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食生活における確かな実践力をはぐくむ中学校家庭科の授業を提案します!

(3) 自分の課題に気付かせる授業実践

 自らの食生活を主体的に考えることのできる生徒を育てたいという思いから、本実践では「B 食生活と自立」の指導において、導入段階で「自分の課題に気付かせる」授業を提案します。「B 食生活と自立」の導入段階での取り組みは、中学校で学習する食生活の学習において、重要な役割をもっていると考えています。主体的に課題の解決に取り組ませるには、生徒の課題意識の程度によって、解決する必然性が大きく左右されると考えるからです。
  そこで、生徒が自ら課題に気付き、解決すべき課題としての必然性をもたせるには 授業の導入段階で以下のような点に留意する必要が考えられます。
  ○生徒にとって身近なものを題材に使用する。
  ○実際の活動や生徒自身の生活場面や活動場面から課題に気付かせるようにする。
  ○生徒どうしで気付きや課題を共有する機会を設ける。
  ○自分の問題をどのように解決していくのか見通しをもたせる。

  さらに、本実践で気付いた課題を、家庭での実践やこれからの技術・家庭科(家庭分野)の授業で解決していく必要があります。そこで、予想される食生活の問題点と解決を図る題材の構想を以下のように考えました。
以上のような考えを基にして、「食生活と自立」の学習における導入段階(課題に気付き、自ら課題解決の見通しをもつ)の授業を提案します。
 

1 題材名  食生活の学習の見通しをもとう  B−(1)ア

これまでの指導では、食生活の学習の導入として食生活の振り返りチェックシートを利用し、自分自身の食事の偏りや手伝いなどを中心とした、振り返り活動を取り入れていました。本題材では、導入での振り返りチェックシートの他に、「みそ汁作り」を取り入れて技術面を振り返る活動も位置付けました。「みそ汁作り」を取り入れた理由は次のような点からです。

  ・小・中の系統性を考え、小学校で学習した調理であること
  ・家庭で作られる機会が多いと思われること
 ・家庭実践を考えるときに、汁の実を季節の食材など身近な材料で工
    夫ができること

  以上のような理由から「みそ汁作り」を食生活と自立の指導の、導入として位置付けました。「みそ汁作り」を行なうことで、調理技術を含めた食生活のチェックを基に、自分の改善しなければならない問題点を見付けさせ、それを改善するための方法を考えさせることで、生徒は、これからの学習に見通しをもって意欲的に取り組むことができるようになり、確かな実践力がはぐくまれると考え、本授業を構想しました。

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2 題材について 

○生徒観
 生徒は、実習や実験を好み、特に、調理実習には非常に喜んで取り組みます。しかし、実習をした内容が家庭での実践に結び付いているとは言い難いのが現状です。 今回、1年生での授業を計画するに当たり、小学校時の食生活に関する学習内容について事前アンケートを行いました。調理実習に関しては、「好き」「どちらかといえば好き」と回答した生徒を合わせると90%となり、生徒の関心が高いことが分かりました。次に、その調理を家庭で実践したかという質問に対しては、30%の生徒が「何度もしてみた」と回答しましたが、残り70%の生徒においては家庭での実践にはあまりつながっていないということが分かりました。家庭で調理実践を行わない理由としては、「面倒くさい」や「忙しい」など意欲面や時間面の理由とともに、「作り方が分からない」「一人では作れない」などの理由があり、知識、技術の不安を抱えているために実践に結び付いていなかったことも分かりました。 (図1参照)
 このような生徒の実態から、以下のような点に考慮しました。
  @ 調理実習への意欲を生かすように、生徒が小学校で学んだことを使える題材にする。
  A 食生活にかかわる知識や技術への不安を、自らの課題としてとらえさせる。

○題材観
 本題材では、「自分の食生活の問題点に気付く」学習の中で、これまでの調理に関する学習が十分に身に付いていない生徒の知識面や技術面の課題に気付かせたいと考え、小学校の調理実習で経験している「みそ汁の調理」を取り入れることにしました。その課題の改善方法を考えさせることは、家庭での実践にも結び付くのではないかと考えました。また、課題を改善する目的をもって今後の授業に取り組ませることで、新学習指導要領で求められている「これからの生活を展望する能力と実践的な態度をはぐくむ」ことにもつながると思われます。今まで以上に実践的な学習が重視され、自ら課題を発見し、食生活を主体的に考えることができるような学習の一層の充実を図ることを目指し、本題材を設定しました。


○指導観
 生徒の食生活に関する実態を踏まえ、「食生活と自立」の学習の導入として、みそ汁の調理を題材とし、次のような手立てを考えました。
手立て1 小学校で学習した「みそ汁の調理」を取り入れ、調理技術を含めた食生活における自分の課題に気付かせるようにする。
手立て2 調理はペアで行い、相手のよくできているところや努力したほうがよいところ等の、気付きを見付けやすいようにする。
手立て3 気付きを広げるために、観点を示したワークシートを活用したり、話し合い活動の回数を増やし、互いの気付きを付せんを使用して伝え合うようにする。
手立て4 問題点の解決の方法を考えさせる中で、これからの家庭分野の学習や家庭での実践に主体的に取り組める ように、自分が改善したいところを具体的に「技術的な面」と「その他の面」の2つに分けて考えさせる。
以上のような4つの手立てをとることで、生徒が自分の調理技術を含めた食生活の問題点に気付き、家庭や学校で、その問題点の改善に自主的に取り組むことができるように、指導を進めることにしました。

                              図1 事前アンケート調査結果
                  (調査人数:本実践を行った第1学年の生徒83名、平成21年10月調査実施)
 


3 題材の目標 

○自分の食生活に関心をもち、調理技術を含めた食生活の問題点に気付き、その問題点を改善するための
  方法を考えることができる。

4 題材の評価規準

○自分の食生活を振り返り、食生活に関する問題に気付き、関心をもっている。(関心・意欲・態度)
○さまざまな視点から自分の食生活を振り返り、問題点を改善するための方法を考えることができる。
  (工夫・創造)
○見通しをもって、おいしいみそ汁の調理計画を立てることができる。(生活の技能)

5 指導計画 (全3時間)

学習
過程
主な学習活動
時配
教師の指導・支援
評価規準


 

 






@食生活の振り返りチェックシートから自分の食生活の問題点に気付き、整理する。

Aペアで、おいしいみそ汁の調理の計画を立てる。
・ 授業事前アンケート結果の紹介等で、今
  後の授業への見通しをもたせる。
・ 自分の日常の食事を振り返らせること
  で、食生活の問題点に気付かせるように
  する。
・ ペアで、小学校での学習や家庭で実践し
  た内容を基にして、みそ汁づくりのポイン
  トを押さえた調理計画を立てさせる。
関・意・態


生活の技能
Bペアで、おいしいみそ汁の調理を行う。
C自分の技術面の問題点に気付き、整理する。
・ 安全に留意して調理ができるように配慮
  する。
・ 技術面の問題点に気付くことができるよ
  うに、調理はペアで行わせ、一方に作業
  が偏らないようにすべての計画や準備に
  かかわらせるようにする。


関・意・態
D食生活の振り返りチェックシート及びみそ汁の調理における気付きから、自分の技術面も含めた食生活の問題点を改善するための見通しをもつ。
・ 食生活に関する知識面だけではなく、実
  際の調理を行った気付きから、技術面の
  課題にも注目させる。
・ 友達からの気付きも考慮して今後の自分
  の課題を設定させ、改善の方法を考えさ
  せ、見通しをもたせる。
 
関・意・態


工夫・創造
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最終更新日: 2010-03-24