小学校生活科におけるこれからの「学び」について提案します

2 研究の実際

 (3)「表現する活動」と「伝え合う活動」を効果的に位置付けた授業モデル
     「表現する活動」と「伝え合う活動」も、「直接対象にかかわる活動や体験」があることが前提の活動です。本研究では、これらの活動を、単元の学習過程や1単位時間の学習過程において、どのように位置付ければ、気付きの自覚化を促し、気付きの質を高めることができるか考えました。
  そこで、次の2つの視点を基にした授業モデルを提案します。
  @ 「直接対象にかかわる活動や体験」「表現する活動」「伝え合う活動」の位置付けを、どの単元においても
    考えられる一般的な単元や学習の流れ
  A   1単位時間(45分または90分)において考えられる一般的な学習の流れ
   
   ア 単元における位置付けと内容
   位置付け方としては、導入、展開1、展開2、終末のそれぞれの学習過程での「直接対象にかかわる活動や体験」について振り返る場面において、まず「表現する活動」を位置付け、それらを友達とお互いに共有したり新たなことに気付いたりするために「伝え合う活動」を行います。その後、「伝え合う活動」によって関連付けたり新たに見つけたりした気付きを「表現する活動」を位置付けるという授業モデルを考えました。繰り返し対象にかかわることを意図して、展開を「展開1」「展開2」とし、生活科の一般的な学習過程に合わせた、単元における位置付けです。(繰り返し直接対象にかかわることにより、展開1と展開2において比べたり、展開1では気付かなかったことに気付くなど気付きの質を高めることを意図した学習過程です。)
  単元のどこにでも必ず位置付けるというわけではありませんが、児童の実態や様子、学習の内容などから、効果的だと思う場面では、ぜひ取り入れるようにしていきたいものです。
 
 
単元における授業モデル 
 

単元の学習過程

「表現する活動」と「伝え合う活動」の位置付け

角丸四角形: 導入(であう・みとおす)  対象と出会い、自分の思いや願いをもち、その実現に向けての見通しをもつ段階
【具体的な活動や体験】から【表現する活動】
対象と出会い、対象についての気付き等を表現する。
【表現する活動】から【伝え合う活動】
自分の思いや願いや気付き等を伝え合う。
【伝え合う活動】から【表現する活動】
伝え合う活動を通して得た新たな気付き等について表現する。
 
角丸四角形: 展開1(おこなう1)  自分の思いや願いの実現に向けて、対象に主体的にかかわる段階
【具体的な活動や体験】から【表現する活動】
対象にかかわる中で、気付き等を表現する。
【表現する活動】から【伝え合う活動】
自分の気付き等を伝え、友達の気付き等について知る。
【伝え合う活動】から【表現する活動】
伝え合う活動を通して得た新たな気付き等を表現する。
 
角丸四角形: 展開2(おこなう2)  自分の思いや願いの実現に向けて、修正や変更をしながら、再度、対象に主体的にかかわる段階
【具体的な活動や体験】から【表現する活動】
対象に再度かかわる中で、展開1と比較したり
関連付けたりした気付き等を表現する。
【表現する活動】から【伝え合う活動】
展開1と比較したり関連付けたりした気付き等を伝え合う。

【伝え合う活動】から【表現する活動】
伝え合うことを通して得た新たな気付き等を表現する。
 
角丸四角形: 終末(ひらく)  自分の活動を振り返り、活動を生活に生かそうとする段階
【単元全体の活動の振り返り】から【表現する活動】
自分のよさや友達のよさについての気付き等表現する。
【表現する活動】から【伝え合う活動】
自分のよさや友達のよさについての気付き等を伝え合う。
【伝え合う活動】から【表現する活動】
自分への気付き等を確かめ、表現する。
   自分の思いや願いをもつ導入(であう・みとおす)段階では、自分の思いや願いが何であるか明確にすることや友達の気付きや考えを基に自分の思いや願いをもつことができるのではないかと考え、表現する活動や伝え合う活動を位置付けることができると考えます。特に、思いや願いがより確かなものであれば、それからの活動がより主体的で豊かなかかわりをもつことができると考えます。
   自分の思いや願いの実現のため、対象にかかわり具体的な活動や体験を行う展開(おこなう)段階では、繰り返し対象にかかわり、その都度、気付いたり考えたり、感じたりしたことを表現し伝え合う活動を位置付けることができます。そして、表現し伝え合う活動を通して、再び気付いたことを明確に残すことで、さらなる活動への意欲、対象へのかかわり方などを考えたりすることにつながるのではないかと考えます。この段階では特に、対象に繰り返しかかわりがあり、そこ中でで気付きを比較したり関連付けたり例えたりすることができると考えます。
   単元全体を振り返り、次の学習や生活へ生かす終末(ひらく)段階では、振り返ることによって、自分の成長に気付き、学習したことをこれからの生活や成長へ気付き、意欲的に学習や生活しようという思いや願いをもつことができるようになると考えます。振り返る際、これまでの学習で記録したワークシートの綴り等を手掛かりとして、表現する活動を行いながら実感させることが重要となります。その中にある、これまでの伝え合いの記録から自分のよさへの気付きが生まれることも考えられます。さらに、他者(友達)と互いのよさをを伝え合うことにより、それが自分自身では気付かなかった自分のよさへの気付きとなったり、より確かに自分のよさに気付いたりすることができると考えます。
   
   イ 1単位時間における位置付けと内容
 
1単位時間における授業モデル
(※   が位置付けた表現する活動と伝え合う活動)
 

1単位時間の学習過程

学習活動と表現する活動と伝え合う活動の位置付け

【導入(であう・みとおす)】
めあての確認・見通し
本時の学習のめあてを確認し、本時の活動について見通す。
【展開(おこなう)】
  具体的な活動や体験
  (対象にかかわる活動)
具体的な活動や体験を行う。
対象とのかかわりから得られた気付き等について表現する。
表現した物などを使い、気付き等を伝え合う。
【終末(ひらく)】
  本時の学習について振り返り、
  次時への見通しをもつ
伝え合う活動を通して得られた気付き等を表現する。
    
   
   気付きは、具体的な活動や体験を通して得られるものであるという考えから、1単位時間においては、主に後半に位置付けると効果的ではないかと考えます。特に、1単位時間の具体的な活動や体験を通した後の、展開後半に気付き等を表現する活動と伝え合う活動を段階を位置付ければ、一人一人の気付きが明確になり、比較や関連付けができ、気付きの質が高まるのではないかと考えます。また、高まった気付きをそのままにしておくのではなく、表現することによって残すという活動を位置付ければ、気付きが明確になり、次の学習や生活への意欲や活動につながるのではないかと考えます。
 
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最終更新日:2011-03-30