社会的な見方や考え方を深める社会科学習に取り組んでみよう!

社会科 実践事例その13 中学校第3学年

1 単元名 
    私たちの地球を見つめて・環境問題とエネルギー〜日本は、原子力発電所を増やすべきか〜
                                                           【B:問題発見型】
 
 
2 教材観
 オゾン層破壊による紫外線、二酸化炭素の排出による地球温暖化、それによって起こる海面上昇や砂漠化、異常気象、そして生態系の破壊など様々な問題が発生している。このような問題は、経済問題やエネルギー消費問題などが密接に関係している。
 有限である資源をどのように有効活用するのか、また省資源・省エネルギーをどのように推進するのか、そして、いかに資源や廃棄物を循環して使用する循環型社会を形成していくかが求められている。
 環境には国境がなく、全世界がつながっている。今までのように自国の経済発展のみを重視するのではなく、国際的に協力し環境を考えた経済発展が必要不可欠になる。
 世界の環境問題とエネルギー問題を取り上げ、地球に住む人間の一人として、つまり地球市民の一員として自分の意見をもたせるとともに、主体的に考え判断できる力を育てていくことは意義あることと思われる。
 
3 生徒観
 地理的分野の学習において、資源エネルギーと産業について、世界と比べた日本の特色について学習をしてきている。
 佐賀県は、玄海町に原子力発電所があるため、生徒のエネルギー問題に対する意識は高いと思われる。
 グループでの意見交換では、友達の考えを参考にできるため、意欲的に活動する生徒が多い。
 明確に意見を述べ主張する場面になると、論点をまとめ相手に伝えることを難しく感じる生徒が多く、約半数の生徒が、資料を用いた問題や自分の考えを文章で答える問題を苦手と感じている。
 
4 指導観
 世界の環境問題や国際的な対応について理解させ、地球市民の一員としての在り方について考えさせる。
 地球環境や資源・エネルギーについての課題点を探し出させる。
 環境保全と資源・エネルギーの開発の面から、地球市民の一員として生きるために、今後の望ましい世界の姿について考えさせる。
 適切な資料を準備し、それを基に分析を行い個人で判断する場面を設定する。さらに、生徒の思考力や判断力を広げ高めるためにグループ活動を取り入れ、様々な価値に気付かせる。
 グループで意見を出し合い、それを全体へ広めていくなど多様な考えに触れる場面を設定する。
 価値や目指す社会像について記入し、それを文章化して表現できるようにワークシートを工夫し、判断の根拠を明らかにさせる。
 
5 単元の総括目標
世界の環境問題やこれに対する国際的な対応を理解させるとともに、世界でのエネルギー事情などについて知識を身に付けさせる。さらに、地球環境の保全と資源・エネルギーの開発と利用について、多面的・多角的に追究させることで、世界の環境問題やエネルギー事情について考察し、適切な資料を選択・分析し、考察した過程や結果を分かりやすく述べることができるようにさせる。
 
6 単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断
技能・表現
知識・理解
地球環境、資源・エネルギー問題について、将来を担う地球市民の一員として、課題を自ら探し出し、意欲的に取り組もうとする。 地球環境の保全と資源・エネルギーの開発と利用について、多面的・多角的に追究することで、世界の環境問題やエネルギー事情について考察することができる。 地球環境、資源・エネルギー問題について、適切な資料の収集・分析をし、学習に役立つ情報を基に、考察した過程や結果を分かりやすくまとめ説明することができる。 世界の環境問題やこれに対する国際的な対応の重要性に気付き、世界でのエネルギー事情などについて地球規模での努力が必要であることを理解している。
 
7 単元の指導計画
主な学習活動
ワークシート・資料
1 地球規模で広がる環境問題を知る。  
2 地球温暖化の影響について調べる。  
3 温暖化に対する国際的な対応を知る。  
4 南北問題と環境問題の関係を知る。  
5 地球とともに生きるために、エネルギー開発と循環型社会の関係を知る 。  
6 学習問題「日本は、原子力発電所を増やすべきである」について、1回目の意思決定をする。 【本時】
【意思決定1】

ワークシート1

分析用資料 

7 学習問題 「日本は、原子力発電所を増やすべきである」について、2回目の意思決定をする。 【本時】 
 前時の資料分析を基に、グループで「賛成」「反対」それぞれの理由や目指す社会像を出し合う。
【意思決定2】

 

ワークシート2

 

 
8 実践を終えて
【成果】
 資料分析の時間を1時間設定することにより、個人の考えが深まり、生徒が自ら考え表現する機会が生まれ、意欲的に考え積極的に意見を出し合えるようになった。
 グループ活動において、今まではお互いの立場から意見を出し合い説得するような授業の流れを作っていたが、今回は賛成と反対の両面の意見をグループで考え合うことで、それぞれの価値を広めることができるようになった。
 賛成と反対の場合で、それぞれがどんな社会を目指すことになるのかを生徒に考えさせたため、最終判断個人の考えを整理しやすくなったようであった。
 2時間で意思決定力や資料活用能力を育てる学習を行うことができるようになったため、年間を通して継続的に取り組むことが可能となり、生徒の資料活用能力や価値判断能力の向上につながったのではないかと考える。 
【課題】
 生徒の学習意欲を高めたり、対立する価値を明確にしたりすることができる教材や学習問題を設定し、1年間の中で計画的に授業を進めていく必要がある。
 対立する価値を比較するために、事実に基づいた適切な資料を準備することが必要である。
 ワークシートを生かした評価の在り方を考える必要がある。
 
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最終更新日: 2010-03-23