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高等学校第2学年の実践 | 単元名「評論文を分析・評価する」 |
高等学校においては、「分析」の視点を生徒に提示し、実際に「分析」の作業を取り入れることで、内容や表現が難しい教材の内容把握を効果的に行うという試みを取り入れました。また、最後に「評価」の作業を取り入れることで、中学校で意識付けられた「批判力」をより高度なものへと導くことができるような指導過程を意識してみました。「分析」を意識した「書く活動」を取り入れることで、生徒が思考する場を意識的に数多く設定した点が特徴です。 |
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教材名 | − | 人間の自由 | ||
出 典 | − | 『精選現代文』 東京書籍 | |||
筆 者 | − | 前田 英樹 | |||
補 助 教 材 |
− | 教材名 「言語と記号」 出 典 『精選現代文』東京書籍 筆 者 丸山圭三郎 |
本時 | 学習指導案 | ワークシート | |||||
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単元観 |
生 徒 の 実 態 |
■評論教材の表面的な内容理解はできる生徒が多いが、積極的に評論文を読み進め、より深く本文の内容を理解しようとするところまでは至っていない。 ■評論文を読み、内容について自分なりに価値付けるという経験が不足している。 ■学習活動において積極的に発言することができる生徒が多く、また疑問に思うことは互いに相談して答えを導くということが自然にできている。 |
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教 材 観 |
■人間は自ら道徳的な行動をなす「倫理的な原液」というものを本来持っているというのが筆者の主張であり、そのような考え方を、様々な具体例や体験談を通して、読者に伝えようとしている文章である。 ■本来論理的に説明することが難しいと思われる「倫理・道徳」を題材として扱っているために、筆者の論理に納得しない生徒も出てくると考えられ、そのような疑問点を出発点として「評論文の分析、評価」を試みることが可能になる教材である。 |
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指 導 観 |
■「筆者の論理を分析、評価する」ために、読解の段階で、文章の論理展開にかかわる接続語や具体例の働き、キーワードの意味内容や論の深まりに注目させる。 ■「筆者の論理を分析、評価する」場面においては、「構成」「具体例」「キーワード」という三つの観点で生徒の思考の場を設け、絶えず自分の考え方と照らし合わせながら、自分の考えを深めさせる。 |
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指導目標 |
構成や具体例、キーワードに注目しながら筆者の論理を分析させ、その分析を基に筆者の論理を評価させる。 |
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評価規準 |
国語への関心・意欲・態度 | 評論文読解の意義を理解し、文章を積極的に読み進めようとしている。 | ||
読む能力 | 構成や具体例、キーワードに注目し、筆者の主張を理解している。 | ||
筆者の論理を分析し、その分析を基に筆者の論理を評価している。 |
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単元計画(全6時間) |
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実践における成果と課題 |
今回の実践の成果は次の3点である。 @「分析」の作業を取り入れることで、文章読解のポイントを絞ることができ、生徒の内容把握の手助けとなった。 A「評価」の作業を意識させることで、絶えず自分の考えと照らし合わせることとなり、生徒が主体的に文章を読むようになった。 B「分析」「評価」の内容を他者と話し合わせることで、自己の考えを深めることができ、話し合いの重要性を認識させることができた。 @についての生徒の感想としては「『難しい』というイメージばかりだった評論文の内容が『分析』を通して分かりやすくなっていくのに驚いた」「はじめはちんぷんかんぷんだった『人間の自由』だったけれど、分析していくと確かに内容がつながっていて、先生の説明にも納得できるようになった」などがあった。「分析」に慣れていない生徒にとっては、「分析」そのものは確かに簡単なものではないが、「文章読解」という目的に利用することで、結果的に内容把握の手助けになっていたようである。「分析は楽しかった」と感じた生徒もおり、評論文への興味・関心につなげることもできたと思われる。 Aについての生徒の感想としては「筆者の意見に流されることなく、自分の意見をもつことも大切だと感じた」「筆者の考えと自分の考えが違う時は、分析し、評価することが大事だと思いました」などがあった。「評価」するためには「価値基準」が必要であり、必然的に自分の考えを基準にして、本文の内容・表現や筆者の主張と照らし合わせることになる。「評価」の作業を意識させたことが、生徒に「主体的な読み」を促すことになったのである。また、「初めて分析・評価を意識して読んでいったが、日常生活でも知らないうちに様々なことで分析・評価をしていることに気付いた」という生徒の感想もあり、「生きる力」としての「確かな読みの力」へとつなげることができている生徒もいた。 Bについての生徒の感想としては「周りの人と意見交換することが多かったけど、周りの人の意見を聞くことで自分とは異なった考え方を知ることができ、話し合いは結構大事なことだなと思いました」などがあった。「分析」「評価」の内容を確認させるために、隣の席の生徒同士で話し合わせたり、グループでの話し合いの場を設けたりした。最初は、「分析」「評価」という慣れない作業に伴う不安感を、他者と話し合うことで払拭していたようであるが、次第に他者の考えを聞くこと自体におもしろみを感じるようになったようである。他者との話し合いの結果、本文の内容に関する自己の考え方を深めることができていたと思われる。 |
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課題としては、まずは、「評価」「分析」の具体的な方策をきちんと身に付けさせるところまでは至らなかったという点があげられる。時間的な制限が一番の理由であるが、日々の授業の中で「評価」「分析」の指導をどのくらい計画的に取り入れることができるかが一番の課題であろう。 次に、「評価文」の書き方指導ができていなかったために、論理展開が分かりやすく、論拠もしっかりした評価文を書かせることができなかったことが挙げられる。「書くこと」の指導とつなげていくことが大切であり、「書く活動」を「読むこと」の授業の中にいかにして取り入れていくかが今後の課題である。 また、「分析・評価する」ことの意義は伝えることができたが、「分析・評価する」ことの必要性を実感させることがどの程度できたかは疑問が残る。確かに、日常生活へと目を向けた生徒もいたが、ほとんどの生徒は教材の読解というレベルで完結していたように思われる。「生きる力」へとどのくらい適切につなげていけるかが今後の課題と言えるだろう。 |
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