教科,領域からの多面的なアプローチ  教科,領域や教師の専門性を生かした講座を開設します。
教師は講座(授業)を仕組む
単元での実施時期…導入段階
総合的な学習の時間では,テーマに関する事前情報を与えるために導入段階ではゲストティチャ-の講話や体験学習などを仕組みますが,ここでは教師がテーマに関する内容の授業を仕組みます。もちろん,GTの講話や体験学習と合わせて仕組むことも可能です。
1講座につき2時間〜4時間程度で計画
今回授業実践した社会科からの講座「有明空港活性化プラン!」「住みやすい街づくりを目指して!」はそれぞれ2時間計画。
講座の内容 …総合的な学習の時間のテーマを踏まえた独自の講座を仕組む。
「国際都市佐賀を創ろう!」に迫る課題づくりのために「国際都市」や「佐賀」に関する情報や教科の専門性を踏まえた内容を講座を通して生徒に与えることを前提とします。
生徒は講座を選択する
生徒は講座の概要をガイダンスで知る
生徒は自己の興味・関心に基づき受けたい講座を選択するためにガイダンスを行います。ガイダンスでは,「(仮)○○年度総合的な学習の時間開設講座一覧」を配布し,講座の担当者から講座内容の説明を受けます。
講座の例
○3年テーマ「国際都市佐賀を創ろう!」
○総合的な学習の時間の実施校時…毎週木曜日,5〜6校時目
○授業実践教科…社会科
3年生の総合的な学習の時間のテーマ
「国際都市佐賀を創ろう!」
教  科  教科担任の専門性を生かした講座
国  語 佐賀の民話や昔話を京都弁に書き換えよう
外国人のための佐賀弁講座
社  会
有明佐賀空港活性化プラン!PDF
ワークシート 大分ホーバー資料 授業用パワーポイント
住みやすい町づくりを目指してPDF
ワークシート
数  学 比較統計
ギリシャ ピタコラスの定理,数学の歴史
理  科 国内での科学の街を考える「つくば市」
科学の街としてのピサを考える
英  語 国際都市についての説明文を書く
音  楽
美  術 有田焼の歴史の中で,世界の焼き物を学ぶ
保健体育 外国のスポーツを知る
技術家庭
生徒は講座を選択する
生徒はガイダンスで知り得た講座の概要から受けたい講座を選択します。自校の総合的な学習の時間の計画を踏まえて,選択させます。選択させる講座の数は幅を持たせたほうが良いでしょう。
生徒は選択した講座を受講する

ウェビングする〜
図示することで自分の興味・関心の中心が分かります。
一人ウェビングをする
 ウェビングについてもっと詳しく知る!
「国際都市佐賀を創ろう!」を中心に一人ウェビングをする。
総合的な学習の時間のテーマ「国際都市佐賀を創ろう!」をもとにウェビングすることで,受講した講座から得た情報を整理し,課題づくりのきっかけとなるキーワードを見つけます。
ウェビングは,個人の思考を整理し,課題解決に向けた見通しをもつことができます。また,教師が見取ることで,生徒の課題づくりに的確な支援や助言を与えることができます。
ウェビング時の教師の支援
ウェビングをする目的とその方法を説明します。
ウェビングの仕方を理解していれば,自己の持つ情報をうまく整理しつなぎ合わせることができます。
ウェビングの最中は個別に対応します。
ウェビングマップの中に課題づくりに生かせそうな言葉があるときやそのことに生徒が気付いていないとき,または,イメージをもっと膨らませたいときに教師はちょっとだけヒント(ウェビングマップの中の言葉同士をつなげてあげたり,広げてあげたり…)を与えます。

〜課題づくりをする
「有明佐賀空港活性化プラン!」を受講した生徒のウェビングと課題づくり

 課  題   学校ISO9000取得のための企画書を作成しよう!
S.Kくんのウェビング
課題解決に向けた思い(S.Kくん)…
課題は「環境につよい町,佐賀を創ろう!」にしたいと思います。僕は,佐賀の知名度を上げてもっと佐賀のことを知ってもらい人気がでるようにすれば,観光客が増えて知名度も上がると思います。そして,佐賀を気に入ってくれたお客さんが口コミでどんどん増えるようにしたいです。まずは,自分自身や○○中の生徒が環境問題に強くなることだと思います。具体的には,身近な環境問題を知り,自分たちにできることを考えたいと思います。将来的には,住民がみんな環境にやさしい町づくりを実践している町にしたいと思います。そしたら,環境に関することで会議が開催されたり,訪問者や視察する人が多くなると思います。結果的には佐賀空港も活性化されるのではないでしょうか。
■ウェビング中の一口支援
「ウェビングに『地球温暖化を防ぐ』や『環境保護』,『リサイクル』など,環境に関する言葉が表れていますね。これを生かしましょう。
■ウェビング直後にできた課題
   「環境につよい町,佐賀を創ろう!」
■テーマに迫る課題づくりのための一口支援
「環境につよい町,佐賀を創ろう!」の課題ではそこから見い出される問題が大きいようです。要するに,佐賀全体に関わる環境問題を取扱わなければなりません。しかも環境問題は日本や世界の環境問題と直結していますね。あなたのウェビング直後の思いを大切にしながら,今自分にできることや身近に取組めることを課題として設定してはどうでしょうか。

 課  題    情報化社会から地域のお年寄りを守る!
K.Kくんのウェビング
課題解決に向けた思い(K.Kくん)…
最近,特にお年寄りの財産を狙った犯罪が多発しています。何も分からないお年寄りを騙して財産を奪い取るなんて、僕は許せません。でも毎日のようにそんなニュースを目にします。そこで、お年寄りが安心して暮らせるようそのような犯罪から僕らが守ってあげたいと思いました。具体的には、お年寄りを狙った犯罪を調べて、様々な犯罪をお年寄りが自分で撃退するためのマニュアルを作りたいです。
今、犯罪はどんどん巧妙になっています。できれば、それに対応できるようにマニュアルも更新していきたいと思います。また,マニュアルつくりだけでなくそのような活動を通して,僕らと地域のお年寄りの交流ができればと思います。
■ウェビング中の一口支援
都市化が進めば犯罪が増加するのは免れないことですが,そこで「安全な町」でありながらそのイメージが「住みやすい町」として全国や世界に広がればいいですね。安全な町とはどんな町かということから探ってみたらおもしろいかもしれませんね。
■ウェビング直後にできた課題
   「日本一安全な町佐賀」から「住みやすい町」を発信!
■テーマに迫る課題づくりのための一口支援
「安全な町づくり」や「住みやすい町」をキーワードにすると,解決しなければならない問題がとても大きいようです。誰にとって安全なのか,どんなことから安全なのかをしぼればおのずと実践できそうな課題が見えてくるのではないでしょうか。例えば,お年寄りが生活する上で不安なことは何でしょうか。ニュースなどからヒントを得てはどうでしょうか。


「住みやすい街づくりをめざして」を受講した生徒のウェビング
 課  題    気持ちよく滞在してもらう!〜バルーンを通して〜
Y.Iくさんのウェビング
ウェビング直後の思い(Y.Iさん)…
私は,「自然とバルーンの町佐賀を創り佐賀をもっと国際的にアピールしたいと思います。それにはまず,日本人だけでなく多くの外国人が訪れるバルーンフェスタにすることが必要です。競技だけでなくもっと多くの人にバルーンを通して佐賀のよさを知ってもらうことから始めなければならないと思います。できれば,近隣諸国の人々を招いて国際交流を進めながら,佐賀を知ってもらう,そうしたら佐賀の人々も自然に国際理解を深めていくのではと思います。我が家でもバルーンの時期はホストファミリーをしています。競技に参加する選手が競技に集中できるように家族全員で応援をしながらも,日本の「家・家族」のよさに触れてもらうことをいつも家族で話しています。そのせいか,毎年ニュージーランドから同じチームの選手のみなさんがやってきてくれます。
そこで,我が家のホストファミリーとしての経験を基に,ホストファミリーをするための,手続きや対応の仕方を表したホストファミリー募集のパンフを作りたいと思います。
■ウェビング中の一口支援
「ウェビングでは『バルーンフェスタをもっと発展させたい』という願いが表れていました。また,『住みやすい』から『自然が多い』〜『田畑』につながっています。国際都市として発展する条件として,単に乱開発するのではなく,今の自然やイベントを生かしたいという願いがあるようですね。
■ウェビング直後にできた課題
 「自然とバルーンの町佐賀を建設しよう!」
■テーマに迫る課題づくりのための一口支援
近隣諸国の人々を招こうとしても,様々な問題が予想されませんか。招く人々の応募や選抜,予算の問題などです。バルーン競技者の多くは「ホストファミリー」という,ごく普通の家庭に滞在して大会に参加しているようですよ。ボランティアで「ホストファミリー」をしている家庭があるということは,知られていますが,ホストファミリーの家庭と海外の競技者との間にどのような交流があり暖かい人間関係が築かれているかはあまり知られていないようです。また,バルーン期間中は海外から観光や応援で訪れる人も多いと聞きました。そのような人たちにもホストファミリー的な制度があるともっと素敵なバルーン大会になるのではないでしょうか。

 課  題    せせらぎに鯉が泳ぐ町を創ろう!
T.Kくんのウェビング
ウェビング直後の思い(T.Kくん)…
家の近所に「ミゾタ」があります。ミゾタは水路やダム,浄水設備等に関わる仕事をしている会社ということは知っていました。会社の仕事以外で、多布施川の清掃活動をしたり,ゴムボートで川下りのイベントをしたりしている会社です。とても好感の持てる会社です。その会社に協力をしてもらいながら,何とか多布施川をきれいな澄んだ川にしたいと思います。祖父母から聞いたことがあります。多布施川にも鯉が泳いでいて,夏は泳げたようです。一部の区間では泳げますが,もっと広い範囲で子どもたちが泳げたり,鯉とは言いませんが,魚が泳ぐのが見えるような川にしたいと思います。そのためにできるプランを作りたいと思います。できれば,地域の人たちとともに。
■ウェビング中の一口支援
「『住みやすい町』からは『バリアフリー』や『豊かな自然』につながっていますね。また,ウェビン全体からは,都市化を進めるよりも現状の佐賀を大切にしながら,住みやすい佐賀を創造したいという気持ちが表れているようですね。
■ウェビング直後にできた課題
 自然と水の町佐賀の創造!
■テーマに迫る課題づくりのための一口支援
佐賀の町自体にもっと緑を多くする計画となると壮大な計画になります。佐賀の山々の自然や海の近くで暮らせるようにといっても限界があるように思えます。そこには,暮らすための設備をあらたに設けなければならないからです。そこで,水の町にもっと迫ってはどうでしょうか。「水とともに」をキャッチフレーズしている「ミゾタ」という地元の
企業があります。また,以前(20〜30年前)は汚かった佐賀の松原川も今は水遊びができるほど澄み切ったきれいな川になっています。生活現場に近い水辺がきれいであったり,そこに生き物が住んでいたりするだけで人々は豊かになれるのではないでしょうか。



課題づくりにおける教科からのアプローチとウェビングの手ごたえ
「有明佐賀空港活性化プラン!」
「有明佐賀空港活性化プラン」の授業内容は,有明海周辺の観光や交通事情を踏まえた教師の空港活性化プランの提案であった。生徒は,「空港の活性化」が印象に残り,ウェビングでは,ほとんどの生徒がどこかで「佐賀空港」と結び付けていた。本授業は,課題解決に向けたプランニングのやり方を生徒につかませることができたと考える。

「住みやすい街づくりを目指して」
「住みやすい街づくりを目指して」の授業内容は,レクスパンシオン社の「世界の住みやすい町ランキング表」をもとに,人々が住みやすい町とはどのような町なのかを生徒と共に考えた。そのため,生徒は「国際都市づくり」を多面的にとらえることができたようだ。