話合い活動のよさを生かした学級活動内容(2)の授業を提案します。

２　研究の実際

(2)　年間指導計画における学級活動内容(2)の位置付け方

学級活動の時数配分

１　【小学校】内容(1)と内容(2)の時数配分について

特別活動は、小学校１年生では年間34時間、小学校２～６年生では年間35時間と定められています。小学校指導要領には「特別活動の授業時数は、小学校学習指導要領で定める学級活動に充てるものとする。」と示されています。その時間内で、学級活動内容(1)と(2)それぞれのバランスを考え、計画的に年間指導計画に配置する必要があります。
内容(1)と(2)の配分については基準はありません。
本研究では、次のようなことに留意して下のような時数配分を提案します。

	○	低学年では、学級生活や学校生活の適応ということが大きな目的ですので、他の学年に比べて内容(2)の時間を多くしました。
	○	中学年では、低学年での学校生活への適応に関する学びが充実してきている段階と捉え､学級を楽しくするための自発的､自治的な態度を育成していくという内容に重点を置くことから学級活動内容(1)の時間を多くしました。
	○	高学年は、学級全体としてまとまりをもち、自治的活動を十分に行う中で、集団としての結び付きの大切さを感じたり、児童それぞれに集団の中での自己の在り方を考えたりする段階です。そこで、学級活動内容(1)の時間を中学年より更に多くしました。

　この時数配分は参考例ですので、各学校で、児童の実態等を考慮して年間指導計画を立ててください。

	第１学年	第２学年	第３学年	第４学年	第５学年	第６学年
内容(1)	１７時間	１8時間	２１時間	２１時間	２５時間	２５時間
内容(2)	１７時間	１７時間	１４時間	１４時間	１０時間	１０時間

２　【中学校】内容(1)と内容(2)並びに内容(3)の時間配分について

　特別活動は、各学年ごとに年間３５時間と定められています。その時間内で、学級活動の各内容項目について時間を配分します。その際、内容(1)、(2)、(3)それぞれの活動内容は各々独立していると考えるべきものではありません。

	本研究では、次のようなことに留意して下のような時数配分を提案します。
	○	中学1年生では学級や学校の生活づくりのための内容(1)の時間を多くしました。
	○	内容(2)は内容項目が多いため、10時間程度は必要である。
	○	学年が上がるに従い、学業と進路のための内容(3)の時間を段階的に増やしました。

　生徒の実態や取り上げる題材に応じて、内容間の関連や統合を図ることも考えながら、計画的に配置する必要があります。
　右に時数配分の参考例を示します。　

	第１学年	第２学年	第３学年
内容(1)	15時間	14時間	13時間
内容(2)	12時間	11時間	10時間
内容(3)	８時間	10時間	12時間

年間指導計画に学級活動内容(2)の題材を位置付けるときの留意点

■　指導時期を考慮して

　学期の始めに必要なめあて決めや、長期休業前の計画立てについてなど、時期をずらすことができないものがあります。また、かぜがはやりそうな時期や、歯磨き習慣の時期など、意識して取り組むことができる時期に題材を配置することが大切です。
【小学校の例】

	・	１学期（２、３学期）のめあてを考えよう(2)―ア
	・	夏(冬)休みの計画を立てよう(2)―イ
	・	かぜの予防をしよう(2)―カ

　　
【中学校の例】

	・	夏(冬)休みの計画を立てよう(2)―キ
	・	望ましい食習慣を身に付けよう(2)―ケ

■　行事との関連

運動会や合唱コンクールなど、学校行事と関わりをもたせて題材を位置付けると、児童生徒が自己決定したことを実現させる場の一つとなり、実践意欲の向上につながると考えました。
【小学校の例】

	・	男女仲良く協力して生活しよう(2)―ウ　・・・運動会の前
	・	図書館の本をたくさん読もう(2)―オ　・・・読書月間、図書館祭りなど
	・	虫歯になりにくい食生活を考えよう(2)―カ　・・・虫歯予防週間

【中学校の例】

	・	仲良く協力して練習に取り組もう(2)―エ　　　・・・体育大会、合唱コンクール
	・	一人暮らしのお年寄りに喜んでもらう年賀状を送ろう(2)―カ　　・・・ボランティア活動

■　接続期を考慮した年間指導計画

本プロジェクト研究では、集団の適応に関わる問題である「中１ギャップ」を考慮し、小学校第6学年から中学校第1学年までの間において、小中の接続期を下の表のように捉えました。「『接続期』をつくる」(お茶の水女子大学附属幼稚園・小学校・中学校子ども発達教育研究センター)を参考に接続期のねらいを考慮して題材の例を示しています。また、接続期にそれぞれの題材を単発で行うのではなく、前述した指導時期や行事、道徳などの他の学習と関連させて行うことも考慮して指導計画を作成する必要があります。

「小中接続期の時期区分とねらい及び題材例」

時期区分

時　期

この時期に
ねらうこと

題材の例

接続前期

小学校第６学年９月
～小学校卒業

小学校卒業へ向けて学習と生活を充実させ、中学校への不安を取り除き、期待をもたせる。

「一年間の自分を振り返り、中学校に向けてがんばることを考えよう」　
小学校で頑張ってきたことを生かしたり、中学校生活に向けて、まだ自立しきれていないところを振り返ったりし、中学校進学に向けて希望や目標をもって頑張ることができるようにする。

接続中期

中学校入学
～ゴールデンウイーク明け

中学校での学級、学年の生活に慣れさせ、小学校の最高学年としての経験を引き出し、自主的・実践的な態度を醸成する。

「これからの夢を語り合い、級友と一緒にめあてを考えよう」
中学校生活を意欲をもって気持ちよくスタートできるように学級で話し合い、お互い励まし合ったり協力し合ったりしながらめあてを実現させていくようにする。
(このとき、小中お互いの協力が得られれば、小学校で決めためあてを生かして授業を進めることも考えられる。)

接続後期

中学校第１学年
ゴールデンウィーク明け
～１０月中旬

中学校での新しい生活や新しい仲間の中で、次第に自分らしさを表現できるようにする。

　「気持ちを言葉で表そう」
中学校の生活にも慣れ、教師も生徒も緊張が解け始めたころがトラブルが起こりやすい時期でもある。そこで、お互いの気持ちを考えることができる題材で自分たちの生活を振り返らせる。

　杉田は、著書『よりよい人間関係を築く特別活動』の中で次のように述べています。

不登校や暴力行為が中１の夏休み以降に一気に増える問題を、いわゆる『中１ギャップ』と呼んでいます。小学校と中学校の学習や生活に大きなギャップがあることが原因だと考えられています。この問題の対応について、特別活動は大きな役割を果たすことができます。最も効果が期待できるのは、小学校の出口と中学校の入り口の指導について、中１ギャップの対応を意識して意図的に、計画的に行うことです。

小１プロブレムや中１ギャップへの対応は、新しい生活や集団への適応の指導が中心になります。学習指導要領において学級活動の(2)については『日常の生活や学習への適応及び健康安全』(小学校)『適応と成長及び健康安全』(中学校)と示されているとおり、このような問題に直接働きかける役割を担っています。

　そこで、今回の研究では小学校の出口を接続前期、中学校の入り口を接続中期ととらえ、研究を進めました。

　小学校と中学校の接続期を意識して、学級活動内容(2)を年間指導計画に位置付けた例

　時数については、「(3)学級活動内容(2)の年間指導計画への位置付け方」の本研究で示した時数配分に合わせ、小学校第６学年では10時間、中学校第１学年では12時間を位置付けています。学級活動内容(1)や学級活動内容(3)とのバランスや、学級の実態を考えた上で年間指導計画を立ててください。

学年	時期区分	月	主な学校行事	学級活動内容(2)における予想される題材	内容項目
小学校第６学年		４月	始業式	最上級生としての自覚を高めよう。	ア
		５月		掃除のやり方を振り返り学校中の手本となるような掃除をしよう。	エ
		６月		虫歯になりにくい食生活について考えよう。	カ
		７月	終業式	夏休みの生活について考えよう。	イ
	接続前期	９月	始業式	６の○の仲間が、もっと誰とでも話したり活動したりするためにはどうすればいいか、みんなで考えよう。	ウ
		10月	体育大会修学旅行	いろいろなジャンルの本を読もう。	オ
		11月	中学校進学説明会	中学校生活に向けて、今の自分なりの自立について考えよう。	ア
		12月	終業式	栄養バランスを考えた食事の取り方を考えよう。	キ
		１月	始業式	男女仲良く協力して生活しよう。	ウ
		２月
		３月	卒業式・修了式	１年間の自分を振り返り、中学校に向けてがんばることを考えよう。	ア
中学校第１学年	接続中期	４月	始業式・入学式	これからの夢を語り合い、級友と一緒にめあてを考えよう。	イ
	接続中期	５月	生徒総会	生徒会の一員としてできることを考えよう。	オ
	接続後期	６月	教育相談	健康な食習慣とはどのようなものか考えよう。	ケ
		７月	終業式	よりよい夏休みを送るにはどうしたらよいかを考えよう。	キ
		９月	始業式体育大会	気持ちを言葉で表そう。	オ
		10月	スケッチ会合唱コンクール	スケッチ会で利用した会場に感謝の気持ちを表そう。男女で美しいハーモニーを奏でよう。	カエ
		11月	文化発表会生徒会長選挙	生徒会の一員として役割が果たせているかを考えよう。	オ
		12月	終業式	一人暮らしのお年寄りに喜んでもらう年賀状を送ろう。	カ
		１月	始業式	立志式で学んだことを自分の生活に生かそう。	ウ
		２月	性教育講演会	性教育講演会で学んだことを自分たちの生活に生かそう。	ク
		３月	卒業式修了式	１年間の自分を振り返ろう。	ア

	小学校では内容項目アを３回、内容項目ウを２回入れています。これは、中学校への接続を意識したことから、複数回にしています。
	中学校では新しい学級や中学校生活で課題となる内容項目オを複数回にすることで、望ましい人間関係の確立を図ることをねらいとしています。
	この学級活動内容(2)の年間指導計画への位置付け方を参考に、各学校、学級の実態に合わせて活用してください。

下の表は、学級活動内容(2)の内容項目 (共通事項 ) です。年間指導計画を作成するときの参考にしてください。

学級活動　内容(2)　

小学校

中学校

ア	希望や目標をもって生きる態度の形成
イ	基本的な生活習慣の形成
ウ	望ましい人間関係の形成
エ	清掃などの当番活動等の役割と働くことの意義の理解
オ	学校図書館の利用
カ	心身ともに健康で安全な生活態度の形成
キ	食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成

ア	思春期の不安や悩みとその解決
イ	自己及び他者の個性の理解と尊重
ウ	社会の一員としての自覚と責任
エ	男女相互の理解と協力
オ	望ましい人間関係の確立
カ	ボランティア活動の意義の理解と参加
キ	心身ともに健康で安全な生活態度や習慣の形成
ク	性的な発達への適応
ケ	食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成

■　学級活動内容(2)の小学校の題材例(第６学年用)

学級活動内容(2)のアからキの項目において、どんな題材が考えられるでしょうか。

その例を示します。

ア　希望や目標をもって生きる態度の形成

・	１年間の自分を振り返り、中学校に向けて頑張ることを考えよう。
・	中学校生活に向けて、今の自分なりの自立について考えよう。
・	最上級生としての自覚を高めよう。

イ　基本的な生活習慣の形成

・	気持ちのよい挨拶をしよう。
・	言葉遣いを考えよう。
・	○学期のめあてを考えよう。
・	夏（冬）休みの生活について考えよう。
・	進んで家庭学習に取り組もう。

ウ　望ましい人間関係の形成

・	男女協力して仲良く生活しよう。
・	友達のよさを認め合おう。
・	６の○のみんながもっと仲良くなるためにどうすればいいか考えよう。

エ　清掃などの当番活動等の役割と働くことに意義の理解

・	掃除のやり方を振り返り学校中の手本となるような掃除をしよう。
・	係の仕事について考えよう。

オ　学校図書館の利用

・	図書の本をたくさん読もう。
・	図書室の利用の仕方を考えよう。
・	いろんなジャンルの本を読もう。

カ　心身ともに健康で安全な生活態度の形成

・	自転車の正しい乗り方を考えよう。
・	かぜの予防について考えよう。
・	虫歯になりにくい食生活を考えよう。

キ　食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成

・	栄養のバランスを考えた食事の取り方を考えよう。
・	元気が出る朝食を考えよう。

話合い活動のよさを生かした学級活動内容(2)の授業を提案します。

２ 研究の実際

(2) 年間指導計画における学級活動内容(2)の位置付け方

学級活動の時数配分

年間指導計画に学級活動内容(2)の題材を位置付けるときの留意点

２　研究の実際

(2)　年間指導計画における学級活動内容(2)の位置付け方