基礎的・基本的な知識・技能の習得と数学的な思考力・判断力・表現力の育成を目指します!

 2学期の授業に役立つ授業プラン
 
この授業プランについて

 

 小学校5年生の単元「面積の求め方を考えよう」(啓林館)の授業プランを提案します。
 本単元のねらいは、以下の2点です。
 
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直線に囲まれた基本的な図形の面積を、4年生で学習した正方形や長方形の面積の求め方に立ち返って考える。
 
A
新しい公式を作り出したり、それを用いて面積を求めたりする。

 本単元の指導を通して、以下のようなことが期待できます。
 
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面積の求め方を図や式、言葉で表現し、相手を意識して自分の考えを分かりやすく説明する活動を通して、筋道を立てて考える力を高めることができる。
 
A
既習内容や生活経験を基にして創造的、発展的に面積の求め方を考えたり、公式を導き出したりすることを実感できる教材であるので、図形についての感覚を豊かにし、数学的な考え方を大事に育てることができる。

 このような授業を三角形、平行四辺形、台形、ひし形の面積を求め方の学習で繰り返し行い、面積等の学習ではこのような考え方が大切であることに気付かせるとともに、面積の公式を導き出す時に式の意味を考えたり、計算のきまりのよさを実感させたりすることができます。このことが、数学的な思考力、判断力、表現力をはぐくむことにつながると考えています。
 
  単元名 「面積の求め方を考えよう」 (啓林館 小学校5年下)       総時間数12時間
 
  
  1 目標
  (1) 既習の面積公式を基にして、三角形、平行四辺形、ひし形及び台形の面積を求める公式を進んで見いだそうとする。
【算数への関心・意欲・態度】
  (2) 既習の面積公式を基にして、三角形、平行四辺形、ひし形及び台形の面積を工夫して求めたり、公式をつくったりすることができる。
【数学的な考え方】
  (3) 三角形、平行四辺形、ひし形及び台形の面積を求める公式を用いて、面積を求めることができる。
【数量や図形についての表現・処理】
  (4) 三角形、平行四辺形、ひし形及び台形の面積の求め方を理解する。
【数量や図形についての知識・理解】
     
     
  2 単元とその指導について
  (1) 教材観
     面積に関する学習としては、第4学年では、1辺が1cmの正方形がいくつ分あるかということで広さを理解し、cu・uなどの単位を用いて正方形や長方形の面積を求め、公式を導いてきました。そして、色板並べ活動や複合図形の求積を通して、単位の保存性をとらえる経験をしてきています。さらに、第5学年の1学期に平行四辺形、台形、ひし形などの基本的な図形について学習し、作図できるようになっていると考えられます。
 本単元では、これらの学習の発展として、三角形・平行四辺形などの基本的な図形の面積の求め方を考え、面積の概念の理解を深めることを主なねらいとしています。三角形や平行四辺形などの面積は、既習の図形に立ち返って面積を求めることができます。ここでの学習は、単に面積を求めるための公式を覚え、それを当てはめることだけがねらいではありません。図形を切ったり、移したり、必要な部分の長さを測ったりする作業的な活動を多く取り入れ、長方形の面積の求め方など、今まで学習した方法に立ち返らせ、面積を求める公式を導き出す過程を大切にし、公式を自ら導き出すことで豊かな図形感覚の育成につなげたいと思います。
  (2) 指導観
     直線で囲まれた基本的な図形の面積について、長方形や正方形の面積を求める方法を基にしながら、具体物を用いて必要な部分の長さを測定し、計算によって求められることを実感できる学習を行います。そして、見通しの段階で、前時までに学習した内容を掲示物等で振り返ったり、課題解決の上で何が使えそうかを確認したりしながら、既習の図形の学習に立ち返らせることを大事にしていきたいと考えています。
  全体での話し合いの前に、ペア学習やグループ学習を取り入れ、近くの友達と意見交換を行う場を設けることで、小集団で意見を交わすことにより、自分の考えを振り返り、情報の共有化を図ることができると考えます。また、自分の考えを振り返ることや友達との共通点、相違点に気付かせることで、全体の話し合いに対する意欲を高めることをねらっています。
  全体の話し合いでは、いくつかの児童の考えを提示し、「妥当性」→「関連性」→「有効性」を検討して、よりよい解決方法を選んだり、作ったりする過程を重視していきます。また、話し合いの中で、それぞれの式や数値に着目して、「なぜそうなるのだろうか」といった根拠を明らかにしながら学習を進めさせていきます。
  これらの小集団学習や全体での話し合い活動を取り入れることで、自分の考えをまとめながら表現したり、相手を意識して分かりやすく説明したりする活動へと高めさせ、数量や図形にかかわる意味や概念等を理解させるとともに、数学的な思考力・判断力・表現力をはぐくむ学習としていきたいと考えています。

  (3) 算数的活動について
     本単元においては、「面積の求め方を考え、説明する活動」を通して、数学的な思考力や表現力を高めることをねらいとしています。そのためにも、三角形や平行四辺形などの面積の求め方を、具体物を用いたり、図や式、言葉を用いたりして考える作業的な活動を多く経験させます。そして、自分の考えを説明する活動だけでなく、学び合いを通して分かったことや気付いたことを相互に説明し合う活動を取り入れます。相手意識をもって伝える経験を多く積ませることで、思考の深まりと算数的な表現力の高まりが見られるのではないかと考えます。
 また、自分たちが互いに協力して作り上げた面積の求め方を繰り返し活用することで、その方法の意味の理解を深め、いつでも使えるように高めさせていきたいと考えています。
  3 単元の関連と発展
 
  ※ この図については、新学習指導要領(平成20年3月)における学習内容を基に作成しています。
   
  4 単元計画(全12時間)
 
学習のめあて 時数 主な学習活動
(位置付けた主な算数的活動)
評価規準
直角三角形の面積の求め方を考えよう

《1/12の展開》

/
12
・長方形や正方形の面積の求め方から、直角三角形の面積の求め方を考える。
(作業的な活動)
(説明する活動)

・既習の面積公式を基にして、三角形の面積の求め方を進んで見いだそうとする。【関心・意欲・態度】
・直角三角形の面積の求め方を考え、言葉や図、式を使って書き表すことができる。
【数学的な考え方】
・直角三角形の面積を計算で求めることができる。
【表現・処理】
三角形の面積をいろいろな方法で求めよう

《2/12の展開》

/
12
・長方形や直角三角形の面積の求め方から、三角形の面積の求め方を考える。
(作業的な活動)
(表現する活動)
(説明する活動)

・三角形の面積の求め方を、言葉や図、式を使って書き表すことができる。
【数学的な考え方】
三角形の面積を簡単に求める方法を考えよう
《3/12の展開》

/
12
・三角形の面積を求める公式について考え、公式をまとめる。
(探究的な活動)
(説明する活動)

・既習内容を基にして、三角形の面積の公式を進んで考えようとする。
【関心・意欲・態度】
・三角形の面積の求め方の公式を理解し、求めることができる。
【表現・処理】
四角形の面積をくふうして求めよう

《4/12の展開》

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12
・三角形の面積の求め方を基に、四角形の面積を求める。
(応用的に考える活動)
(説明する活動)

・四角形の面積を2つの三角形に分割して考え、言葉や図、式を使って書き表すことができる。
【数学的な考え方】
・四角形を三角形に分割する考え方を用いて面積を求めることができる。
【表現・処理】
平行四辺形の面積をくふうして求めよう

《5/12の展開》

/
12
・三角形の面積の求め方や等積変形を使って、平行四辺形の面積の求め方を考える。

(作業的な活動)
(表現する活動)
(説明する活動)

・既習の面積公式を基にして、平行四辺形の面積の求め方を進んで見いだそうとする。
【関心・意欲・態度】
・三角形や長方形の面積の求め方を基にして、平行四辺形の面積の求め方を考えることができる。
【数学的な考え方】
・平行四辺形の面積の公式を理解する。
【知識・理解】
図形の中に高さが見えない三角形や平行四辺形の面積を求めよう
《6/12の展開》

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12
・教科書の付録を使って高さが外にある三角形を三角形や平行四辺形に変形させ、面積を求める公式が適用できることを理解する。
(作業的な活動)
(表現する活動)

・既習の三角形や平行四辺形に変形して、高さが外側にある三角形や平行四辺形の面積を求めることができる。
【数学的な考え方】
・高さが外側にある三角形や平行四辺形の面積について公式を適用して求めることができる。
【表現・処理】
台形の面積をくふうして求めよう

《7/12の展開》

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12
・これまでの学習を基にして、台形の面積の求め方を考える。
(振り返る活動)
(説明する活動)

・既習の面積公式を基にして、台形の面積の求め方を進んで見いだそうとする。
【関心・意欲・態度】
・既習の求積方法を活用し、分割したり結合したりして、台形の面積の求め方を考えることができる。
【数学的な考え方】
・台形の面積の公式を理解できる。
【知識・理解】
ひし形の面積をくふうして求めよう

《8/12の展開》

/
12
・これまでの学習を基にして、ひし形の面積の求め方を考える。
(表現する活動)
(説明する活動)

・既習の求積方法を活用し、分割したり結合したりして、ひし形の面積の求め方を考え、求めることができる。
【数学的な考え方】
・ひし形の面積の公式を理解できる。
【知識・理解】
「練習」問題に取り組もう
《9/12の展開》

/
12
・学習内容を振り返り、練習問題に取り組む。 ・基本的な図形の面積の求積方法を理解し、求めることができる。
【表現・処理】
高さや底辺によって三角形の面積がどのように変化するか調べよう
《10/12の展開》
10
/
12
・底辺一定で高さが変化したり、高さ一定で底辺が変化したりする場合の面積の変化の様子を調べる。
(作業的な活動)
(探究的な活動)
(表現する活動)

・三角形の高さや底辺と面積の関係を考えることができる。
【数学的な考え方】
面積の求め方を説明しよう
《11/12の展開》
11
/
12
・式の形から、いろいろな面積の求め方を読み取る。

(表現する活動)
(説明する活動)
・くさび形の面積を求め、その求め方を表すことができる。
【表現・処理】
・面積を求める式の形に着目し、式の表す意味を図形と関連付けながら読み取ることができる。
【数学的な考え方】
「たしかめ道場」の問題をすべてやりとげよう
《12/12の展開》
12
/
12
・「たしかめ道場」の問題を解く。
・学習内容を振り返って、自己評価をする。
・面積についての理解を深めることができる。
【知識・理解】
   
  5 本単元の実践に当たって
 

本単元の学習においては、作業的な活動や具体物を用いた活動、自分の考えを表現する活動、説明する活動など様々な算数的活動を取り入れることを提案しています。
 これまでの問題解決的な学習においても、作業的・体験的な活動や具体物を用いた操作活動等が実践され、基礎的な知識・技能の習得が図られてきましたが、この授業プランにおいては、学習の目標に応じていくつかの算数的活動を取り入れることを提案しています。この中で、図や言葉や式を用いて考えをまとめて表現する活動自分の考えを相手に伝えて説明する活動を多くの学習場面で取り上げています。
 それぞれの学習において、その時間の目標に応じて作業的な活動や具体物を用いた活動を取り入れたり、考えを表現する活動や説明する活動を取り入れたりすることが大事になります。
  また、多くの時間において説明する活動を取り入れています。最初は隣同士のペアであったり、机の近い者同士のグループであったりと、その形態は学級の実態に合わせて指導者が工夫されるとよいでしょう。さらに、これらの学習においては、「初めは間違ってもいいから、相手に自分の考えを伝えるようにしよう」ということや、自分で説明することが難しい児童に対しては、「友達のまねをしながら上手になっていこう」などの言葉掛けをしながら、一人一人の児童が自信をもって自分の考えを伝えることができるような経験を、たくさん積ませてほしいと思います。
  話し合い活動や説明する活動を充実させていくために、話し合いの手順の資料も参考にできるようにしていますので、御活用ください。今回の実践で紹介した説明する活動を、わずか数時間の学習だけで十分に習得させるのは難しいと考えています。しかしながら、このような活動は、これからの算数科学習において重要視され、求められているものでもあります。これから初めてこのような学習に取り組まれる場合は、この取り組み後の単元においても、引き続き、このような学習活動を経験させていくことが大切になると考えます。また、算数科の学習ばかりでなく、他教科の学習を通して実践していくことが有効であると思います。

 
参考資料: 話し合いの進め方  説明のしかた  考えるときのヒント  ノート指導資料

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最終更新日:. 2011-06-17