小学校生活科におけるこれからの「学び」について提案します

1 研究の概要

  (1)  研究テーマ
  気付きの自覚化を促し、気付きの質を高める生活科学習指導の在り方
−「表現する活動」と「伝え合う活動」を通して−
   
  (2) テーマ設定の趣旨
  ○ これまでの生活科の課題と学習指導要領改訂
   平成元年に新設された生活科は、教科としては浸透してきました。しかし、「活動あって学びなし」と言われることもあり、平成20年1月の中央教育審議会答申では、生活科の課題として「学習活動が体験だけで終わっていることや、活動や体験を通して得られた気付きを質的に高める指導が十分に行われていないこと」、「表現によって活動や体験を振り返り考えるといった、思考と表現の一体化という低学年の特質を生かした指導が行われていないこと」などが指摘されています。
 これらのことを受け、平成20年3月に示された新学習指導要領において生活科では、内容の取扱いの配慮事項(2)に「具体的な活動や体験を通して気付いたことを基に考えさせるため、見付ける、比べる、たとえるなどの多様な学習活動を工夫すること」と明記されています。これは、活動を繰り返したり対象との関わりを深めたりする活動や体験の充実と、一つ一つの気付きから関連付けられた気付きへと質的に高めていくことが重要であり、今まで以上に意図的・計画的・組織的な単元構成や学習環境の設定、学習指導が求められていることを示していると考えます。このことから、活動や体験の充実と、児童が自らの気付きを振り返ったり互いの気付きを交流したりする活動を意図的・計画的・組織的に行えば、気付きの質を高めることができるのではないかと考えました。
  ○ 本研究の考え方
   生活科における気付きとは、対象(身近な人々や、社会及び自然)に主体的に関わって生まれるものです。主体的に対象に関わることによって対象について感じたり見付けたりするということが気付きです。
 対象に関わる活動の中で気付きは、無自覚なもので、自覚化を促し、明確な気付きにしていく必要があると考えます。そこに、自分の活動や体験について「表現する活動」を位置付ければ、気付きの自覚化を促すことにつながると考えました。つまり、「表現する活動」は、児童の思いや願いを表出するとともに、思考や工夫などを促すことや、気付きの自覚化を促すことができる活動であると考えました。
 また、自分の気付きや考え、工夫などを「伝え合う活動」が、気付きの質を高める活動として有効であると考えました。「伝え合う活動」は、自分では気付かないことを知ることができたり、自分と友達の違いに気付いたり、さらに、気付いたことを基に新たな活動を考えたり工夫したりすることができると考えるからです。また、「伝え合う活動」によって、お互いのよさを認め合い、自分のよさや可能性についての気付きを促し、自分の成長について実感することにもつながると考えました。
 生活科の特徴ともいえる具体的な活動や体験は様々な気付きを生み出し、「表現する活動」や「伝え合う活動」は、思考し表現することで、気付きの自覚化や気付きの質の高まりを促すことにつながり、気付きの自覚化や気付きの質の高まりはさらに、思考や表現を促し、より充実した具体的な活動や体験につながり、さらに質の高い気付きを生み出すと考えます。この一連の活動の繰り返しによって生活科における学びがよりよいものとなるのではないかと考えました。
 これらのことから研究テーマを設定し、単元全体の学習過程や1単位時間の学習過程において、いつ、どのような「表現する活動」を行い、また、いつ、どのような「伝え合う活動」を行えば、気付きの自覚化を促し、気付きの質を高めることができるかという生活科学習指導の在り方について研究を行いました。
   
 (3) 研究の目標
   小学校生活科において、「表現する活動」と「伝え合う活動」の位置付け方や内容の工夫を通して、気付きの自覚化を促し、気付きの質を高める生活科学習指導の在り方を探る。
   
 (4) 研究の方法と内容
  ア 研究の方法
 
 (ア) 文献調査や先行研究を通して、「表現する活動」と「伝え合う活動」の在り方を探り、単元や1単位時間における効果的な位置付け方や内容の工夫についての授業モデルを作成する。
 (イ) 授業モデルを基に学習指導案の作成及び検証授業を実施し、その有効性についての成果と課題をまとめる。
 (ウ) 「表現する活動」や「伝え合う活動」を促す学習カードの作成を行い、授業実践を通して、その有効性を検証する。   
  イ 研究の内容
 
 (ア) 「表現する活動」と「伝え合う活動」の位置付け方や内容の工夫を考えた授業モデルの提案
   単元や1単位時間内に位置付ける活動形態や活動内容の工夫、気付きの自覚化や気付きの質の高まりを促す方法について、単元の指導計画や授業の展開において考えた授業モデルを提案する。
 (イ) 「表現する活動」や「伝え合う活動」を促す学習カードの作成
   具体的な活動や体験について、気付き等を「表現する活動」や「伝え合う活動」を促す学習カードを作成し、その活用方法についての研究を進める。
   
   
   
 
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最終更新日:2011-03-30