つくりだす喜びを味わう児童を育てる図画工作の授業を提案します!!
                                                     
3 研究のまとめ                        
(1) 研究の成果
○ 共同してつくりだすよさを感じ取れる題材を開発し、出会わせ方や教具等を工夫しました。

本研究では、共同製作を「作品共同型」と「アイデア共同型」の2つに分類し、それぞれのよさと留意点を整理しました。そして、一つのテーマで個々人が製作をして、最後にそれぞれの作品を組み合わせる「作品共同型」の題材「行ってみたいなふしぎな世界・・・ようこそ6の2ワールド」で授業実践をしました。
  題材を決めるに当たっては、「花火の世界」「わたしの花」などのように絞り込まずに、「ふしぎな世界」「行ってみたい世界」「ありえないような夢の世界」など児童の発想が広がりやすく、個々人の作品を組み合わせても全体のバランスが取れる題材にすることを考慮しました。
  児童と題材との出会いでは、個人の作品が完成したら友達の作品と組み合わせ、ゆうあい館に展示することを伝えて、児童が目的意識をもてるようにしました。ゆうあい館には、地域の方が頻繁に利用する図書館やホールなどがあり、多くの方に完成した作品を鑑賞していただけると考えて、展示することを提案しました。
  そのことによって、児童は製作への意欲をもち、最後に一人一人の作品を組み合わせることを意識しながら、個人の製作でよりよい表現を工夫することができました。そして、個人の製作後の組合せでは、友達の作品のよさや美しさを感じ取りながら、形や色、イメージなどを大切にして、「6の2ワールド」を完成させることができました。
  地域の方からは、一人一人の個性を称賛したり、個々人の作品が集合した多くの「ふしぎな世界」のすばらしさを感じ取ったりしたという内容のメッセージを数多く頂きました。一人一人のよさと全体の迫力が伝わり、地域の方にも喜んでいただくことができ、児童の達成感につながりました。
 

また、ワークシート等の教具を準備したり、様々な技法を試す場を設けたりしたことで、次のような成果がありました。

*「きらりカード」では、アイデアスケッチをさせることで作品のイメージをもたせ、製作に必要な道具・材料の準備を具体的に示させることで製作への見通しをもたせることができました。
*「『きらりタイム』の進め方」という司会マニュアルを準備したことで、ねらいに沿った話合いをさせることができました。児童は、話合いで出されたアドバイスを自分の作品に反映させ、意欲的に表現活動に取り組んでいました。
*「ひらめきコーナー」では、様々な技法を試すことができるので、一つ一つのパーツに最適な技法を取り入れられるだけでなく、作品やパーツの新たなイメージを膨らませることができました。

児童は、見通しをもって活動し、自分のイメージに合う表現を追求することができました。また,友達との関わりの中で、自分と異なる表現方法などに触れ、そのことによって新たなアイデアを思い付き、製作に熱中することができました。友達と交流する喜びを味わいながら、表現活動を楽しむことができたと考えます。

  

○ 形や色、イメージなどを視点とした交流活動の場を設定しました。
    児童がつくりだす喜びを味わうためには、「発想や構想の能力」と「創造的な技能」を高めることが大切であると考
え、製作過程に形や色、イメージなどの〔共通事項〕を視点とした少人数の交流活動を取り入れました。児童は、話
合いをする中で様々な表し方があることに気付いたり、アドバイスを基にイメージを膨らませたりして製作を進める
ことができました。
  構想の段階での交流活動では、アイデアスケッチについて話し合わせました。アイデアスケッチの交流は、その
後の製作へ大きな影響を与えることが分かりました。イメージが膨らまず、アイデアスケッチが一人でかけない児童
にとって、大変有効な活動でした。
  製作途中の交流活動では、製作中の工夫や悩みについて話し合わせました。友達から製作の頑張りを認めて
もらって自信をもったり、友達の表現からよさを見付けて新たなことを思い付いたりすることで、意欲的に製作する
ことができました。
  個人の製作後の交流活動では、作品のよさについて話し合わせました。お互いの頑張りを認め合い、自信をも
たせることができました。友達からの「ほめほめカード」を嬉しそうにワークシートに貼る姿も見られました。
  また、授業が進むにつれ、児童が形、色、イメージに関する発言や記述を多くするようになりました。児童が、形や
色、イメージにこだわって製作し、自分のイメージに合うよりよい表現を工夫することができたと考えます。
  形や色、イメージなどを視点とした交流活動によって、児童の「発想や構想の能力」と「創造的な技能」が高まり、
そのことによって、児童は、思いどおりにつくる満足感、つくりだす喜びを味わうことができました。
 
(2) 研究の課題
 本研究では、「作品共同型」の題材を開発し、児童が様々な技法を試しながら自分のイメージに合う方法を選択
して製作しました。イメージにぴったり合う方法を選んだ児童が多かったですが、中には、ただひたすら様々な技法
を試しているだけの児童もいました。
  そこで、低学年のときから、その学年に応じた技法を習得させる必要があると感じました。そして、様々な技法の
中から、児童が選択できるような指導について、6年間の系統性をもって取り組んでいくことが大切だと考えています。    

 

4 参考文献・参考資料                        
 
@ 文部科学省 『小学校学習指導要領解説 図画工作編』平成20年8月 日本文教出版 
A 教育図書編  『図工教育の実践指導 第10巻 集団・共同製作』1989年8月 学習研究社
B 藤江 充・辻 政博編著 『小学校学習指導要領 ポイントと授業づくり 図画工作』平成20年11月 
東洋館出版社 
C 日本造形教育研究会編 『やってみたいな!図画工作題材集 絵画 高学年』2007年9月 開體ー出版
                                                                                                                                  

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