生きて働く言語能力を育てる「国語科学習指導の具体策」を提案します!

 
 授業展開案  〜授業づくりの基本構想に基づく実践の提案〜  (「書くこと」指導事項ウ[記述])
1 単元名 
  「フォトストーリーを作って紹介しよう」 〜読み手に考えさせる文章を書く〜
2 教材名(出典)
  「小さな労働者」 ラッセル・フリードマン 千葉茂樹・訳 (東京書籍「新しい国語2」)
3 生徒の実態と指導のねらい
     佐賀県の中学2年生の実態として、平成23年度佐賀県小・中学校学習状況調査の結果から、「書くこと」について課題が多いことが分かりました。とりわけ「取り上げた事実や事柄、課題についての自分の考えを明確にして書く」ことを問う設問で無解答率が他の設問を大きく上回っています。
  そこで、本単元では社会生活の中から身近な問題について呼びかけ、読み手にその問題を考えさせるフォトストーリーを作ることを言語活動として設定します。その際、スモールステップで学習活動を明確に示したワークシート等の学習教材を用いることで、一人一人の言語能力に応じて言語活動を充実させ、伝えたいことが効果的に伝わるように表現を工夫して書くことを指導します。
4 学習内容の系統性
 
5 言語活動について
   本単元では、「書くこと」の力を身に付けさせるために、新学習指導要領「B書くこと」の(2)に位置付けられている言語活動例の「イ 多様な考えができる事柄について、立場を決めて意見を述べる文章を書くこと」を単元に取り入れます。フォトストーリーを作ることを言語活動として取り入れることで、身近な問題について呼びかけ、読み手に考えさせる文章を書く力を育てます。
6 単元の目標
 
(1)
フォトストーリーという表現方法に関心をもち、その方法を生かして自分の考えを書こうとする。
(2)
自分の伝えたいことを相手に効果的に伝えるために表現を工夫して書くことができる。
(3)
相手や目的に応じて文章の形態に違いがあることを理解して書くことができる。
7 単元の評価規準
 
   国語への関心・意欲・態度
 書く能力
 言語についての知識・理解・技能
 多様な考えができる事柄について、立場を決めて意見を述べる文章を書くこと 〔B書くこと(2)イ〕
@ フォトストーリーという表現方法に関心をもち、その方法を生かして自分の考えを書こうとしている。
@ 自分の伝えたいことを相手に効果的に伝えるために、写真に組み合わせる文章を、読み手に考えさせるように工夫して書いている。
(ウ)
@ フォトストーリーという表現方法の特徴を理解して書いている。
(イ(オ))
8 単元の指導と評価の計画(全4時間)
 
主な学習活動
指導上の留意点
評価規準
評価方法
指導計画
ワークシート
これまで読んだフォトストーリーを想起し、フォトストーリーがどういうものか確かめる。
教材文を読み、フォトストーリーがどのようにして生まれたかを知り、写真と文章を組み合わせた表現方法の効果について考える。

ワークシート@にある4枚の写真の中から1枚の写真を選び、それに組み合わせる文章を書いて読み手に考えさせたいことを考えさせることができたかどうかを確かめるモデル学習を行う。

学習課題「フォトストーリーを作って紹介し、読み手に考えさせる文章を書く力を付けよう」を設定する。

公害や環境問題などの社会問題について訴えるフォトストーリーを数冊提示して、写真と文章の組み合わせで表現したものであることを確かめさせる。
写真と文章が情報を補い合って、読み手に具体的な事実を直接的に伝えることで、事実の抱える問題に気付かせ、考えさせる効果があることを理解させる。
モデル学習を通して、自分の書く力を認識させる。
学習計画表を配布して、単元の学習に見通しをもたせる。

 
[国語への関心・意欲・態度]@
フォトストーリーという表現方法に関心をもち、その方法を生かして自分の考えを書こうとしている。
【ワークシート@】
【観察】
指導計画1/4






ワークシート@
学習計画表


教材文に取り上げられているハインのフォトストーリーを分析し、表現の工夫とその効果について考え、交流する。
ハインになったつもりで写真に組み合わせる文章を書き、表現の工夫について確かめる。
同じ写真を使っていながら、文章の異なる2通りのフォトストーリーを比べ読みして、読み手に考えさせる文章の書き方の工夫について考える。
ハインが写真に組み合わせた文章の工夫や、ワークシートBで比べ読みして分かったことを参考にして、「読み手に考えさせる文章を書くためのポイント」を3つにまとめる。
ハインが写真に組み合わせた文章を分析させ、表現の工夫とその効果について生徒が考えたことを整理させる。

ハインの表現の工夫を基にして、「マニュエル」の写真に組み合わせる文章を書かせる。
自分の意見を直接的に書いた文章のフォトストーリーと、相手に考えさせるように工夫して書いた文章を組み合わせたフォトストーリーとを比較させることで、文章の書き方の効果について実感させる。
生徒一人一人が考えたポイントを出し合わせ、共通するもの同士をまとめさせて最終的に次の3つに整理する。
@ 写真だけでは伝わらない必要な情報を書く。
A 自分の意見を直接書かないで読み手に考えさせるような問い掛けをする。
B 印象に残る表現技法(比喩や反復等)を使う。
 
[言語についての知識・理解・技能]@
フォトストーリーという表現方法の特徴を理解して書いている。
(イ(オ))
【ワークシートA】
指導計画2/4
学習計画表
ワークシートA
(記入例)
ワークシートB
 
ワークシートA
(記入例)
 
ワークシートC
ワークシートD

ワークシートCや自分が準備した資料から写真を3枚選び、読み手に考えさせたいことを決める。
10 写真に組み合わせる文章を、読み手に考えさせるような工夫をして書いてフォトストーリーを作る。
ワークシートCや各自が準備した資料を基に、構想を練らせる。
「読み手に考えさせる文章を書くためのポイント」を想起させる。
 
[国語への関心・意欲・態度]@
フォトストーリーという表現方法に関心をもち、その方法を生かして自分の考えを書こうとしている。
【ワークシートC】
【観察】
指導計画3/4
学習計画表
ワークシートC
(記入例)
ワークシートD
(記入例 , , 
ワークシートA
(記入例)

学習の手引き「読むこと」C
学習の手引き「書くこと」B
11 フォトストーリーを読み合い、内容に対する自分の考えと、フォトストーリーを書いた人の表現の工夫について気が付いたことを書く。
12 写真と文章の組み合わせ方や表現の工夫についてグループで話し合う。
13 単元の学習を振り返る。
「テーマ」や「伝えたいこと」を考えながら読ませることで、書き手の思いが伝わる文章になっているかを考えさせる。
写真に組み合わせた文章の書き方の工夫についても交流シートを読んだり、意見を出し合わせたりして交流させて考えさせる。
学んだことを振り返らせ、身に付けた力と今後の学習や生活に生かす場面を予想させる。
 
[書く能力]@
自分の伝えたいことを相手に効果的に伝えるために、写真に組み合わせる文章を、読み手に考えさせるように工夫して書いている。
(ウ)
【ワークシートD】
指導計画4/4
学習計画表
ワークシートD
(記入例1)
交流シート
学習の手引き「読むこと」C
ワークシートC
 
学習計画表
 
※学習計画表は、単元を通して同じものを使用しています。また、同一番号のワークシートはすべて同じ内容です。
実践を振り返って
 
  言語活動について
  写真と文章を組み合わせて読み手に考えさせたいことを考えさせる「フォトストーリー」を作るという言語活動では、写真に組み合わせる文章を、写真から読み取れない事実の記述にとどめ、自分の意見は直接書かずに読み手に考えさせるように工夫して書く活動に取り組みました。この活動は、これまで自分の意見を明確に表す語句・語彙を用いて意見文を書いてきた活動と対照的であったため、「自分の伝えたいことを相手に効果的に伝えるために表現を工夫して書くこと」や「相手や目的に応じて文章の形態に違いがあることを理解して書くこと」について分かりやすく指導することができました。

  学習評価の進め方について
  評価の目安を明確にして指導を行ったことで、指導者は形成的な評価とそれに基づく指導を的確に行うことができました。
  評価の目安に基づいて評価モデルを作成し、生徒に提示したことで、生徒は学習目標を具体化することができました。
→本実践ではワークシートBで示した作品AがA評価、作品BがB評価のモデルです。
  また、交流シートの記入例がA評価のモデルとなっています。
→ワークシートBの評価モデルは「読み手に考えさせる文章を書くためのポイント」を考えるために
  比べ読みをさせる作品として提示しました。
  また、交流シートの評価モデルは、交流シートの記入例の説明として提示しました。
  以上のように、評価の目安を明確にすることは指導を確実に行うことにつながるので、評価の目安をどのように具体化し、どのように示すかが課題となります。
  ICT利活用について
  生徒が自分でフォトストーリーを作る際に、ワークシートCに示された写真を用いるだけではなく、自分たちがデジタルカメラで撮った写真を用いて作らせたことで、意欲的に言語活動に取り組ませることができました。
  写真と文章を組み合わせて作るフォトストーリーを教材としたので、作品を画面で拡大して見ることができる電子黒板の活用が有効でした。画面では写真を貼り替えたり、作品に書き込みをしたりすることができるので、写真3枚を選んでフォトストーリーを構成する場面や文章を推敲する場面で便利に使うことができました。
  学習プリントの効果的な活用について
  表現の工夫については、学習の手引き「読むこと」Cを活用させて既習事項を想起させることができました。また、第3時で写真に組み合わせる文章を書くときや第4時で友達の作品を評価するときにも活用させて、生徒の学習の手助けとすることができました。
学習の手引き「読むこと」Cはこちら→
  推敲の仕方については、学習の手引き「書くこと」Bを活用させて既習事項を落とすことなく、学習に生かすことができました。このようにして、言語活動を通して知識・技能を活用させていくことが、知識・技能の定着につながり、確かな学力の定着につながっていくと考えられます。
学習の手引き「書くこと」Bはこちら→
  学習内容の活用の様子について
  写真と文章を組み合わせるという表現方法を、文化発表会での創作詩の発表(写真を撮ってそれにあった詩を書く)や職場体験学習でのレポート作りに活用することができました。
  学習指導案・単元指導計画一括ダウンロードはこちら PDF

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