「意思決定を取り入れた討論型の学習」に取り組んでみませんか!

         
実践事例4 小学校第6学年 「『徳川の世』は、どんな世の中だったの」
 
単元について
  学習指導要領(1)オ「『キリスト教の伝来、織田・豊臣の天下統一、江戸幕府の始まり、参勤交代、 鎖国について調べ、戦国の世が統一され、身分制度が確立し武士による政治が 安定したことが分かること』について、人物の働きや代表的な文化遺産を中心に遺跡や文化財、資料などを活用して調べ、歴史を学ぶ意味を考えるようにするとともに、自分たちの生活の歴史的背景、我が国の歴史や先人の働きについ て理解と関心を深めるようにする」を受けている内容である。
 

本単元では、 徳川家康が江戸幕府を開き約260年にわたる安定した政治が行われた江戸時代について、家康、家光の2人の将軍による様々な政策の成果を取り扱う。 また、「家康が幕藩体制の基礎を築き、家光が確立させた」と、両者の功績が比較されることも多いことから、 江戸幕府が長く続いた理由を探らせることで幕府の政策やその工夫について気付かせ、それらを基にして家康と家光の功績を比較する討論や論述を行う学習ができると考える。この学習を通して、江戸幕府が長く続いた理由について多面的に捉えさせることができると考える。したがって、児童の思考力・判断力・表現力を育成するのに適した単元であると考える。

 児童は、歴史上の人物と彼らが行った政策や事業が一致しないことが多い。1学期に、「『信長、秀吉、家康』の3人の武将の中で、最も優れていたのはだれか。」という論題で討論会を行った経験がある。しかし、積極的に参加した児童は少数で、事実を理由にしていた児童が多い。また、討論の目的を、相手に勝つことであると捉えた児童が多かった。
 2人の功績を捉えさせた後、「江戸時代が平和で260年間も続いたのは、家康と家光のどちらの功績が大きいだろうか」と投げ掛ける。児童の意見は両者に分かれることや、同じ意見でも根拠が違うことが考えられる。論題「江戸時代が平和で安定した世の中となり、260年間も続いたことに、より大きく貢献したのは家康と家光のどちらだろう」をつくらせる。そして、話合いの観点を整理し、討論会を行うことで課題を解決するという流れを導いていきたい。討論会に向けての準備では、観点を基に両者の功績を点数化できるように、ワークシートの工夫を行う。
単元の目標
 江戸時代の社会に関心をもち、身分制度の確立や大名の統制、キリスト教の禁止や貿易統制等について、年表や資料を活用して調べ、武士による安定した政治が行われたことが分かるようにする。
単元の評価規準
社会的事象への
関心・意欲・態度
社会的な
思考・判断・表現
観察・資料活用の
技能
社会的事象についての
知識・理解
○江戸幕府の武士による政治が安定し、長く続いたことに関心をもち、徳川家康と徳川家光の行った政策などについて、意欲的に調べている。
○歴史を学ぶ意味を考えようとしている。
○江戸幕府の武士による政治が安定し、長く続いたことから学習問題を見いだし、見通しをもって追究し、徳川家康と徳川家光の行った政策の相違点について思考・判断したことを、適切な言葉で表現している。 ○年表やその他の資料を活用して、江戸幕府が行った大名統制や身分制度、貿易の取り締まりなどについて必要な情報を集め、読み取ったりまとめたりしている。 ○江戸幕府が大名統制を行うとともに身分制度を確立し、貿易統制を行うことなどで武士による政治が安定したことを理解している。
単元の指導計画(全6時間)
過程
主な学習活動
教師の指導・支援
時配
学習問題をつかむ
○教科書の絵や文章から、徳川家光が大名に対して大きな力をもっていたことをつかむ。

○家光が生まれながらに強い力をもち得たのは、家康の力が大きかったことを知り、学習問題をつくる。
○伊達政宗が「将軍様ではなく、私が踏み潰して御覧入れましょう」と言ったエピソードを伝え、将軍の力の強さに気付かせる。
○デジタル教材を視聴させ、家康と家光の関係を捉えさせる。
○2人が様々な政策を行い、世の中を安定させていったことを捉えさせる。
 家康や家光はどんな政治を行ったのだろう。 《学習問題T》
○調べる観点をつかみ、学習の見通しをもつ。 ○「大名をおさえる」、「外国(キリスト教)との関係」、「お金をたくわえる」の3つの観点を中心に調べることを伝える。
調

江戸幕府が、武家諸法度や参勤交代などの政策を通して大名を治める仕組みについて調べる。 ○幕府が政策を通して大名に大きな力をもたせないようにしたことを捉えさせる。
○武家諸法度が代々の将軍によって改訂されていることを知らせ、家康や秀忠と家光の内容の違いについて気付かせる。
○家康と家光の政策を色分けさせ、どちらの政策か分かりやすいようにする。
○江戸幕府が、武士を中心とする身分制度を確立させ、農民を支配するしくみについて調べる。 ○農民の負担やおふれ書きの内容を通して、江戸幕府の身分による支配を捉えさせる。
○江戸幕府が、キリスト教を禁止したり、貿易を制限したりして、自らの支配を強めようとするしくみについて調べる。 ○キリスト教の取り締まりや出島での貿易などを通して、家康と家光の政策の違いに気付かせる






○学習問題Tのまとめをする。


○江戸幕府が長年続いたことに、より大きく貢献した将軍は、家康か家光かを考える。
○討論会の論題を決める。

○徳川家康や家光による大名統制や貿易統制、経済政策を通して、武士による政治が安定したことをまとめさせる。
○平和で安定した時代を築いたことに対して、どちらの貢献度が大きいか考えさせる。
 論題 江戸時代が平和で安定した世の中となり、260年間も続いたことに、
     より大きく貢献(活躍)したのは、家康と家光のどちらだろう。
                                      
《学習問題U》
○討論会に向けて自分の考えをまとめ、意思決定1を行う。 ○これまで学習した内容を振り返らせ、それぞれの政策がどれだけ有効だったのかを考えさせる。
○家庭学習等も利用させて自分の考えをまとめさせる。
討論会を行い、自分の考えを深める。

○自分の考えを論述する。

                   (意思決定2)

○支持する武将やその理由(政策とその効果)を観点ごとに話し合わせる。
○ワークシートを基に、自分の考えを論述させる。
○背面黒板に掲示し、みんなで見合うことを伝え、相手意識をもたせて論述させる。
 
 
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