話合い活動のよさを生かした学級活動内容(2)の授業を提案します。

2 研究の実際

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(5) 授業実践

  本研究が提案する授業モデルを基に小学校で行った実践例を示します。

【小学校第4学年】学級活動内容(2)における授業実践

題材

気持ちのよい挨拶

 
イ 基本的な生活習慣の形成  
指導案
段階
活 動 過 程
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○ 題材設定
【題材設定】
「挨拶」「廊下の通り方」「整理整とん」の中から児童と教師で題材を決める。
○ アンケート調査
アンケートを実施する。(実態の把握、意識付け)
 第1回計画委員会
【原案】
 教師と計画委員会で、題材名、話合いのめあて、柱などを考えて原案に書く。
役割分担をする。(司会、進行、黒板記録、ノート記録など)
 実態調査
【実態調査】
一週間自分の挨拶の状況を調べさせ、課題意識をもたせる。
 道徳の授業
 
「江戸しぐさ」(『明日をめざして6年』東京書籍)
挨拶などちょっとした仕草が周りの人を気持ちよくさせることに気付かせる。
 
 原案の配布
原案に自分の考えを前もって書き込ませる。

 ペア活動
【ペア活動】
 
ペアで聞き合うことで、学級会ノートに書いた自分の意見を確認したり書き加えたりさせる。
教師は、ペア活動後児童の学級会ノートを見て、意見の内容を把握したり、励ましの言葉を書いたりする。
 第2回計画委員会
【アンケート結果】
話合い活動の準備と打合せをさせる。 アンケートを集計し結果を模造紙にまとめさせる。

本時の

題材
一人一人が自分らしいあいさつができるようにするには、どうしたらいいか考えよう。
提案理由
形だけではなく、相手よりも先に笑顔のあいさつを一人一人が心がけると朝から元気いっぱいで学校生活を送れると思い提案しました。
話合いのめあて
・ 今の自分のあいさつを振り返り、自分のあいさつをもっとよくする方法を考えよう。
・ 友達の意見を最後まで聞き、自分のめあてを決めよう。
話合いの流れ
1 はじめの言葉
2 運動会での応援歌
3 役割の紹介

4 題材の確認

5 提案理由

6 話合いのめあての確認
  7 話合いの柱の確認 

8 話合い
柱1を話し合う前の先生の話
   

   

【学校の合い言葉を示す】
【児童がアンケート結果を報告】
柱1 友だちや先生にきちんとあいさつができているかな?
ぼくは、「先に」があまりできていなくて、「笑顔で」と「元気よく」はできていると思います。 【話合い活動の様子】
私も○○さんと同じで、「先に」があまりできていません。理由は、先に言ってから無視をされたら怖いからです。
先生や上級生に会ったとき、ちゃんと挨拶をしています。でも笑顔でできません。その理由は、挨拶が返ってこなかったときどうしようという気持ちがあるからです。
私は地域の人にはきちんと挨拶をしています。どんな挨拶かというと弾むような挨拶をしています。
 
柱2に向けての先生の話
柱2 あいさつをすることは、どうして大切なのかな。
朝、学校に来たときに挨拶をすると「今日も一日頑張ろう」という気持ちになってパワーももらえるし、相手の心の色をオレンジ色に変えてあげられるし、これからたくさん挨拶をしようという気持ちになるからです。
「すずめ百まで踊り忘れず」のように小さいときに挨拶をしなかったら大人になって困るからです。
挨拶は、相手の存在を認める大事なことだと思います。
元気よく挨拶をすれば、された人はいやなことがあった人でも元気になるかもしれないし、仲良くなるきっかけにもなるからです。
   
柱3に向けての先生の話




 
柱3 あいさつをもっとよくするためには、どうしたらいいのかな。
挨拶チェックカードを自分で作り、先生への挨拶も友達への挨拶もそれを生かし、ここ一番の挨拶名人がいる学校にしていきたいです。
常に自分がこのクラスのことを好きだと思っていると自然に挨拶ができるようになると思います。
挨拶をした回数をヤッターノート(日記帳)に書いていけばいいと思います。
「ふり返りカード」を見て気づいたことや心がけたいことをヤッターノート(日記帳)に書いて週の最後にできなかったことを反省し、次の週に生かしていけばいいと思います。
   
めあてを決める前の先生の話
 
 9 めあてを書く
10 話合いの気付き
11  ○○賞の発表 
12
  先生の話
 
【校長先生からの手紙を読む】

13 終わりの言葉





○ めあての掲示

具体的なめあてを「ふり返りカード」に記入させ、教室に掲示する。

 
○ 実践活動
毎朝校長先生に挨拶をしに行きました。 毎朝校門に立ち「あいさつ運動」をしました。
   
○ 振り返り活動
日々「ふり返りカード」で実践の振り返りをします。
一週間実践したらペアで振り返りをし、2週目の実践に生かします。
 

1週目のめあて
1週目の
日々の実践の振り返り
1週目の振り返りと
ペアによるコメント
1週目の反省を踏まえて変更する児童は記述する
2週目のめあて
2週目の
日々の実践の振り返り
2週目の振り返りと
ペアによるコメント
   
<ふり返りカード>
 児童は話合い活動を経て自分のめあてを設定し、日々の振り返りを行いながら実践に取り組みました。ここでは、ペア活動後のアンケート、話合い後のアンケート、実践後のアンケート、「ふり返りカード」、学級会ノートの記述及び教師の観察により児童の変容を見ました。
○ 意欲の高まりの感じられる児童の感想
 
ペアの人にアドバイスをもらったりして、発表に自信がついたし、もっと詳しく言わないといけないなあと思いました。
 
話し合う前は、自信がなくて、あいさつはあまりしていなかったけど、学級会で話し合ってからは友達ががんばっている姿を見て、自分もいつの間にか大きな声でするようになりました。これからは、あいさつのカードがなくても自分の心の中のめあてを意識してあいさつをたくさんしようと思いました。
 
みんなで話し合ったことで、あいさつの大切さがよくわかりました。もし話し合っていなかったら、その大切さもわからずに形だけあいさつをしていたような気がします。みんなに感謝したいです。 
 
「あいさつをしなさい」と先生から言われてするといやいやながらしていたような気がします。自分たちで決めたことだから自分のめあてが全部○だったらうれしいし、めあてがなくなってもあいさつ名人をめざしてがんばりたいです。 
 
以前は、はずかしがってなかなかあいさつができなかったけど、めあてを自分で決めて自分で実行したら、どうやったら自分らしいあいさつができるか考えられたので、前よりも何倍もよくなりました。そして、アドバイス(ペア日記)をもらった2週間目はさらによくなって、クラス全体が明るくなったような気がするので、あいさつは周りを明るくするまほうみたいです。
  友達のアイディア(柱3)がとても参考になったし、友達からたくさん勇気をもらいました。学級会があったからこそ、みんな相手をハッピーにさせたいという思いであいさつをしていたので、やっぱり話し合うことは大事だなと思いました。
  自分が決めためあても最初はなかなかできなかったけど、みんなが自分のめあてを達成しようとがんばっているのを見て、わたしも自分からすすんで取り組めるようになりました。
  1週目と2週目同じめあてにして取り組んだら、自分の成長のあとがよく見えたから、とてもうれしかったです。2週目が過ぎても自分であいさつカードを作って取り組みたいです。
  みんなで話し合って決めたことだから、男女関係なくしぜんにあいさつができました。話し合わなくて決めためあてだったら、男女関係なくできなかったと思います。これからも、男女協力していろんなことを取り組みたいです。
○ 教師の感想から見る、話し合い活動を取り入れた指導のよさ
 
ペア活動で、一度意見を友達に言っているため、それが自信となり、今まで発表できなかった児童が発表することができました。また、ペアの児童が意見を知っているため、話合い中で「ほら、ここ、発表した方がいいよ。自信をもって。」と励まされ、やっと手を挙げ発表することができた児童がいました。
 
児童の発言の中に「『先に笑顔で元気よく』を徹底してすればいいと思います。」というものがあった。これは教師の話で紹介した「先に笑顔で元気よく」という○○小のキャッチフレーズや「徹底」という大好きな校長先生の集会での話が印象に残っていたことが原因だと考えられます。教師の話の中に短く端的な言葉を入れると効果的で印象深いものになるのだと感じました。
 
実践の期間が終わっても、校長室に挨拶に行ったり、雨の日にも、校門であいさつ運動を続ける児童がいました。しかも、自ら楽しんで活動をしており、校長先生に毎朝挨拶に行っていた児童は、教頭先生にも挨拶へ行くようになりました。
 
4年生が話し合ったことを生活主任の先生が取り上げ、全校朝会でその内容について全校児童に向けて話をされました。1クラスから全校に広げ、代表委員会などで話合いをもつなどの取り組みに今後広げられたらよいと思いました。
 
「みんなで話し合って決めたことだから、自分も恥ずかしがらずにあいさつができてうれしかった」という感想がたくさんありました。教師が促すだけの指導や全体で話し合わずに自分で考えさせためあてからの取り組みだったら、ここまで盛り上がっていなかったと思います。話合いで一人一人の思いを共有し、みんながめあてに向かって頑張っているから、自分もめあてに向かって頑張れる。話合い活動を取り入れたからこそできたことだと思いました。
 
柱2で「挨拶の必要性」について話し合ったことは、心に響くとても効果的なものでした。子どもたちは、得てしてその理由(大切さ)を知らずにやっていることが多いような気がします。それを大人ではなく友達の考えから知ることができたことが、自然な形で受けとめられ、自発的な実践力へと結び付きました。話合い活動は、魔法のような効果をもたらします。
 
二週間の振り返りが終わった後でも自分のめあてを継続させたり、めあてがなくても自然な形で挨拶ができる児童が増えました。その後、クラス全体の挨拶に少し元気がなくなってくると、朝の会の「一週間のめあて決め」で「今週は、大きな声であいさつをしよう」とみんなで決めるなど、以前話し合ったからこそ、また自分たちで頑張っていこうとする意識が生まれました。

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