国語科授業の「あったらいいな!」を形にします。

 授業モデルの考え方
本研究では、新学習指導要領のねらいに対応した授業を行うために、次の4点を授業づくりの視点として挙げました。
@ 新学習指導要領の指導事項を意識した生徒の実態把握
A 学習内容の系統性を意識した指導のねらいの明確化
B 言語活動の位置付け方の工夫と内容の充実
C 見通しのもたせ方と学習の振り返らせ方の工夫
この4つの視点に基づいた授業の流れを、授業の基本構想としました。それぞれの段階で目指したことについては以下のとおりです。
   

◆見通しをもたせる場面

 ア  見通しをもたせる

身に付けるべき知識・技能や授業のゴールについての意識をもたせ、単元全体や1時間の学習の見通しをもたせる。
   
   
 
   

◆身に付けさせる場面

 イ 習得を図る

学習内容の系統性を明らかにした上で、本単元や本時における指導のねらいを明確化し、それに適した教材の選択やスモールステップによる学習活動を工夫して、身に付けるべき知識・技能の習得を図る。
           
   

 ウ 活用させる

習得した知識・技能を意図的に活用させるための言語活動を効果的に位置付け、活用を通して、思考力・判断力・表現力の育成を図るとともに、これまでに習得した知識・技能の定着を図る。
   

   

◆振り返らせる場面

 エ 振り返らせる

本単元や本時における学習を振り返らせることを通して、身に付けた知識・技能や育成が図られた思考力・判断力・表現力についての自覚を促す。
   
 研究2年次は、この基本構想を基に授業実践と検証を行い、その成果を踏まえた授業モデルを提案してきました。ここでは、基本構想の各段階における指導の手立てと期待される効果について、述べたいと思います。ここに提案している授業モデルの考え方や具体的な手立てと期待される成果については、検証授業から得られた成果や課題を踏まえて、見直しを図った内容を提案しています。
〔ア 見通しをもたせる場面〕については… 
具体的な手立て   期待される成果
 
学習計画表

@身に付けるべき知識・技能に着目した事前アンケートの実施 @生徒は、これから身に付けるべき知識・技能を把握した上で、授業に臨むことができます。
A単元や授業のねらいを明確にした学習計画表の提示
A学習計画表のモデルを提示することで、学習計画の立て方や有効性を示すことができます。また、生徒が学習計画を意識することで、単元の見通しをもつことができ、主体的に学習に取り組むことにつながります。さらに、単元に位置付けた言語活動についても生徒に意識させることができます。
B単元のねらいに即して生徒の興味・関心を喚起するための単元導入時の工夫
B単元に位置付けた言語活動について、何のためにどのような活動を行うのか把握することができます。単元導入時の工夫を行うことで、生徒の興味・関心を喚起することができ、生徒はこれからの単元学習の見通しをもつことができます。
Cレディネステストとしての学習プリントの提案

C身に付けるべき知識・技能に対応した学習プリントをレディネステストとして実施することで、生徒は自分の力を把握することができます。そのことによって、次に何を身に付ければよいかが明確になり、意識をもって授業に臨むことができるようになります。
《これからの授業に求められること》
 生徒に単元の見通しをできるだけ具体的にもたせるためには、本単元で身に付けるべき知識・技能について意識させるだけでなく、単元の学習に入る前の段階で、学習に必要な知識・技能を生徒がどの程度身に付けているかということの実態をできるだけ客観的に把握させる必要があります。学習プリントなどを活用し、小テスト形式によるレディネステストを行っていくことなどが手立てとして考えられるでしょう。また、学習計画表についても、立て方の例を知ることから始めて、段階的に生徒自身が自ら計画を立てることができるようにしていく必要があります。
 生徒が単元を見通した学習計画について意識できるようになったら、右のような学習計画表を使って、自分たちで計画を立てさせてみてはいかがでしょうか。

生徒自身が記入する
学習計画表
〔イ 習得を図る場面〕については…
具体的な手立て   期待される成果

系統図


教師用手引き


補助資料

    
@学習内容の系統性の明確化 @学習内容の系統性を明らかにすることで、単元における言語活動のねらいが明確になります。
 具体的には、その言語活動を通して習得を図らなければならない知識・技能と、それ以前に学習しており、言語活動を通して活用させることを意図した知識・技能が明らかになり、学年間そして単元間のつながりも意識できるようになります。また、「書くこと」「読むこと」等の異なる領域において、身に付けた知識・技能を効果的に使う場を位置付けることもできます。
A指導のねらいの明確化
A生徒の実態を把握した上で学習内容の系統性を考えることによって、その単元で身に付けるべき知識・技能が明らかになり、習熟の度合いに配慮したねらいの明確な授業を行うことができます。
B身に付けさせたい知識・技能を習得させるのに適切な言語活動の提案
B全国学力・学習状況調査、佐賀県小・中学校学習状況調査の分析結果から、佐賀県の生徒の実態を把握し、そこから身に付けさせたい知識・技能を絞り込むことができます。その知識・技能の習得に焦点化した言語活動を意図的に位置付けて単元を構想することができます。
Cスモールステップによる学習活動の工夫
C学習活動において、生徒がつまずきがちな部分については、活動の段階を細分化して1つ1つのステップを明確にすることで、生徒のつまずきを避けることができます。その際、前単元までに経験した学習方法を取り入れることによって、生徒は段階を踏んで学んでいく、学びの道筋を意識することができるようになります。
D学習を支えるワークシートや手引き等の開発

D活動の手順や内容を自分で把握できるようなワークシート、活動の道筋を示した手引きやモデルとなる補助資料等を提示することで、生徒が学習活動や身に付けるべき知識・技能をイメージすることができ、主体的に学習に取り組むことにつながります。
《これからの授業に求められること》
 学習内容の系統性と指導のねらいの明確化には、生徒の実態を常に具体的に把握することと、年間計画の中でどのように生徒の力を伸ばしていくのかということについての意識が必要になってきます。生徒が、学ぶ手立てと道筋を自分のものとして身に付けるには、くり返し経験することが大切です。また、生徒をより主体的な学習者にするためには、生徒の実態に応じた学習活動の検討と併せて、ワークシート等の活用とノート指導との連動も考えるべきでしょう。
〔ウ 活用をさせる場面〕については…
具体的な手立て
   期待される成果

生徒用手引き






@習得した知識・技能を意図的に活用させる場として言語活動を位置付けた授業モデルの提案

@活用させる場面を意図的に設けるためには、単元のねらいや他の領域との関連を考えた言語活動を位置付けることを心がけることが必要です。表現の様式の違い、相手意識や目的意識の違いによって、同じ知識・技能でもその条件に合わせた使い方をする必要があり、思考力・判断力・表現力といった力をはぐくむことにもつながると思います。
A位置付けた言語活動を効果的に行うための教材やワークシート等の開発
A位置付けた言語活動を効果的に行うためには、有効な教材やワークシート等を使用することが大切です。それらを授業の中で適宜使用することによって、国語が苦手な生徒でもそれらを手掛かりに言語活動に前向きに取り組むことができると思います。
Bこれまでに習得した知識・技能の定着の場としての言語活動の位置付け

B学習内容の系統性を明確にすることで、位置付けた言語活動の中でこれまでに習得した知識・技能を効果的に使うことができるようになると思います。くり返し使うことによって生徒は、既習の知識・技能を確実に身に付けることができます。
《これからの授業に求められること》
 年間を通じて、習得した知識・技能を意図的に活用する場として言語活動を位置付けた単元を構成することと、「読むこと」と「書くこと」を相互に作用させた言語活動等、異なる領域との関連を効果的に図ることが必要になってきます。生徒の実態により即したねらいの明確な言語活動を位置付けることが大切です。
〔エ 振り返らせる場面〕については…
具体的な手立て   期待される成果

アンケート
@交流による自己及び相互評価の手立ての提案 身に付けた知識・技能を活用することではぐくむことができる力(思考力・判断力・表現力)を自覚するための手立てとして、交流による自己及び相互評価を行うことが考えられます。生徒は意見を交流し、他者と自分を比較することで、はぐくんだ力を自覚することができると思います。
A身に付けさせるべき知識・技能の意識化を目指した事後アンケートの実施
事前と事後で同じ内容のアンケートを使用し、単元の終わりに自分が記述した内容を比較をさせることで、生徒は自分の意識の変容を知ることができ、次の単元への意欲につながると思います。
B確認テストとしての学習プリントの提案 身に付けるべき知識・技能に対応した学習プリントを確認テストとして実施することで、生徒は単元の学習を通して身に付けることができた自分の力を把握することができます。次の単元に向けて、生徒が今後何を学んでいけばよいかを把握するよりどころとすることができます。
《これからの授業に求められること》
  生徒に次の単元の学習につながる意欲をもたせるためには、自分の力について実態を把握させることが必要となってきます。そのための手立てを更に拡充していくことが大切です。特に交流の場面における多彩な自己及び相互評価の手立てを確立することや、生徒が自分で補充学習を行うことができるような学習プリント等の拡充が求められるのではないでしょうか。
 生徒に振り返りの仕方や考え方を知らせる資料として、右のような学習の仕方に関する手引きを使ってみるのはどうでしょうか。

生徒用手引き

 
授業モデルを基に提案している授業展開案
 県内で採択されている2社(東京書籍・光村図書)の教科書教材を使った授業展開案を提案しています。それぞれの授業展開案のページにリンクを設定しています。
◆説明的な文章 「モアイは語る−地球の未来−」(書くこと) 光村図書 第2学年
       授業展開案1  単元「意見文を書こう」
◆説明的な文章 「モアイは語る−地球の未来−」(読むこと) 光村図書 第2学年
      授業展開案2  単元「構成と論理の展開に注意して読もう」
◆説明的な文章 「考えるイルカ」(書くこと) 東京書籍 第2学年
         授業展開案3  単元「説得力のある意見文を書こう」
◆文学的な文章 「走れメロス」(書くこと) 東京書籍
光村図書
第2学年
           授業展開案4  単元「人物紹介パンフレットを作ろう」
◆文学的な文章 「走れメロス」(読むこと) 東京書籍
光村図書
第2学年
      授業展開案5  単元「描写に注意して読もう」
その他の指導のアイディアなどを知りたい方は下記のリンクを参照してください。
○ 全国津々浦々 中学校国語
     〜佐賀県教育センターWebページ    
        https://www.saga-ed.jp/tsutsuuraura/kyoka.php?sc=2&sub=1&search=0&search2=0&moji=
○平成21年度全国学力・学習状況調査結果を踏まえた実践アイディア集 
   〜国立教育政策研究所Webページ         http://www.nier.go.jp/09jugyourei/09_chuu_jugyourei.pdf
○佐賀っ子学力向上支援
   〜佐賀県教育センターWebページ   https://www.saga-ed.jp/kenkyu/gakuryoku/jhs_jpn/top.html

                           


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最終更新日: 2010-06-29