〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法の工夫について提案します!!
                                                         

3 研究のまとめ

(1) 研究の成果

「聴き取り感じ取ったことを基に、思いや意図をもって表現したり味わって聴いたりすることのできる児童」を育成するために、〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法の工夫をしました。

○〔共通事項〕をよりどころとした表現と鑑賞の関連を図った題材構成

本研究では、〔共通事項〕の音楽を形づくっている要素である旋律を中心に表現及び鑑賞の各活動を関連させ、聴き取り感じ取ったことを基に、思いや意図をもって表現したり味わって聴いたりすることのできる児童を育成するように、題材を構成しました。

鑑賞「白鳥」、歌唱「ふじ山」、器楽「メリーさんの羊」、音楽づくりの各活動を関連させたことで、児童は、各活動で学んだことを次の学習に生かしながら題材のねらいに向かって意欲を高めながら学習に取り組むことができました。

また、旋律の特徴を感じ取りながら、音を音楽に構成する手掛かりとして音楽の仕組みの反復を旋律の創作に生かすことができるように題材を構成したことにより、対象児童にとって旋律創作は初めてでしたが、抵抗なく楽しく取り組むことができました。どの児童も旋律の特徴を生かして創作に取り組み、自分たちのつくった音楽に思いや意図をもつことができていました。

○〔共通事項〕カードの作成、提示の仕方

〔共通事項〕カードを提示したことにより、児童は、思いや意図をもつための思考・判断の根拠が明確になり、それを手掛かりとして表現の工夫をしたり味わって聴いたりできるようになってきました。表現の工夫をしたり聴き取り味わったりすることに関して、教師の一方的な指導によるものでなく、〔共通事項〕をよりどころとして自分が聴き取り感じ取ったことを基に、思いや意図をもって表現したり味わって聴くことができたという達成感につながりました。その達成感が、思いや意図をもって表現したり味わって聴いたりする楽しさにもつながりました。

〔共通事項〕は、どの活動にも共通に必要な音楽の要素なので、〔共通事項〕カードを提示することは、前の学習と今の学習を関連させて思考・判断させる有効な手立てとなりました。

○発問や指示

〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導を進めるために、〔共通事項〕と指導事項をつなぐ発問や指示と表現及び鑑賞の各活動をつなぐ発問や指示とを、意図的に使い分けながら発問や指示を行うよう心掛けました。

そのことにより、児童は、前に学習したことを今の学習に生かしながら、〔共通事項〕の音楽を形づくっている要素を根拠として思考・判断し、要素と自分の思いや意図とを関連させ、味わって聴いたり思いや意図をもって表現の工夫をすることができました。

○ワークシート

表現では、@どこを、Aどのように聴き取り感じ取って表現の工夫をしたいのかが書き込める「工夫マップ」(楽譜に図や線や言葉で書き込めるようにしたもの)をワークシートに示しました。

鑑賞では、@どこを(何の)、Aどのように(どんな様子を)聴き取り感じ取ったのかが書き込める「部分マップ」(楽曲の中でねらいに関わる部分を楽譜や旋律線などで表し、書き込みができるようにしたもの)をワークシートに示しました。

音楽表現の創意工夫や鑑賞の能力について、活動の観察とワークシートを補完的に扱って評価ができるように、Bなぜそう感じたのかを〔共通事項〕に関連させて書かせるようにしました。

このようにワークシートを工夫することで、児童の思考の過程やつまずきを把握しやすくなり、形成的な評価とそれに基づく適切な指導を行うことが容易となり、学習評価にも役立てることができました。

○音楽の学習環境づくり 

〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図るということは、その支えとなる〔共通事項〕の音楽を形づくっている要素や「音符、休符、記号や音楽にかかわる用語」についての理解が必要となります。これらの要素に、日頃から親しめるように音楽室に「音楽を形づくっている要素」や「音楽の家」(音楽を形づくっている要素をまとめた家)を掲示したことで、〔共通事項〕を根拠に思考・判断させる際に、スムーズに授業を進めることができました。

 以上のような手立てを通して、聴き取り感じ取ったことを基に、思いや意図をもって表現したり味わって聴いたりすることのできる児童の育成を図ることができました。
(2) 研究の課題
 本研究では、表現と鑑賞の関連を図るに当たって、鑑賞→表現(歌唱)→ 表現(器楽)→表現(音楽づくり)という流れで題材を構成して、授業実践を行い、検証をしましたが、各領域・分野の組合せは他にもいろいろあります。

今後は、いろいろな題材構成のバリエーションを考え、実践してみることが必要と思いました。また、年間における題材と題材との関連や6年間を見通した題材の系統についても、〔共通事項〕をよりどころとして考えていく必要があると思います。

 

4 参考文献・参考資料

@文部科学省                 『小学校学習指導要領解説 音楽編』  平成20年8月 教育芸術社
A文部科学省                『中学校学習指導要領解説 音楽編』  平成20年9月 教育芸術社
B国立教育政策研究所         『特定の課題に関する調査(音楽)調査結果(小学校・中学校)』  平成22年7月
C国立教育政策研究所         『評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料【小学校 音楽】』 
                                               平成23年11月
D佐藤 日呂志・坪能 由紀子編著 『新学習指導要領の展開 音楽科編』  平成21年1月 明治図書
E安彦 忠彦監修
  坪能 由紀子・伊野 義博      『小学校学習指導要領の解説と展開 音楽編』 平成20年8月 教育出版 
F金本 正武・坪能 由紀子      『小学校新学習指導要領 ポイントと授業づくり 音楽』  平成21年2月 東洋館出版社  
                                                         
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