教師の困り感について

 本研究では,県内の市町村立の小・中学校(学校規模〔学級数〕ごとに無作為に抽出された小学校39校,中学校39校)を対象に,「指導上大変だと思うこと」についてアンケート調査を行いました(調査3)。
 その結果,小学校教員306名,中学校教員234名からの回答が得られました。

→ 調査項目はこちら
 ここでは,「教師が指導上大変だと思うこと」について,調査の結果を基に考えます。

 このグラフは,下の段階ごとの人数を百分率であらわしています。(配列順は,「4 かなり大変」「3 大変」の合計の多いものから)

 1 大変だと全く感じていない  2 あまり大変だとは感じていない
 3 大変だと感じている  4 かなり大変だと感じている


小学校教員の意識(グラフ)へ → 中学校教員の意識(グラフ)へ →
「大変だ」という回答が多かった項目 → 指導上大変だと思うことの分類 →
調査2と調査3を比べると・・・ →



調査3の結果 − 小学校教員の意識


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調査3の結果 − 中学校教員の意識



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「大変」だという回答が多かった項目

 以下の項目は,小学校・中学校ともに「4 かなり大変だと感じている」「3 大変だと感じている」の数の割合が多かった項目です(数字は,「4 かなり大変だと感じている」と「3 大変だと感じている」と回答した教師の割合の合計)。
質   問   項   目 小学校 中学校
一斉指導の中での学力差に応じた指導 81.0% 83.3%
学力の低い児童生徒への指導 76.1% 81.2%
学習意欲が低下している児童生徒への指導 62.7% 76.9%
リーダー・自主性を育てる指導 56.2% 73.1%
忘れ物が多い児童生徒への指導 66.0% 60.7%
自己中心的言動をする児童生徒への対応 62.4% 55.6%
常識的な言動が身についていない児童生徒への指導(善悪の判断,礼儀,約束,嘘等) 58.8% 59.4%
友人関係がうまくつくれない児童生徒への対応 56.2% 65.2%
基本的生活習慣の指導(あいさつ,時間を守る,掃除等も含む) 52.9% 58.1%
 以下の項目は,小学校・中学校いずれかで,「4 かなり大変だと感じている」「3 大変だと感じている」の数の割合が多かった項目です(数字は,「4 かなり大変だと感じている」と「3 大変だと感じている」と回答した教師の割合の合計)。
質   問   項   目 小学校 中学校
給食指導 39.2% (26.5%)
無気力・無関心な児童生徒への対応 (41.8%) 62.0%
孤立している児童生徒への対応 (42.5%) 61.5%
不登校の児童生徒への対応 (24.8%) 57.5%
いじめへの対応 (33.0%) 52.6%
保健室・相談室等登校の児童生徒への対応 (21.2%) 46.8%
部活動・社会体育で起こった問題への対応 (15.4%) 43.6%
問題行動・非行への対応 (25.8%) 43.2%
性教育・性的な問題への対応 (19.3%) 37.3%


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「指導上大変だと思うこと」の分類

 調査3のデータについて見ていくと,「指導上大変だと思う」ことについて,統計的な処理をした結果,いくつかのパターンがあることがわかりました。本研究では,「教師が指導上大変だと思うこと」を,以下のように6つに分類しました。

指導上大変だと思うことのタイプ
児童生徒への個別のかかわりが必要なこと
 「保健室・相談室登校の児童生徒への対応」,「不登校の児童生徒への対応」,「部活動・社会体育で起こった問題への対応」,「問題行動・非行への対応」,「性教育・性的な問題への対応」「いじめへの対応」の6つが非常に関係が深いことが分かりました。これらは,学校や学級に足が向かない児童生徒への対応や教室外での対応についての大変さであり,その子が在籍するクラスやその家庭も含んで対応することが必要な場合もあるでしょう。
 そこで,このことを【児童生徒への個別のかかわりが必要なこと】と名付けました。
 これは,小学校の教員を対象にした調査の結果に見られたものです。
常識のある,規律正しい言動を促すための対応
 「自己中心的言動をする児童生徒への対応」,「常識的な言動が身についていない児童生徒への指導」,「授業態度が良くない児童生徒への指導」,「基本的生活習慣の指導」,「学校の規則の指導」という5つの項目に高い関連性がありました。この5つは,生活面においても学習面においても決まりを守ることができなかったり,やるべきことができなかったりする児童生徒への対応ということができます。
 そこで,このことを【常識のある,規律正しい言動を促すための対応】と名付けました。
 中学校については,「児童生徒のグループ内外で起こる問題への対応」もこの5つに関係が深かったようです。
低学力・学力差への対応
 「一斉指導の中での学力差に応じた指導」と「学力の低い児童生徒への指導」の2つの項目の間に強い関連性があるようです。この2つの項目は,調査3(指導上大変さを感じることについての調査)において,その指導に「大変だ」と回答した教師の数が最も多かったものです。
 そこで,このことを【低学力・学力差への対応】と名付けました。
 なお,小学校については「学習意欲が低下している児童生徒への指導」の項目もこの2つに関係が深かったようです。
友人づくりがうまく行かず孤立している児童生徒への対応
 「孤立している児童生徒への対応」と「友人関係がうまくつくれない児童生徒への対応」の2つに強い関連があります。集団に自分から入ることを拒んでいる児童生徒や集団に入りたいのにうまく入ることができなかったり,入れてもらえなかったりする児童生徒の対応ということができます。
 そこで,このことを【友人づくりがうまく行かず孤立している児童生徒への対応】と名付けました。
障害のある児童生徒やその周囲の児童生徒への対応
 「障害のある(と思われる)児童生徒への対応」と「障害のある(と思われる)児童生徒について周囲の児童生徒の理解を促す指導」の2つに強い関連があります。
 通常の学級にもLD,ADHD,高機能自閉症等の発達障害のある児童生徒をはじめ,知的な遅れや肢体不自由などいろいろなタイプの障害のある児童生徒が在籍している現状があります。このような児童生徒の個に応じた指導や,その周囲の児童生徒の理解を促す指導に対する大変さだと考えられます。
 そこで,このことを【障害のある児童生徒やその周囲の児童生徒への対応】と名付けました。
不登校・教室外登校の生徒への対応
 「不登校の児童生徒への対応」と「保健室・相談室等登校への対応」の2つに強い関連があります。これは,中学校の教員を対象にした調査の結果に見られたものです。
 佐賀県でも小中学校合わせて約840人の不登校の児童生徒がいる(「平成17年度学校基本調査速報」より)という現実があり,このような児童生徒への対応や,登校していても教室に足を向けることの難しい児童生徒への対応の大変さだと考えられます。
 そこで,このことを【不登校・教室外登校の生徒への対応】と名付けました。


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