「意思決定を取り入れた討論型の学習」に取り組んでみませんか!

              
小学校第6学年 「明治の国づくりを進めた人々」 その1(本時の様子)
本時の目標
 明治政府の政策について、徴兵令を例として自他の考えを交流することで、「国家の利益」と「国民の生活」を視点にした見解の違いがあることに気付き、大切にしたい視点を基に明治政府を評価し、自分の考えを表現することができる。
本時の展開の概要(6/8)
 明治政府の政策の1つである「徴兵令」を取り上げ、自分なりの評価(よかった、問題だ)をしていた。これを基に、ペアでミニ討論会を行い、その結果を学級全体で評価表を作りながら確認した。これにより、よかった点と問題点を整理し、社会的な問題「明治政府は国家の利益を優先した政策を行ったこと」に気付き、「国家の利益」と「国民の生活」との対立の中で、大切にしたい立場を根拠を基に決めさせた(意思決定1)。その後、明治政府の政策全体ではどうかという疑問から、論題を設定した。
本時に取り上げる社会的な問題【社会的な問題のパターン】
  社会的な問題「明治政府は、国家の利益を優先した政策を行ったこと」【研究や論争の材料となる事件】
本時の様子
過程
主な学習活動
教師の指導・支援
資料


○本時のめあてを確認する。
 
                     評価する視点
○前時までに大切にした立場として「日本の国としての立場」と「国民としての立場」を確認した。 
○自分の評価との違いについてもっと理由を聞いたり、話したりしたいという意欲をもたせるために、数名の児童に意図的に「徴兵令」についての評価を発表させた。
  ※教師の問い
   「あなたと同じ考えの友達がいるかな。」
   「友達がそう考えた理由が分かるかな。」
   「理由が分からないままで多数決をとって
   みんな納得できる?」






    
めあて 「徴兵令」の評価をもとにして明治政府の政策について考えよう。




T



○「徴兵令」についての評価を基に、ペアでミニ討論会の準備をする。
準備
・主張と根拠の確認
・根拠を示す準備
・役割の確認
○同じ評価のペアで、ミニ討論会の準備を行わせた。
○自分の考えを表出することについての安心感をもたせるために、同じ評価同士のペアで話す練習を行わせた。
○ 話す目的について、評価が違う友達の考えを知るだけではなく、考えの根拠(理由)を述べ合うことで、評価が違う友達を説得することとした。これにより、話す必然性をもたせ、発言意欲をもたせた。
○話している内容が見えるように、自分たちの評価表を見せながら説得させた。









○ミニ討論会を行う。
ミニ討論の仕方
・相違点を見つける。
・相手の根拠に質問意見を言う。
・必ず一人一回は発言する。


○ランダムに評価の違うペアを作らせ、ミニ討論会を行わせた。評価の違いについて、同じ考えでも評価が違っていることがあること、違う考えでは、何を大切に考えているのかを質問することを確認した。
○ 相手の根拠(理由)をよく聞くこと、根拠(理由)に対して質問や意見を言うことを確認した。









 











○ミニ討論の様子を確認する。

○グループでのミニ討論で出た内容や納得いかなかったことについて発表させた。
○児童の発表をもとに、論点になったところを視覚的に整理することにより、「国家の利益を優先する」と「国民の安定した生活」の2つの観点を見いださせた。
○これからの学習問題(学習問題U)を立てる。
社会的な問題(研究や論争の材料となる事件)
「明治政府は、『国家の利益』を優先した政策をしていたこと」

 
○徴兵令の是非について、自分なりの考えをミニ討論の場で表出できたことを賞賛し、もっと話したり、聞いたりして考えたいという意欲をもたせた。
○徴兵令の是非は、明治政府全体の政策の評価となるのではないかと揺さぶる問いを行い、明治維新の諸政策が社会にとってよかったかどうかが問題で、一つの政策では判断できないことに気付かせ、本討論の論題を設定した。
 論題  明治維新によって社会はよくなったのだろうか。 《学習問題U》
○今日の学習を振り返る。(意思決定1)
振り返りのポイント
・徴兵令を例にした自分の考えと、明治維新が社会にとってよかったかを評価するためにもっと調べたいこととその方法
○徴兵令を例にした判断だけでなく、明治維新によって社会はよくなったのかを判断する際にもっと調べておきたいことを出させることで、自分の考えの根拠(理由)を探そうとする課題意識をもつことができるようにした。【評価】
    
実践を終えて
【成果】
  明治政府の行った政策全体での評価の必要性を見いだせる手立てとして、明治政府の政策についてを典型的な例として「徴兵令」を取り上げ、その評価を基にしたミニ論題を取り入れました。この際に、自分で大切にしたい評価の視点を選ばせ、これが誰に身を置いた視点なのかを問うことで、対立する社会的価値に気付かせることができました。
  感情的な話合いにならないようにする手立てとして、同じ評価同士のペアで自分の考えを言う練習を取り入れました。これにより、児童は、それぞれの考えにおける根拠について考えを述べ合うという意識をもって、ミニ討論に参加することができました。
【課題】
  明治時代のどの時点に身を置いて判断させればよいかが不鮮明になっていました。維新期、大日本帝国憲法の発布の時期、明治後半など様々な時点で児童が考えており、児童同士の話がかみ合わず戸惑う姿が見られました。どの時点で、どの立場でという判断する際の設定が必要でした。
  根拠を基に討論させる工夫が不十分でした。これは、1度の経験で身に付く技能ではありません。ですから、日常から日記や作文などでトゥールミンモデルの指導をしたり、「なぜかというと……」という言い方の指導をしたりしておく必要があります。
※トゥールミンモデルの指導については、
    平成20・21年度のプロジェクト研究ページ
    (3)指導法とワークシート作成のポイントB論理的な考えに高めるための工夫(イ) を参照ください。
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