〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法の工夫について提案します!!
                                                       

1 研究の概要

(1) 研究テーマ

聴き取り感じ取ったことを基に、思いや意図をもって表現したり味わって聴いたりすることのできる児童の育成−〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法の工夫を通して−

(2) 研究テーマ設定の趣旨
○ 学習指導要領において求められている音楽教育の在り方
  平成20年3月の学習指導要領では、表現及び鑑賞の領域の指導内容が、歌唱、器楽、音楽づくり、鑑賞ごとに示されるとともに、これら全ての活動において共通に指導する内容が〔共通事項〕として新たに示されるようになりました。〔共通事項〕は、音色、リズム、速度などの音楽を特徴付けている要素や、反復、問いと答えなどの音楽の仕組みを聴き取り、それらの働きが生み出すよさや面白さ、美しさを感じ取ること、「音符、休符、記号や音楽にかかわる用語」を音楽活動を通して理解することとして示されています。〔共通事項〕は、表現及び鑑賞の能力を育成する上で共通に必要となるものなので、表現及び鑑賞の各活動と常に関連させて指導する必要があります。
○ 小学校における児童の実態と指導の現状
   国立教育政策研究所が平成20年12月〜平成21年2月に小学6年児童約3,000人を対象に実施した「特定の課題に関する調査(音楽)」によると、次のような結果が示されています。@《鑑賞に関する問題》において、4つの部分から成る音楽を聴き、どのような様子が表されているかについての記述は約7割できていたのに対し、その音楽の強弱の変化を捉えて記述した児童は約2割でした。A《音楽づくりに関する問題》において、変化させたリズムをつくった児童が9割だったのに対し、変化させたリズムとその工夫の記述とが整合していた児童は約4割でした。これらのことから、鑑賞において、音楽を聴き、何らかの様子をイメージしたり、音楽づくりにおいて、変化させたリズムをつくったりすることができる児童は多いけれども、音楽を特徴付けている要素や楽曲の構成を聴き取り、それらと関わらせて感じ取った曲想を記述したり、工夫したことを説明したりすることのできる児童は少ないことが分かります。

また、学校現場における実際の指導においては、教科書では表現や鑑賞の各活動を関連付けた題材構成がなされているにもかかわらず、表現領域の「歌唱」、「器楽」、「音楽づくり」や鑑賞領域の各活動が単独の活動のみで終わってしまっている現状がうかがえます。単独の活動で終わることそのものに課題があるとはいえませんが、限られた音楽科の授業時数の中で、音楽科で求められている力の育成を図るためには、聴き取り感じ取ったことを基に、表現活動や鑑賞活動などの幅広い学習活動に取り組ませる中で、児童に音楽のよさや面白さ、美しさを実感させることが大切と考えます。

○ 本研究の目的
  このようなことから、児童が音楽を形づくっている要素に気付いたり、要素同士の関わり合いを聴き取ったりしながら、曲想の感じ取りを深める指導や、音楽づくりにおいて音楽を特徴付けている要素や音楽の仕組みを生かして工夫する過程を大切にして、思いや意図をもって音楽をつくることができるような指導が求められます。そして、このような指導は、〔共通事項〕をよりどころとしながら、表現領域における学習活動や鑑賞領域における学習活動を有機的に関連付けることで、より効果的に実現できると考えます。

そこで、本研究では、〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法を工夫することで、聴き取り感じ取ったことを基に、思いや意図をもって表現したり味わって聴いたりすることのできる児童を育成したいと考えました。
   以上のことから、上記のような研究テーマを設定し、研究を進めることとしました。

(3) 研究の方法
@文献調査及び先行研究の調査を通して、〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法についての理論研究を行う。 
A理論研究を基に、題材全体を通して、表現領域における学習活動や鑑賞領域における学習活動を関連付けることができるような学習カードの作成・提示の仕方、発問や指示、ワークシートなどの工夫について考案する。
B中学年における授業実践を通して、表現と鑑賞の関連を図った指導の手立ての有効性を検証する。 
 
(4) 研究の内容
@表現領域の学習活動や鑑賞領域の学習活動を関連付けた授業展開例の提案をする。
A音楽活動を支える〔共通事項〕を、思考・判断の根拠として、聴き取り感じ取ったことを生かして表現と鑑賞の関連を図りながら効果的に学習を進めるための、学習カードの作成と視覚的な提示、思考・判断を深める発問や指示、思考・判断の過程が見えるワークシートについての有効性を検証し、その成果を提案する。
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