話合い活動のよさを生かした学級活動内容(2)の授業を提案します。

2 研究の実際

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(5)  授業実践【学級活動内容(2)】

  本研究が提案する授業モデルを基に中学校で行った実践例を示します。
【中学校第1学年】学級活動内容(2)における授業実践…6月題材

題材

自分を知る、友だちを知る

  イ 自己及び他者の個性の理解と尊重
 
  指導案
段階 活 動 過 程



指導
○ 題材決定
1 教師で今回の題材名、柱などを考える。
○ ペア活動
1 次の4つのテーマについて互いの考えを聞き合わせる。
@ 自分らしさとはどのようなところだと思いますか。
A 身近な人のよさはどのようなところだと思いますか。
B 自分らしさやその人らしさを大事にすることはどうして大切なのだと思いますか。
C 1−○のみんなが自分らしさやその人らしさに気付き、それを大事にするためには、あなたは何をすれば
  よいと思いますか。
 題材に対する自分の意見を学級会ノートに記入させる。
○ 計画委員会(司会団、教師などで編成されるもの)
1 ペア活動で出た意見を基に実態を分析させ、話合いの流れを把握させる。
提案理由を検討させるとともに、本時の活動計画を作成させる。




題 材 互いに個性を輝かせよう。
提案理由  みなさん、自分らしさやその人らしさに気付いていますか。中学校に入学してから2か月が過ぎ、 最近の1−○のみんなは中学校生活にも慣れ、お互いにどんな個性をもった人かが少しずつ分かるようになってきたのではないでしょうか。ここで、今よりもっと自分らしさ、その人らしさをお互いに大切にして学校生活を送ることができるとよいと思い、この題材を提案します。
話合いのめあて ・今日の話合いのめあては、一人一回以上大きな声で発表する。
・話を聞く人はしっかり相手の意見を聞く。
話合いの流れ
1 はじめの言葉
2 司会グループの紹介
3 題材と提案理由、話合いのめあての確かめ
   
   
4 話合い
  柱1 「自分らしさやその人らしさに気付いていますか。」
先生の話
 
今日の題材を決定した理由を○○さんから言ってもらいました。 最近このクラスで、ちょっともめごとがありましたね。 それに関わったのは2人だけでしたが、みんなにも関係してくることだと思います。 今日は提案理由にもあるように、みなさんがお互いにその人らしさを大切にして 学校生活を送ることができるようにしてほしいと思って、この題材を決定しています。 先月、「本を読むのが好きな人」とか「自由な人」などのその人の特徴を言われてあてはまれば手を挙げるというレクレーションがありました。覚えていますか。この人はこんな個性があるんだ、 こんないいところがあるんだと初めて気付いた人もいたと思います。 今日はそのときのことを思い返しながら、話し合ってみましょう。
  柱1は自分らしさやその人らしさについてです。みなさんが気付いていることを発表してください。では議長さん始めてください。


 
主な生徒の意見
・私は自分のことはなんとなく気付いていますが、クラスの人はあまり気付いていないと思いました。
・自分らしさにはあまり気付いていませんが、その人らしさには何人か気付いています。
・ボクも○○さんと同じで自分らしさにはあまり気付いていませんが、その人らしさには気付いています。
・自分らしさには気付いているけど、他の人には気付いている人もいれば、気付いていない人もいる。
・(教師)個人的なことが出てもいいですよ。この人はこうだよねえというような。
・個性的な人がいっぱいいると思います。
・なんか明るい人が多いと思います。
・○○さんはいつもクラスのみんなを明るくしてくれる。
・○○さんが学級委員長としてみんなを引っ張っているなあと思いました。
・○○さんはみんながうるさいときにいつも静かにさせてくれる。
・授業中に積極的に発表している人とそうでない人がいて差があると思いました。
・自分の意見をもって話せている人と話せていない人がいる。
・自学ノートがほぼ毎日みんな出せている。
・助け合いなど協力し合っている。
・少しけじめがないと思います。
・前向きな人が多いと思います。
・少し言葉遣いが悪いと思う。
・給食の時間が時間内に終えている。

【挙手して発言する】

【意見を板書する】
   
  柱2 「自分らしさやその人らしさを大事にすることはどうして大切なのだと思いますか。
先生の話
 柱1ではたくさんの意見が出ました。個人の名前も挙げてその人のいいところを具体的に言ってくれた意見もありました。学級全体の傾向としてもよいところとか足りないなというところも発表してもらいました。一人一人のみなさんが学校生活の中でいろいろな人の個性についてよく気付いていると思いました。
 また、発表された意見に対する拍手も大きかったです。よい雰囲気で話し合っていると思います。柱2では、個性を大事にすることはどうして大切なのか、どうして必要だろうかということを考えてみましょう。
 
主な生徒の意見
・なぜ大切かというと、コミュニケーションを深めたり、友達関係を築いたりするのに大切だと思います。
・人の気持ちを考えて、人を傷つけないために大事だと思います
・大事にすると友達関係が今よりもっとよくなると思うからです。
・ボクも○○さんと同じで、お互いの個性を大事にしないと信頼できないと思いました。
・その人らしさを知らないとその人が何が得意かなどが分からないので、いざというときに自分の実力が発揮できない、 引っ込み思案なクラスになると思うからです。
・私もその人らしさを大事にすることは大切だと思います。なぜかというと友だちともうまくいかないと思うからです。
・自分らしさやその人らしさに気付いていないと、クラスで協力することができなくなると思うからです。
・一人一人に個性がないとすべての人が同じになってしまうからです。
・自分らしさやその人らしさが分かれば、ある程度コミュニケーションがとれるからだと思います。
・自分らしさが出せないと、発表で自分の意見を出せなかったりするからだと思います。
・人の意見にばっかり合わせたら、きついから。
・○○さんに似ていて、その人らしさを一人一人が発揮して、授業中など有利に進めていくためだと思います。
・自分に自信を持つためだと思います。
・優柔不断になる。自分で決められなくなるっていうか、迷って「うーん」ってそんな感じです。
・決断できなくなる。人に頼ってしまう。
・○○さんがいったように、自分の意見が尊重されなかったら、一つの考え方でしか授業が進まなくなると考えました。
・○○さんとおなじで、自分のしたいことができなくなってしまう。
・一人一人の意見があるからこそ、学級はひとつになれると思います。

【発表の様子 】

【意見を板書する】

  柱3 「1−○のみんなが自分らしさやその人らしさに気付き、それを大事にするためには、あなたは何をすればよいと思いますか。
先生の話
 柱2でどうして大切なのかという意見がたくさん出ました。相手の考え方が分かるとか、その人らしさを知っている方がうまく関わっていけるなど、確かにそうだと思います。 友達の大切さが分かるからうまくやっていけるというように、自分らしさを出せると互いの存在価値に気付けるようになるんじゃないかと思います。
  柱3を見てください。大切だということを確認した上で、じゃあ自分は何ができるか、何をしたいのか、実際何をどうしていくことがいいのかという話合いをしたいと思います。

例えば、自分の意見を発表した時に、周りの人はその人が自分の意見を自分らしく発表できるようにするにはどうしたらいいですか。周りの人が意見を聞いて拍手することも大事にしたことになりますよね。そういったことです。みんないいことを書いている人がたくさんいます。その意見を全体に出してほしいと思います。

 

【相手の意見を聞く】

【板書の様子】
主な生徒の意見
・その人らしさに気付くには、まず気軽に話し掛けたりすることが大切だと思いました。
・まず,その人のことを知るために、自分の好きなことや嫌いなことを教え合うこともいいと思います。
・その人らしさやよさを引き出せばいいと思います。
・今まで以上に男女仲良くしたらいいと思いました。
・友達に優しくしたり、協力したりしてもらったらちゃんとありがとうと言うとよいと思いました。
・いつもみんなに優しくすればいいと思いました。
・自分がされて嫌なことは人にもしない方がいいと思います。
・コミュニケーションをもっととったらいいと思います。
・自分の意見ばっかり言わずに人の意見も聞いたほうがいいと思います。
・一人一人の意見を尊重しあう。
・人によって態度を変えない。
・何も言わないんじゃなくて、相手の意見を聞いて、自分自身の意見を言った方がいいと思いました。
・○○さんと似ていて、一人一人のいいところを見つけ合うことが大切だと思います。
・人の意見を聞いて、自分の意見をもっていたら、自分と違うところが発見できて、話合いのときとか面白いから。
・○○さんと似ていて、人の意見を聞いていたらその人の個性が分かるから。
・一人一人が友達のことをよく知ることが必要だと思います。理由はそうしたら人の心が見えると思ったからです。
・自分らしさをもって、けんかなどをしないほうがいい。
・人をいつもずっと見ていたらいいと思います。人を見ていたらその人らしさが分かると思います。

・○○さんのけんかをしないほうがいいっていうのに反対で、けんかをしたら、そのけんかをして学んだりすることもある。
・○○さんと同じで、けんかをしてもいいけど、なんか暴力じゃなくて、やっぱり暴力をしたらいけないと思う。口げんかとかも行き過ぎがあったらいけない。
・自分らしさをもっていなかったらけんかをしてもいいんですか?
・けんかはいいけど、あとで何でけんかが起こってしまったのかとか、どうしたらいいかを考えたらいいなと思いました。
・○○さんに付け加えで、けんかかあった後、きちんと謝ったらいいと思いました。


【学級会ノートの例】

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5 話合いの確認
柱1〜柱3で出た主な意見の確認をノート書記が発表します。


 
6 話合いの気付き・自分のめあて
  みんなが、自分らしさやその人らしさに気付いたり、それを大事にしたりするために、自分が取り組む活動をめあてに書きましょう。

【めあての配布】
 
7 意見を上手に聞いていたで賞ときちんと自分の意見を伝えていたで賞の発表
  人の意見を聞き、上手に聞き返していた生徒、きちんと自分の意見が伝わるように発表していた生徒を司会団が選び、表彰します。

【表彰の様子】

8 先生の話
   今日の意見を上手に聞いていたで賞は○○くんが取りましたけど他の人はどうでしたか、自分もしっかり発表する人の意見が聞けていたでしょうか。
 中学校になって初めて学級会をしました。初めてだったのでみんなの前で手を挙げて発表するとか小学校以来じゃないかなあと思います。最初はなかなか手が挙がらなかったけれども、何人か積極的に発表しようとしてくれた人たちがいました。話合いのめあてで「一人一回は発表する」があったから、後半は発表する人が増えてくれてよかったと思います。
 
今日のために司会団の人たちは数日前から昼休みやら放課後に集まって、放課後残っていろいろ作ったり話合いをしたりして準備をしてくれました。みなさんも話合いを上手に進めてくれた司会団の人たちに拍手をお願いします。
  さて、今日みなさんは自分のめあてを決めてくれました。このめあては「自分らしさやその人らしさをお互いに大切にして学校生活を送ることができる」ようにするために決めました。これからみなさんが決めためあてをきちんと実践してほしいと思います。自分で決めることを「自己決定」といいます。みなさんの決めためあてがきちんと実践されて初めてめあてを自己決定したことになります。 めあてを決めただけで実践しなかったら自己決定したことにはならないのです。ですから、めあてを決めた今、自分がどんな場面で自分が決めたことを実践しなければならないのかをしっかり思い浮かべてください。 自分の決めたことがきちんとできているかを帰りの会などで振り返りたいと思います。
9 終わりの言葉



指導
○めあての確認

【めあての掲示の様子】

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朝の会で自分の実践するめあてを確認させる。めあてを実践する場面を意識させる。自分の実践を振り返って、めあてをよりよいものに変更させることも考えられる。
○実践活動
めあてを意識させながら生活させる。また、他の生徒の実践の様子にも注意を向させる。
○振り返り活動
帰りの会でめあてに対する自分の実践を振り返らせ、振り返りカードに向上した点や課題について記述させる。
 生徒は話合い活動を経て自分のめあてを設定し、実践に取り組んだ後、最後に振り返りを行いました。振り返りカードの記録や担任の生活記録等で、次のような生徒の態度や意識の変容が見られました。
  生徒の様子から見る意識の変化
  男子生徒の乱暴な言葉遣いや人を責める言い方などが、めあてを実践する中で徐々に相手に気を遣って話し掛けるなど態度に変化が現れるようになってきた。
「いろいろな人に挨拶して、仲良くなってその人のよさを知る」ことをめあてにした生徒の場合には、実践している様子が周囲からも分かりやすく、自分なりの目標を立てて、振り返ることができていた。
みんなお互いに相手のことを考えて助け合わないといけないのかなあという雰囲気が感じられるようになった。
・振り返りが苦手だった生徒も、よい振り返りにシールを貼るなどの工夫によって、形からではあるけれども、まねて振り返りを記入するようになった。
  ○教師から見る、話合い活動を取り入れた指導のよさ
  ・めあてを書くときに学級全体の実態を考えながら自分のめあてをたてるようになる。
・事前の指導から話合い活動を経て実践、振り返りをすることで、考えをもって話合いに参加し、練り上げて、学級に対して自己決定している様子が実感できる。
・この活動を通して、自分の意見に賛成してもらった、受け入れてもらったという体験や仲間づくりができる。
・基本的にどの場面においても前向きに取り組んでいる様子がうかがえる。生徒は自分の思いを伝えたいと考えているし、聞いてもらいたいと考えているので、この一連の活動は生徒のニーズに合っていると思う。

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