〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法の工夫について提案します!!    
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1 研究の実際

(2) 本研究における〔共通事項〕をよりどころとした表現と鑑賞の関連についての考え方

 〔共通事項〕は、表現及び鑑賞のすべての活動において共通に指導する内容が示されています。授業においては、すべての活動で共通に必要となる〔共通事項〕で示された指導内容と、各活動ごとに示された指導内容を関連させることが大切になります。また、表現や鑑賞の各活動との関連についても、歌唱や器楽の活動を通して学んだ〔共通事項〕を音楽づくりの活動に生かしたり、音楽づくりの活動で学んだことを歌唱や器楽の表現に生かしたり、鑑賞の活動を通して学んだことを表現の各活動に生かしたり、表現の各活動で学んだことを鑑賞の活動に生かしたりすることも大切です。

 @〔共通事項〕をよりどころとした二つの関連

 

「よりどころ」の意味 

                  (大辞泉より)

  1 頼みとするところ。支えてくれるもの。  
  ある物事が成り立つもとになるもの。根拠

本研究における「よりどころ」も、これら二つの意味を含み、〔共通事項〕が各領域分野の各活動を支えてくれるものであると同時に、聴き取り感じ取った〔共通事項〕を思考・判断の根拠として、自分の思いや意図をもって表現したり味わって聴いたりすることのできる児童を育てる指導法の工夫についての研究と捉えています。

  〔共通事項〕は、表現及び鑑賞の全ての活動において共通に指導する内容が示されており、表現及び鑑賞の能力を育成する上で共通に必要となるものです。〔共通事項〕を音楽活動のよりどころとすることは、〔共通事項〕と各活動の指導事項とを関連させつつ、表現と鑑賞の各活動の関連を図りながら、〔共通事項〕を支えとして題材のねらいを達成していくという二つの関連を考えていく必要があります。
〔共通事項〕と各活動の指導事項との関連
表現及び鑑賞の各活動の関連

○〔共通事項〕を各活動に共通に位置付け、 〔共通事項〕と題材のねらいとの関係を明らかにする。

★題材を構成する際、各活動の指導事項との関連を図りながら、「音楽を特徴付けている要素」及び「音楽の仕組み」からいくつかを取り上げて題材のねらいに合わせて明確に〔共通事項〕を位置付けます。

★〔共通事項〕と学年の系統性や年間の見通しを考えて題材を構成します。

★〔共通事項〕と事項イの音符、休符、記号や用語も、事項アと関連させながら、6年間を通して系統的に題材に配置します。

○〔共通事項〕の学習を各活動の学習に生かすようにして、表現及び鑑賞を関連させながら指導する。

★表現及び鑑賞の各活動に示された指導事項を身に付るようにするためには、〔共通事項〕の学習を各活動の学習に生かすよ うに」、〔共通事項〕と各活動の内容を関連させた題材を構成することが大切です。

★題材の中で重点的に扱う〔共通事項〕アの(ア)「音楽を特徴付けている要素」及び(イ)「音楽の仕組み」を聴き取ることとその働きを感じ取ることを支えとしながら、それらを生かして楽曲の表現を工夫し、思いや意図をもって表現できるようにする活動や鑑賞において、アを支えとしながら、想像したことや感じ取ったことの理由を(ア)及び(イ)に求めながら言葉で表す活動などが考えられます。

      ※教育出版 小学校学習指導要領の解説と展開 音楽編 安彦安彦 監修 坪能由紀子・伊野義博 編著 p14,15より
   

本研究を実践し、検証していくためには、〔共通事項〕をよりどころとしてこれらの関連を図った題材を構成することが必要です。

そこで、本研究においては、まず題材構成について考えました。

 A〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った題材構成
  本研究では、「旋律の特徴を感じ取る力」を付けさせるために、〔共通事項〕の「旋律」を中心に関連させ、表現と鑑賞のすべての活動を通して育成するように、教材を組み合わせ、題材を構成しています。また、鑑賞の活動で学習した音楽の仕組み「反復」を表現領域の器楽の学習で生かし、更にそれを音楽づくりの学習で、音を音楽に構成する手掛かりとして「反復」を取り入れた旋律の創作に生かすよう、下記のような関連をイメージして構成しています。
                   
題材名 「せんりつのとくちょうをかんじとろう」
題材の
指導目標
○旋律の特徴を感じ取りながら、想像豊かに聴いたり思いや意図をもって表現したりすることが    できるようにする。
○旋律の特徴を生かして、曲想にふさわしい表現の仕方を工夫しながら演奏することができるよ  うにする。
   
 
音楽づくり 旋律 ・「メリーさんの羊」にでてきた、G、A、H、Dを含むG、A、H、C、Dの5音で旋律を創作する。
反復 ・「メリーさんの羊」で学習した、反復のある8小節の楽曲構成を参考にして曲を構成する。
   
 
 
 

  器楽

「メリーさんの羊」

旋律
・上下行の旋律の中に、付点の弾むようなリズムの旋律があることや、1〜2小節と5〜6小節が同じ旋律であることに気付き、表現の工夫に生かす。
反復 ・楽曲の構成が、1〜2小節と5〜6小節が同じ旋律であることに気付き、「白鳥」で学習した反復について、、楽譜を見て理解する。
・反復のよさや面白さを感じ取って表現の工夫に生かす。
   
 
   
歌唱
「ふじ山」
旋律
(強弱)
・「白鳥」で、旋律の動きが曲想に関連していたことを思い出す。
・「ふじは日本一の山」に向かう上行形の旋律と最も曲が盛り上がるところと強弱を関連させて表現の工夫に生かす。
 
 
 
   
鑑賞
「白鳥」

 

旋律
(音色)

 

・白鳥の様子を表すなだらかな上下行の主旋律、湖面の様子を表す16分音符の分散和音で流れるように繰り返される伴奏の旋律の特徴を聴き取る。
・優雅な白鳥を表すチェロの響きのある柔らかく優しい音色、湖面を波打つ様子を表すピアノの音色の違いに気付き、それぞれの音色のよさや美しさを感じながら聴く。
 
反復
・湖面の様子を表す16分音符の分散和音で流れるように繰り返される伴奏の反復を聴き取る。
・楽曲の曲想に関わる音楽を形づくっている要素である音楽の仕組み「反復」について、同じ旋律が繰り返しでてくることであることを知る。
表現及び鑑賞
の各活動
〔共通事項〕をよりどころとした各活動における。児童の具体の姿
 本題材は、教育芸術社 小学生の音楽 3年 指導書 研究編を参考にして、「せんりつのとくちょうをかんじとろう」という題材を取り上げ、研究に合わせて教材を組み合わせ構成しています。
            
  このように本研究では、聴き取り感じ取ったことを基に、思いや意図をもって表現したり、味わって聴いたりすることのできる児童を育成するために、この題材を通して各領域分野の各活動において、〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法の工夫について次の図のような関連を考え、〔共通事項〕カードの作成・提示の仕方、発問や指示、ワークシートなどの工夫について次のように実践をしました。
 A〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法の工夫
〔共通事項〕カードの作成・提示

○聴き取り感じ取ったことを基に、思いや意図をもって表現したり味わって聴いたりさせるための手立てとして、〔共通事項〕カードを作成し、提示する。

思いや意図をもって表現したり味わって聴いたりするためには、児童が、聴き取り感じ取ることが基になります。その知覚・感受を基に、思考し判断する根拠として、〔共通事項〕カードを提示することは、児童の思考・判断を焦点化してねらいに向かわせる有効な手立てになると考えました。

〔共通事項〕の扱いについては、それ自体を教え込むのでなく、あくまでも音楽のよさや面白さ、美しさを味わわせるという大きな目標を見失わないようにすることが大切だと考えています。提示の仕方については、〔共通事項〕が常に前面に全ての要素が提示されているような状態でなく、普段は音楽の学習環境の中で親しませておき、その授業のねらいを達成するためのよりどころとしてポイントとなる要素のみをその都度提示していくようにしていきます。

そのためには、教師が、年間計画の中で、〔共通事項〕と題材(教材)とどのように関連付けて指導していくのか明確な目標をもち、指導をしていくことが大切と考えています。

○〔共通事項〕を、9年間を見通して、小学校での学習と中学校での学習をつなぐ架け橋にできるようなカードにする。

提示する要素を小学校・中学校9年間のスパンで系統付けて理解させるために、〔共通事項〕カードを、中学校学習指導要領解説 音楽編「音楽の構造の原理」を参考に、大きく分類して色分けしています。

低・中学年では、児童が色の分類を意識することも少ないかと思われますが、高学年になり、音楽を形づくっている要素についての理解が深まるにつれ、要素を音楽の構造も含めて理解しやすいようにしています。

例えば、黄色いカードは、音と音の時間的な関係を表す要素「リズム」「速度」「拍の流れ」、ピンク色のカードは、音の横の連なりや縦の重なりに関係する要素「せんりつ」「フレーズ」「音階や調」「音の重なり」「和声の響き」「音楽の縦と横の関係」というふうな色分けです。小学校低学年や中学年で、まだ音楽の構造の原理が分からなくても、系統付けておけば、高学年になったり、中学校で音楽を構造的に学習するようになったりした時に、積み重ねてきた〔共通事項〕の学習がつながり合い、音楽を構造的に理解していく際に役立つと考えています。

音色

リズム
速度
拍の流れ
せんりつ
フレーズ
音階や調
音の重なり
和声の響き
音楽の縦と横の関係
強弱
反復
問いと答え
変化

※音符・休符・記号や音楽用語にかかわる用語もカードとしていつでも提示できるように作成しました。

※「音楽の縦と横の関係」については、小学校の学習指導要領においては、音楽の仕組みに入っています。中学校学習指導要領解説 音楽編の「音楽の構造の原理」によると、音楽の縦では、音の重なりや和声の響きも含み、横では旋律やフレーズ、音階や調も含むことから、大きなくくりでは、「音の連なりや織りなす関係」として、「テクスチュア」につながっていいきます。それで、音楽の組み立て方の要素と音の連なりや織りなす関係の両方の要素をもつことから、赤と青の間を取って紫色でカードを作成しています。

※中学生用にも「テクスチュア」「形式」「構成」の要素を入れたこれらのカードを作成し、小学校と中学校が連携して、〔共通事項〕を音楽活動の架け橋として系統的に指導していくことができたら、音楽の力が着実に積み上げられ、身に付いていくことになると思います。

    

       歌唱「ふじ山」の授業での板書例

 
音楽を形づくっている要素
小学校
中学校
音の振動の種類と周波数
  ・音色
  ・音色
音と音との時間的関係

・リズム

・速度

・拍の流れ

・リズム

・速度

音の連なりや織りなす関係

・旋律

・フレーズ

・音階や調

・音の重なり

・和声の響き

 

 ・音楽の縦  と横の関係

・旋律

  ・テクスチュア
音量の変化
  ・強弱
  ・強弱

音楽の  

組み立て方

・反復

・問いと答え

・変化

・形式

・構成

※この表は、中学校学習指導要領解説 音楽編 p19

      「音楽の構造の原理」を参考に作成しています。

発 問 や 指 示

〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導を進める上で大切な発問や指示については、

3つのポイントを踏まえて実践しました。

○〔共通事項〕と各活動の指導内容とをつなぐ発問や指示をする。 → 青の発問や指示
○ ねらいに向かって思考・判断させる発問や指示をする。(※ワークシートと関連させて具体的に@どこをAどのようにBなぜという内容について思考・判断させる)                  →オレンジ色の発問や指示
○表現と鑑賞をつなぐ発問や指示をする。               → 緑の発問や指示

  

 授業での実践例を紹介します。

 例:「ふじ山」(歌唱 3/6)

 T:「白鳥」でも、このような音の高さに合わせて動かした手の動きをもとに白鳥が湖で優雅に泳いでいる様子を思いうかべながら聴きましたね。この手の動きのような音の動きのことを何といいましたか?

 C:「せんりつ」です。 

 T:「ふじ山」でも、前時に学習した歌詞もヒントにしながら、せんりつの動きに気をつけて、友だちと協力して、「日本一のふじ山」を表す歌い方を工夫する勉強をします。

では、みんなで「ふじ山」のせんりつの音の高さに合わせて手を動かしながら歌ってみましょう。

 C:せんりつの動きに合わせて手を動かしながら歌ってみる♪

 T:せんりつの動きで何か気付いたことは、ありませんか?

 C1:音が高くなったり、低くなったりしています。

 C2:階段みたいにだんだん音が高くなっていくところがありました。

 C3:とても高い音にとんでいるところがありました。

 T:「白鳥」も、音が高くなったり、低くなったりしていたし、階段みたいにだんだん高くなっていくところがありましたね。

   「ふじ山」も、そういうせんりつの動きに気を付けて、歌い方の工夫をします。

   ワークシートの楽譜に、@どこを、Aどのように 工夫するのか書きましょう。

   

      一人 → ペア学習 → グループで工夫について発表する(歌う) → 全員で歌う → 一人 

※児童に発表させる際は、工夫について説明させてから発表させる。

 C:私たちのグループは、「ふじは日本一の山」のところを一番大きく歌うように工夫しました。
 
  T:それは、なぜですか?

 C:歌詞が「日本一の山」となっているし、「ふじは」の音が一番高くなっていたからです。  

※振り返りでは、創意工夫について活動の観察と補完的に評価ができるようにワークシートに、表現の工夫のよりどころとなった〔共通事項〕の言葉を入れて書かせる発問や指示をする。

 T:Bなぜ、そのように工夫したのか「せんりつ」という言葉を使ってワークシートに書きましょう。

 

 

     

 

 

 

ワークシート

ワークシートの作成については、〔共通事項〕を根拠としてどのように思考・判断して思いや意図をもったのか、またどのように味わって聴いたかが分かり、そのまま評価に生かせるように工夫しました。

作成のポイントは、次の3つです。

○表現では、@どこをAどのように聴き取り感じ取って表現の工夫をしたいのかが書き込める「工夫マップ」(楽譜に図や線や言葉で書き込めるようにしなもの)を入れる。
○鑑賞では、@どこを(何の)Aどのように(どんな様子)聴き取り感じ取ったのかが書き込める「部分マップ」(楽曲の中でねらいにかかわる部分を楽譜や旋律線などで表し、書き込みができるようにしたもの)を入れる。
音楽表現の創意工夫や鑑賞の能力について活動の観察とワークシートで補完的に評価ができるようにBなぜそう感じたり、工夫したいと思考・判断したのかを〔共通事項〕に関連させて書かせるようにする。

各活動のワークシートの内容に、上記の3点を盛り込むことで、児童が〔共通事項〕を根拠として思考・判断して表現の工夫をしたり、聴き取ったりした過程が見える形となり、評価をする際に役立ちますが、大切なことは、児童が書く段階でペアやグループ活動などを適切に取り入れ、一人で書くのが難しい児童に配慮したり、机間指導の際に言葉足らずの文章表現には、教師が補助的な発問を個別に行い、ワークシートの記入のみを見て評価するのでなく、児童と対話した内容も含めて形成的に評価することが大切だと考えています。

 

例:「白鳥」鑑賞(ワークシートで鑑賞の能力を評価する)

 

例: 「ふじ山」歌唱(ワークシートで音楽表現の創意工夫を評価する)

※このワークシートは、鑑賞「白鳥」と歌唱「ふじ山」の例です。どちらも、@どこをAどのように聴き取ったり表現の工夫をしたりしているかが書き込める「部分マップ」や「工夫マップ」と、Bなぜか理由を書かせています。

例えば、上記のように「ふじ山」のBなぜ そのようにくふうしたのかについて書くところに、「せんりつの山をちょっと大きくした」とあります。これは、「ふじは日本一の山」のところを大きな声で歌う「強弱」の工夫について書いています。児童が曲の山を感じ取っていることが理由であることが読み取れるものの言葉が足りない点については、「なぜ、ここを大きく歌いたかったのですか?」「なぜ、ここが山だと思ったのですか?」などのような補助的な発問を投げかけることで、「ふーじは」と伸ばすところの音が長くて高かったから」とか、「その一段上の小節に旋律が階段のように盛り上がっているから、などのように自分の思いや意図を、書き加えていくことができます。

 

例: 音楽づくり「(ワークシートで音楽表現の創意工夫や技能を評価する)

★グループ創作用の作曲用学習シート

※3年生ではまだ旋律創作の経験のない児童の実態に合わせて、2小節単位で旋律を創作させ、「メリーさんの羊」を参考にしてグループで話し合いながら構成を考え、「反復」を生かして8小節の音楽をつくっていきます。

ここをグループ活動にしているのは、一人で創作するのが難しい児童にとってもグループの話し合いに参加しながらつくっていくことで、自分も旋律づくりに参加して協力してできたという達成感を味わわせるためです。

この後、個人の音楽表現の創意工夫や技能を評価できるようなワークシートを書かせます。

次のワークシートは、同じグループによる創作曲ですが、できた曲は同じでも、その曲作りに対する思いや意図は一人一人個性があり、音楽を形づくっている要素と関連させて思考・判断したかどうかについても分かります。また、記譜の技能についても評価できます。

○階段のように、上行の旋律にした理由について、ユニコーンがだんだん高くとんでいく感じにしたかったことが書かれています。 ○階段のように、上行の旋律にした理由について、階段みたいに高くなったからかっこいいと書いており、思いや意図をもってつくったというよりもみんなで創作した結果感じたことについて書いています。 

○記譜については、反復を生かした構成の部分について、音の高さやリズムを正しく書くことができています。

○記譜については、反復を生かした構成の部分について、リズムは正しく書けていますが、音の高さについては正しくない表記もあります。
★グループ創作用の作曲用学習シート

○上記の2点は、どちらも同じ児童のワークシートですが、記譜については、クラスの実態に応じてどちらかを活用するように作成していましたが、今回は、左記のワークシートで全員を評価しました。5/6時間目の音楽づくりの時間の最後に、早めにできたグループでチャレンジしてみたい児童には、意欲や記譜の能力の高い児童を見取る補助的なワークシートとして活用しました。
  

このように〔共通事項〕をよりどころとして、表現と鑑賞の関連を図った指導法の工夫を進めていくためには、その授業を含め、授業と授業を〔共通事項〕でつないでいく音楽の学習環境づくりも大切と考えました。音楽の授業の中で、児童の十分な音楽活動時間を確保するためにも、〔共通事項〕の内容について、その都度説明しなくていいように、日頃からそれらの要素に親しみ、理解を助けるような環境づくりはとても大切だと考えています。

  音楽の学習環境づくり

○〔共通事項〕の音楽を形づくっている要素について、日頃から親しみがもてるように、音楽室などに掲示しておく。  

低学年においては、難しい音楽用語をそのまま使うのでなく、分かりやすく具体的な例をあげながら授業の流れの中で話してあげることが大切です。

中学年になると、音楽の要素について、構造的なことも少し理解できるようになってくるので、本研究においては、「音楽を形づくっている要素」を、家にたとえて、家を形づくっている屋根や窓、壁などが音楽の「音色」「リズム」「旋律」などの要素にあたり、音楽を形づくっていることを音楽室の掲示物で示したり、話して聞かせたりしました。

〔共通事項〕は、表現及び鑑賞の各活動にも共通するものであり、低学年の学習から高学年の学習への橋渡しにもなります。

このような音楽の学習環境をつくることは、〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法の工夫をしていく上でまず必要なことだと考えました。

      

       

       

                      ※教育出版 小学音楽 音楽のおくりもの3年の資料を参考に作成しています。

学 習 形 態

 学習の形態は、題材の活動内容や児童の実態に合わせて、一人・ペア・グループ・全体を組み合わせて取り入れました。

教師(指導の段階) 知覚・感受し、興味をもたせる段階
試行錯誤し、思考・判断させる段階
  (音楽表現の創意工夫で思いや意図をも  たせる)
味わって聴いたり、思いや意図をもって表現したりさせる段階
学習形態
一人
ペア
グループ
全体
一人
児童(学習の段階A−1) ○(教材と出会う。)学習のねらいをつかみ、意欲をもつ。自己と対話し、自分の考えをもつ。  

○学習のねらいに向かう。自己の思考・判断や技能の習得などを二人で確かめ合う。

 

 

○グループとしてみんなの思いや意図をまとめる。

※自分の思考・判断と何人かの友だちの思考・判断とを比較し、話し合いうことで、よりよい自分の思考・判断ができる。

  ○よりよい思考・判断をさらに全体で発表し合うことで、よさを共有したり、味わいを深めたりする。   ○学習する前の自己から、学習後の自己の伸びに気付き、次の学習への意欲を高める。
 
教師(指導の段階) 知覚・感受し、興味をもたせる段階
試行錯誤し、思考・判断させる段階
味わって聴いたり、思いや意図をもって表現したりさせる段階
学習形態
一人(ペア)
グループ
全体
一人
児童(学習の段階A−2)

○(教材と出会う。)学習のねらいをつかみ、意欲をもつ。自己と対話し、自分の考えをもつ。

※自己の思考・判断が難しい児童は、ペアの学習によりヒントをもらって自分の考えをもつ手掛かりとすることができる。 

 

○グループとしてみんなの思いや意図をまとめる。

※自分の思考・判断と何人かの友だちの思考・判断とを比較し、話し合いうことで、よりよい自分の思考・判断ができる。

  ○よりよい思考・判断をさらに全体で発表し合うことで、よさを共有したり、味わいを深めたりする。   ○学習する前の自己から、学習後の自己の伸びに気付き、次の学習への意欲を高める。
※表現の工夫がねらいの場合は、一人学びから全体の学習までの過程に、ペアやグループの形態を取り、自分の考えをもつのが難しい児童でも、友だちからヒントを得て自分の考えをもったり、試行錯誤をして、思考・判断する時間を十分確保したいので、できればこのような学習形態(Aー1,2)にして、だれもが工夫できたという達成感を味わわせたいと考えています。
 
教師(指導の段階) 知覚・感受し、興味をもたせる段階

試行錯誤し、思考・判断させる段階
(音楽表現の技能の習得など)

味わって聴いたり、思いや意図をもって表現したりさせる段階
学習形態
一人
ペア(グループ)
全体
一人
児童(学習の段階B−1) ○(教材と出会う。)学習のねらいをつかみ、意欲をもつ。自己と対話し、自分の考えをもつ。  

○学習のねらいに向かう。自己の思考・判断や技能の習得などを二人で確かめ合う。

※自分の思考・判断と何人かの友だちの思考・判断とを比較し、話し合いうことで、よりよい自分の思考・判断ができる。

○技能の習得においては、ペアでできるようになった児童が増えてきたら、ペア同士4人組や6人組になって合わせる練習をする。

  ○よりよい思考・判断をさらに全体で発表し合うことで、よさを共有したり、味わいを深めたりする。   ○学習する前の自己から、学習後の自己の伸びに気付き、次の学習への意欲を高める。
学習形態
一人
グループ(ペア)
全体
一人
児童(学習の段階B−2) ○(教材と出会う。)学習のねらいをつかみ、意欲をもつ。自己と対話し、自分の考えをもつ。  

○学習のねらいに向かう。自己の思考・判断や技能の習得などをグループで確かめ合う。

※自分の思考・判断と何人かの友だちの思考・判断とを比較し、話し合いうことで、よりよい自分の思考・判断ができる。

※グループによる合唱や器楽合奏、音楽づくりの発表のような場合、グループで合わせて練習する時間が確保できる。

  ○よりよい思考・判断をさらに全体で発表し合うことで、よさを共有したり、味わいを深めたりする。   ○学習する前の自己から、学習後の自己の伸びに気付き、次の学習への意欲を高める。
※器楽(リコーダー)の技能習得がねらいの場合は、技能を習得するための時間の確保が必要であると同時に、教師だけでは、個別指導が十分行き届かないことも多いため、できれば、このように、ペア(席は隣同士でなく、できるようになった児童と習得がまだの児童とのペア)で、お互いに学び合うペアやグループの形態を中心とした学習をして、最後のまとめとして全体で合奏すると、できた喜びと音楽のよさがより深くを味わえると思われます。
 
教師(指導の段階) 知覚・感受し、興味をもたせる段階

試行錯誤し、思考・判断させる段階
     (鑑賞や低学年などでペアやグル      ープの活動が難しい場合など)

味わって聴いたり、思いや意図をもって表現したりさせる段階
学習形態
一人
全体(ペア・グループ)
一人
児童(学習の段階C) ○(教材と出会う。)学習のねらいをつかみ、意欲をもつ。自己と対話し、自分の考えをもつ。  

○学習のねらいに向かう。自己の思考・判断や技能の習得などをみんなで確かめ合う。

○全体で話し合ったり合唱奏したりすることで、よさを共有したり、味わいを深めたりする。

※自分の思考・判断と友だちの思考・判断とを比較し、話し合いうことで、よりよい自分の思考・判断ができる。。

  ○学習する前の自己から、学習後の自己の伸びに気付き、次の学習への意欲を高める。
※まだペアやグループの学習が難しい低学年の場合は学習形態のAやBの応用として、、全体の流れを一人→全体→一人を基本とし、部分的にペアやグループを取り入れながら児童が飽きないように、学習形態の変化を部分的に取り込む方法もあります。
 このように、学習形態は、A−1 ,A−2、B−1、B−2、C、のように、活動の内容や児童の実態に応じて、どこに重点を置き、どれくらいの時間が必要かを考えて適切な形態を取ることが大切と考えています。

この題材においては、鑑賞「白鳥」1/6(学習形態C)、歌唱「ふじ山」2/6(学習形態C)、3/6(学習形態A−2)、器楽「メリーさんの羊」4/6(学習形態B−1)、音楽づくり5/6(学習形態A−1)、6/6(学習形態B−2)で実施しています。

 
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