人の生き方から学び、自己の生き方を探る道徳の時間を提案します。

1 研究の概要

(1) 研究テーマ

夢や目標の実現に向けて、努力することの大切さを実感させる道徳の時間の研究

−人の生き方から学び、自己の生き方を探る授業づくりを通して−

(2) 研究テーマ設定の趣旨

○ 学習指導要領に求められているこれからの道徳教育の考え方

 平成20年3月に示された学習指導要領の改訂の趣旨として、中学校学習指導要領解説道徳編の「『生きる力』の理念の共有と道徳教育」の項目の中で、「次代を担う子ども自らが学ぶ意思や意欲をもち、未来への夢や目標を抱き、自らを律しつつ、自己責任を果たし、自分の利益だけでなく社会や公共のために何をなし得るかを大切に考える豊かな心をはぐくむことが重要である」と述べられています。また、中学校段階の道徳性の発達の出発点となる、自己の探求について、「中学生の自己探求の過程において大きな役割を果たすのは、かれらの夢や理想である」とあり、中学生の時期に描く夢や目標が、その後の人生にも大きな意味をもち、生徒一人一人が自分の夢や目標をしっかりと見つめ、その実現に近付けるように励ますことの大切さが述べられています。

○ 佐賀県内の小・中学生の将来の夢や目標に関する実態

平成23年度の佐賀県小・中学校学習状況調査の児童生徒の意識調査によると、「将来の夢や目標をもっている」の項目で、「当てはまる」と答えた生徒の割合が中学1年では61.5%に対し、2年では43.0%、3年では38.5%と減少していることが分かりました。これは、成長するにつれ、より現実が見えてくるため将来に向けて不安感が増したり、様々な経験やそれに伴う葛藤の中で自分の生き方を模索したりしている結果とも考えられます。

   ○ 本研究のねらいについて

子どもたちは、身近な大人をモデルにしたり、先人の生き方を記した伝記や、マスメディアを通じて知ることのできる、生きる指針となる人物の生き方に影響を受けたりしながら、夢や目標を抱くことが多くあります。しかし、現代では、情報や知識を得る機会が増えている一方、核家族化や少子高齢化、不安定な雇用情勢など様々な社会問題が発生しています。そのような社会背景の中で、子どもたちが将来を見通すことや、夢や目標をもつことが難しい時代を迎えていると考えられます。

よって、道徳教育については、中学校において思春期の特質を考慮し、社会との関わりを踏まえ、人間としての生き方を見つめさせる指導の充実が必要となります。指導に当たっては、生徒が自らの生きる意味や自己の存在価値を問い、これからの自分に夢や目標をもち、人間としてよりよい生き方を主体的に模索し、実現していこうとする態度を育てていくことが必要だと言えます。

そこで、本研究では、次のようなねらいをもち、それに応じて手立てを工夫する研究を進めることにしました。

@ 生きる指針となる人物の生き方から学ぶ伝記資料の開発

  夢や目標の実現に向けて努力することの大切さを実感させる道徳の時間を目指すため、生きる指針となる人物

の生き方から、人間のもつ可能性や素晴らしさ、弱さやそれを克服する強さを学ぶことができるように、有効な伝記

資料の開発をする。

A 資料の人物と自分自身を重ね合わせて考える授業づくり

  生きる指針となる人物の生き方から学び、その学びを自分の生き方につなげることができるように、資料の人物

と自分自身を重ね合わせて考えさせるための手立てを取る。

(3) 研究の内容と方法

○ 人物の教材化を図った伝記資料の開発についての理論研究

文献及び先行研究等により、人物の教材化を図った伝記資料の開発と、資料の人物と自分自身を重ね合わせて考える授業づくりについて理論研究を行います。

○ 伝記資料を活用した道徳の時間における手立てについての研究

人物の教材化や資料の活用法についての研究を行い、生きる指針となる人物の生き方を基にした伝記資料の開発、及び登場人物の弱さや葛藤、そして話合い活動を取り入れた道徳の時間の手立てを探ります。また、補助説明や提示等、活用の仕方について研究します。

○ 生徒一人一人の実践意欲を引き出すことを目指した授業の提案

生徒の実態を把握するために、中学1年生を対象に、夢や目標に関する意識調査を実施し、結果を分析します。また、自作資料を作成し、学習指導案の作成及び授業実践を行います。実践に基づき、自作資料の開発や活用の仕方の手立てと、登場人物の弱さや葛藤を取り上げた発問構成や話合い活動を取り入れた授業展開を提案します。


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