを「安全」「自給率」などの価値で分類したため、児童は、今、どの視点で話し合っているかを考えながら、意見をつなぐことができた。
【課題】
 資料収集について、双方の主張の考えを基に、どのような資料があれば、根拠を示せるのかを考えさせる必要があった。例えば、「輸入に頼るとお金がかかって困る」という反対意見を言いたい児童に対して、「日本の水産物の輸入額」などの資料が必要だということに気付かせることやその資料をどのように調べるかという調べ方についても指導が必要となる。このような調べ学習の基礎を4月から継続的・系統的に行うことで、児童が進んで資料を収集し、話し合いに積極的にかかわることができると考えられる。
 インターネットで調べさせるためには、どのようなサイトでどのようなキーワードで検索させるかも指導しておくべきであった。帰宅後も児童が進んで調べられるように、今後は「日本の水産物輸入額」のようなキーワードで検索する方法についても指導する必要がある。
 消費者の立場からの考えが多くなり、生産者の苦労や努力にまで話し合いが深められなかった。だれの立場に立ったのかという視点を児童に与えておく必要があった。
 
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最終更新日: 2010-03-23