これからの国語科学習指導について提案します!!

 国語科Q&A

○学習指導要領が改訂されて何が変わったの?
■平成20年3月の学習指導要領改訂に伴っての大きな変更点として、以下の3点が挙げられます。

1点目は「課題解決の過程に即した指導事項の配列がなされた」ことです。
   各領域の指導事項が課題を立て探究して解決する過程を踏まえて整理されました。これは、自ら学び自ら考える力を育成するという理念に基づくものです。
例)「書くこと」
 ア.課題設定や取材  イ.構成  ウ.記述  エ.推敲  オ.交流
 (「課題設定をし、そのための取材を行い、集めた題材を目的に応じて構成し、実際に記述する。さらに、
   推敲した上で、交流を通じて自他の考えを認め合ったり、もっとよいものにするように意見を述べ合った
   りする」という児童が「書く活動」を行う上での課題解決の過程に即して配列されています。)

2点目は「小・中・高の連携を前提とした能力の系統化」がなされたことです。
   小学校段階ではこれまでも系統性を意識して指導事項が系統化されていました。今回の改訂では、さらに、中学校・高等学校までを見通した学習の系統性が明確になりました。このことから、特に小学校では中学校との連携を図りながら、小学校の発達段階に応じた重点的な指導を行う必要があります。
○ 中教審答申(平成20年1月)では、各学校段階で身に付けるべき能力が以下のように示されています。
小学校:日常生活に必要な国語の能力の基礎を確実に育成する。
中学校:社会生活に必要な国語の能力の基礎を確実に育成する。
高等学校:社会人として必要な国語の能力の基礎を確実に育成する。
(中央教育審議会「幼稚園、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領の改善について」から)

3点目は「指導事項と言語活動を関連させて国語の能力を育成する」ことです。
  従前の学習指導要領においても言語活動が例示されていました。しかし、今回の改訂では、言語活動を通して指導事項にある基礎的・基本的な知識・技能を身に付けさせることとなっており、言語活動を重視していることが分かります。そのためには、指導する知識・技能に応じた適切な言語活動を取り上げる必要があります。
○基礎的・基本的な知識・技能とはどんな力なの?
■国語科では、「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の3領域と「伝統的な言語文化と国語に関する事項」の1事項が示されています。
 この3領域1事項に示された指導事項を、日常生活に必要な基礎的な国語の能力として、記録、説明、報告、紹介、感想、討論などを行えるようにすることが国語科の基礎的・基本的な知識・技能と言えます。
○「 読むこと」の文学的な文章を例にとると・・・
   本の紹介をするという活動を通して、あらすじや登場人物の人物像、表現のおもしろいところをとらえること、
   感動した部分に自分なりの感想をもったりすること、紹介する相手や目的に合わせて書きかえたり、発表
   したりすることなど、 「読むこと」「書くこと」「話すこと・聞くこと」のそれぞれの力を使う必要があります。
  
   紹介するという日常生活の具体的な場で、授業の中で学んだ知識・技能を使うことができてこそ、基礎的・
   基本的な知識・技能が定着していると言えるのです。
   〜 要するに、基礎的・基本的な知識・技能は、使える能力として指導していく必要があるということです。

○思考力・判断力・表現力等をはぐくむためにはどんなことをすればいいの?
■中教審答申では思考力・判断力・表現力等をはぐくむための学習活動が以下のように紹介されています。
   @体験から感じ取ったことを表現する
   A事実を正確に理解し伝達する。
   B概念・法則・意図などを解釈し、説明したり活用したりする。
   C情報を分析・評価し、論述する。
   D課題について、構想を立て実践し、評価・改善する。
   E互いの考えを伝え合い、自らの考えや集団の考えを発展させる。
これらの学習活動を発達の段階に合わせて具現化したものが、言語活動例に示されています。

 国語の学習では、基礎的・基本的な知識・技能を言語活動を通して学習していく過程で思考力・判断力・表現力等がはぐくまれていくと言えます。また、ただ言語活動を行えばよいのではなく、相手や目的、意図などを明確にした言語活動を行うことが大切です。相手によって使う言葉の難易度を変えたり、目的に応じて表現する形を変えたりする過程で、習得した知識・技能をうまく使っていくための思考力・判断力・表現力等が育っていくと考えられます。

○言語活動は絶対行わなければならないの?
■今回の改訂で、国語科の指導事項は言語活動を通して指導することになっています。
 この言語活動は「日常生活に必要とされる記録、説明、報告、紹介、感想、討論など」を指しており、これらを通して各領域の指導事項を身に付けさせ、日常生活に必要な国語の能力の基礎を育成することとなります。
 
  言語活動を重視した今回の学習指導要領改訂は 「生きて働く国語の能力」を強く意識したものです。

 これからの国語の学習においては、単元ごとに言語活動を設定することが基本ですが、「読むこと」の単元と「書くこと」の単元をつなげて1つの言語活動を行うようなことも可能です。(言語活動を設定した授業実践はこちらへ)

では、どんな言語活動を行えばいいの?
  小学校学習指導要領解説国語編(平成20年8月)には、言語活動の具体的な例が示されています。これらは、実生活の様々な場面に活用され、また各教科の学習にも必要な言語活動として「日常生活に必要とされる記録、説明、報告、紹介、感想、討論など」を例示しています。それぞれの言語活動特有の言葉の使い方や表現の様式に即して、各領域の力を使うことを身に付けていくことになります。(例示されている言語活動を確かめたい方はこちらへ)

○伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項と今までの言語事項との違いは?
■従前の学習指導要領では「認識や思考及び伝え合いなどにおいて果たす言語の役割や相手に合わせた言葉の使い方や方言など、言語の多様な働きについて理解する」ことがねらいとなっていました。
  今回の改訂では、これまでの指導事項に伝統的な言語文化に関する事項として「物語や詩歌などを読んだり、書き換えたり、演じたりすることを通して言語文化に親しむ態度を育成する」ことが加えられています。


  第1学年及び第2学年
   昔話や神話・伝承などの本や文章の読み聞かせを聞いたり、発表し合ったりすること。
  第3学年及び第4学年
   易しい文語調の短歌や俳句について、情景を思い浮かべたり、リズムを感じ取りながら音読や暗唱
   をしたりすること。
   長い間使われてきたことわざや慣用句、故事成語などの意味を知り、使うこと。
 第1学年及び第2学年
   親しみやすい古文や漢文、近代以降の文語調の文章について、内容の大体を知り、音読すること。
   古典について解説した文章を読み、昔の人のものの見方や感じ方を知ること。
                      (伝統的な国語文化に関する事項の音読プリント及び解説のページはこちら)

○自ら学び自ら考える力を育成するための授業のポイントは?
■新学習指導要領総則 「第4 指導計画の作成に当たって配慮すべき事項」の2(4)には、「各教科の指導に当たっては、児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるよう工夫すること」とあります。

  学習の見通しを立てさせるためには、
○ 1単位時間の目標を明確につかませ、その時間でどんな学習をするかということを児童自
  身に理解させておくこと
○単元の学習計画を立てさせたりすること

  が大切になります。

  学習したことを振り返らせるためには、
○ この学習でどんな力を身に付けたいのか、どのような態度や意識で学習に取り組むことが
  できたのかということを振り返らせるような自己評価活動を位置付けること

  が大切です。

教師が身に付けさせたい力を明確にもって授業を行うのは当然のことですが、児童にも目標があり、その目標達成のためにどのような学習を行うのか、そして、その学習を通して目標を達成できたのかといった意識をもたせるようにしていく必要があります。また、総則にも書かれているように、見通したり、振り返ったりする活動は、学級の発達段階に合わせて国語科以外の教科・領域でも積極的に行わせることが大切になります。
 *学習計画を立てるためのワークシート例
 *1単位時間の振り返りを行うためのワークシート例
 *単元の振り返りを行うためのワークシート例
参考図書  安彦忠彦監修 寺井正憲・吉田裕久編著 『小学校学習指導要領の解説と展開 国語編』 教育出版 2008年8月 

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最終更新日: 2010-02-12