平成23年度佐賀県小・中学校学習状況調査Web報告書

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Ⅲ 各教科の調査結果の分析   

  ※ 中学1年生の調査については、小学6年生の学習内容としているため、小学校の項で分析している。
  ※ 本報告書「Ⅱ 調査結果の概要」には、中3国語についても、参考のために、便宜上、到達基準を設定しているが、
   この項の中3国語においては、到達基準を基にした分析を行っていない。

中学校国語

  読み取ったことを基に、自分の考えをもたせ、表現させる言語活動の充実を

中学2年生全体としては、全ての評価の観点において、「おおむね達成」の基準を上回った。特に、「言語についての知識・理解・技能」の観点においては、「十分達成」の基準を上回った。しかし、「書くこと」に課題が見られた。設問毎に見ていくと、自分の考えの形成に課題があるという実態が見られた。今後は、授業における言語活動の充実の核として、読み取ったことを基に、自分の考えをもち、的確に話したり、書いたりする活動を充実させる必要がある。

国語科においては、評価の観点と内容・領域が重なるという教科の特質上、以下のように記す。

 ○国語への関心・意欲・態度

 ○話す・聞く能力

 ○書く能力

 ○読む能力

 ○言語についての知識・理解・技能

「関心・意欲・態度」(中学3年生のみ設定)

「話す・聞く」

「書く」

「読む」

「知識・理解・技能」

 
       

 

結果の概要
 

各学年ごとに教科全体の正答率について到達基準との比較を示す。

中3国語は、過去の全国調査の問題を利用しているため、凡例が異なる。

 

(ア)
教科全体及び設問毎正答率
 
教科全体正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率

 

中学2年国語の教科全体の正答率は64.5で、「おおむね達成」の到達基準49.2に対して、15.3ポイント上回った。中学3年国語の教科全体の正答率は81.3で、実施時の全国平均に対して、0.5ポイント上回った。

 
(イ)

評価の観点別正答率

①中学2年生

図1 H23年度(中学2年生国語)評価の観点別正答率

中学2年国語の評価の観点別正答率を見ていくと「書く」の観点が49.3で、「おおむね達成」の到達基準48.0に対して、1.3ポイント上回ったが、他の観点に比べて最も低かった。児童生徒意識調査によると、「国語の授業で目的に応じて資料を読み、自分の考えを話したり、書いたりしている」という設問に対して、半数程度の生徒が「当てはまる」と回答している。また、教師意識調査では、「自分の思いや考えを書いて表現するような授業」を「多くの単元で行っている」の回答が29%、「半数程度の単元で行っている」の回答が23%であった。「書くこと」の授業は行われているものの、「何を書けばよいのか」、「どのように書けばよいのか」の理解の定着が図られていないことが原因であると思われる。

 
(ウ)

内容・領域別正答率

①中学2年生

図2 H23年度(中学2年生国語)内容領域別正答率

「話すこと・聞くこと」と「言語事項」については、「おおむね達成」の基準を上回った。特に、「漢字の読み」については、「十分達成」の基準を12.6ポイント上回った。しかし、「書くこと」「読むこと」については「おおむね達成」の基準を上回る程度で、課題が見られる。

   

経年比較 

 

平成22年度からの課題となっている内容・領域の「書くこと」、「読むこと」、「言語事項(漢字の書き)」について分析し、指導改善が図られたかの確認を行うことにする。そのために、同一学年の中学2年生に着目し、平成23年度と平成22年度の経年比較により分析を行う。

   
(ア)

中学校2年生の「書くこと」の経年比較(同一学年)

図3 H22・23年度(中学2年生国語)「書くこと」の正答率の経年比較

図4 H22・23年度(中学2年生国語)「書くこと」の到達度分布の経年比較

平成22年度と平成23年度(中学2年生国語)「書くこと」の正答率と到達分布について経年比較を行った。平成22年度は「おおむね達成」の基準を18.8ポイント上回っていたが、平成23年度は「おおむね達成」の基準を1.3ポイント上回る結果となった(図3)。設問毎に見ていくと、「相手や目的に応じて分かりやすく書くことや、取り上げた事実や事柄、課題についての自分の考えを明確にして書くこと」、「レポートを作成する時の留意点を理解しながら書くこと」の正答率が低い結果となった。

「書くこと」の到達度分布の経年比較をすると、「おおむね達成」の生徒の割合は、平成22年度に比べて0.6ポイント増加しているが、「十分達成」の生徒の割合は、平成22年度に比べて20.9ポイント減少している。また、「要努力」の生徒の割合が、平成22年度に比べて20.5ポイント増加する結果となっていて、課題である(図4)。

   
(イ)

















中学校2年生の「読むこと」の経年比較(同一学年)

図5 H22・23年度(中学2年生国語)「読むこと」の正答率の経年比較 

   図6 H22・23年度(中学2年生国語)「読むこと」の到達度分布の経年比較

平成22年度と平成23年度の(中学2年生国語)「読むこと」の正答率の経年比較と到達分布の経年比較を見ると明らかなように、平成23年度の中学2年生は、平成22年度の中学2年生に比べて、正答率は2.7ポイント下回っている(図5)。平成22年度も「読むこと」に課題があったが、平成23年度も引き続き「読むこと」に課題があると言える。設問毎に見ていくと、「文章の構成や展開、表現の特徴について、自分の考えをもつ」問題に関して、正答率は26.4で、無解答率は29.9と、正答率を3.5ポイント上回っている。

教師意識調査によると、「国語で目的や意図に応じて、文章の内容や表現の仕方に注意して読み、それについて自分の考えをもつ活動を取り入れた授業を行っていますか」という設問に対して、ほとんどの教師が「行っている」という回答であった。にもかかわらず、生徒の力として定着していない。

「読むこと」の到達度分布の経年比較を見てみると、平成22年度と平成23年度では、分布グラフの形状としては、形が似通っているものの、「十分達成」の生徒の割合も「おおむね達成」の生徒の割合も平成22年度に比べて、それぞれ3.0ポイント減少している。また、「要努力」の生徒の割合については、平成22年度よりも6.3ポイントも増加していて課題である(図6)。

   
(ウ)

中学2年生の「言語事項(漢字の書き)」の正答率の経年比較

図7 H22・23年度(中学2年生国語)「言語事項(漢字の書き)」の正答率の経年比較

図8 H22・23年度(中学2年生国語)「言語事項(漢字の書き)」の正答率の経年比較

平成22年度と平成23年度の(中学2年生国語)「言語事項(漢字の書き)」の正答率の経年比較と到達分布の経年比較を見ると明らかなように、正答率が4.9ポイント上回っており、漢字の書きの力は定着してきていることがうかがえる(図7)。設問毎に見ていくと、同訓異字の書き分けの問題である「はやい」については正答率は93.5で、定着が見られることが分かる。点画の間違いやすい問題についても、定着が見られる。「臨む」については、正答率の経年変化を見るため、平成22年度に引き続き再出題したが、正答率が17.4である。無解答率は24.4と高く、迷った末に無解答のままにしてしまったのではないかと思われる。

「言語事項(漢字の書き)」正答率の経年比較を見ていくと、「おおむね達成」の生徒の割合は、さほど変化がないものの、「要努力」の生徒の割合が平成22年度に比べ、7.6ポイント減少し、「十分達成」の生徒の割合が7.3ポイント増加している(図8)。

   
設問ごとに見た傾向と指導法改善の手立て

 

上記の「ア結果の概要」と「イ経年変化」から、「書くこと」、「読むこと」、「言語事項」において課題が見えてきた。そこで、この3つの内容・領域を取り上げ、正答率が低かった設問と無解答率が高かった問題について、設問ごとに分析を行うことで、より詳細に課題を把握し、具体的な改善の手立てについて探ることとした。

   
傾向1

相手や目的に応じて分かりやすく書いたり、取り上げた事実や事柄、課題についての自分の考えを明確にして書いたりすることに課題がある。

  

[中学2年生 大問2の二]  
○ 問題の概要


○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率45.0に対して、正答率は25.1であり、19.9ポイント下回った。答えとして求められていることについて、内容とレポート形式という答え方の2段階に分けて思考を整理することや、2文という条件に合わせて書くことに、課題がある生徒が多いためと考えられる。
○ 指導法改善の手立て

与えられた条件を踏まえた思考の道筋を示すことが大切である。この問題では次の3ステップが考えられる。

1、何を書くのか

テーマ設定の理由

2、構想メモをもとに2文で

①梅雨の時期体調を崩した

②医者から体力が落ちていて、朝食を食べているかの確認

3、指定された形(レポート形式、2文で)

「このことから、朝食と体力との関係を詳しく調べようと思った。」に続く形で、2文で書く。

以上のことを、ステップ毎に丁寧に押さえていく必要がある。

[中学2年生 大問2の四]

○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率40.0に対して、正答率は32.0であり、8.0ポイント下回った。文章や図表などから、何が書かれているかを読み取り、読み取ったことを基に、自分の考えをもつ。最後に、自分の考えを、条件に合わせて文章に書くということに、課題がある生徒が多いためと考えられる。
○ 指導法改善の手立て

与えられた条件を踏まえた思考の道筋を示すことが大切である。この問題では次の3ステップが考えられる。

 1、何が書かれているのか

    レポートの中にある調べた内容(1)から(3)までが、それぞれ何が書かれているかを読み取る。

    その際、文章だけでなく、図表などを読み取る力も問われてくる。

 2、読み取ったことを基に、自分の考えをもつ

    1で読み取った傾向を基に、今後どうすればよいか考えをもつ。

 3、考えたことを、条件に合わせて書く。

    条件に合わせて、分かりやすく書く。

以上のことを、ステップ毎に丁寧に押さえていく必要がある。

   
 傾向2

読み取ったことを基に、自分の考えをもつことに課題がある。

[中学2年生 大問3の三]  
○ 問題の概要


○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率45.0に対して、正答率は41.3であり、3.7ポイント下回った。5行ほどに書かれている内容の要旨を捉えることが出来ないことが課題であると考えられる。
○ 指導法改善の手立て

説明的な文章では、接続詞や順序を表す言葉に着目して読むことで、内容の理解に役立つことがある。「かむことによる別の効用」は、本文には5行ほどに書かれており、要約するのは困難と思いがちだが、「第一に」「第二に」という言葉に着目することで、筆者が何を言いたいかを読み取ることができる。そして、その言葉を基に、条件に合わせて一文にすることで、正解が得られる問題である。

説明的な文章は、論の展開の中心となる部分と、それを支える例示や引用などの付加的な部分とが組み合わされていたり、事実を述べた部分と意見を述べた部分とで構成されていたりする。「文章の中心的な部分と付加的な部分、事実と意見などを読み分ける」には、接続詞や順序を表す言葉などに着目し、文章の構成や展開、表現の特徴をおおまかに捉えるような習慣を身に付けさせたい。

[中学2年生 大問3の四]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率35.0に対して、正答率は26.4であり、8.6ポイント下回った。文章の内容を読み取ることができるが、文章の構成や展開、表現の特徴にまで気を付けて読む習慣が身に付いていないことが課題であると考えられる。
○ 指導法改善の手立て

この問題は、文章と図表との関連を考えながら、説明の文章を読み、自分の考えを表現する問題である。文章を読む際に「何が書かれているのか」という内容の理解だけでなく、「どのように書かれているか」という文章の表現の仕方にも注意して読む必要がある。

文章の構成や展開、表現の特徴を捉え、それについて「自分の考えをもつ」というのは、文章についての印象をもつことにとどまるものではない。様々な形態の文章の構成や展開、表現の特徴を分析的に捉え、その工夫と効果について、自分の考えをもつことである。このためには、説明、評論、物語、詩歌など、様々な文種の文章に触れさせ、比べ読みをするなどして、その特徴と効果について考えさせる必要がある。普段の授業においても、比べ読みの活動を取り入れるなど、複数かつ様々な文種の文章に触れさせる機会を設ける必要がある。また、日頃の読書活動においても、様々な文種の文章に親しむように指導したい。

   
傾向3

漢字の書きに関する知識と語句に関する知識の活用について課題が見られる。

[中学2年生 大問4の2の4]  
○ 問題の概要


○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率50.0に対して、正答率は17.4であり、32.6ポイント下回った。無解答率も24.4であった。「のぞむ」=「望む」であり、「臨む」という訓読みの漢字と用例が定着していないことが課題であると考えられる。
○ 指導法改善の手立て

漢字を指導する際には、その漢字を用いた語句の例を併せて学習させることが大切である。「開会式に臨む」は「臨場」「臨席」などと関連させ、同訓異字の書き分けは、熟語にして考えたり、文中で考えたりしながら、適宜指導していく必要がある。また、日常の様々な機会を捉えて、漢和辞典などを活用し、漢字を用いた語彙を広げていくことも大切である。

[中学2年生 大問4の5]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率50.0に対して、正答率は29.6であり、20.4ポイント下回った。文における付属語の働きが理解できていないことが課題であることが考えられる。
○ 指導法改善の手立て

「助詞」は単語と単語との関係を示したり、意味を添えたりする働きをもつ品詞である。助詞を使うことによって、言語生活の上でお互いの伝えたい微妙なニュアンスを、相手によりよく伝えることが出来ることに気付かせるよう指導する。また、日常の言語生活を具体的に取り上げ、助詞や助動詞が、文脈の中でどのような働きをしているかに注意させ、話すこと・聞くこと、書くこと及び読むことに役立たせるようにすることも大切である。

   
これからの指導に向けて
 

本調査で明らかになったことは、「書くこと」について、平成22年度は、改善が見られたものの、平成23年度になり、また落ち込むという結果になった。以下の点を意識しながら改善を図っていくことが大切である。

(ア) 「話すこと聞くこと」

話の内容を聞き取る指導は充実してきたので、これに加えて、話し手の意図を考えながら聞くことにも配慮して指導する。更に授業では、聞き取ったことを基に自分の考えをもち、根拠を明らかにして話す活動に取り組ませることにより、話す力の向上にもつなげることができる。また、話し方や聞き方、話し合い方などの指導も必要である。

(イ) 「書くこと」

平成23年度佐賀県学習状況調査(中学校国語)において、一番課題となった領域であり、力を入れて指導すべき領域である。

指導に当たっては、日常生活や社会生活の中から課題を集め、多様な方法で材料を集めながら自分の考えをまとめるような機会を設けるようにする。集めた材料を分類するなどして整理するとともに、段落の役割を考えて文章を書く活動を取り入れる。初めは短い文章から取り組み、徐々に文量を多くするように心がける。事実や事柄、意見や心情が相手に効果的に伝わるようにするためには、分かりやすい説明や具体例を加えたり、表現しようとする内容に最もふさわしい語句を選んで描写を工夫したりすることが大切である。また、文の構成や描写を工夫するだけでなく、書いた文章を読み返し、より分かりやすい文章にするように心がける習慣も身に付けさせなければならない。最後に書いた文章はお互いに交流することを通して、意見や助言を交換し、次の表現の参考にさせるように指導することが必要である。

(ウ) 「読むこと」

説明的な文章の解釈については、文章の中心的な部分と付加的な部分と意見などを読み分け、要約したり要旨を捉えたりすることが大切である。また、文学的な文章の解釈については、描写の効果や登場人物の言動の意味などを考えて読み取り、読み取ったことを基に、自分の考えをもたせることが大切である。様々な種類の文章を読むためには、文章だけでなく、図表などを読み取る力も問われてくる。文章と図表などとの関連を考えながら、説明や記録の文章を読む力を身に付けさせなければならない。また、文章の内容だけでなく、文章の構成や展開、表現の仕方など、文章の形式についても自分の考えをもたせる必要がある。

(エ) 「言語事項」

漢字の読み書きについては、日常的にあらゆる機会を捉えて地道に行うことが大切である。新出漢字だけでなく、既習漢字についても、音訓、熟語の基本を押さえた後は、文脈に即して漢字を使うことができるかどうかを確認することが大切である。語句に関する知識についても、覚えた後は、使う機会を増やして定着を図るようにする。日々の漢字の練習も、効果的な練習をさせるようにしたい。国語のノートのみならず、他教科のノートや学活ノートなどでも、習った漢字を使うように言葉がけをしていくなど、工夫が必要である。

   
授業実践に参考となるリンク
   
 
   
 

最終更新日: 2011-10-07