つくりだす喜びを味わう児童を育てる図画工作の授業を提案します!!

2 研究の実際                                                      

(2) 先行研究における共同してつくりだす活動・〔共通事項〕
@ 先行研究における共同してつくりだす活動
   ○ 共同してつくりだす活動について
      本来造形活動とは、個人の発想やイメージをもとにした表現活動であり、多様な個性の表現を追求するものです。それゆえ、異なった個性が集まってひとつの作品に仕上げる共同製作は難しいと考えられています。しかし子どもは、大人と比べて個としての確立がまだ未熟な時期であり、人との関わりや周囲の環境の影響を大きく受けながら育つ時期でもあります。ですから、子ども同士の共同の活動による大きな作品づくりやそれらの鑑賞を通して得られるものは、きっと彼らの柔軟な心や感性に還元されていくはずです。また、それらが自由で豊かな表現活動への土壌となることはいうまでもありません。

学校という同年齢の友達と生活を共にする場において、いろいろな抵抗を乗り越え、協力して作品をつくり上げていくことは、楽しさと共に苦しさの体験をも共有することです。また、自分と異なった感じ方や表現の方法を学ぶことは、自分の表現を客観的に認識し、大切にすることにもつながっていくのです。そして、ダイナミックな作品をつくり出した満足感・成就感は、他の領域では得られない大きなものがあります。 

指導者は時期に即して充分に構想を練った上で、ぜひ共同製作をカリキュラムに取り上げてほしいものです。
                                        図工教育の実践指導10 集団・共同製作(平成元年8月)p4

   ○ 共同製作の分類
 
持ち寄り型 ・テーマに沿って各自が個別に作品をつくり、それらを集合させてひとつの作品にする。
・集合型(持ち寄り型)は指導者が主導権をもつ製作方法なので、低学年から中学年の児童に適している。

集中型 ・ひとつの作品をつくるために見通しを立ててテーマを決め、子ども同士の話合いを通して構想を練る。
・全体像が決まったら各パートで分担し、できたものをまとめてひとつの作品とする。
・この方法は子どもの主体性を生かすもので、子ども自身に主導権をもたせ、話合いや分担などを進めさせていく。 実際には高学年の児童において可能な方法といえる。

 

   ○ 発達の段階と共同製作
    
 
学年
表現の特徴と共同製作の留意点
低学年「心と表現の解放のために」
・表現は自己中心的なものが目立つが、身の周りへの意識も広がってきているので、友達や先生も表現に加えるようになる。
・学校生活の中で接する働く人々や、物語の題材などが適す。
・この時期は、まだ子ども同士による話合いで作業を進めるのは無理なので、教師主導型で行うことになる。
・個人や2人組などでつくったものを集合させたり、分業や分担によってつくったものをひとつの作品にまとめていく方法がよい。
・一人で製作するときとは違った大きな画面に、のびのびと描かせたい。
中学年「楽しみながら、遊びを通して」 ・表現活動も行動力も大変活発でエネルギッシュ。
・自分を中心としながら他者とのつながりにも目覚めてゆく年頃。グループ活動もできるようになる。
・この時期の題材としては、グループで一体感のもてるもの(島の探検、旅行記など )、喜怒哀楽といった感情表現のはっきりしたもの、内容が起伏に富んだものをテーマにすると意欲的に取り組める。
高学年「友達から学び、喜びを共にする」 ・自意識が芽生えることにより自己の表現を他と比較してみるようになり、表現に停滞気味の子どもも出てくるなど個人差が広がる。
・個人ではできない大きな作品づくりに挑戦することによって、心を解放し、造形活動の幅を広げることができるのではないだろうか。
・共同製作では、代表や一部の子どもだけの活動にならないよう、全員の共通理解と全員が必ず製作に参加できる方法を工夫することが大切。
・個々のもつ問題点を見付けて、個別指導や助言や励ましを与え自信をもたせたい。
                                                         図工教育の実践指導10 集団・共同製作(平成元年8月)p4
A 文献における〔共通事項〕  
   
〔共通事項〕の内容
・ 〔共通事項〕については、一見、目新しく戸惑うが、内容を見ると決して新しく付け加えられたものではない。 
・ 子どもがもっている資質や能力であり、それをいっそう高めていくことが求められている。
・ 図画工作でこれまで大切にしてきた、形や色について、子どもがそれをとらえ、そこからイメージをもつ姿であ
  る。
・ 形や色などの特徴をとらえイメージをもつ能力は、表現や鑑賞の基本であり、広くコミュニケーションしていく力
  のもとになるものである。
〔共通事項〕の意義
・ 子どもは、材料を触って形の感じや質感をとらえる。材料を見つめながら色の特色に気付く。
  →形の感じや色の特色から、自分の体験してきたことやこれからやってみたいことなどを基にして、自分なり
        のイメージをもって発想する。
・ 教師は、子どもがどのように形や色をとらえているか、そこからどんなイメージをもつようになったかを、理解し
   指導に生かしていくことが大切である。
・ 活動に集中できない子どもが、なぜ集中できないか、つまずいている子どもが、どこでつまずいているのかな
    どを教師が確かめるための視点でもある。
・ 絵の具を混色しているときに偶然できた色にどのような感じをもつのか、のこぎりで板材を切っているとき、
    その音や腕の力の入れ方、繰り返しのリズムからどんなイメージをもつのかなど、子どもの姿を通して
    〔共通事項〕を確かめながら、指導に生かしていくことが求められる。
                                                                                     小学校新学習指導要領 ポイントと授業づくり 図画工作(平成20年11月)p6、21、22 

                                                  

 
                                                      

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