社会的な見方や考え方を深める社会科学習に取り組んでみよう!

社会科 実践事例その4 小学校第4学年

1 単元名 
 くらしと土地の様子 〜観光のまち唐津 どうする?虹ノ松原〜  【B:問題発見型】
 
 
2 教材観
 唐津には観光名所や伝統的な祭りがたくさんある。観光客が唐津に来ることにより、経済効果が見込めるため、唐津市も観 光事業には力を入れている。
 近年、観光客が減少傾向にある。唐津の観光名所の一つである虹ノ松原は、松くい虫の影響や他の植物が自生してくるなど、こ のままでは「白砂青松」で有名な松原を維持できない状況がある。
 虹ノ松原を守る対策を考えることを通して、これからの社会の在り方について意識させることは意義あることと思われる。
 
3 児童観
 唐津くんちなどで唐津市にたくさんの観光客が来ていることは知っているが、どのような努力や施策が行われているか知らない。
 前学年の「くらしを守る(消防)」や「工場のしごと」の単元で、意思決定型の学習をした経験があり、調べたことや資料を根拠に意見を出すことができるようになってきている。
 判断をするときの観点が増え、物事を多面的に見る力が少しずつついている。
 
4 指導観
 唐津は観光名所がたくさんあり、観光客を増やすことが唐津の発展につながるという期待感をもたせる。
 ゲストティーチャーに唐津の観光資源のひとつである虹の松原のすばらしさについて話をしてもらうとともに、近年、白砂青 松の虹ノ松原の維持が難しくなっていることを伝えてもらうようにする。
 「虹ノ松原を守るためにどうしたらいいか考えよう」を設定する。
 全国の松原や他の観光地で、または、諸外国で行われている対策を知り、虹ノ松原を守るためのプランを考えさせる。
 プランの大事にしている点や問題点を整理し、プランからどのような社会を目指すのか考えさせる。
 
5 単元の総括目標
 唐津市の特色である観光を知るために、まず、自分で唐津の観光地について調べさせる。そして、虹ノ松原について聞いたことや各種の資料を通して、これからの唐津市の観光の在り方について自分の考えをつくり、自分の意見と友達の意見を比べながら適切に判断することができるようにさせる。
 
6 単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断
技能・表現
知識・理解
唐津の観光地に関心をもち、人に聞いたり、資料を見たりして意欲的に調べようとする。 虹ノ松原を守るためのプランを具体的に考え、調べたことや話し合いで聞いたことを基に適切に判断することができる。 虹ノ松原の現状を把握し、聞いたことや、各種の統計資料などを利用して、プランをまとめたり、話し合いで意見を発言したり、提案文を書いたりすることができる。 唐津の観光資源全般のことや虹ノ松原について理解している。
 
7 単元の指導計画
主な学習活動
ワークシート・資料
1 唐津市の中での、おすすめの観光地を調べる。 ワークシート1
2 調べた観光地をみんなに紹介する。
3 NPO法人「KANNE」の人から、虹ノ松原の現状と問題点を聞く。      
ワークシート2
4 虹ノ松原を守るプランを作成する。 (2時間扱い) ワークシート3
5 プランを出し合い、2つのプランにしぼり、議論の準備をする。
【意思決定1】
ワークシート4
6 虹ノ松原を守るには、どちらのプランがよいのか議論する。 【本時】
【意思決定2】

ワークシート5
ワークシート6
7 議論を振り返り、これからの唐津をどうするか自分の考えをまとめる。 ワークシート7
 
8 実践を終えて
【成果】
 虹ノ松原の専門家をゲストティーチャーとして呼ぶことにより、児童の知識面・意欲面ともに向上した。
 松葉かき をすればよいと考えた児童はもちろんだが、通行料を取るプランを選んだ児童も「虹ノ松原のためならはらってもよい」と考えて いた。このように、虹ノ松原の存在価値を詳しく知ることにより、唐津市民として虹ノ松原を守らなければならないという意識が生まれた。
 議論をすることにより、自分の考えに自信をもち、それぞれのプランを選ぶための理由が増えた。また、提案文の中には富栄 養化を防ぐだけでも、マツクイムシの被害を防ぐだけでもだめだという意識が強く、両方の解決策を提案する児童が多かった。 議論をすることにより、多面的な見方や考え方ができてきた。
【課題】
 他の植物が入ってきているという問題とマツクイムシで松が枯れるという問題の2つが存在したため、解決方法もそれぞれが独立した感じになってしまい、判断が難しかった。議論の学習をするときは論題が授業の決め手とな る。今回は、@松が枯れる(マツクイムシ)A松原が弱っている(松露が採れない)Bゴミのポイ捨てがあるC他の植物が入ってきて白砂青松の絶景が薄れていると4つの問題が挙げられた。今後は、最も重要な問題を選び、それについての解決策を考えるようにしていく必要がある。
 どちらのプランがよいか判断するだけでなく、そのプランを選ぶとどのようになるのかを考えさせる時間が足りなかった。そのため、どちらのプランでも虹ノ松原を守ることになるからよいのではないかととらえる児童もいた。ただ、児童 は 「自分たちでできることをしなくてはいけない。」という意識と「お金を使わないときちんとした対策がとれない。」という意識があったのは感じられた。 もう少し「目指す社会像」を考えさせ、プランの違いを明確にすることで、よりよい社会を考えるようにしていくことができると考える。
 
実践事例の紹介ページへ戻る

Copyright(C) 2009 SAGA Prefectural Education Center. All Rights Reserved.
最終更新日:2010-02-19