生活をよりよくしようとする生徒を育てる問題解決的な学習の進め方を提案します!

   
 
   
 2 研究の実際
(4)検証授業の分析
 @  問題解決的な学習について
 ○  課題発見での手立てについて
 
  問題解決的な学習の「計画」の段階の課題発見においては、生徒自身の日常に目を向けさせ、生活の中で気になっていることや問題点について意識させるように様々な手立てを取りました。その学習内容から課題に気付く上で参考になった学習内容に順位付けをさせたところ、次のような結果になりました。
順位
得点※
時間目
課題に気付くための学習内容
105
3・4
TVアニメの家を活用して、「住空間」について考えた学習
109
1・2
絵本「ヒヤリハットさんちへいってみよう!」を活用して、「家庭内の事故」について考えた学習
120
3・4
TVアニメの家を活用して、「室内の空気調節」について考えた学習
138
1・2
「東日本大震災の写真、南海トラフ被害想定、川久保断層系の地震予想震度分布図、佐賀市洪水ハザードマップ」を活用して、「自然災害への備え」について考えた学習
148
3・4
「家具の地震対策グッズ」を活用して、「災害への備え」について考えた学習
159
1〜7
話合い活動
163
3・4
「騒音計、洗たく機や廊下を走る音のCD、目覚まし時計」を活用して、「防音」について考えた学習
166
1・2
「安全な住まい」と「快適な住まい」をキーワードにして考えた学習
172
3・4
「幼児体験メガネ、高齢者の見え方、高齢者の体験グッズ」を活用して、「室内の安全」について考えた学習
   ※得点は、順位をそのまま点数として合計したもので、得点が低いほど高順位をつけたこととなる。

今回の住生活の実践においては、生徒が興味・関心をもつ上で、TVアニメや絵本の活用が効果的だったことがうかがえます。また、統計を基に身近な地域への被害を想定させたことにより、自然災害への備えの必要性を感じていたことが分かります。住生活という生徒にとって関心をもちにくい学習内容ではありましたが、このような手立てによって、自らの住生活と比べながら振り返ることになり、自分のこととして問題を捉えやすくすることにつながったと考えられます。
 ○ 「問い」の工夫について
 
 

各時間、「解放的な問い」を行い、生徒がどのような価値によって判断しているかを明確にさせる工夫を行いました。
1・2/7時間目は、「『安全な住まい』『快適な住まい』と判断した項目は何ですか」という問いを行いました。その結果、「安全な住まい」「快適な住まい」と判断した項目について、主に次のようなことが出てきました。

「安全な住まい」 バリアフリー、けがをしない、段差がない、家具の置き場所がよい、地震に強い、災害に強い、じょうぶ
「快適な住まい」 窓が多い、風通し、太陽光発電、ユニバーサルデザイン、防音、広さ、使いやすさ、整理整頓、くらしやすい、きれい

生徒の判断した項目は多岐にわたっていたため、それを次のように整理して、「安全な住まい」と「快適な住まい」の判断の項目を次のように提示しました。
「安全な住まい」 家庭内事故の防止、自然災害への備え、その他
「快適な住まい」 整理・整頓、清掃、通風・換気、採光、防音、室内の空気調節、その他
 このように、「安全な住まい」と「快適な住まい」について整理することによって、生徒が我が家の課題について考えたり、グループで話し合ったりする際の根拠を明確にさせ、具体的な解決策を考えることにつなげたいと思いました。また、この項目については、住生活の学習における小学校と中学校において教えるべき基礎的・基本的な知識となる指導事項を網羅するようにし、家庭分野での学習が、小学校家庭科の学習を基盤として発展的なものになるようにしました。

 3・4/7時間目は、「あなたの家を安全で快適な住まい方にするためにはどのようなところに課題がありますか」という問いを行いました。生徒が気付いた課題を判断の項目ごとにまとめると、次のようになりました。
判断の項目
人数
主な課題の内容
「安全な住まい」 家庭内事故の防止
10
・玄関のマットで滑ってしまう。
・階段で滑って、落ちそうになった
・コードでこけたことがある。
・風呂掃除や風呂に入ろうとして滑ってこけそうになった 。
・トイレの洗剤などが低い所に置いてあるので、子どもが飲み込むといけない。
自然災害への備え
・台風に備えていない。
・地震が起きた時にタンスが倒れるかもしれない。
その他
・防犯対策ができていない。
「快適な住まい」 整理・整頓
・部屋がきれいに片付いていない。
清掃
・風呂場の床がヌルヌルする。
通風・換気
・風通しの悪い所がある。
採光
 
防音
・防音ができていない。
室内の空気調節
・お風呂に湿気が溜まってカビが生える。

このように、生徒の課題は「安全な住まい」と「快適な住まい」の判断の項目をほぼ網羅するような内容となりました。これは、1・2/7時間目の「解放的な問い」によって、「安全な住まい」と「快適な住まい」の判断の基準をもたせたことで、各家庭の課題を考える際の根拠となり、判断の項目に沿った課題を考えることにつながったと考えられます。

 5・6/7時間目は、「あなたの家での課題を緊急度の観点と改善策の取り組みやすさの観点で判断すると、どうなりますか」という問いを行い、セブンクロス法を活用して、課題の緊急度と改善策の取り組みやすさの観点で各課題に対しての判断を行わせました。これは、ある生徒のセブンクロス法での結果です。

課題Aには床に物が置かれていて邪魔になっていることを挙げ、緊急度が一番高くなっています。課題Bには地震対策について挙げ、4つある課題の中で緊急度が最も低いとしています。生徒の判断の基準として、危険の頻度が大きく影響していることがうかがえます。また、改善策においても課題Aは取り組みやすいことから、実践につなげやすいものとして判断できるような結果になっていました。この生徒のように、課題Aのような日常的な課題と課題Bのような災害に関する課題を挙げている生徒は全体の48%(29名中14名)でした。そのうち、例に挙げた生徒のように、課題Aの緊急度を高く、課題Bの緊急度を低くした生徒は5名で、逆に課題Bを緊急度を高く、課題Aを緊急度を低くしていた生徒は9名いました。セブンクロス法を活用することで、同様の課題についても生徒自身が感じている緊急度の判断の基準が違うことを明確にすることができました。その結果、話合い活動後の感想において、「いろんな考えがあって、いろいろ勉強になった」「今日は、今まで以上に家の事を見直せる事ができた」という生徒の記述があり、判断の基準の違いに触れることで、自分自身の課題についての判断の基準を更に見直すことにつながっていったと考えられます。 

 7/7時間目は、「あなたの家での課題や改善策は、地球環境の保全についても考えることができていますか」という問いを行いました。その後、環境共生住宅について写真を使って具体的な例を示したところ、生徒たちは食い入るように話を聞いていました。これまでの判断の項目の中に見られなかった地球環境の保全について問うことで、更によりよい住まいにするための視点を増やすことができたと考えます。

  このように「問い」の工夫を行ったことで、 漠然とイメージしていた判断の基準について考える機会となりました。その結果、生徒同士の多様な意見に触れさせることができ、思考を深めさせることにつながったと考えます。

 
A 話合い活動について
 ○ 問題解決的な学習における話合い活動の効果について(「計画」の段階)
 
 問題解決的な学習において話合い活動がどのような効果を及ぼしたか、抽出生徒の変容と学級全体について見ていきます。
 
ア 抽出生徒の変容
 
 抽出生徒は、事前アンケートにおいて、小学校家庭科があまり好きでないと回答した生徒Cと、どちらかといえば好きと回答した生徒Dを選びました。その2名の抽出生徒のプロフィールと「計画」の段階における話合い活動に関する内容を表1にまとめました。

 表1 話合い活動による生徒の変容(プロフィール、 「計画」の段階)
 
生徒C
生徒D
プロフィール 小学校家庭科はあまり好きではなく、住生活に関する既習内容である整理・整頓の仕方は時々実践しているが、掃除の仕方や快適な住まい方はあまり実践していない。既習内容を家庭での実践にうまく結び付けられていない状況がある。 小学校家庭科はどちらかといえば好きで、自分で工夫して生活をよりよくするためには、家庭科の学習は大切だと思っており、意欲的に学習に取り組み、住生活に関する既習内容についても家庭で実践している。







話合い活動の様子 話合いの内容:ウェビング法において「安全な住まい」と「快適な住まい」について考える。
特に「安全な住まい」について何も書けなかったが、話合い活動において、友達の「むだに段差がない」という意見を聞き、自分の学習シートに書き加えた。 「安全な住まい」について「段差が少ない」「角にカバーがしてある」と書いた。友達は「バリアフリー」という言葉を使っていたことで、その言葉でグループの意見をまとめていた。
話合い活動後の感想 「安全な住まいの時、何も思い浮かばなかったけど、友達はいろんなことを言ってビックリしました。」 「私が考えもしなかったことを友人が考えていてすごいなと思います。」







我が家の課題
実践計画 @
課題内容: 自分の部屋にマンガ本が散らばっていて足の踏み場がない。 課題内容:玄関マットで、すべって倒れそうになった。
解決策:本棚を作って本の整理・整頓をする 解決策:玄関マットにすべり止めを付ける。
我が家の課題
実践計画 A
  課題内容:玄関にいらないものがあってつまずいて倒れそうになった。
  解決策:いらないものを片付ける。
話合い活動の様子 話合いの内容:我が家を安全で快適な住まい方にするために、1週間で実践できる内容についての計画を立てる。
友達からは「弟と妹のおもちゃを片付ける」「いきなりドアが閉まらないようにスポンジを取り付ける」「通風ができていないから、窓を開ける」「災害用の防災グッズを取り付ける」といった内容が挙がった。 友達からは「ベランダの入り口を片付ける」「コードに引っ掛かって転ばないように、使ったらすぐ抜く」「梁で頭を打ってもあまり痛くないように、クッションを付ける」といった内容が挙がった。
話合い活動後の感想 「自分とは違う所に目を付けていて、ドアや災害対策があって、いろんな所をもっと見て、気が付かなかった所を気付けるように探そうと思いました。」 「私はそこまで身長が高くないので頭を打つ危険性はないのですが、身長の高い兄と父のために『梁』の部分にカバーを付けようと思います。あと、角っちょとかも危険なので、そこにもカバーを付けようと思います。」

1・2/7時間目は、「計画」の段階の課題発見の場面において、安全で快適な住まいはどういう住まいかを考えさせました。まず、各自でウェビング法を活用して「安全な住まい」と「快適な住まい」について考えさせ、その後、グループで話し合い、意見をまとめさせました。話合い活動後の感想において、生徒Cも生徒Dも、友達が自分と違う様々な意見をもっていたことへの驚きを感じていました。

 3・4/7時間目は、「計画」の段階の意思決定の場面において、自分の家を安全で快適な住まい方にするために、1週間で実践できる内容についての計画を立てさせました。各自で実践計画を立て、その後、グループで話し合い、実践計画の検討を行わせました。生徒Cは、マンガ本の整理・整頓を挙げましたが、友達からは、家庭内事故の防止や自然災害への備え、通風・換気といった内容が挙がり、自分が見落としていることが多いことに気付き、住生活に関する様々な問題に気付けるようになりたいという思いをもつことができていました。生徒Dは、玄関において、マットで滑ったり、いらないものにつまずいたりすることについて実践計画を立てていました。話合いで、友達が「梁で頭を打ってもあまり痛くないようにクッションを付ける」ということを聞き、身長の高い兄と父のことを思い出し、自分も梁にクッションを付けようと考えました。

 このように、「計画」の段階に話合い活動を入れたことで、友達の様々な意見を聞き、気付けていない課題が多くあることが分かり、実践意欲や新たな気付きにつながっていったと考えられます。

 生徒Dのように、友達の意見から課題について気付いた生徒の様子を把握するために、本実践においては、「ひらめきの記録」を記入させました。これは、ある生徒の「ひらめきの記録」です。

   自分でひらめいたことには「◎」、友達の意見を聞いてひらめいたことには「☆」を付ける欄を設けて、話合い活動の効果を把握できるようにしました。また、我が家の課題について気付いた際に記録として残すことで、実践計画書をまとめる資料としても活用できるようにしました。

   
 
イ 学級全体
 
 3・4/7時間目の「計画」の段階の意思決定の場面において、自分の家を安全で快適な住まい方にするために、1週間で実践できる内容についての計画を立てた話合い活動についての感想の内容を分類してみると、グラフ1のようになりました。主な生徒の感想は、次のような内容でした。
 
  グラフ1 話合い活動についての感想(3・4時間目)
 
 
主な生徒の感想

多様な
考え
・いろいろな考えがあるんだなと思った。
・自分では気付けなかったことが気付けたのでよかったです。
・自分より詳しい内容があったので参考にした。







実践
意欲
・身の周りの事をもっと考えようと思った。家族みんなが安心して暮らせる家にしようと思った。
・友達が地震対策について話していたので、私の家でも地震対策についてやってみようと思いました。
自分とは違う所に目を付けていて、ドアや災害対策があって、いろんな所をもっと見て、気が付かなかった所を気付けるように探そうと思いました。(生徒C)
・私はそこまで身長が高くないので頭を打つ危険性はないのですが、身長の高い兄と父のために『梁』の部分にカバーを付けようと思います。あと、角っちょとかも危険なので、そこにもカバーを付けようと思います。(生徒D)

話合い
活動の
効果
・話合い活動で、みんなが実践しようと思っていることや自分の意見に対してみんなが「いいね!」とか言ってくれたことで、みんながどういうことをやるのかとかがわかったので参考になりました。
 
 友達の計画を聞いて、自分とは違う考えに触れたことで多様な考え方があることを認識した生徒が47%、自分では気付いていなかった家の課題に気付いている友達の計画を知って実践意欲につながった生徒が21%いました。話合いをしたことで友達の意見を聞けたり、自分の意見を認められたりするなどの効果について記述している生徒が16%いました。「計画」の段階の意思決定において、話合い活動によって影響を受けている生徒が多くいたことが分かりました。
 
 ○ 問題解決的な学習における話合い活動の効果について(「評価・改善」の段階)
 
ア 抽出生徒の変容
 
 抽出生徒の「評価・改善」の段階における話合い活動と発表会に関する内容を表2にまとめました。

  表2 話合い活動による生徒の変容(「評価・改善」の段階)
 
生徒C
生徒D







我が家の課題
実践@
内容:本棚を作って本の整理整頓をした。 内容:玄関マットですべりそうになったから、玄関マットにすべり止めを付けた。
結果:本が納まって部屋がすっきりしたが、入りきれない本があった。 結果:玄関マットがすべらなくなり、事故防止になった。
我が家の課題
実践A
  内容:玄関にいらないものがあって危険だったから、いらないものを片付けた。
  結果:玄関がすっきりとして事故防止になった。
話合い活動の様子@ 話合いの内容:我が家を安全で快適な住まい方にするために、1週間実践してきた結果を報告し合い、課題があれば修正案を考える。
友達から、本が入らなかったので、本棚をもう1つ作るという修正をもらった。 成果があり、修正はなかった。
話合い活動の様子A 話合いの内容:家庭で実践をする上での課題を踏まえて、我が家の課題について緊急度と取り組みやすさを考える。
ほとんどの友達が、自然災害への備えを我が家の課題にしていて、たんすを固定したり、ガラス飛散防止フィルムを貼ったり、家具の位置を工夫したりする対策を考えていた。 友達が、自然災害への備えとして、たんすを固定したり、テレビにすべり止めを付けたりする対策を考えていた。
話合い活動後の感想 「災害を防ぐことを考えてなかったので災害のことも考えなくちゃと思いました。」 「改善策があって、改善したけど、よりよくする方法も見つかってよかったです。」





発表内容 整理・整頓(本) 家庭内事故の防止(玄関マットのすべり止め、梁と柱へのカバー)
自然災害への備え(家具の固定と配置の変更)
整理・整頓(玄関)
通風・換気(のれんの取り付け、網戸の掃除)
発表会後の感想 「僕とはみんな違ってユニークなことをしている人もいたのでおもしろかった。全て、なるほどと思った。」 「友達の家の危険なところと私の家の危険なところで、同じところがありました。どれも同じ改善方法なのに、マットであったらすべり止めを付ける数だとか、クッションだったらどのように付けるのかというのがそれぞれ異なっていました。私は、友達の意見を聞いて、すべり止めの数を少し変えてみようと思いました。」
 5・6/7時間目は、「評価・改善」の段階で、2回の話合い活動を設定しました。1回目は、我が家を安全で快適な住まい方にするために、1週間実践してきた結果を報告し合い、課題があれば修正案を考えさせました。まず、各自で1週間の間に家庭で実践してきた結果を成果と課題について自己評価をさせました。その後、グループで実践結果を報告し合い、改善が必要な実践内容については意見を出し合って修正案を考えさせました。生徒Dにおいては、修正することはありませんでしたが、生徒Cは、本棚を作って本を整理しましたが、まだ入りきれない本があり、それが課題として残りました。グループで話し合い、新たにもう1つ本棚を作ることが修正案として出されました。生徒Cは、図1のように、グループ内での修正案を受け、実践計画書に修正を加えました。

 図1 実践結果についての話合いの記録と実践計画書の修正(生徒C)
 
 この話合い活動後、家庭で実践する上での課題についてまとめ、2回目の話合い活動では、家庭で実践をする上での課題を踏まえて、我が家の課題について、緊急度と取り組みやすさを考えさせました。まず、各自で我が家の課題として考えた全てのことについてセブンクロス法を活用して緊急度と取り組みやすさについて考えさせ、その後、グループで紹介し合わせるようにしました。生徒C、D共に、友達が自然災害への対策について考えていたことに感心していました。生徒Cは、感想の中で、「災害のことも考えなければいけない」と書いていました。生徒Dは、我が家を「よりよくする方法が見つかった」と感想に書き、図2のように実践計画書に「なおした方が良いところ」として自分と家族の部屋の中の地震対策について書き加えていました。
 

 
図2 実践計画書の修正(生徒D)


    このように「評価・改善」の段階に話合い活動を入れたことで、よりよい解決策を考えることができたり、新たな課題に気付いたりするきっかけになっていったと考えられます。
   
 
イ 学級全体
   5・6/7時間目の「評価」改善の段階の場面おいて、実践結果の報告と課題の修正案を考える話合い活動と、我が家の課題についての緊急度と取り組みやすさを考える話合い活動についての感想の内容を分類してみると、グラフ2のようになりました。主な生徒の感想は、次のような内容でした。
     グラフ2 話合い活動についての感想(5・6時間目) 
 
 
主な生徒の感想

多様な
考え
・みんないろいろな課題や改善策があってすごい。
・人の家には、自分とは違う問題もあるんだなと思いました。
・改善策があって、改善したけど、よりよくする方法も見つかってよかったです。(D子)


実践
意欲
・もっと家が安全、快適になるといいです。
・いろいろ班のみんなの意見を聞いて、私も改善する部分がたくさんあったので、これから改善していきたい。
・災害を防ぐことを考えてなかったので災害のことも考えなくちゃと思いました。(C男)

話合い
活動の
効果
・自分の考えた意見に付け加えたりしてくれて、よかった。
・そういうふうにもできるんだなぁと思ったし、修正の仕方がもっと分かるようになった。
   友達の改善策を聞いたり、修正案の提案を受けたりして、考えの違いや家の状況による違いなど多様な考えに気付けた生徒が38%、もっと安全で快適な家にしたいという実践意欲をもった生徒が16%いました。話合いの効果について記述している生徒が27%いました。話合い活動を重ねることで、生徒同士の関係が深まり、意見交流がスムーズに進むようになったことがうかがえます。
 
B 生徒の意識の変容(アンケート結果から)
 ○  問題解決的な学習を取り入れた住生活の学習について
   次のグラフは、「問題解決的な学習を取り入れた授業は好きですか」の質問に対して、住生活の学習の事前と事後にとったアンケート結果です。

 グラフ3 問題解決的な学習について       ※グラフ内の数字については、人数を示しています。
 
32名


31名
   問題解決的な学習を取り入れた授業について、事前アンケートでは「好き」「どちらかといえば好き」と答えた生徒は47%でしたが、事後アンケートでは94%に増加していました。問題解決的な学習を取り入れた住生活の授業が好きな理由としては、次のような内容を書いていました。
  ・家の危険なところを改善することができたから。
  ・プロジェクトをやって問題が解決したから。
  ・家が安全で快適になったから。また、その方法も見つかったから。
  ・課題を発見して改善までいくと、快適になるから。
  ・いろいろな対策が分かったから。
  ・自分の家を見直すことができ、どういった所を改善すればいいか考えることができたから。
 問題解決的な学習を取り入れた授業において、生徒にとって自分の生活を改善していく体験は楽しく、結果が表れることで達成感を感じている様子がうかがえました。
   
  ○   話合い活動について
   次のグラフは、「住生活の学習においての話合い活動は好きでしたか。」の質問に対してのアンケート結果です。

 グラフ4 話合い活動について           ※グラフ内の数字については、人数を示しています。
 

話合い活動について、「好き」「どちらかといえば好き」と答えた生徒は87%で、その理由の多くは「みんなの意見や考えが聞ける」ことでした。そして、それによって「視野が広がった」「参考になった」「気付きにつながった」ことを挙げていました。話合い活動が、問題解決的な学習において効果的に働いたと考えられます。その他に、「いろんなことを話せて楽しくなった」や「自分の意見を言って賛成してくれる人がいた」などを挙げており、生徒同士のコミュニケーションの深まりにもつながっていたことがうかがえました。
   逆に、好きではない理由として「発表や話すことが苦手である」こと以外に、「自分の意見が何だか言いにくい感じだった」ことを挙げていました。「グループ活動の効果を阻むもの」として9つの要因がありましたが、その内の「チームワーク技能の不足」があったことが考えられます。グループの編成やそれぞれのグループに合わせた支援の在り方については、今後も研究をしていく必要があると感じました。

   
 C 生活をよりよくしようとする生徒の育成について
 ○ 授業における取組とこれからの実践意欲について
   住生活の学習の最後となる7/7時間目は、発表会を行いました。その際の発表原稿から生徒のこれまでの取組やこれからの実践意欲を読み取ることができます。
 生徒Eの発表内容抜粋
・・・まず始めに、私はよく家の中でこけたりケガをします。いつもケガをしそうな所は廊下です。理由は、廊下にマットを敷いているので、そのマットで滑ります。これが我が家の課題の1つ目です。解決方法は、マットの下に滑り止めを貼るのと、マットの下に滑らないマットを敷くです。2つの解決方法があったので2つ試してみました。まず1つ目の滑り止めを貼る。これを試してみると、案外よかったのですが、1つではできなかったりして、費用が掛かり過ぎるので、無理かなと思いました。2つ目の滑らないマットを敷くでは、とてもよかったです。理由は、滑らないマットを1枚敷くだけでいいので、費用があまり掛からなかったので、1つ目の課題は、2つ目の方法がベストだと思います。・・・
 生徒Eは、廊下のマットについて改善をしています。2通りの解決方法を考え、実際に試しています。その結果、滑り止めを貼る方法よりマットの下に滑らないマットを敷く方法が経済的によいと判断しています。家庭の実態に合ったよりよい方法を選ぶことができていました。
   生徒Dの発表内容抜粋
・・・これらをきちんと実行するとより安全でより快適な住まいになると思います。工夫したことさらにもっと工夫して実行するともっともっとよくなると思います。毎回、同じように実行するのではなく、どうしたらもっとよくなるかを考えて実行するとよいと思います。これから家庭で実践していく中でどうしたらよりよくなるか、改善法がたくさん見つかるように工夫したことをまたさらに工夫したいと思います。
 抽出生徒Dは、家庭内の様々な課題について、解決策を行ったことを報告しています。さらに、毎回同じように実践するのではなく、どうしたらもっとよくなるかを考える必要性を提案することができていました。
 
  また、住生活の学習を終えての感想を書かせたところ、ほとんどの生徒がこれまでの学習内容を生活に生かしていこうとする様子がうかがえました。
・部屋を片付けて広く感じるようになった。これからもこの快適な部屋を保っていきたい。そして、部屋だけではなく、家中を快適にしたいと思った。
・この学習をして、自分の家でたくさんの課題を見つけることができました。これからは、まだまだたくさん残っている課題を少しずつなくしていき、もっと安全で快適な住まいにしていきたいです。
・学習する前は、けがすることが多く困っていたけど、このプロジェクトをして、家庭内での事故が減ったなと思いました。これからは、自分で気付き改善できるようにしたいです。
・前は安全や快適な家にするなんてことを全然考えていなかったけど、今はそういうのを少し考えるようになりました。これからは、家を安全で快適な家にしていきたいです。
・今回の住生活の学習では、友達の意見などをいっぱい聞けたので、その友達の意見を生かして、これからの生活で活用していきたいです。
    感想の中には、次のような感想もありました。「 これから先、一人暮らしがでてくるかもしれないし、だからこそ、この機会を生かして、もし暮らしたら、周りのことを考えていきたい。また、家族は暮らしについてあまり知っていないと思う。だから、家に帰ったら話をして、理解してほしい。」
  住生活の改善においては、生徒だけではできないことが多くあり、そのため、住まいは、生徒にとってあまり身近なものではなかったと考えられます。そこで、住生活を身近な大切なこととして捉え直し、家族と協力して取り組む必要性を感じられたことは、とても意義があったと考えます。
   
  ○   学習後の家庭での実践意欲について
   住生活の学習終了後の生徒の実践意欲はとても高い結果が出ましたが、生徒の追跡調査を行い、生活をよりよくしようとする生徒の育成につながったのかを確認してみました。住生活の学習を終えた段階で、これからどのような実践をする予定かを尋ねていました。それから2か月以上経過したところで、実際に実践したのかを調べました。その結果、次のようになりました。

  表3 学習終了後の実践予定に関するその後の実践結果
   学習終了後に、実践計画書に沿って実践予定の計画を立てていた生徒は、33名中23名いました。2か月後、計画通りに実践できていた生徒は、23名中13名でした。学習終了後には実践予定の計画を立ててはいなかったにもかかわらず、生徒10名中6名の生徒が実践を行なっていました。 計画をしていて実践できなかった生徒の理由としては、「忙しくて時間がなかった」「買いに行けなかった」といった生徒自身に関わる理由だけでなく、「お金が掛かり実践できなかった」「家族で取り組む時間がなかった」等がありました。このようなケースを想定して、5・6/7時間目に家庭で実践する上での課題についてどのような対応を行えばよいかを話し合ったことが生かされることになると考えます。 
 今回、追跡調査を行ったところ、約6割の生徒が学習終了後も継続して家庭での実践を行っていました。実践していなかった生徒についても、そのほとんどは親に相談するなどの行動を起こしていたことなどから考えると、今回の住生活の学習は、家庭での実践に向けた意欲を高めることにつながったと思います。
 
   
   
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