これからの算数科学習指導について提案します!

3 研究のまとめ

(1) 研究の成果   (※関連する主な授業実践やプリントのページへリンクを設定しています。)

ア 算数的活動を意図的・計画的に位置付けた授業モデルと授業プランの作成
算数的活動を意図的・計画的に位置付けた授業モデルの提案
  算数的活動の充実を図る中で、基礎的・基本的な知識・技能を活用する学習の場として「既習事項を活用する場」や「日常生活に活用する場」を位置付けた授業モデル(学習過程)を提案し、4年生での授業実践を通して、その有効性についての検証を進めました。 児童に身に付けた知識・技能を活用することを意識させるための算数的活動の意図的・計画的な位置付け方の例を提案することができました。
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算数的活動を効果的に位置付けた授業プランの作成
  数学的な思考力・判断力・表現力を育むために、これまで実践されていた問題解決的な学習過程の中に、「算数の知識を基に発展的・応用的に考えたりする活動」や「自分の考えを表現する活動」や「分かりやすく説明する活動」を効果的に位置付けた授業プランを作成しました。
 下の4つの授業プランを作成し、指導案(PDF)とその単元の全時間分の略案(Web)を提案することができました。
 ・ 小数「はしたの大きさの表し方を考えよう」(東京書籍4年上)
 ・ 面積「広さを調べよう」(啓林館4年上)
 ・ 計算の見つもり「計算の見つもり」(啓林館4年下)   【4月公開予定】
 ・ 垂直・平行と四角形「四角形を作ろう」(東京書籍4年下)  【4月公開予定】
 
 
授業プランの検証を通して明らかになった算数的活動を行う上での「指導のポイント」
  検証授業を通して、数学的な思考力・判断力・表現力を育むために、「算数の知識をもとに発展的・応用的に考えたりする活動」や「自分の考えを表現する活動」や「分かりやすく説明する活動」を中心に取り入れる際の「指導のポイント」を明らかにすることができました。

「指導のポイント」の主なものは、以下に示すとおりです。
(ア) 学習し身に付けたものと関連付けて問題を解かせること
    身に付けた知識・技能を場面に応じて使いながら新しい問題を解決しようとする過程では、以下のように考えさせることが大切です。

  ・これまでの学習で出てきた似たような問題に照らし合わせて考えさせること
  ・これまでの学習で使ったことがある図や式を用いて考えさせること
  ・自分の気付きや経験などと重ねて考えさせること

 自分の知識や経験をもとにして、活用するということを意識させながら、自ら考え、表現することのよさを繰り返し体験させていくことは、算数を生活や学習に活用しようとする意欲を高めることにもつながります。
(イ) 筋道を立てて考えたことを振り返って、整理したり表現したりする場を設定すること
    解決の見通しをもち筋道を立てて考え、言葉や数、式、図、表、グラフなどを用いて数学的に表現することは、考えをより明確にしたり、考えを整理しまとめたりする上で大変有効な手立てとなります。
同様に、考えを相手に的確に説明しようとすることは、考えを振り返って整理したり、よりよい表現にしようとすることにつながります。
見通しをもち、筋道を立てて考えたことを、表現させたり説明させたりするためには、以下のような点が大切です。

   ・「考えたことを順番にかこう」「図を使って考えの理由を説明しよう」というように、問題解決の過程や考えの根拠
    をかかせること
   ・ペア学習などを通して、「友達の考えを読み取る」「自分の考えや友達の考えを話す」といった学習活動を取り入
    れること

 自他の考えを表現したり説明したりすることを通して、学習についての理解を深めることができるという経験をすることは、自分の考えをよりよい表現にしようとする態度を育てることにもつながります。
(ウ) 考えたことを発展させたり応用させたりする場を設定すること
    問題を解決したら終わりではなく、考えを伝え合う学習の中で、自分が新しく得た考え方について吟味したり、他の考え方はないか検討したりするなど、新たな活動へと発展させるためには、以下のような点が大切です。

 ・他の場合だったらどうか、どの場合もいえるのかなどと条件を変えて考えさせること
 ・言葉や数、式、図、表、グラフなど他の表現に表したらどうなるかなどと方法を変えて考えさせること
 ・解決した問題からの新しい問題づくりや生活の場面を意識した問題について考えさせること

 このような場の設定を通して自分の考えを深めていくことで、学習した内容を理解することだけではなく、学んだことを適切に活用できるようになることへとつなげていくことができます。
イ 知識・技能の確実な習得と思考力・判断力・表現力の育成を図る学習プリントの作成
  知識・技能の確実な習得と数学的な思考力・判断力・表現力を育む学習プリントを開発することができました。また、解答編には児童が自己採点をしたり、間違えた部分を確認したりできるように詳細な説明を加えました。このことにより、教師が授業の確認に使う以外にも、家庭学習や5・6年生の算数学習における復習に利用することができるようになりました。
(ア) 基礎的・基本的な知識・技能の習得のための学習プリント
 基礎的・基本的な知識・技能の習得を図るために、「基本問題プリント」を作成しました。復習として利用することで、学習した内容が十分に理解できているかどうかを教師や児童が確認するために役に立ちます。

  プリントの解答編には、解答のポイントを作成しています。児童が自分で採点し、自分で大事なことを確認し、誤りがあれば修正したり教科書やノートで振り返りをしたりすることで、基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得へとつなげることができます。

<基本問題>
(イ) 数学的な思考力・判断力・表現力の育成のための学習プリント
  「筋道を立てて考えたことを整理して説明する問題」、「表やグラフなど複数の情報を関連付けて考える問題」など、単元の学習で身に付けたことを使って問題を解決する力の育成を図るために、「数学的な思考力・判断力・表現力を育む問題プリント」を作成しました。

  解答編では、問題のとらえ方や解答を記述をする際のポイントを示しています。自分の考えを数学的に表現したり、解決の過程を説明したりする方法などについて理解することができます。

<思考力・判断力・表現力をはぐくむ問題>
 
 

(2) 研究2年次の方向性

  問題解決的な学習の中で、ねらいを明確にして児童一人一人が課題意識をもった算数的活動を取り入れて、一人一人がしっかりと考え、表現することがこれからも大切なことです。そして、表現させて終わりではなく、表現したことで、「よく分かった」「考えを深めることができた」という経験を、以降の学習に取り組む際に児童が言葉などで振り返ることができるようにすることが課題です。
今後は、算数のアイデアや解決の過程をノート等に残すことができるような手立てを充実させること、筋道を立てて考えたことを振り返って説明させる際に、何をどのように説明すればよいかを具体的に示すことなどに気を付けながら、思考力・判断力・表現力の育成を図る必要があると思います。
  既習事項を活用して課題に取り組み、その解決方法や判断の根拠などを記述させることは、思考力・判断力・表現力の育成を図る上で必要です。学習プリントでは、解決の方法、判断の理由などの記述の仕方を児童に理解させることで、知識・技能の確実な習得につなげることが大切です。そのために、児童の実態を踏まえた上で、意図的・計画的に記述させていくことが今後の課題です。
例えば、

  ・ 図形の性質や定義、計算の性質から見いだせる傾向や特徴の記述
  ・ 「〜だから〜だろう」と考えたことや、判断や考えの正しさを説明したことの記述
などです。

  論理的に考えたことを整理して記述させたり、比較、分類、関連付けして考えたことを記述させるなど、何を記述させたいのかを明確にした学習プリントを開発する必要があると思います。
  本研究では、第4学年を対象にして実践を通した検証を進めてきました。今後はこれまでの研究の成果を生かして、他学年においても算数的活動を意図的・計画的に取り入れた授業の実践と検証を進めていく必要があると思います。そこで、基礎的・基本的な知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力の育成を目指し、平成21年度に第5学年、本年度に第4学年を対象にして検証を進めてきたことを踏まえ、これらの学習内容との系統性を図りながら、第6学年を中心として、第3学年までを視野に入れた研究を進めていくことが考えられます。
 
 

4 参考文献・資料

佐賀県教育委員会 『佐賀県教育の基本方針』平成22年4月
文部科学省 『小学校学習指導要領解説 算数編』平成20年8月
文部科学省 『言語活動の充実に関する指導事例集【小学校版】』平成23年1月
 
 

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最終更新日:2011-03-30