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2 研究の実際
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(1)生活科における気付き |
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ア 気付きとは |
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「気付き」とは、生活科特有の観点であり、他の教科の「知識・理解」に近いものです。「知識・理解」と異なる点は、「気付き」が対象に主体的に関わる具体的な活動や体験を通して生まれてくるというところです。言い換えると、与えられた知識や理解ではなく、自らの思いや願いをもって活動や体験を通し、そこで実感を伴って「分かる」ことや「得られるもの」ということです。
また、「気付き」には、知的な側面だけではなく、情意的な側面も含まれています。「気付き」は「思考・表現」を経て明らかになり、明らかになった「気付き」から次の活動への意欲をもったり、対象への関わり方を考えたり、新たな「気付き」を見つけたりするなどの、他の観点とのつながりがあると考えます。
言い換えると、気付きは、「対象に関わり思考した結果、自ら分かったことや捉えたこと、得たこと」と考えられます。 |
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お店をしているとき、いらっしゃいませを言わないと来てくれなかったけど、言ったら小さい子たちや大人の人が来てくれました。嬉しかったです。1年生にボーリングや迷路の説明をしました。説明をするのも楽しいです。 |
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上記の文中でいうと、「言ったら・・・来てくれました。嬉しかったです。」や「説明をしました。説明するのも楽しいです。」のように自分が考え行動した結果、「いらっしゃいませを言わないとお客さんが来てくれない」「言ったら来てくれる」などが分かったということや、「来てくれると嬉しい」こと、1年生に説明するという活動から「説明するのも楽しい」ということを得たことが、気付きにあたります。 |
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イ 気付きの分類 |
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気付きには、大きく分けて「働きかける対象への気付き」と「自分自身への気付き」の2つに分類できます。(表1)
単元の学習過程では、導入や展開前半における、「働きかける対象への気付き」を踏まえた上で、展開後半や終末において、さらに、 「自分自身への気付き」が加わっていくと考えています。「自分自身への気付き」は、対象と関わりながら、対象への気付きを得ていくとともに、自分自身への気付きが生まれ、膨らんでいくということです。 |
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気付き |
働きかける対象への気付き |
働きかける対象である身近な人々や、社会及び自然への気付きです。
例えば、「○○さんは、散歩しているだけじゃなくて、子どもを守ることにもなるからいつも歩いているそうです。だからよく会うんだなと思いました。」のような見守ってくださる地域の人についての気付きや、「○○のお店は、春と秋では、かざりを変えていたよ。□□は、秋らしい花だと分かりました。」のような動物や植物の変化についての気付きなどです。 |
自分自身への気付き |
自分自身への気付きとしては、下の3つのようなことが考えられると、新学習指導要領解説には、述べられています。
@ 集団生活になじみ、集団における自分の存在に気付く
A 自分のよさや得意としていること、また、興味・関心をもっていること
などに気付く
B 自分自身の成長に気付く
これは、
自分の存在や成長、可能性について実感できる気付きです。例えば、「『○○さん(自分のこと)が一緒に手伝ってくれたから、嬉しかったです。』といってくれました。ぼくは、役に立ったのでよかったと思いました。」や「ぼくは、よく回るドングリごまを作ることができるよ。」「幼稚園生が喜んでくれました。私が教えたからだと思います。」などの気付きです。
これらは、働きかける対象に気付くことによって自分自身の姿が映し出されることで気付くことができるものです。
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表1 気付きの分類 |
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ウ 気付きの自覚化と気付きの質の高まり |
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新学習指導要領解説の第2章の第1節 教科目標の2の(2)には「この気付きは活動を繰り返したり対象との関わりが深まったりすることに伴い、無自覚なものから自覚された気付きへ、一つ一つの気付きから関連付けられた気付きへと質的に高まっていくことが大切である。」ということや、「生活科は、働きかける対象への気付きだけではなく、自分自身への気付きへと質的に高まることも大切にする。」ということが述べられています。
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これらのことを基に、気付きの質の高まりは、次の図1のように示すことができると考えました。 |
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気付きの質の高まりとは、無自覚なものから自覚された気付きへ高まる場合や、一つ一つの気付きから関連付けられた気付きへと高まる場合、そして対象への気付きから自分自身への気付きへ高まる場合があると考えます。
これらの気付きは、どれがより高次の気付きかということではなく、児童の気付きの様子から判断し、今どのような状態か、また、今の状態からどのような方向へ高めていくことなのかということと捉え、図1を考えました。
また、新学習指導要領では、学年の目標の(3)に「身近な人々、社会及び自然との関わりを深めることを通して、自分のよさや可能性に気付き、意欲と自信をもって生活することができるようにする。」と明示されています。これは、今回の改訂において付け加えられ、明確に示された項目であり、これからの生活科学習において、自分自身への気付きがこれからの学習において重要な方向性の一つだと考えます。
このような気付きの質の高まりの具体的な内容について、次の@からBのように考えました。 |
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@ 無自覚なものから自覚された気付きへ |
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活動や体験によって生まれる無自覚なものから自覚された気付きになることが、気付きの質の高まりと考えます。
児童の発達の段階を踏まえると、児童は活動に没頭するあまり、知らず知らずのうちに気付いていることを意識していないこと(無自覚)が多いということです。例えば、けん玉遊びをしていて、うまくできたとき、無意識に膝を曲げながらリズムよくしている様子について、児童の気付きとして自覚させることです。
そのためには、無自覚な状態から気付きを引き出し、意識させる(自覚化)手立てをとればよいのではないかと考えます。教師が「けん玉が続けてできるようになったね。じょうずにできるコツを教えて。」のように、尋ねて考えさせたり、引き出したりすることで、「できたからよかった」ことに加えて、自分の活動を振り返らせ、整理させることで気付きの自覚化を促すことができると考えます。
本研究では、その際、「表現する活動」を位置付ければ、児童自身が自分の活動や体験を整理し、思考しながら無自覚なものから自覚された気付きへと明確なるのではないかと考えます。また、「表現する活動」を基に、教師側からの問い掛けや価値付けができる機会となり、気付きの質を高めることにつながるのではないかと考えました。 |
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A 一つ一つの気付きから関連付けられた気付きへ |
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対象についての個別の一つ一つの気付きを比べて考えさせたり、気付きを関連付けさせたり、発展させたりすることが気付きの質の高まりと考えます。児童が気付いたことをそのままにしておくのではなく、児童が他の気付きと結びつけよりよい気付きにすることや、気付きを基に新たな気付きを見つけたりするということです。 例えば、町探検で「お店の飾りの中で、○○を見付けました。春にいったときは○○はなかったので、お店の人に聞いたら・・・ということを教えてくれました。□□もあって、秋らしくていいなと思いました。」などのように季節で比べ、関連付けたりこれまでの経験と結びつけて考え、気付くようにすることです。
そのためには、単元における学習計画や1単位時間における学習過程の工夫によって対象への関わりが深められるようにすることや、教師からの問い掛けなどによって比べさせたり、関連付けさせたり発展させたりすることが考えられます。
本研究では、「表現する活動」により明確になった気付きを活用し、友達同士で気付きを「伝え合う活動」が有効であると考えます。絵や言葉により可視化された気付きを見せ合ったり意見交換したりすることにより、互いの気付きを比べ、相違に気付いたり、新たなことに気付いたりすることで気付きの質が高まるのではないかと考えました。 |
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B 対象への気付きから自分自身への気付きへ |
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活動や体験から得た対象への気付きを経て、自分のよさや可能性について気付かせることが気付きの質の高まりと考えます。活動や体験から得た対象への気付きを明確にしていくうちに、自分のことについて考え、よさや成長、可能性などについて気付くことです。例えば、ミニトマトを育てていくうちにミニトマトについての気付きを得るとともに、「ミニトマトさんが大きく育ったのは、自分が水やりなどのお世話をがんばったからです。」「ミニトマトさんに負けないように、勉強を頑張るね。」のように、自分への成長や可能性などの気付きを得ることができることです。
そのためには、対象にしっかり関わることができる豊かな体験や、教師や他者からの価値付けなどにより、自分自身への気付きが促されると考えます。
本研究では、対象に一緒に関わる友達のよさに気付いたことを、
互いに「伝え合う活動」を位置付ければ、それが自分自身について相互に気付く手立てとなり、気付きの質が高まるのではないかと考えます。また、単元ごとに自分の学習の足跡を振り返り表現することで、自分自身への気付きを得ることができると考えました。 |
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質的に高まった気付きは、次の活動への意欲となり、主体的な活動を考え、新たな気付きを生み出すといった価値ある学びができるのではないかと考えます。 |
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最終更新日:2011-03-30 |
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