話合い活動のよさを生かした学級活動内容(2)の授業を提案します。

2 研究の実際

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(5)  授業実践【学級活動内容(2)】

  本研究が提案する授業モデルを基に中学校で行った実践例を示します。
【中学校第1学年】学級活動内容(2)における授業実践…11月題材

題材

男女相互の協力

  エ 男女相互の理解と協力
 
  指導案
段階 活 動 過 程



指導
○ 題材決定
1 教師で今回の題材名、柱などを考える。
○ 男女の協力に関するアンケート実施
1 男女協力についてのアンケートを実施し、学級の実態を調査する。
【男女の協力に関するアンケートの結果】
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○ ペア活動
1 次の4つのテーマについて互いの考えを聞き合わせる。
@ アンケートの集計結果でどんなことが気になりましたか。また、納得することがありましたか。
A 男子、女子がそれぞれ得意なこと、得意な分野はどんなことだと思いますか。
B 男女の協力が必要な場面はどんなときですか。
C 男女が協力するためにはどんなことに気をつけるとよいと思いますか。
 題材に対する自分の意見を学級会ノートに記入させる。
○ 計画委員会(司会団、教師などで編成されるもの)
1 ペア活動で出た意見を基に実態を分析させ、話合いの流れを把握させる。
提案理由を検討させるとともに、本時の活動計画を作成させる。




題 材 男女協力するクラスにしよう。
提案理由  月曜日に書いてもらったアンケートの集計結果を見てください。「このクラスの男女は仲がよいと思うか。」という質問に対する答えはこうなっていました。90%以上の人が「仲がよいと思う。」と答えていました。ただ仲がよいというだけではなく、これからの学校生活や文化発表会などの行事で、もっと男女それぞれのよさを生かし協力できるクラスにするにはどうしたらよいかを話し合ったらよいと考えて、この題材を提案しました。
話合いのめあて ・人の意見をよく聞き、自分の意見を発表しよう。
話合いの流れ
1 はじめの言葉
2 司会グループの紹介
3 題材と提案理由、話合いのめあての確かめ
   

【議長のあいさつ】
【提案理由の説明】
4 話合い
  柱1 「男子、女子がそれぞれ得意なこと、得意な分野はどんなことだと思いますか。」
先生の話
 題材とめあてについては学級会ノートにきちんと記入していますか。議長団の人には言いましたが、前回の話合いでは15〜16人の発表だったと思います。今日の話し合いでも、できるだけみなさんからたくさんの意見を出してもらったらと思っています。
まず、みなさん後ろの掲示板を見てください。

【学級旗】
 体育大会のときに使った「気合い」旗があります。体育大会では、この学級はみんなで協力してよい結果を残すことができました。そして、みなさんにこの話し合いのためのアンケートを採りました。「男女仲がよいか。」という質問に対して前の黒板のようにほとんどの人が「そう思う」、「だいたいそう思う」と答えています。そう答えた理由について見てみると、「協力し合えるから」、「会話がよくできている」「協力して集団行動ができていた」などがありました。

【学級旗を注目する生徒】
 逆の意見で、「全く思わない」、「あまり思わない。」という人は「男だけでしゃべっているから」というのもありました。
  柱1では男子と女子がそれぞれの得意なこと得意な分野についてどんどん意見を発表してもらいたいと思います。最後に、 議長さんと副議長さんにお願いです。発表された意見に対して「〜というとどういうことですか」と聞き返した方がよいものはきちんと聞いてください。お願いします。

【柱1の教師の話】
 
主な生徒の意見
・男子は体育だと思います。女子は家庭科だと思います。
・(議長)それはどんなスポーツですか。
・いろいろなスポーツです。
・(黒板)それじゃ分からないよ。
・同じで、男子は体育だと思います。女子は家庭科だと思います。
・(議長)なんでそう思うのですか。
・球技だと思います。
・(教師)もう少し意見が幅広くなるようにお願いします。
・男子は争うことが得意で、女子は手先が器用で頭を使うことが得意です。
・男子が体育で、女子が英語と、音楽です。
・(質問)なぜ、女子が音楽が得意だと思うのですか。
・声がきれいだからです。
・(議長)女子が音楽が得意という意見が出てきて、吹奏楽部の君としてはどうですか。
・男子も音楽が得意な人がいると思います。
・声楽や器楽で、男女のそれぞれよさがあると思います。
・部活で、サッカー部は男子が多いです。吹奏楽部は女子ばっかりだと思います。
・(議長)そういえばあなたもサッカー部でしたよね。○○さんはどう思いますか。(サッカーをしている女子生徒)
・男子だけではなく、私もサッカーをやっています。
・(教師)学校の教科にかたよっているような気がするんですが。他に別の観点から意見はないですか。
・男子は道路工事などの力仕事が得意だと思います。

【教師からの助言】

【意見を発表する】

【板書は二人で協力して】
   
  柱2 「男女の協力が必要な場面はどんなときですか。」
先生の話
 議長さんはさっきの柱1の終わり方はちょっと唐突でしたね。「時間ですので、柱1はこの辺で終わりにします。」といってから次に進めてください。
  さて、アンケートについてです。「体育大会のときに男女協力できていましたか。」ではほとんどの人、90%の人が「できている。」「だいたいできている。」に○を付けていました。その理由を見ると、「応援などをしていたから」「活動中に相手のことを嫌がっている人がいなかったかから」がありました。

【柱2の教師の話】
 逆に、「できていなかった」という人の意見として、「学年の種目で男だけ練習して女だけ練習しなかった。」などがありました。柱2では体育大会だけじゃなく、これから先の学校生活やその他の場面で男女が協力したほうが良いと考える場面について、自分が考えたものを意見として発表してください。  
 
主な生徒の意見
・話合い活動のときだと思います。
・(議長)話合い活動で、どうして男女の協力が必要なのですか。
・男子は男子、女子は女子で意見が固まってしまうからです。
・(教師)そういえば以前に取り組んだ「でこぼこ橋渡し」で男子と女子のグループが別々に意見を出していたというのがありましたね。 男女が話し合った方がよいっていうことだね。
・文化発表会だと思います。
・体育大会のバトン渡しのときだと思います。
・(教師)行事だけじゃなくてもいいよ 。
・掃除のときには男女協力した方がよいと思います。
・(教師)掃除については少し聞きたいですね。
・そうじのことで意見を言うんですか。僕は班活動のときも協力すると思います。
・(議長)何のときの班活動ですか。
・話合いのときも班で話してまとめたりするときです。
・班活動で作業をするときです。
・(議長)掃除について何かありませんか。
・(教師)話の題材は男女の協力にあるわけですね。そこがうまくいったりいっていなかったりすることが普段の生活の中にあれば意見として発表するといいと思うんですけど。
・掃除では普段話しながらやっている。
・男女でしゃべらずに協力して掃除をした方がいいと思います。
・子育てだと思います。
・(議長)子育てでどういうことを男の人がして、どういうことを女の人がするのですか?
・女子が家事をしているときに、男子が子どもの面倒を見ているとかだと思います。

【意見を発表する】

【議長から指名されて迷う】

【意見を発表する】

  柱3 「男女が協力するために、どんなことに気をつけるとよいと思いますか。」
先生の話
 子育てという意見がでたところで、なかなかよい雰囲気で柱2の話合いをしていたと思います。 次の柱3と関連するアンケートの結果について話します。「男女の理解と協力は必要かどうか。」では90%の人は「そう思う。」「だいたい思う。」と答えています。しかし、その内訳は男子と女子では若干違います。 色を見るとわかりますが、男は「だいたいそう思う。」が69%で一番多く、女子は「とても思う。」が70%で一番多くなっています。ここのあたりに男女の間で感じ方の違いがあるなあと思っています。

【柱3の教師の話】
 この結果はこの学級のアンケートの結果ですから、そういう違いが男女の間にあることを考えながら柱2で出た意見を見返してほしいと思います。そして、もっともっとうまく協力していくためには、自分はどんな場面でどういうことに気を付けなければいけないかということを考えて、意見を発表してもらいたいと思います。  
 

【意見を発表する】

【話合いの様子】

【意見を発表する】
主な生徒の意見
・男女がお互いに差別をしないことだと思います。
・男女でお互いの意見がバラバラのときに誰かがまとめる。
・相手に対して暴力をふるわないことだと思います。
・男女差別をなくすとよいと思います。
・相手に対して文句を言わないことだと思います。
・色々な場面で一人一人がきちんと自分の意見をもつことだと思います。
・女子と男子が一緒にいるときとかに周囲が冷やかさないことだと思います。
・男女関係なく誰とでも平等に話すことだと思います。
・自分が得意じゃないことでも積極的にするとよいと思います。

【学級会ノートの例】

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5 話合いの確認
 柱1〜柱3で出た主な意見の確認をノート書記が発表します。


 
6 話合いの気付き・自分のめあて
 男女それぞれのよさを生かし協力できるクラスにするために、自分が取り組む活動をめあてに書きましょう。
 
7 グッジョブ賞の発表
  人の意見をよく聞き、話合いの視点を切り替えたり広げたりした意見を発表した生徒を司会団が選び、表彰します。

【表彰の様子】


【賞状の例】

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8 先生の話
   今日の話し合いを通して、これからの学校生活における男女が協力できるような目標を一人一人がもてるようになればいいなと思ってこの話合いをしました。題材設定の理由の中に、ただ仲がよいというだけではなく、もっと男女それぞれのよさを生かし協力できるクラスになれるようにというのがありました。仲がよいというだけではないというところがより高い目標だと思います。でも、これは何も難しいことではなくて、みなさんが今日決めた、男女がそれぞれのよさを生かし協力できるクラスになるためにじぶんができること、自分のめあてがきちんとなされるなら、達成できる目標だと先生は思います。自分のめあてを大切にして、きちんと実践し、みんなが男女それぞれのよさを生かした学級になってきたという実感をもちながら文化発表会に臨めれば素晴らしいと思います。
9 終わりの言葉



指導
○めあての確認

【振り返りカードの例】

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朝の会で自分の実践するめあてを確認させる。めあてを実践する場面を意識させる。自分の実践を振り返らせ、めあてをよりよいものに変更させることも考えられる。
○実践活動
めあてを意識させながら生活させる。また、他の生徒の実践の様子にも注意を向けさせる。
○振り返り活動
帰りの会でめあてに対する自分の実践を振り返らせ、振り返りカードに向上した点や課題について記述させる。
 生徒は話合い活動を経て自分のめあてを設定し、実践に取り組んだ後、最後に振り返りを行いました。振り返りカードの記録や担任の生活記録等で、次のような生徒の態度や意識の変容が見られました。
  生徒の様子から見る意識の変化
  ・話合い活動や実践の期間を体育大会から文化発表会の間になるようにしておいたので、文化発表会の準備期間に男女で協力しなければならない場面が多くあった。文化発表会や合唱コンクールの練習において、自分のめあてに前向きに取り組む生徒が多く見られた。
・体育大会のときに、男女の協力ができていなかった場面があったという反省もあり、男女の協力について自分がたてためあてを意識して活動できた生徒が増えた。
  ○教師から見る、話合い活動を取り入れた指導のよさ
  ・学級集団の中で、発表した意見を聞いてもらったり受け入れてもらったりする周囲の反応を学級会で直に感じることで学級への所属感をもてる。同時に、自分の意見として言ったことやめあてを自己決定したことに対して責任感を感じ取ることができる。
・話合い活動後に決めためあてを毎日の生活の中できちんと意識させることを通して、日常の活動を定まった視点から振り返らせることができる。
・主観的になりがちな個人の目標が話合いを通して決めることで目標に客観性をもたせることができる。
・「話合い活動を通した実践活動」そのものが体験的な学習として成立すると思う。

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