これからの算数科学習指導について提案します!

これからの授業に役立つ授業プラン

この授業プランについて  

改訂された学習指導要領では、算数的活動のより一層の充実と、基礎的・基本的な知識・技能を活用することを通して思考力・判断力・表現力を育成することが求められています。また、その手立てとして、算数の知識を基に発展的・応用的に考える活動や考えたことを表現したり、説明したりする活動等が示されています。

そこで、本研究では、知識・技能を活用することを通して、数学的な思考力・判断力・表現力を育むための算数的活動を取り入れた授業の実践例を提案することとしました。
 
[ 授業提案3 ]

単元名   拡大図と縮図「 形が同じで大きさがちがう図形を調べよう 」 (東京書籍 小学校6年上)                                                                                                    総時間数 8時間

拡大図と縮図の単元では、問題解決的な学習の中で、主に表現する活動や説明する活動を通して、拡大図や縮図のかき方などを児童に考えさせていきます。また、学び合いの学習過程においては、児童が拡大図や縮図のかき方など友達に自分の考えを説明する活動を取り入れながら、数学的な思考力・判断力・表現力の育成を目指しています。
1 単元の目標
拡大図や縮図の意味や性質について理解するとともに、拡大図や縮図を作図したり、拡大図や縮図を活用して測定しにくい長さを計算で求める方法を考えたりする。
 
2 単元の評価規準
(1)  拡大図や縮図を用いることのよさに気付き、拡大図や縮図をかいたり、測定などに用いたりしようとしている。
【算数への関心・意欲・態度】
(2)  合同の意味や比の考えを基に、拡大図や縮図の意味や性質、作図の仕方について考えている。
【数学的な考え方】
(3)  対応する辺の長さや角の大きさを求めたり、拡大図や縮図をかいたりすることができる。
【数量や図形についての技能】
(4)  拡大図や縮図の意味や性質を理解している。
【数量や図形についての知識・理解】
3 単元とその指導について
(1) 教材観
  本単元では、形が同じで大きさがちがう図形について調べたり、作図をしたりする活動を通して、対応する辺の長さの比がすべて等しく、対応する角の大きさもそれぞれ等しいという拡大図や縮図の意味や性質を理解させることをねらいとしています。さらに、地図など日常生活のいろいろな場面で拡大図や縮図が活用されていることを知り、進んで生活に生かそうとする態度を育てることも大切なねらいです。

本単元は、中学校数学における相似の理解の基礎となるものであります。

(2) 指導観

指導に当たっては、これまでに学習してきた「倍」や「割合」、「比と比の値」と関連付けて行っていきます。

まず、単元の導入では、辺の長さや角の大きさを実際に測定する活動を通して、拡大図や縮図はもとの図に対して、対応する角の大きさがそれぞれ等しいことと、辺の長さの比が等しいことを明らかにさせます。そして、方眼の図を用いて、拡大図や縮図を弁別(区別や識別と同義に用いられる用語)したり作図をしたりする活動に取り組ませて、拡大や縮小の意味について理解を深めさせます。

そして、拡大図と縮図の作図においては、「合同な図形」で学習した三角形をかくときの3つの決定条件を想起させながら、辺の長さの比や角の大きさを用いた三角形の作図と、1つの点を中心とした三角形や四角形の作図に取り組ませます。ここでは、拡大図や縮図の性質が活用されていることや作図のこつなどを見付けていく過程を大切にして、作図についての技能を高めていきます。

次に、縮図の利用では、縮図と縮図上の長さを基に、実際の長さが計算で求められることを友達同士で繰り返し説明させます。このようにして、「縮尺」の意味とその表し方を理解させます。また、学校の体育館の天井までの高さを縮図をかいて求める活動を通して、簡単な測量の仕方を理解させます。そして、実際には測定しにくい建物の高さや川幅なども、単元を通して学習した拡大図や縮図の性質や縮図のかき方、縮尺の表し方を活用すれば求めることができることに気付かせたいと思います。このような学習を通して、縮図の考え方や縮尺が日常生活のいろいろな場面で活用されていることに着目させ、進んで生活に生かそうとする態度を育てていきたいと思います。

(3) 算数的活動について
探究する活動 縦横を同じ比で拡大した図が、なぜ同じ形に見えるのかを図形の構成要素に着目して、定規や分度器を用いて調べる。
方眼の図を用いて、拡大図や縮図を弁別する。
表現する活動 「合同な図形」で学習した三角形をかくときの3つの決定条件を想起しながら、辺の長さの比や角の大きさを用いて三角形を作図したり、1つの点を中心として三角形や四角形を作図したりする。
説明する活動 合同な三角形のかき方を基にして、拡大図や縮図の作図の仕方を友達に説明する。
応用する活動 実際には測定しにくい長さは、縮図をかいて求めることができることに気付き、学校の体育館の天井までの高さを縮図をかいて求める。
4 単元計画(全8時間)
小単元
学習のめあて
時数

中心となる学習活動

(位置付けた主な算数的活動)

評価規準
◎:全員の評価の機会とする観点
○:補完のための評価の観点
拡大図と縮図

形が同じで大きさが違う図形には、どんなきまりがあるか調べよう。

《1/8の展開》

1

8
・形が同じ図形のきまりを考える。
・きまりについて話し合う。
・拡大図、縮図の用語を知る。
(探究的な活動)
(説明する活動)
方眼や定規、分度器を使って、形が同じで大きさが違う図形のきまりを見付けようとしている。【関心・意欲・態度】
対応する辺の長さや角の大きさに着目して、拡大図や縮図の性質を考えている。 【数学的な考え方】

拡大図と縮図をさがす方法を考えよう。

《2/8の展開》
2

8
拡大図や縮図の性質を基に、拡大図や縮図の弁別をする。
弁別した理由を説明させ、拡大図や縮図に対する理解を深める。

(探究的な活動)
(説明する活動)
拡大図や縮図の性質を基に、方眼を利用して拡大図や縮図の弁別をすることができる。【技能】

方眼のます目を使って、拡大図や縮図をかく方法を考えよう。

《3/8の展開》

3

8
拡大図や縮図の性質を基に、拡大図や縮図をかく。
拡大図や縮図の性質を基にしてかき方を説明することで、拡大図や縮図に対する理解を深める。

(表現する活動)
(説明する活動)
◎辺の長さや角の大きさに着目して、拡大図や縮図の意味を理解している。【知識・理解】
拡大図や縮図の性質を基に、拡大図や縮図をかいたり、対応する辺の長さや角の大きさを求めたりすることができる。【技能】

三角形の拡大図と縮図のかき方を考えよう。

4

8
合同な三角形のかき方を基に、拡大図や縮図のかき方を考える。
(表現する活動)
(説明する活動)
合同な三角形のかき方を基に、辺の長さや角の大きさに着目して、三角形の拡大図のかき方を考えている。【数学的な考え方】
◎三角形の拡大図のかき方を基に、必要な辺の長さや角の大きさに着目して、縮図をかくことができる。【技能】

1つの点を中心にした拡大図のかき方を考えよう。
《5/8の展開》

5

8
1つの点を中心にした拡大図のかき方を考える
拡大図の作図に取り組む。
(表現する活動)
(説明する活動)
コンパスや定規、分度器を用いて、1つの点を中心にした三角形の拡大図のかき方を考えている。【数学的な考え方】

1つの点を中心にした五角形の拡大図のかき方を考えよう。

《6/8の展開》
6

8
1つの点を中心にした多角形の拡大図のかき方を考える
・三角形の拡大図のかき方を基に作図に取り組む。
(表現する活動)
(説明する活動)
○コンパスや定規を用いて、1つの点を中心にした多角形の拡大図をかくことができる。【技能】
縮図の利用

縮図を使って実際の長さを求めよう。

《7/8の展開》
7

8
縮尺の表し方を知る。
縮図を使って、実際の長さを求める。
(応用する活動)
(説明する活動)
縮尺の意味とその表し方を理解している。【知識・理解】
縮図(地図)上の情報を基に、実際の長さを求めることができる。【技能】

実際には測定しにくい長さを、縮図をかいて求める方法を考えよう。

《8/8の展開》
8

8
縮図をかいて、実際には測定しにくい長さを求める。
(応用する活動)
(説明する活動)
実際には測定しにくい長さを求めるには、縮図を用いればよいことに気付き、活用しようとしている。
【関心・意欲・態度】
実際には測定しにくい長さを、縮図をかいて計算で求めることができる。【技能】
〈実践を終えて〉
◇ 算数的活動について

作図の学習では、拡大図や縮図をかくだけでなく、そのかき方の手順や拡大図や縮図の性質を図や式、言葉を用いてかかせる活動を取り入れることで、合同な三角形の作図と同様に3つの条件が必要であることに気付かせることができました。
◆ 学習評価の進め方について
 
第3時から第6時はいずれも作図を扱うが、最も基本的な作図の仕方について学習する第4時を【技能】の全員の評価の機会とし、第3時と第6時を補完のための評価の機会とすることで、評価を指導に生かし、作図の技能を徐々に高めていくことができました。
 
第5時に学習する1つの点を中心にした拡大図の作図は、第4時で学習した考え方を活用するため、【数学的な考え方】の全員の評価の機会とし、3通りの作図の仕方を想起させながら多様な方法で作図に取り組むことができるようにしました。このように単元を通した評価を意識したことで、各児童の状況が、指導を進めるにつれて変化していく様子をみることができました。
◆ ICT利活用について
 
第4時では、「見通す」段階において、電子黒板を用いて三角形の3つの角が切り離されて動く様子を見せることで、拡大図の性質を確認しながら2倍の拡大図を視覚的にイメージさせ、「自力解決」につなげることができました。
 
「学び合い」の段階において、書画カメラを用いて児童のノートを拡大提示することで、実際にかいた図を指しながら作図の手順を分かりやすく説明させたり、考えの根拠を示させたりすることができました。
 

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