「意思決定を取り入れた討論型の学習」に取り組んでみませんか!

          
小学校第3学年 「のこしたいもの つたえたいもの」(本時の様子)
−浜崎地区に伝わる年中行事「浜崎祇園祭」を通して−
本時の目標
  浜崎祇園祭を受け継いでいく方法を地域の人々の願いと受け継いできた人々の努力とを関連付けて考え、浜崎祇園祭を伝えていくためのプランを自分なりに表現することができる。 
本時の展開の概要(6/10)
  浜崎祇園祭に詳しい方をゲストティーチャーとして招く。児童は、ゲストティーチャーから調べたことを称賛してもらったり、継承する課題についての話を聞いたりすることで、浜崎祇園祭のこれからについて課題意識をもつ。その後、課題の解決策について自分なりのプランを考える。(意思決定1)
本時に取り上げる社会的な問題【社会的な問題のパターン】
  社会的な問題「浜崎祇園祭の継承者の減少(曳く人が減っていること)」【解決すべき事柄】
本時の様子
過程
主な学習活動
教師の指導・支援
資料


○学習のめあてを確認する。

○他の祭りに比べ、浜崎祇園祭の歴史が古いことが分かり、未来へ伝えたいという意欲が湧くように、市内に残る祭りの概要と比較させた。

○浜崎祇園祭曳き山囃保存会の方に、調べたことを発表し、評価してもらうことを確認し、めあてとした。
 
めあて 浜崎祇園祭について調べたことを発表しよう。








○グループごとに、テーマについて調べたことや考えたことを発表し、浜崎祇園祭曳き山囃保存会の方の評価を聞く。
  テーマ
・概要
・歴史
・願い
・行程
・山囃
・料理
・今と昔
・子ども山笠
○浜崎祇園祭に対する自分たちの考えがもてるように、調べたことについてどう思うかをあらかじめまとめさせておき、発表の最後に伝えさせた。

○調べたテーマごとに短い時間で発表させた。それぞれの発表について、初めて知ったことがあったときのみメモをさせた。

○全てのグループの発表が終わってから、浜崎祇園祭曳き山囃保存会の方に調べた内容について称賛してもらい、浜崎祇園祭のよい点として確認した。











○浜崎祇園祭曳き山囃保存会の方から浜崎祇園祭のよい点についての補足を聞く。
よい点の補足
・博多、日田、浜崎は九州の三大流れと呼ばれていること
・九州でも曳き山の高さがトップクラスであることなど
○よい点の補足として、九州でも有名な祇園祭りであることを児童に分かりやすく話してもらった。
○地域の人々に愛されていることが分かるように、「曳き山を低くするぐらいなら、電気はいらない」というエピソードを話してもらった。
○浜崎祇園祭が抱えている課題(問題点)と願いについて知る。
問題点
・今の地区だけでは浜崎祇園祭をやっていけなくなったこと
・今の地区以外の人にも曳いてほしいこと
・観光客が少ないこと
・毎年曳き山を作るのが大変なことなど
「続けていく方法を考えています。みなさんはどう考えますか。」
○浜崎祇園祭曳き山囃保存会の方から話の最後に課題になっていることを話してもらった。これにより、浜崎祇園祭が抱えている課題の内容を意識付けさせた。

○論題《学習問題2》を設定する。
教師の発問(・)、児童の反応(→)
・やっていけなくなったからやめますか。
→いけない。歴史がある大切な祭りだから。
・続けていくにはどうすればいいと考えますか。
○「伊万里トンテントン祭り」、「鏡くんち」の例を挙げ、祭りが毎年続いていくとは限らないことを説明した。

 論題 浜崎祇園祭を伝えるプランを考えよう。《学習問題U》
○浜崎祇園祭が抱えている課題を出し合い、最も重要な課題を1つに絞る。
解決すべき事柄(社会的な問題)
・曳く人が減っていること
○複数の課題が挙げられたが、浜崎祇園祭曳き山囃保存会の方の話や浜崎地区の人口の内訳の資料を根拠に解決すべき課題を絞り込んだ。
○浜崎祇園祭を伝えていくためのプラン(解決策)を考える。

○調べたことや本時で知ったことを基に、浜崎祇園祭を伝えていきたいということを、人々の願いや受け継いできた人々の努力などを根拠を挙げ、ワークシートに整理させ、それを基に、自分なりのプランを記述させた。【評価】
実戦を終えて
【成果】
  社会的な問題に出会わせる手立てとして、ゲストティーチャーの話を聞くことを取り入れました。実際に浜崎祇園に関わっている人から問題点について話を聞いたことで、自分の考えを述べようとする児童や友達の考えを聞き出そうとする児童の姿が見られました。さらに、授業後には、数名の児童が自然に集まり、教室の数か所で話合いを始めていました。これらのことから、児童は、本時の学習により、何とか解決したいという切実感が高まっていることがうかがえます。
  問題を明解にする手立てとして、調べたことを基にどう思うかという児童の思いを表出させ、「その考えは誰が行うとよいと考えているの」や「誰が嬉しいの」などと問い返しました。これにより、活動の主体を限定し、立場を見いださせながらねらいとする話合いに誘導することができました。また、それぞれの児童の思いが誰に身を置いて話しているのかを整理したことで、判断の違いを明らかにし、論題を見いださせることができました。 
【課題】
  児童の思いを重視すると、児童の生活経験や既習事項からプランを考えるため、プランの効果や実現可能性が低いと思われるプランに偏る不安がありました。児童の実態に合わせ、論題を複数準備しておく必要があることが分かりました。児童の自由な発想を大事にしたいのですが、プランが多岐にわたりすぎる可能性があります。絞り込んだり、典型例として取り上げたりして、児童の討論の経験や理解の度合いを勘案しながら、論題を見いださせる手立てが必要になります。
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