生徒のやる気を引き出す「国語科授業の具体策」を提案します!

 

検証授業から見えたこと -成果と課題-

生きて働く言語能力の育成を目指した授業
  本研究では、国語科の学習場面で言語活動の充実を図ることが、結果的に学習者の発達の段階に応じた「生きて働く言語能力」を育成することにつながると考え、具体的な実践例として以下の授業展開案の提案を行いました。
gazou
授業展開案 書く
展開案1  「相手や目的に応じて書こう」
展開案3  「視野を広げて書こう」
読む 展開案2  「文章の構成や論理の展開をとらえよう」
展開案4  「思考力や想像力を働かせて読もう」
 
単元の指導の実際と手立ての検証
  新学習指導要領のねらいに対応し、生徒の実態に即した授業づくりを行うために、次の4点を授業づくりの視点として考えました。この4つの視点を踏まえた授業モデルに従って、授業展開案を提案しています。
 
@ 新学習指導要領の指導事項を基にした生徒の実態把握
A 学習内容の系統性を意識した重点を置くべき指導事項の明確化と教材選択
B 言語活動の充実を図る学習活動の工夫
C 学習の見通しのもたせ方と学習の振り返らせ方の工夫
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  ここでは、その検証授業から見えた、成果と課題についてまとめます。
 
場面 具体的な手立て
手立ての検証()と指導のアイディア

アンケート

新学習指導要領の指導事項に準拠してアンケートを作成しました。 単元に位置付けた言語活動に関連付けて、身に付けさせたい知識・技能を10項目に絞って実施しています。
アンケートの質問項目に回答することで、生徒は今回の単元で身に付けるべき知識・技能を具体的にイメージすることができていました。







実際に使用したアンケート
画像 授業の前に記入させておき、学習計画を立てる時間に利用しました。生徒は自分ができていないと感じている項目を自分の学習課題としてとらえることができていました。
結果の利用法
画像 アンケートの集計結果をグラフ化して生徒に提示することで、教師は、生徒の意識の実態を把握することができます。また、生徒は、他の生徒の回答や学級の傾向を知ることができ、自分の課題をより具体的にとらえることができていました。

学習計画表

単元や授業のねらいを明確にした学習計画表を提示したり、計画の一部を自分で立てさせたりすることで、学習活動の流れを確認し、学習の見通しを理解させました。
単元を通じて、どのような目標をもって、いつどのような学習活動をするのかを示すことで、生徒は自分の課題をもって学習に臨むことができていました。具体的な活動の見通しを理解することによって、生徒の学習に対する不安感も和らいだようでした。







実際に使用した学習計画表
画像 単元の導入の1時間目、もしくは2時間目に、単元全体の学習活動を見通し、学習課題を確認する時間を取りました。その中で、単元のねらいや具体的な学習活動を学習計画表を使って提示しました。計画を提示するだけでも、学習の見通しをもつことには有効でした。
学習計画の提示法
画像 モデルとなる学習を事前に行い、その後、単元の学習に必要な活動について、個人やグループで考えさせました。計画の一部でも、自分で考えさせたり、グループで意見を交流して考えさせたりすると、生徒は何のためにどんな活動をするのかをいうことを意識して学習の見通しをもつことができていました。

導入の工夫

生徒の興味・関心を喚起する単元導入時の工夫を心がけました。
単元に位置付けた言語活動の練習となる活動
単元に位置付けた言語活動に必要な知識・技能を学び取る活動
単元に位置付けた言語活動を具体的にイメージするための活動
単元のねらいを把握し、単元に位置付けた言語活動を意識するのに有効でした。生徒は、これからの学習で何を学ぶのかを具体的にイメージすることで、活動に対して意欲的になっていきました。
指導





導入の工夫の例
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授業展開案1では、ポスターやパンフレット、リーフレットなどの具体物を示し、作成するリーフレットの形態や特徴などについて学び取らせました。相手(対象)、目的、表現の工夫などに着目して見比べ、自分たちでその違いに気付くことで、生徒たちは作成への意欲をもつようになっていきました。(単元に位置付けた言語活動に必要な知識・技能を学び取る活動)

レディネス
テスト

生徒の学習に対する不安を和らげるための工夫として学習プリントをレディネステストとし提案しました。
単元で身に付けさせたい知識・技能の定着度をみる。
単元に位置付けた言語活動で必要となる知識・技能の予習課題。
単元に入る前に、その単元に位置付けた言語活動で必要となってくる知識・技能についての学習プリントを予習課題として利用しました。授業の中で確認する際にも役に立ち、生徒の学習に対する不安を和らげることにも有効でした。ただ、内容項目をあまりにも細分化していたため、1枚でレディネステストとしての条件を満たすことはできませんでした。組み合わせて使用するなどの使用方法の提案が必要です。




イデ

実際に使用した学習プリント
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説明的な文章の学習に入る前に、予習プリントとして「段落の要点をとらえる」を配布し、要約の仕方を練習させてから単元に入りました。必要な情報を選択し、抜き出すための練習としてとても有効でした。
 

学習活動の
工夫

生徒の主体的な活動やつまずきに対応するために学習活動の見直しを行い、以下の工夫を取り入れました。
スモールステップによる学習活動
モデルの提示やモデルとなる活動を取り入れた学習活動
学習活動を生徒の実態に応じて細分化し、スモールステップで知識・技能を身に付けさせるよう工夫しました。また、生徒の主体的な学習を促すために、具体的なモデルの提示やモデルとなる活動を取り入れて、確実に知識・技能を習得することができるように工夫しました。生徒は、一つ一つの活動を確認することで、全体の見通しをもつと同時に、いつ、何をすればよいかを把握して、自分で活動することができるようになっていきました。また、一つの活動につまづいても、学習活動全体をあきらめることなく、意欲的に活動できていました。








スモールステップによる学習活動の例
写真
写真
小説の一部を脚本化する言語活動の中の脚本の下書きを書く部分を、
@主なせりふを書き出す。
Aト書きを考えて書く。
Bせりふとト書きを組み合わせて脚本の形にまとめる。
の三段階に細分化し、色違いの付せんなどを使って、何度も見直しができるようにしました。生徒は、自分のペースで理解しながら活動を行うことができていました。また、書くことに苦手意識をもつ生徒のつまずきに気付き、教師が個別に指導するのに有効でした。
モデルの提示やモデルとなる活動を取り入れた学習活動の例
画像 電子黒板を使って、モデルを提示したり、単元の中で行う学習活動のモデルとなる活動について解説したりしました。視覚的にとらえさせることで、生徒の理解も早く、分かりやすいという感想も多く聞かれました。また、説明の時間が短縮され、活動の時間が確保されたため、生徒は、余裕をもって活動に取り組むことができていました。

言語活動

単元のねらいに対応した言語活動を位置付けました。
〔目指す言語活動〕
生徒が主体的に取り組むことができるような課題を設定して、課題を解決する課程を組み込んだ活動。

学校生活や社会生活の場面を想定した活動。

相手、目的や意図、多様な場面や状況といった条件に合わせて、身に付けた知識・技能を活用させる活動。
相手、目的や意図、多様な場面や状況といった条件を明らかにした活動を単元に位置付け、設定した課題の解決に向けた学習の過程が生徒にも分かるような手立てを取るよう心掛けました。また、単元で身に付けた知識・技能が学校生活や社会生活で活用できるようになることを意識して言語活動を位置付けました。生徒は、何のためにどのような活動を行うのかを理解して活動に取り組むことができるため、最後まで意欲的に活動を行っていました。最後の単元の振り返りの欄にも、多くの生徒が身に付けた力の活用場面について書くことができていました。








画像 言語活動 想定した場面
展開案1 小学6年生向けの内容紹介用リーフレットを作成する。 ・学校紹介をする。
・調べ学習のレポートを書く。
展開案2 文章と図表などとの関連を考えながら説明や記録の文章を読む。 ・取り扱い説明書を読む。
・説明的な文章を読み広げる。
展開案3 文学的な文章の一部を脚本に書きかえる。 ・学年劇の脚本を書く。
・学校行事のシナリオを書く。
展開案4 思考力や想像力を働かせて仮想対談を行う。 ・文学的な文章を読み広げる。
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教材等の
工夫

授業を支えるものとして以下の教材等を提案しました。
生徒が学習の道筋を自分で確認しながら主体的に学習活動に取り組むことができるワークシートや補助資料。
知識・技能の確実な習得とそれを活用した学習を効果的に行うための学習プリント。
学習計画立て方や情報収集の仕方など、授業の中で行う活動の一般的な方法と活動を行う際の留意点を示した生徒用手引き。
学習内容を理解するのに必要な知識・技能をまとめた生徒用手引き
活動の手順や学習活動に必要な情報を1枚にまとめたワークシートは、生徒の思考を助け、主体的な学習活動を行わせるのに有効でした。また、学習活動の参考資料として用意した補助資料は、生徒が自分のペースに合わせ必要に応じて使用するのに適しており、学習活動をスムーズに行う助けとなっていました。ワークシートに示した手引きや補助資料を見ながら自分で課題の解決を図ろうとする生徒もおり、言語活動の充実につながる資料となっていたといえます。







ワークシートの例
画像 生徒の主体的な活動を支えるために、活動の手順を示し、その手順と同じ流れで活動ができるようなワークシートを作成しました。生徒は、自分たちで手順を確認しながら、活動を進めることができていました。
補助資料の例
画像 表現の特徴や表現の工夫について気付かせるために、これまでに学習した知識を振り返り、不十分な知識を補充するために利用しました。生徒は、グループでの話し合いの場面でも、適宜資料を利用していました。
授業を支える学習プリントや生徒用手引きは、単元に位置付けた言語活動を行うために必要な知識・技能を補い、活動の仕方を把握するのに有効でした。次の時間の活動に向けての予習として利用することもでき、生徒は活動につまずいたときに振り返る資料としても利用していました。







生徒用手引きの活用例
画像 学習計画を立てる場面で生徒に配布し、何のためにどのように行うのかを確認する手立てとしました。生徒は、学習内容の項目を考える時に参考にしていました。
 

交 流

交流による自己及び相互評価を取り入れ、他者と比較することで自分の考えを広げたり深めたりさせました。
作成した作品や自分の考えを他者と交流する活動を行うことで、生徒が自分の考えを見直し、広げ、深めることができるように工夫しました。評価の観点を示し、その観点を基に自己及び相互評価を行うことで、生徒は他者の意見のよさや改善点に気付くとともに、自分の意見についても客観的に評価することができていました。







交流活動の様子(板書例)
写真 交流活動の手順と留意点を板書して説明しました。その後、生徒は評価表と色の違う付せんを使って、班で相互評価を行いました。友達の作品のよさに気付くことで、自分の作品の改善点に気付く生徒も多く、考えを広げたり、深めたりするのにとても有効であることが分かりました。
評価表の例
画像 評価の観点を示し、@自己評価、A班での相互評価、B参考になった点や自分の作品の改善点を記入できるように作成しました。生徒は、友達の作品に触れたり、友達から評価のコメントをもらうことで、自分の作品を客観的に見ることができるようになっていきました。

学習計画表

学習計画表の振り返りの欄を活用し、生徒に本単元で身に付けた知識・技能や育成が図られた思考力・判断力・表現力を自覚させるようにしました。
学習計画表に学習活動を確認できる欄、活動に対する自己評価や活動に対する反省を記述する欄を設け、常に自分で活動を振り返ることができるように工夫しました。また、振り返りの欄を充実させ、その活動がどんな知識・技能を身に付けるためのものか自覚できるようにしました。生徒は、身に付けた知識・技能や本単元の学習活動を通して育成された力について自覚することができていました。







振り返りの欄の記入例
画像 学習計画表の振り返りの欄に、「単元の学習を終えて身に付いたと思う力」と「身に付いた力の活用場面」を記入させました。生徒は、身に付けた知識・技能や本単元を通して育成された力について自覚することができ、単元の学習内容についての理解を深めることができていました。
主体的な学習態度の育成につなげる手立て
画像 学習計画表に単元における、個人の学習課題を書き込ませ、課題が解決したと判断するごとに反省を記述させました。生徒は、自分なりの課題を設定することで、単元の学習に主体的に取り組もうとする意欲をもつことができていました。

アンケート

身に付けた知識・技能の意識化を目指して、事後アンケートを実施しました。
単元の学習の最後に、事前アンケートと同じ項目で事後アンケートを実施しました。生徒は、アンケートに回答することで、項目を手掛かりにしてどのような知識・技能を身に付けるための単元であったかを振り返ることができていました。







生徒のアンケートの記入例
画像 記入後に、自分が単元の始めに記入した事前アンケートの記述内容と比較して、変化を自覚させました。生徒は、今回の単元で身に付いた知識・技能について活動を結びつけて確認することができていました。
授業展開案ごとの指導の実際
  授業展開案ごとの指導の実際について、具体的な指導のアイディア、検証授業の前後の生徒の変容、実際に授業を行った指導者の感想や気付きや考察、実際の生徒作品の紹介等の項目でまとめています。授業展開案とともに、授業をされる際の参考にしてください。
 
  指導のねらい 位置付けた言語活動 リンク先
展開案1 目的や意図に応じて、必要な情報を選択したり整理したりする力を付ける。 小学6年生向けの内容紹介用リーフレットを作成する。
授業展開案1
指導の実際1
目的や意図に応じて、伝えたいことが相手に明確に伝わるように書く力を付ける。
展開案2 目的や必要に応じて要約したり要旨をとらえたりする力を付ける。 文章と図表などとの関連を考えながら説明や記録の文章を読む。
授業展開案2
指導の実際2
文章の構成や展開、表現の特徴について自分の考えをもつ力を付ける。
展開案3 目的や意図に応じて、必要な情報を選択したり、整理したりする力を付ける。 文学的な文章の一部を脚本化する。
授業展開案3
指導の実際3
目的や意図に応じて、表現を工夫して書く力を付ける。
展開案4 場面の展開や登場人物などの描写に注意して読む力を付ける。 思考力や想像力を働かせて仮想対談を行う。
授業展開案4
指導の実際4
表現の工夫とその効果を踏まえ、心情を読み取る力を付ける。
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