生活をよりよくしようとする生徒を育てる問題解決的な学習の進め方を提案します!

 2 研究の実際
(3)住生活での実践事例

中学校第1学年 技術・家庭科(家庭分野)学習指導案


1 題材 「我が家を安全で快適な住まいにしようプロジェクト」(内容C−(2))


2 指導観
   住まいは、私たちの生活を危険から守り、心身の健康と安らぎを与えてくれる重要な場でなければならない。しかし、家庭内における死亡事故の件数は、交通事故をはるかに上回っている現状がある。また、昨年の東日本大震災の被災により、住居に対する安心・安全への要求は、ますます高まっている。本題材では、住居の快適性や安全性に関する知識を学ぶ過程で、自らの住生活と照らし合わせて、その中で課題を見い出し、よりよい住生活を送るために、工夫し改善することができるようになることをねらいとしている。このことは、現在及び将来の住生活において、課題をもって実践しようとする態度を養うことにつながり、意義があると考える。  
   事前調査を行ったところ、小学校での住まいの学習内容について家庭で実践している生徒は「している」「時々している」を合わせると、整理・整頓53.1%、掃除59.4%、快適な住まい方68.8%の結果であった。実践していない生徒の理由として「母親がしてくれる」「面倒くさい」「やる気がない」などが挙げられ、生活をよりよくしようとする意欲があまりもてていない状況が見受けられる。住居の快適性については、「快適」「だいたい快適」と回答した生徒は87.9%と高いが、逆に「あまり快適でない」と回答した生徒の理由は全員が個人の部屋をもっていない不満であった。快適性への認識が一人になれるかどうかだけで、家全体の在り様に目が向けられていないことがうかがえる。住まいの安全への関心は「ある」「わりとある」と回答した生徒は68.8%であるが、安全対策を具体的に実践している生徒は53.1%と低くなった。実践していない理由としては、「時間がない」「難しい」「やり方が分からない」「災害が少ないから」などの回答があった。住居の安全については、生徒自身が実践することが難しい内容であることから、関心はややあるものの、親任せで主体的に取り組むことができていない実態がうかがえる。このことから、住居の快適性や安全性を重視した住まい方に関する知識と実践しようとする態度を身に付けることが重要であると考える。
   指導に当たっては、生徒が学習した知識を活用できるように問題解決的な学習を軸に住生活の基礎的・基本的な知識を習得し、常に自らの住生活を意識させながら修正を加えていく学習活動を展開する。その過程では、話合い活動を取り入れ、安全で快適な住まい方について自分の考えを発表したり、他者の話を聞いたりすることで、よりよい住生活を工夫できるようにしていく。

3 題材の目標
   住居の機能と住まい方に関する学習を通して、自分や家族の住空間に関心をもち、安全に配慮した室内環境の整え方を知るとともに、安全で快適な住まい方を考え、具体的に工夫できるようにする。

4 題材の指導計画                (総授業時数 7時間)
〔1〕安全で快適な住まいについて考えよう                2時間
〔2〕安全で快適な住まい方について考えよう                 2時間
〔3〕安全で快適な住まい方を家庭で実践できるように工夫しよう  2時間
〔4〕我が家を安全で快適な住まいにする工夫を考えよう       1時間

5 題材の評価規準

生活や技術への
関心・意欲・態度
生活を工夫し
創造する能力
生活の技能
生活や技術についての
知識・理解
安全で快適な室内環境の整え方と住まい方について関心をもって学習活動に取り組み、住生活をよりよくしようとしている。 安全で快適な室内環境の整え方と住まい方について課題を見付け、その解決を目指して工夫している。   住居の機能について理解し、安全で快適な室内環境の整え方と住まい方に関する基礎的・基本的な知識を身に付けている。


6 指導過程



○ねらい ・学習活動
評価規準
評価規準(評価方法)
関心・
意欲・
態度
工夫・
創造
技能
知識・
理解
○安全で快適な住まいについて考えることができる。
・安全で快適な住まいとはどのような住まいかを話し合い、発表する。
・家庭内の事故には、様々なものがあることや自然災害への備えの必要性を知る。
・自分の家を安全で快適な住まいにするにはどうすればよいかを考える。
(※家庭の室内環境の問題点や危険個所について調べてくる。)
@
   
@
関@安全で快適な室内環境に関心をもって、学習活動に取り組もうとしている。
・行動観察 ・学習カード
知@安全で快適な住まいに関する基礎的・基本的な知識を身に付けている。
・学習カード 
※ペーパーテスト

○室内の空気調節や音と生活との関わり、家庭内の事故の防ぎ方、自然災害への備えなどの視点を通して、安全で快適な室内環境の整え方と住まい方に関する具体的な方法を理解することができる。
・体験や実物、資料等を活用した学習活動を通して、「住空間」「室内の空気調節」「防音」「室内の安全」「災害への備え」について考える。
・自分や家族の住空間について、1週間でできる安全で快適な室内環境の整え方や住まい方を考え、グループで発表し合い、修正案を考える。
A
    @
※3〜7時間目で適切な評価場面を設定する。
 
A
関A安全で快適な室内環境の整え方と住まい方について関心をもって学習活動に取り組もうとしている。
・行動観察 ・学習カード
工@安全で快適な室内環境の整え方と住まい方について課題を見付け、その解決を目指して工夫している。
・家庭での実践記録
※ペーパーテスト
知A 安全で快適な室内環境の整え方と住まい方に関する基礎的・基本的な知識を身に付けている。
・学習カード
※ペーパーテスト

※家庭で実践し、実践結果をまとめてくる。(1週間程度)

○自分や家族の住空間について、安全で快適な室内環境の整え方や住まい方を家庭で実践するための工夫を考えることができる。
・グループで実践結果について発表し合い、修正案を考える。
・家庭で実践する上での課題について話し合い、発表する。
・家庭で実践する上での課題を踏まえて、家庭の室内環境の課題について重要度と取り組みやすさを考え、グループで発表し合い、修正案を考える。
・実践計画書に修正を加える。
     B
※5〜7時間目で適切な評価場面を設定する。
     @
※3〜7時間目で適切な評価場面を設定する。
    関B安全で快適な室内環境の整え方と住まい方について関心をもって学習活動に取り組み、住生活をよりよくしようとしている。
・行動観察 ・学習カード
工@安全で快適な室内環境の整え方と住まい方について課題を見付け、その解決を目指して工夫している。
・学習カード

○これまでの安全で快適な住まい方の学習を生かした 実践計画を分かりやすく伝え合うことができ、よりよい実践計画になるように工夫することができる。
・グループで実践計画書を発表し合い、修正案を考える。
・実践計画書に修正を加え完成させる。
関B安全で快適な室内環境の整え方と住まい方について関心をもって学習活動に取り組み、住生活をよりよくしようとしている。
・行動観察 ・学習カード
工@安全で快適な室内環境の整え方と住まい方について課題を見付け、その解決を目指して工夫している。
・実践計画書 ・学習カード
※ペーパーテストについては、ある程度の内容のまとまりごとに実施する。
 
 @ 授業展開例(1・2時間目)
(1)小題材名  安全で快適な住まいについて考えよう。
(2)本時のねらい
    ・安全で快適な住まいについて考えることができる。
(3)学習活動と評価
時間
学習活動
指導上の留意点
評価場面・評価方法
(分)




1 自分の家は、安全で快適な住まいかを考える。
2 本時の学習のめあてを確認する。
安全で快適な住まいについて考えよう。
・様々な住宅に関する広告から「安全」「快適」の言葉を取り上げ、住まいの安全性や快適性に関心をもたせるようにする。
・「我が家を安全で快適な住まいにしようプロジェクト」の学習内容について説明し、見通しをもたせるようにする。
 
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3 安全で快適な住まいとはどういう住まいかを考える。  
≪ 学習カード≫

・各自で考える。

・グループで考える。

・各グループの発表を聞く。

・全体でまとめる。
  
4 家庭内の事故には、様々なものがあることを知る。


    







5 自然災害への備えの必要性を知る。



6 自分の家を安全で快適な住まいにするにはどうすればよいかを考える。
≪ひらめきの記録≫
≪まとめ方の例≫
・「安全な住まい」と「快適な住まい」についてウェビング法(※1)で考えさせる。
・「解放的な問い」(「『安全な住まい』と『快適な住まい』と判断した項目は何ですか。」)で判断の基準を尋ねるようにする。
  「安全な住まい」…家庭内事故の防止、自然災害への備え、その他
「快適な住まい」…整理・整頓、清掃、通風・換気、採光、防音、室内の空気調節、その他




・絵本「ヒヤリハットさんちへいってみよう!」(出典:株式会社ミサワホーム総合研究所)のイラストから様々なものがあることに気付かせる。
     
・写真や図を活用し、東日本大震災、南海トラフ被害想定、市内の洪水被害や地震等に触れ、自然災害への備えが必要であることを伝える。
・「我が家を安全で快適な住まいにしようプロジェクト」のまとめ方を説明し、自分の家が安全で快適な住まいになっているかを考えさせる。
安全で快適な住まいについて考える場面
■評価方法
【行動観察】 【学習カード】

関心・意欲・態度@
■評価方法
【学習カード】

知識・理解@


7 本時のまとめをする。 ・次時に向け、家庭の室内環境や危険箇所について調べてくることを知らせる。  
※1 ウェビング法・・・ウェビング(Webbing)は、くもの巣(Web)のように連想を広げていく手法である。ある1つのキーワードから思いつく言葉を書き出し、次々とつなげ、思考を広げる。
 
 A 授業展開例(3・4時間目)
(1)小題材名  安全で快適な住まい方について考えよう。
(2)本時のねらい
   ・室内の空気調節や音と生活との関わり、家庭内の事故の防ぎ方、自然災害への備えなどの視点を通して、安全で
  快適な室内環境の整え方と住まい方に関する具体的な方法を理解することができる。
(3)学習活動と評価
時間
学習活動
指導上の留意点
評価場面・評価方法
(分)
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1 いろいろな住まいを知る。

2 本時の学習のめあてを確認する。
安全で快適な住まい方について考えよう。
・家には様々な形や気候風土による工夫がされていることを知らせる。
・TVアニメの1戸建て住宅をモデルに、安全で快適な住まいについて考えていくことを知らせる。
 
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3 「住空間」について考える。
≪学習カード≫

  

4 「室内の空気調節」について考える。
化学物質、一酸化炭素、カビ、ダ二 
5 「防音」について考える。

・騒音計により計測

・騒音を防止する方法
   音を出さない、遮音、吸音

6 「室内の安全」について考える。
    ・幼児体験

・高齢者体験
7 「災害への備え」について考える。 
 ・家具の配置の見直し
 ・家具の地震対策









8 これまでの学習内容を生かし、自分の家を安全で快適な住まい方にするための実践計画を立てる。
≪家庭での実践記録≫
  ・各自で考える。
  ・グループで紹介する。
  ・修正する。

・学習活動の内容の視点ごとにTVアニメの家はどうかを確認させるようにしていく。
・TVアニメの場面絵から、どのような間取りかを知らせる。
・住空間と生活行為との関わりを考えさせ、住居の役割に気付かせる。




・最近の機密性の高い住まいと昔ながらの家との違いに触れることで、換気の大切さに気付かせる。
・様々な生活騒音を計測することで、人によって音の感じ方が違うことに気付かせる。
・目覚まし時計を活用した実験を通して、防音する方法について考えさせる。
・幼児・高齢者体験をさせることで、身体的特徴を理解させる。

・家具の地震対策グッズの実物を提示することで、簡単に災害への備えができることを知らせる。


・「解放的な問い」(「あなたの家を安全で快適な住まい方にするためには、どのようなところに課題がありますか。」)で判断の基準を尋ねるようにする。
・1週間内で実践できる内容に絞って考えさせる。
・机間指導しながら、書けていない生徒には考え方について説明し助言する。
安全で快適な住まい方について考える場面
■評価方法
【行動観察】【学習カード】
関心・意欲・態度A
■評価方法
【学習カード】
知識・理解A

実践計画を立てる場面
■評価方法
【家庭での実践記録】
工夫・創造@
9 本時のまとめをする。 ・次時までにできる安全で快適な住まい方について計画したことを実践してくるように伝える。  

 
 B 授業展開例(5・6時間目)
(1)小題材名  安全で快適な住まい方を家庭で実践できるように工夫しよう。
(2)本時のねらい
    ・自分や家族の住空間について、安全で快適な室内環境の整え方や住まい方を家庭で実践するための工夫を考える
  ことができる。
(3)学習活動と評価
時間
学習活動
指導上の留意点
評価場面・評価方法
(分)


1 本時の学習のめあてを確認する。
安全で快適な住まい方を家庭で実践できるように工夫しよう。
・前時で計画したことを家庭で実践したかを確認する。  
10


10

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2 家庭での実践結果についてまとめる。
≪実践結果についての話合い記録≫
3 グループ内で実践結果について話し合う。
4 家庭で実践をする上での課題についてまとめる。
  ・グループで考える。

・各グループの発表を聞く。

・全体でまとめる。
  
5 家庭で実践する上での課題を踏まえて、自分の家での課題について緊急度と取り組みやすさを考える。
≪課題内容と実践(セブンクロス法)≫

・個人で考える。

・グループで紹介する。

・修正する。








6 「我が家を安全で快適な住まいにしようプロジェクト」に修正を加える。
7 「我が家を安全で快適な住まいにしようプロジェクト」の発表原稿を作成する。
≪発表原稿作成シート≫

・成果と課題についての自己評価を4段階で示し、理由を説明することを伝える。

・グループ内で実践結果の評価や改善について話し合わせる。
・実践した上での課題、実践できていない場合はその課題について、代表的なものを2つ選ばせ、比べながらその特徴を発表させる。
・家庭で実践する上での課題についてまとめさせる。
 
実践への低意識、計画不足、 経済的な問題、家族の理解不足、住宅環境の問題 等

 






・「解放的な問い」(「あなたの家での課題を緊急度の観点と改善策の取り組みやすさの観点で判断すると、どうなりますか。」)で判断の基準を尋ねるようにする。
・セブンクロス法(※2)で付箋を活用して課題解決への実践意欲につなげられるようにする。
     
・既存のものを消さずに、修正した部分が分かるように赤で記入させる。
・発表内容は、課題と解決策だけではなく、課題として選んだ理由や実践した成果と課題、修正したことなども加えさせるようにする。
・分かりやすく発表できるように、声の大きさや指示棒、実物、拡大図など、工夫させるようにする。
グループでの話合いの場面
■評価方法
【行動観察】【学習カード】
  関心・意欲・態度B
評価方法
【学習カード】
  工夫・創造@
8 本時のまとめをする。
       
・次時に向け、「我が家を安全で快適な住まいにしようプロジェクト」の発表準備をしておくように伝える。  
※2 セブンクロス法・・・アメリカのカール・グレゴリーによって開発されたアイデア発想法。セブンクロス(7×7のマトリックス)を使いアイデアを発想していく方法。出てきた意見の全体像が一目で把握でき、しかも重要な項目が左の上に集中していることで、何が課題であるかを判然と読み取ることができる。
 
 C 授業展開例(7時間目)
(1)小題材名  我が家を安全で快適な住まいにする工夫を考えよう 。
(2)本時のねらい
  ・これまでの安全で快適な住まい方の学習を生かした実践計画を分かりやすく伝え合うことができ、よりよい実践計画になるように工夫することができる。
(3)学習活動と評価
時間
学習活動
指導上の留意点
評価場面・評価方法
(分)




1 本時の学習のめあてを確認する。
我が家を安全で快適な住まいにする工夫を考えよう 。
・発表原稿ができているかを確認する。  
















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2 「我が家を安全で快適な住まいにしようプロジェクト」(実践計画書)の発表会の要領を確認する。
≪学習カード≫             

・2分程度…説明

・1分程度…意見・質問・感想の記入

・2分程度…質疑応答
    
3 発表会を行う。
  
4 「我が家を安全で快適な住まいにしようプロジェクト」(実践計画書)を修正し完成させる。
5 住生活の学習を終えての感想を書く。

6 これからの住まいについて知る。

・ポスターセッション方式で他のグループの前で発表を行うことを伝える。
・意見3点、質問2点、感想1点の配点を示し、よりよい実践計画にするために意見や質問を重要視していることを伝える。
・意見はピンクの付箋、質問は水色の付箋、感想は黄色の付箋に記入させ、質疑応答後に発表者に渡すようにする。
・発表順については、教師が事前の発表原稿を確認し、同じ程度の長さの生徒同士で行わせるようにする。





・教師が、全体の様子を見て質疑応答の時間をとり、発表の開始は同時に行うようにさせる。
・聞き方、説明の仕方、記入の仕方、質疑応答の進め方等について机間指導をする。



・意見・質問・感想への対応をまとめさせ、友達の意見等を参考に、実践計画書の最後の修正を加えて完成させる。
・数名の生徒に発表させ、これからの住生活に対する意識を深め、実践意欲につなげられるように感想を共有する。
・「解放的な問い」(「あなたの家の課題や改善策は、地球環境の保全についても考えることができていますか」)で判断の基準を尋ねるようにする。
・これからの住まいの考え方として、地球環境の保全を考えた環境共生住宅を例に挙げて紹介する。
発表会の場面
■評価方法
【行動観察】【学習カード】
 関心・意欲・態度B

実践計画書を修正する場面
■評価方法
【実践計画書】【学習カード】

工夫・創造@






7 本時のまとめをする。 ・これからの住生活をよりよくするために実践を促す。  
 

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