「意思決定を取り入れた討論型の学習」に取り組んでみませんか!

              
実践事例1
小学校第3学年 「のこしたいもの つたえたいもの」
   
−浜崎地区に伝わる年中行事「浜崎祇園祭」を通して−
 
単元について
 学習指導要領の内容(5)イ「地域の人々の生活について、『地域の人々が受け継いできた文化財や年中行事』のことを見学、調査したり年表にまとめたりして調べ、人々の生活の変化や人々の願い、地域の人々の生活の向上に尽くした先人の働きや苦心を考えるようにする」ことをねらう。
 

これを受け、浜崎地区に江戸時代から伝わる年中行事である「浜崎祇園祭」を取り扱う。浜崎祇園祭は、長い歴史があり、地域の人々が先祖代々受け継いできた地域の発展を願う祭りである。児童は、自分たちが生活する地域に受け継がれている祭りを学習することを通して、地域の発展を願った先人の思いに気付いたり、今もそれを受け継ぎ後世に伝えていこうとしている地域の人々の努力や工夫について学習したりすることができる。したがって、地域に対する誇りと愛情を育てていくことができると考える。

 児童は、総合的な学習の時間において浜崎祇園祭の山笠飾りに使う「野面」作りを経験している。実際に曳き子として参加している児童は少ない。討論の経験が少ないが、話合い活動には積極的に参加する児童が多い。
 浜崎祇園祭が抱えている課題は、「祭りに関わる人の減少と高齢化」や「地区の人口減少」などである。歴史的事象を取り扱った学習の入門期と捉え、祭りの意味を調べさせることを通して、地域の人々が受け継いできた思いや願い、努力や工夫に迫らせたい。その後、課題の中から社会的な問題として「祭りに関わる人々の減少」を取り上げ、「浜崎祇園祭を伝えるベストプランを考えよう」を論題に「意思決定を取り入れた討論型の学習」を仕組む。
単元の目標
 浜崎祇園祭について調べさせることを通して、地域の人々がそれらを大切に保存し、継承しようとしている願いや工夫、努力を理解させ、継承するための課題について地域の一員としての自分の考えをもち、根拠を明確にして表現できるようにする。
単元の評価規準
社会的事象への
関心・意欲・態度
社会的な
思考・判断・表現
観察・資料活用の
技能
社会的事象についての
知識・理解
○地域の人々が受け継いできた文化財や年中行事に関心をもち、それを意欲的に調べている。
○地域の人々が受け継いできた浜崎祇園祭の歴史的な背景や地域社会の発展を願ってきた人々の生き方に関心をもち、地域社会のよりよい発展を考えようとしている。
地域の人々が受け継いできた文化財や年中行事について、学習問題や予想、学習計画を考え表現している。
○浜崎祇園祭を受け継いでいく方法を地域の人々の願いと受け継いできた人々の努力とを関連付けて考え、浜崎祇園祭の将来の在り方について、思考・判断したことを適切に表現している。
○曳き山会館などを観点に基づいて見学したり、地域の方から聞き取り調査をしたりして、地域の人々が受け継いできた浜崎祇園祭について必要な情報を集め、読み取っている。
○調べたことを発表原稿や発表作品などにまとめている。
○地域の人々が受け継いできた浜崎祇園祭の様子を理解している。
○地域の人々が受け継いできた浜崎祇園祭には、よりよいくらしを願う人々の思いが込められており、今も大切に伝えられていることを理解している。
単元の指導計画(全10時間)
課程
主な学習活動
教師の指導・支援
時配







○唐津市内の各地区に伝わる祭りについて調べ、祭りにはそれぞれに込められた願いがあることを知る。


○疑問に思ったことやもっと調べてみたいことを基に学習問題を作る。
○楽しいだけの理由で祭りをするのではなく、それぞれの祭りに込められた願いを予想させる。



○児童に一番身近な地域の祭りである浜崎祇園祭について知っていることを問い、疑問を抱かせる。
 なぜ浜崎祇園祭が続いているのか調べよう。 《学習問題T》
調

○浜崎祇園祭について、総合的な学習で調べた内容を確認し、足りない情報をグループで観点を決めて調べる。 ○浜崎祇園祭について、よく知っている児童とそうでない児童がいるため、学級全体で確認することで、レディネスを調整する。
○グループで決めた観点を基に調べる。 浜崎祇園祭に関わる人々の思いや願い、努力や工夫に迫ることができるように、資料からだけではなく、観点に関わる人々への聞き取り調査も行わせる。
○浜崎祇園祭について、おじいさんやおばあさんに聞いて調べ、今と昔の様子を比べる。 ○今と昔では祭りの様相が変わっていることに気付かせるために、おじいさんやおばあさんが子どもの頃の祭りの様子を聞き取らせる。
○グループごとに調べたことをまとめ、発表の準備をする。 ○発表を意識させ、まとめたことに考えたことを付け加えさせる。






○浜崎祇園祭について調べたことをゲストティーチャーに向けて発表する。
○ゲストティーチャーの話を聞き、浜崎祇園祭のこれからについて課題意識をもつ。
○浜崎祇園祭を受け継いでいくために、解決すべき課題について自分なりの考えをもつ。
○浜崎祇園祭に詳しい方をゲストティーチャーとして招き、調べたことを称賛してもらったり、継承する課題について話してもらうことで、地域の一員として考えようとする課題意識と意欲を換起させる。
○課題の解決策について自分なりのプランを考えさせる。(意思決定1)

論題 浜崎祇園祭を伝えるベストプランを考えよう。《学習問題U》

○浜崎祇園祭の課題の解決策について話し合う。
○実現可能性や費用、効果の視点で、児童のプランを3つに絞り込み、自分が支持するプランを選択させる。
○話合いに向けて自分の意見を整理する。 ○根拠を明確にして意見が言えるように「こうだよカード」に書かせる。        「こうだよカード」
○ベストプランを選ぶ話合いをする。(討論型) ○最終的な自分の意見がもてるように、プランを絞り込んだ際の視点を意識させた話合いを行わせる。
○未来の浜崎祇園祭について意見文を書く。 ○ベストプランを選ぶ話合いで出た意見やこれまでの学習を基に、ゲストティーチャーへの提案を目的に意見文を書かせる。(意思決定2)
 
                                                                                                             
 
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