中学校特別活動・総合的な学習の時間 研究の基本的な考え方
 自らの生き方を主体的に考え,行動する生徒の育成を目指して
   
  学級活動の進路指導と総合的な学習の時間を意識的に関連させて指導を進めることにより,

  進路指導のねらいに迫る職場体験学習が展開できます。
      特別活動 総合的な学習の時間
       
 職場体験学習を取り入れた進路指導
         〔学級活動と総合的な学習の時間の関連〕
(注)表中の数字は授業時数を示しています
学級活動(進路指導)
○ 働くことと学ぶこと
・働くことの目的と意義
・学ぶことの目的と意義
・学ぶことの大切さ
・学習の悩みの解決
○ 職業について学ぶ
・職業と産業の理解 
・多様な職業の内容や特色
・職場体験で学ぶこと(事前学習)
・職場体験で学んだことを深めよう
(事後学習)
○ 進路の計画を立てる
・進路選択のための条件や手順
・卒業後の進路
・卒業後に学ぶ道(上級学校調べ) 
・自分の適性と進路
・進路計画の必要性,進路計画の検討
学びの経過
〔めざす生徒の姿〕
将来の生き方や進路選択に向けての意欲を高める
将来にわたる職業観・勤労観を学ぶ
自分の進路計画を立案・検討し,明確にしていく
総合的な学習の時間
○ 職場体験学習に向けて準備をする 13
・ 職業理解のために
・ 自己理解について
・ 職業人講話
・ 体験に向けての事前準備
  (ロールプレイ)
・ 希望体験先調査
・ 体験先との交渉・依頼
・ 事前訪問
○ 職場体験をする 20〜32
・ 職場体験学習 3日間
〜5日間
・ お礼状作成・持参

○ 職場体験学習をまとめて,発表会を開こう 15
・ 発表会のための諸準備
・ 発表会
・ まとめ
・ 追究活動
職場体験学習の事前・事後の学習
 職場体験学習には,体験活動を通して,問題解決のプロセスを学ばせ,主体的に自己の生き方を考えさせるという大きなねらいがあります。学ぶべき価値を意識した職場体験学習とするためには,体験を中心に準備とまとめだけで学習を終えるのではなく,その意義を十分踏まえた事前・事後の学級活動を中心に時間を確保して,総合的な学習の時間と学級活動における進路指導を有機的に関連させ,系統立てた指導を進めていく必要があります。
〈 事前学習 〉    
職場体験学習で学ぶこと        
〈 事後学習 〉
職場体験学習で学んだことを深めよう!
ね ら い   職場体験学習に対する生徒の関心を高めたり,意義やねらい,留意事項についての十分な理解を図り,効果を高める。   体験を共有し,職業や仕事に関する知識・理解を深める。職業の意義・役割についての理解を広め,深める。
題材例として   身近な人の職業に関する考え,苦労,喜びを理解させる題材。   職業や仕事の理解,あるいは望ましい職業観の形成などに関する題材。
具体的な
単元配列


題材の
年間配列と配当時間
◎  職業について学ぶ
 (1)職業と産業の理解
 (2)多様な職業の内容や特色 
 (3)職場体験学習で学ぶこと

・題材系統図はこちら 学級活動年間計画(例)はこちら
 (4)職場体験学習で学んだことを深めよう
   
 ハイパーテキスト指導案
◎  進路の計画を立てる
 ・ 進路選択のための条件や手順
 ・ 卒業後の進路
 ・ 卒業後に学ぶ道(上級学校調べ)
進路指導の指導の在り方の基本 〔総則第6の2の(4)〕
  生徒が自らの生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう,学校の教育活動全体を通じ,計画的,組織的な進路指導を行うこと。
社会の変化に主体的に対応できる能力の育成 を重視するとともに
主体的に自己の進路を選択決定し, 生涯にわたる自己実現を図っていくことができるような
能力や態度を育成する ことが重要です。
進路指導 特別活動の学級活動(中核)
進路にかかわる啓発的な体験活動
(職場訪問,職場体験学習,体験入学など)
生徒の入学時から各学年にわたり,学校の教育活動全体を通じ,系統的,発展的に行っていく必要があります。
進路相談
進路学習の味方!職場体験学習
  職場体験学習については,学習指導要領特別活動の学校行事(5)勤労生産・奉仕的行事の項に,職業や進路にかかわる啓発的な体験,ボランティア活動などにより,勤労の尊さや意義を理解し,職業や進路の選択に役立つ勤労観や職業観を身に付けるなど,社会人としての生き方を深めることができるような指導の大切さが述べられています。
  職場体験学習を総合的な学習の時間の中で実施する学校も増えています。これは,職場体験学習が,総合的な学習の時間のねらいに合致する内容であるところからきています。 
職場体験学習の進路指導上の意義
(1)職業や自己の適性について現実的,具体的な知識や理解を得る〔主体的な進路選択〕
(2)働くことの喜び,社会的な意義や役割を知る〔職業観の形成〕
(3)社会人としての適応力の向上〔マナーやルールを知る〕
(4)地域の企業や職業についての理解〔進路の選択肢の拡大〕
     
なぜ,総合的な学習の時間で「職場体験学習」なのか?
<総合的な学習の時間のねらい>
(中学校学習指導要領(平成10年12月)解説−総則編− 平成16年3月 一部補訂)より
2 総合的な学習の時間においては,次のようなねらいをもって指導を行うものとする。
(1) 自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。 (2) 学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすること。 (3) 各教科,道徳及び特別活動で身に付けた知識や技能等を相互に関連付け,学習や生活において生かし,それらが総合的に働くようにすること。
  「この時間は,横断的・総合的な学習や生徒の興味・関心等に基づく学習などの過程を通じて,自ら課題を見付け,自ら学び自ら考え,問題を解決する力などを育てること。また,情報の集め方,調べ方,まとめ方,報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身に付け問題解決に向けての主体的,創造的な態度を育成すること。自己を見つめ,現在や将来について真剣に考え,卒業後の進路を主体的に選択し,生きがいのある生活を実現していくという自己の生き方について考えることができるようにすること。」(以下略)をねらいとしている。
(中学校学習指導要領(平成10年12月)解説−総則編− 平成16年3月 一部補訂)より
  上記の記述から明らかなように,生徒が「自己の生き方を考えることができるようにすること」は「総合的な学習の時間」のねらいの一つであり,この時間に職場体験を取り上げることは一つの方法として,適切であると考えられます。

<職場体験学習の単元指導計画作成のポイント>            
1 教育課程における総合的な学習の時間の位置付けを明確化する。
   (総合的な学習の時間の目標及び内容の作成。各教科等の関連性を配慮した全体計画の作成。)
2 職場体験学習のねらいを明確化する。
   (生き方を考えさせる。社会性を養わせる。人間関係能力を向上させる。)
3 事前・事後学習を充実させる。
   (身に付けさせたい力を意識した指導計画の作成。)
<実施に当たっての配慮すべき事項>
○ 職場体験を充実させる。
   (体験期間の長期化,複数の体験学習,体験先の自己開拓など。)
○ 地域・保護者との連携を図る。
   (保護者への協力依頼,職場体験学習の趣旨の説明,各事業所等との連携,発表会の開催参加依頼など。)

<職場体験学習について期待されるねらいと進め方>
期待されるねらい
 「自己を見つめる」 ○ 「現在や将来について
 真剣に考える」
○ 「卒業後の進路を主体
 的に選択することができ
 る」
○ 「生きがいのある生活
 を実現していこうとする
 態度を養う」
  生徒が他者と比較することなく,客観的に自分のよさや得意な分野を理解するとともに,それを生かすことの大切さを理解することができる。   様々な社会参加の在り方及び生き方の選択肢があること。そして,将来の社会参加の在り方や生き方が現在の学校での学習や生活の延長線上にあることを理解することができる。   中学校卒業後の進路について,様々な選択の可能性があることを理解することができる。様々な可能性の中から自分のよさや得意な分野を生かす進路を選択することの大切さや選択の仕方を理解することができる。   人はそれぞれに生きがいをもって充実した人生を送っていることを理解すると共に,生徒が何を大切にして生きるのかなど,自分にとっての生きがいを考えさせることができる。
進め方
  働く意義や目的あるいは生きがいなど,体験にかかわるテーマを設定し,話し合ったり,討論させたりする。   生き方にかかわる具体的な体験や人や事物とかかわる活動(体験活動)
・職場体験,職業調べや職場見学など
・ボランティア活動
・生き方や生きがいにかかわる講話や講演など
  生き方にかかわる体験や人とのかかわりについて感じたこと,考えたことなどをまとめる。その内面化を図るため,まとめを発表し合い,様々な感じ方や考え方があることを知り,体験の意義を深めさせる。

<教科や特別活動,道徳との関連>
○ 学習内容の関連 ○ 学び方の関連
  これまでに取り組まれていた社会科公民分野や特別活動あるいは道徳の時間で取り上げていた「生き方」の学習や指導を,これらを横断し,総合する「人の生き方に迫る学習活動」として設定する。明確なねらいと,その実現を目指した学習計画に基づいて,「総合的な学習の時間」の学習活動として実施する。そして,この学習活動と特別活動,特に学級活動における「生き方指導」としての進路指導等との相互の関連を図って実施する。   自ら課題を見付け,自ら学び自ら考え,問題を解決する力。
  情報の集め方,調べ方,まとめ方,報告や発表・討論の仕方などの学び方や考え方。
 体験活動に対して目的意識をもって,意欲的に明るく活動に取り組むなど,問題解決に向けて主体的,創造的な態度。
  地域の人々等,積極的にかかわっていこうとするコミュニケーション能力など。
○ 自らの生き方の問題を自分自身の問題として受けとめ,自ら解決を図る能力や態度を育成する学習活動を,まとまりのある学習として計画し,実施することは大切なことである。そのことによって,両者の学習活動が生き生きと展開されることが望まれる。 

工夫した学習展開例
<発展型>
(それぞれで学んだことを生かす)
<並列型>
(現在取り組んでいる学習内容と関連付ける)
 総合的な学習の時間

各教科等

各教科等

 総合的な学習の時間
 総合的な学習の時間


 各教科等

<総合的な学習の時間を進めていくための配慮事項>
○ 生徒の学習状況に応じた教師の適切な指導
 (生徒に任せきりの活動にするのではなく,教師は生徒に学習活動の目的をしっかりもたせ,問題解決への追究や議論などを生徒と積極的に行い,主体的に取り組ませるなど,行き届いた指導を行うことが大切である。)
○ 体験的な学習,問題解決的な学習の重視
 (生徒に身に付けさせたい資質や能力等を総合的に働くようにするためには,一定の知識を覚え込ませるのではなく,生徒が直接体験したり,問題解決に取り組む学習を積極的に取り入れていく必要がある。)
○ 学習形態,指導体制の工夫
 (生徒の様々な興味・関心,多様な学習活動にこたえるため学校全体として取り組むことが不可欠である。)
○ 学校図書館の活用や他の学校,社会教育施設,各種団体等の連携,地域の教材や学習環境の積極的な活用
 (学校での資料の整備と共に地域の教材等,多様な教育資源を把握し,積極的に活用することがよりよい学習になるために必要である。)

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