小学校生活科におけるこれからの「学び」について提案します

2 研究の実際

 (5)学習カード(ワークシート・振り返りカード)作成のポイントと作成例
  @ ワークシートの作成にあたって
   ワークシートのよさは、児童の意欲や思考や気付きなどを自分自身や他の人に見える形にできることです。
 ワークシートに表すよさについて具体的には・・・・・
 
自分の思いや願いを明確にすることができ、これからの学習の見通しを確かめることができる。
表すことによって、思考することができたり、自分の思考の過程を確かめたり、修正したりすることができる。
気付いたことを記録し、次の学習に生かすことができる。
表したワークシートを活用して、伝え合うことにより、活動の見通しに生かしたり、友達の考えや気付いたことから、次の自分の活動へ生かしたりすることができる。
教師側からの働きかけとして、ワークシートを基に見取り、対話や価値付けなどの支援に生かすことができる。
  などがあります。
   そこで、限られた時間内で、具体的な活動や体験の時間を保障し、効率的で効果的な活動につながるようなワークシートの作成について考えました。
   
 
○ 単元の導入段階におけるワークシート作成のポイント
   導入段階では、これからの活動に向けての自分の思いや願いをもつことができるように促すワークシートの作成が必要です。児童の思いや願いが明確に表れるよう、思いや願いをもつまでの過程や自己決定ができるような項目を盛り込みましょう。また、場合によっては、思いや願いをより確かなものにするために、伝え合う活動を生かすような項目も盛り込むことも考えられます。
 
作成例
作成のポイント
自分の活動や考え、気付いたことなどを表現することで、これからの活動の見通しをもつことができた、伝え合う活動の基となります。
自分の活動についての振り返りを一単位時間に位置付けましょう。児童自身に自分のことを見つめさせる機会でもあり、教師が支援を行うきっかけにもなります。
伝え合うことで、思いや願いをもつきっかけになったり、これからの活動のヒントとなりったりします。特に、なかなか自分一人では自分の思いや願いをもてない児童にとっては活動を促すよい刺激になります。
   
 
○ 単元の展開段階におけるワークシート作成のポイント
   展開段階では、対象に直接働きかける活動によって、児童の気付きが生まれやすく、それを自覚化したり伝え合ったりできるようなワークシートを作成するとよいと考えます。対象に働きかける活動の途中や、対象に働きかける活動後にワークシートに表現する活動を位置付けます。この位置付けを意識しておくことで、児童の気付きを引き出したり気づきの質を高めたりするための一つの手立てとして活用できます。
 
作成例1
作成のポイント
付せんに書いたものを伝え合う活動で、伝えてもらった付せんやカードを貼っていき、振り返りを行う際に見ることができるようにします。
ワークシートの最後には、次の活動への見通しや方向性をもたせるための項目を設けるようにします。その項目で、児童の考えが想定でき、その中から教師の意図をそれとなく知らせたりする場合には、選ばせたりすることも、短時間にできる一つの手立てです。選択肢にない場合は、記述できる欄を設けることも必要です。
   
 
作成例2
作成のポイント
何のことについて書くのか、学習のめあてに沿った事柄を明示しておくと、視点が明確になり、具体的な内容について記述させることができます。
一般的に多く使われている、絵と文によるワークシートです。教師側からの意図的なワークシートも、あまり項目が多いと児童の思考の妨げになることがあります。特に充実した活動や体験後などはこのスタイルが表現しやすいようです。また、文章と絵のスペースの比率や行間等、児童の発達の段階に応じて使い分けることがポイントです。
児童の記述から気付き等を見取り、さらに気付きや思考、意欲を引き出す支援を行うようにします。
視点を変えた項目や、次の時間への見通しをもつための項目を設けてもよいと思います。できるだけ児童の思いや願い、気付きや考えなどをとらえて言葉掛けや場の設定などの指導や支援に生かすことを意図します。
   
  A  ワークシートから見取り、指導・支援に生かすには・・・
 導入段階でなかなか思いや願いをもつことができない児童もいます。そのような児童は、友達の様子から刺激を受けて「してみたいなあ」と思い始め、活動へのきっかけにつながっていきます。かいていなくても、「何をしようか考えている。」「まだ決めきれないでいる。」ということを伝えることで伝え合う活動ができます。思いや願いをもってすでに対象に深く関わるような児童の表現物を見たり、対象の面白さを伝えてもらうことで、よい刺激になり、「やってみたいな」という思いをもつことができると考えます。
 できれば、活動後すぐに記述させるようにします。別の日やしばらく時間が経過した後では、記憶が薄れ、気付いたことを見逃してしまいます。個別に児童に言葉掛けをし、児童の思いや考え、気付きなどを引き出しながら「今言ったことを(今したことを)これに書いてみましょう。」と促すとよいと考えます。このように、児童と対話し、引き出したことを児童に返すことで気付きの自覚化を促すことができると考えます。
 どうしてもその時間に個別にかかわることができなかった児童へは、休み時間等に尋ねたり、あるいはコメントを書き入れるなどして、気付きや考え等を引き出したり、次の活動への見通しをもたせるようにします。掲示物として利用し、お互いのワークシートを見せ合うことも、気付きの質を高めるよい機会と捉えます。気付きだけでなく、活動への意欲をもつことができたり、友達とのよりよい関係作りにもつなげることができると考えます。
 
   B 振り返りカード作成にあたって
単元の終末では単元全体の振り返りの場を位置付けることが大切です。その際、振り返りカードとともに、自分の活動や工夫、気付きなどについてこれまで表現してきたワークシートの綴りを活用し、自分の活動を見つめさせることで自分への気付きの質を高めるようにしていきます。
 

○ 単元の終末段階における振り返りカード作成のポイント

 
作成例
作成のポイント
振り返りの初めの項目は、明確に活動が思い出せる項目がよいと考えます。そこから少しずつ自分のよさに目を向けられるような項目にしていきながら振り返らせることを意図しています。
作文による振り返りもよいのですが、自分自身への気付きを明確に促すためには、キーワードとして必要な事柄を盛り込んでおくとよいと考えます。 項目から児童自身が選んで、その項目についての説明をすることで、自分自身への気付きについて児童自身が考え、見付けることができると考えます。
   
 C 振り返りカードから見取り、指導・支援に生かすには・・・・
 項目を選択する振り返りについては、なぜ「まあまあ」を選んだのかその理由を尋ねることが必要です。対話の中から児童の考えや思い、気付きなどが引き出すようにします。それらを下の記述の部分に書かせることで、思いや考え、気付きが深まったり広がったりします。
 児童が表現した思いや考え気付き等を教師が価値付けをすることによって、ますます児童の意欲が高まり、生活の場面や次の学習に生かしていくことができると考えます。
 児童は、教師や友達からの言葉掛けや自分が表現してきたワークシートの綴り等(資料1)を活用し、自分を見つめ、自分のよさを味わうことができるようになっていきます。
 
ワークシートの綴りの例:その1
(ワークシートをつなぎながら蛇腹式に綴じる)
ワークシートの綴りの例:その2
(ワークシートを少しずつずらしながら上に貼り重ねていく)
資料1 ワークシートの綴りの例
   
 D ワークシートと振り返りカードのつながり 
 このように単元を通してのワークシートや作品等も活用し、単元ごとに一つのブック形式にして残すことも児童にとっては財産にになります。さらに学年末に単元ごとのブックを集め、年間まとめてセットで振り返り、改めて自分の成長に気付かせたり、新しい学年への意欲付けを図ったりしていくことができると考えます。(年度当初、あらかじめどのような大きさや形態で学習の足跡を残させていくか、想定しておくこともよいと考えます。)
 時間ごとに使用するワークシートの中には、部分的に振り返りの内容を位置付けることも考えられます。できるだけその1単位時間の振り返りをしながら、自分の学びに目を向け、次の学習へ意欲的にかかわるような、意識の連続が図られるようなワークシートを作成していくとよいのではないかと考えます。
児童が主体的にかかわることができた活動や体験の場面や、じっくり考えさせたい場面など教師の意図と児童の実態、学習時間等を考慮に入れた一工夫がワークシートと振り返りカード作成のポイントです。
   
 E 学習カード(ワークシート・振り返りカード)の具体的な作成例
   「 作って わくわく あそんで にっこにこ 」 の実践で使用した学習カード(ワークシート・振り返りカード)PDF
   「 みんな たのしい ○○フェスタ 」 の実践で使用した学習カード(ワークシート・振り返りカード)PDF
   
 
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最終更新日:2011-03-30