生きて働く言語能力を育てる「国語科学習指導の具体策」を提案します!

 授業展開案  〜授業づくりの基本構想に基づく実践の提案〜  (「書くこと」の指導)
単元名 
  「立場と根拠を明確にして書こう」 
教材名(出典)
  「立場と根拠を明確にして書こう 意見文を書く」(光村図書「国語2」)
生徒の実態と指導のねらい
   佐賀県の中学校第2学年の生徒の実態として、平成24年度佐賀県小・中学校学習状況調査の結果から、「書くこと」と「読むこと」の領域に課題が見られました。具体的には、「書くこと」領域では、「資料から必要な情報を取り出し、伝えたいことを明確にして書く」ことに、「読むこと」領域では、「展開をおさえ正確に理解し、ものの見方をとらえる」ことに課題が見られました。年間指導計画の立案や、単元構想に当たっては、以上のことに配慮し、日々の授業実践においても念頭に置いて指導に当たりたいと考えます。
  自分の意見を述べるときは、立場を明らかにする必要があります。また、賛成か反対かなど、自分の立場を決め、それを支える明確な根拠が必要になります。そこで、本単元では、作品モデルを参考にしたり、ワークシートで練習をしたりしながら、構成を工夫して意見文を書く活動に取り組ませます。
  意見文の題材としては、学年の系統を考え、身近な学校生活だけでなく社会生活にも目を向けるような課題を設定し、資源問題や環境問題を考えさせるきっかけとするとともに、友達の意見文を読み合うことで新たな視点に気付き、自分自身の考えを深化・補充していくような学習活動に取り組ませたいと考えます。
学習内容の系統性
 
言語活動について
  本単元では、書くことの力を身に付けさせるために、学習指導要領「B書くこと」の(2)に位置付けられている言語活動例の「イ 多様な考えができる事柄について、立場を決めて意見を述べる文章を書くこと」を取り入れました。単元を貫く言語活動に取り組むことで、生徒の主体的な学習活動が展開され、活動することによって知識・技能が習得できるように指導したいと考えます。
単元の目標
(1)
自分の立場や意見が相手に伝わるように、根拠を明らかにして意見文を書こうとする。
(2) 自分の意見が効果的に伝わるように、根拠を吟味し、具体例や予想される反論などを意識して文章を書くことができる。
(3) 書いた文章を互いに読み合い、語句や文の使い方、段落相互の関係などに注意して、読みやすく分かりやすい文章にすることができる。
7 単元の評価規準
 
   国語への関心・意欲・態度
 書く能力
 言語についての知識・理解・技能
@ 自分の立場や意見が相手に伝わるように、根拠を明らかにして意見文を書こうとしている。
@ 自分の意見が効果的に伝わるように、根拠を吟味し、具体例や予想される反論などの構成を考えて文章を書いている。(イ)
A 書いた文章を読み返し、語句や文の使い方、段落相互の関係などに注意して、読みやすく分かりやすい文章にしている。(エ)
@ 相手や目的に応じて、文章の形態や展開に違いがあることを理解している。(イ(オ))
8 単元の指導と評価の計画(全4時間)
 
主な学習活動
指導上の留意点
評価規準
評価方法
指導計画
ワークシート
「お願い作文」を比べ読みし、相手を納得させるためにはどのような工夫が必要かを考える。
学習課題「立場と根拠を明確にして意見文を書こう」を設定する。
根拠が客観的事実や体験に基づくものであれば、説得力が増すことに気付かせる。
学習計画表を基に、学習の目標と流れを確認させる。
[言語についての知識・理解・技能]@
相手や目的に応じて、文章の形態や展開に違いがあることを理解している。(イ(オ))
【ワークシート@】
指導計画1/6
ワークシート@
(記入例)
テーマ一覧
学習プリント「書くこと」C「目的や意図に応じて書く(意見文)」
学習計画表


「中学生が使う辞書は、紙の辞書がよい」という意見を述べている意見文を比べ読みし、意見を支える根拠の強さの違いを吟味する。
「中学生が使う辞書は、紙の辞書がよい」と「中学生が使う辞書は、電子辞書がよい」という2つの意見に対して、どちらに賛成か立場を決めるために、それぞれのよい点と問題点を挙げて整理し、より説得力のある根拠を支えとして意見をもつことを学ぶ。
自分の意見に対する反対意見を想定して、それに対する意見を考える。
それぞれの意見文の、よい点と問題点を挙げさせることで、意見をより強く支える根拠とはどういうものかに気付かせる。
紙の辞書と電子辞書のそれぞれのよい点と問題点をできるだけたくさん列挙させる。
列挙したよい点と問題点から、自分の意見を支える根拠として、より説得力のあるものを取捨選択させる。
意見を述べる場合、反論を想定することで、自分の意見をより明確にすることができることに気付かせる。
[国語への関心・意欲・態度]@
自分の立場や意見が相手に伝わるように、根拠を明らかにして意見文を書こうとしている。
【観察】
【ワークシートA】
指導計画2/6
学習計画表
ワークシートA
(記入例)

「中学生に制服は必要だ」という意見に対して自分はどう考えるか、根拠を列挙し、論理の展開の型に従って書く。
絞り込んだ根拠をどのような順序で述べるかを考えさせる。
論理の展開には型があり、今回は双括式で書くことを理解させる。
意見を支える根拠を、論理の展開を考えて書くことを確認させる。
[書く能力]@
自分の意見が効果的に伝わるように、根拠を吟味し、具体例や予想される反論などの構成を考えて文章を書いている。(イ)
【ワークシートB】


指導計画3/6
学習計画表
ワークシートB
学習の手引き「読むこと」D

テーマ一覧から、自分が書く意見文の課題を決め、根拠をできるだけたくさん挙げる。
自分の意見を支える根拠を選び、順序を工夫して論理の展開の型に当てはめる。
前時までに学習したことを基にして書くように指示する。
列挙した根拠の客観性を吟味させ、自分の意見を支える根拠、予想される反論、それに対する意見等に関連をもたせることに留意させる。
[国語への関心・意欲・態度]@
自分の立場や意見が相手に伝わるように、根拠を明らかにして意見文を書こうとしている。
【観察】
【ワークシートC】
指導計画4/6
学習計画表
振り返りシート
ワークシートC
学習の手引き「読むこと」D
論理の展開の型を基に、意見文の下書きをする。
10 推敲の観点に従って推敲をする。
構成を考えて、600字程度の文章になるように下書きをさせる。
観点を基に、意見文を読み合い、よい点や改善点などを話し合わせる。
[書く能力]A
書いた文章を読み返し、語句や文の使い方、段落相互の関係などに注意して、読みやすく分かりやすい文章にしている。(エ)
【意見文の下書き】
【振り返りシート】

指導計画5/6
学習計画表
振り返りシート
意見文の下書き
(原稿用紙)
学習の手引き「書くこと」B
11 清書をして意見文を読み合う。
12 単元の学習を振り返り、身に付けた力やその力を活用できそうな場面について考える。
付箋の記述を基に、自分の書いた意見文を読み返させ、身に付いた力を実感させる。
単元の学習について指導者の評価を伝え、生徒が新しい課題や今後の学習の展望がもてるようにする。
[書く能力]@
自分の意見が効果的に伝わるように、根拠を吟味し、具体例や予想される反論などの構成を考えて文章を書いている。(イ)
【意見文の清書】

[書く能力]A
書いた文章を読み返し、語句や文の使い方、段落相互の関係などに注意して、読みやすく分かりやすい文章にしている。(エ)
【意見文の下書き】
【意見文の清書】
【振り返りシート】
指導計画6/6
学習計画表
振り返りシート
意見文の下書き
(原稿用紙)
意見文の清書
(原稿用紙)
交流シート
学習計画表
  ※学習計画表は、単元を通して同じものを使用しています。また、同一番号のワークシートはすべて同じ内容です。
実践を振り返って
 
  言語活動について
  本単元では、立場と根拠を明確にして書くことを指導するために、多様な考えができる事柄について、立場を決めて意見を述べる文章を書くという言語活動を取り入れました。指導に当たっては、学習計画表を活用して、課題設定、取材、選材、構成、記述、推敲、交流といった一連の学習活動に見通しをもって取り組ませました。また、授業のそれぞれの場面では、比べ読みやモデルの提示、練習学習を通して意見文の書き方を段階的に学び取らせるようにしました。このようなスモールステップでの指導・支援により、生徒は、本単元において身に付けさせたい知識・技能を確実に身に付けることができました。
  学習評価の進め方について
  1時間の授業に1つか2つの評価規準を位置付け、ポイントを絞った指導と評価を行いました。特に、「関心・意欲・態度」と「書く能力」@Aについては、それぞれ2回ずつ評価の場面を設け、初めの評価結果を後の指導に生かすようにしました。そして、後の方の評価結果を重み付して単元の評価として総括しました。このように学習評価を確実に進めるとともに、単元を見通した形成的な評価とそれに基づく適切な指導を行っていくことで、生徒に身に付けさせたい力を確実に身に付けさせることができました。
  ICT利活用について
  生徒のワークシートの記述を紹介する際に、教材提示装置を活用しました。スクリーンに拡大表示されるので、生徒はワークシートの記述のよいところがどこなのか、どのようなことに気を付けて学習に取り組めばよいのかなどを共有することができ、その内容を確実に理解することにつながりました。


       
     「十分満足できる」状況(A)の生徒のワークシートB(一部)の記述↑
  学習プリントの効果的な活用について
  意見文を書くことについての既習事項を確かめたり、単元の学習に安心して取り組ませたりするために学習プリントを活用しました。手引きCで意見文を書くポイントを概観したり、「知識・技能」や「確認」プリントを宿題として取り組ませたりしたことで、生徒は授業にスムーズに取り組むことができました。
 
  構成と推敲については、学習の手引きを活用して既習事項を確認したり、単元で学ぶ知識について既有知識との関連を確認したりして理解を促すことができました。また、必要に応じて生徒が何度も活用していたことから、主体的な学習の助けとなったと考えられます。









 
学習の手引き「読むこと」Dはこちら↑
 

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