★カウンセリングでは,初めての面接の時に「契約」といって,目標や方法等を説明して
相談者が納得してから始めます。つまり,具体的な治療目標・治療計画・治療方法を
話し合ってから決めます。このことをインフォームド・コンセント(説明と同意)といいます。
授業において「導入」を「インフォームド・コンセント」という考えに置き換えることにより,
授業自体が教師と子どもの双方向のコミュニケーションであることを確認することがで
きます。
学習目標・学習計画を明確にする。
(1)不安の除去ができる。
(2)単元の意義付けができる。
(3)授業の見通しをもつことができる。
(4)意欲付けをすることができる。
U 手立て
(1)自分の言葉で話すことで,授業の中で考えたことや得た知識を整理することができる。
(2)他の子どもの意見を聞いて,自分を振り返ることができる。
(3)気持ちが語られれば,感情交流が起こり,人間関係を育てることができる。
★授業にカウンセリング等の知恵を生かす手立てとして,以下の3点を挙げます。
★シェアリングとは感じたこと・気付いたことを互いに分かち合って,語り合うことです。
◆◆◆カウンセリング等の知恵とは? ◆◆◆
◆◆ カウンセリング等の知恵が授業に役立つの? ◆◆
★授業の中でのカウンセリングとは,お互いに語り合いながら問題を発見し,解決策を見い
だしていくことです。つまり,授業において,それぞれの教師が何気なくおこなっている
配慮が子どもたちの問題意識を促し,解決策を見いだす手助けをしているので,知らず
知らずのうちにカウンセリングとなっています。この配慮を意識して用いることが,カウン
セリング等の知恵を用いることになり,授業の中での相互交流(コミュニケーション)に
つながります。
カウンセリング等の 技法 |
具 体 的 言葉 | 有 効 性 |
賞 賛 | ・ほめる。 「よくできたね」 「いい考えだね」 |
・どんなに小さなことでもまずはできたことを 認め,ほめることで子どもに自信や達成感を もたせることができる。 |
受 容 | ・考えや思いを受け止める。 「ええ」「そう」「それから」「うーん」 |
・受け止めていると言うことを言語だけでなく 非言語を通して子どもに伝える。子どもが 受け 止められているという気持ちを持つ ことで,安心して雰囲気を作ることができる。 |
質 問 | ・質問をバランスよく使う。 <閉ざされた質問> 「○○だと思いますか?」 (「はい」「いいえ」で答えられる質問) <開かれた質問> 「どう思いますか?」 (「考え」を答える質問) |
・「閉ざされた質問」を多用すると,尋問調に なりがちである。思いや考えを引き出す 質問を行うことで,子どもの思考をより深め ることができる。 |
繰り返し | ・言葉の最後の数語を繰り返す。 | ・話の最後の数語を繰り返すことによって, 子どもは,もう一度,思考したり考えをまと めたりすることができる。 |
明確化 | ・言葉にならない気付きを言語化 する。 「○○のような感じですか?」 |
・気付いていて,まだ言葉に出していないこと を,ぴったりあう言葉で言語化することに よって,子どもの考えを明確にしていくこと ができる。 |
要 約 | ・事柄や感情を要約する。 「要するにこういうことですか?」 |
・話しの内容や思いを要約することによって, 子どもが考えをまとめたり,明確にしたりす ることができる。 |
対 決 | ・矛盾や不一致を発見し,解決を めざす。 「さっきはいいと言い,今度はだめ だと言いましたが,本当はどっちな の?」 |
・内面にある葛藤や混乱を見つけ,伝える ことによって,子どもが自分自身で判断し, 決定していくことができる。 |
★教師と子ども,また,子ども同士が相互に意思を通じ合わせることができるような
授業がコミュニケーションを育む授業と考えます。
コミュニケーションを育む授業を実践するためには,以下の4点に配慮して,カウン
セリング等の知恵を用いた授業展開を行います。
1 内容に興味や関心をもたせる。
・授業内容に子どもの体験・知識を関連付けることによって,興味をもたせ,
共に学ぼうとする学習意欲を高めることができる。
2 内容が理解でき,やればもっと学習を進めることができると感じさせる。
・一人一人の子どもに「できる」と感じさせることで達成感を味わわせ,
そのことが自信につながり,自己肯定感を高めることができる。
3 形態や進め方が楽しいと感じさせる。
・交流活動(グループ学習など)や分かち合い(シェアリング)などを取り入れること
で,共に学ぼうとする仲間意識を育てることができる。
4 できた内容を認め,満足させる。
・小さなことでもできたことを認め合う場を設定することで,相互理解を深める
ことができる。