今回の調査では、自然事象についての「知識・理解」や観察・実験の「技能・表現」など、基礎的・基本的な内容については良好であった。しかし、「科学的な思考」に関する問題や「活用」に関する問題について課題が見られた。この課題を解決するためには、科学的な思考力・表現力の育成を図る授業を展開することが重要である。また、
児童生徒意識調査において、理科学習の有用性に課題が見られたことから、科学的な体験や自然体験の充実を図るための取り組みを行うことも重要なことである。
そこで、次の3つの点を大切にして、これからの指導に取り組む必要がある。
(ア) 探究的な学習の充実
科学的な思考力や表現力を育成するためには、生徒自らが課題を解決する探究的な学習の充実を図ることが重要である。
探究的な学習には、①「問題を見いだし観察や実験を計画する学習活動」、②「観察や実験の結果を分析し解釈する学習活動」、③「科学的な概念を使用して考えたり説明したりする学習活動」等が考えられる。①の学習活動の充実を図ることは、生徒が自然の事物・現象に進んで関わるために大切である。そのためには、観察や実験を計画する場面で、考えを発表する機会を与えたり、検証方法を討論したりしながら考えを深め合う等の学習活動が考えられる。②の学習活動の充実を図ることは、思考力や表現力を育成するためにも重要である。そのためには、データを図、表、グラフなどで表したり、結果を考察したりする時間を十分に確保することが大切である。③の学習活動の充実を図ることも、思考力や表現力の育成を図る観点から大切である。そのためには、例えばレポートの作成、発表、討論等、知識や技能を活用する学習活動を工夫し充実を図る必要がある。
(イ) 個に応じたきめ細かな指導と評価の充実
科学的な思考力や表現力を育成するためには、個に応じたきめ細かな指導と評価を充実させることが重要である。
まず、基礎的・基本的な内容が確実に定着しているかを確かめる評価を行う。次に、達成できていない内容について補充的な指導を行い、確実な習得を図る。最後に、習得した基礎的・基本的な内容を活用し、科学的に探究する学習活動に取り組ませる。つまり、「指導と評価の一体化」を、今一度、徹底することが大切である。 その際、授業中の観察やノートの点検、小テストの実施などの「短いフィードバック・サイクル」によるものと、単元末の確認テストや定期テスト・実力テストのやり直しなどの「長いフィードバック・サイクル」によるものを組み合わせて行うことが重要であると考える。個に応じたきめ細かな指導を全学年で継続的に取り組んでいくことが大切である。
(ウ) 科学的な体験や自然体験の充実を図るためのものづくりの推進
児童生徒意識で、「理科の勉強で学習したことは将来、社会に出たときに役立つか。」という質問に対して、「当てはまる」と回答した生徒の割合は、中学1年生37.9%、中学2年生23.5%、中学3年生19.5%であった。このことは、学年が上がるにつれて、理科学習の有用性を実感している生徒の割合が減少していることを示していると考えられる。
そこで、理科学習の有用性を生徒に実感させるためには、科学的な体験や自然体験の充実を図るためのものづくりを授業に取り入れることは有効であると考える。特に、ものづくりは、学習内容と日常生活との関連を図る上でも有効な学習活動の一つであると考える。
そこで、ものづくりを授業に取り入れるに当たっては、単元の導入、展開、まとめのどの部分に取り入れるのが最も効果的か、単元の学習内容の特質に応じて計画的に判断し行うことが重要であると考える。あくまでも原理・法則の理解を深めることが目的である。高度なものや複雑なものではなく、生徒が創意・工夫する余地のあるもの、安価で全ての生徒に材料が行き渡るものが、ものづくりの教材として望ましいと考える。なお、安全には十分配慮して行わなければならない。 |