平成25年度佐賀県小・中学校学習状況調査及び全国学力・学習状況調査を活用した調査Web報告書

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Ⅲ 各教科の調査結果の分析   

  ※中学1年生の調査については、小学6年生の学習内容としているため、小学校の項で分析している。

小学校社会

 知識の確実な定着と社会的な思考・判断・表現を育成する授業づくり

 

小学5年生では全ての評価の観点で「おおむね達成」の基準を上回った。しかし、小学6年生、中学1年生の「社会的事象についての知識・理解」「社会的な思考・判断・表現」は「おおむね達成」の基準を下回った。設問ごとに見ると、全ての学年で「社会的な思考・判断・表現」の「社会的な問題について考えたり、解決策を論述したりすること」、「社会的事象の特色や関連、意味・意義について解釈したり説明したりすること」について課題が見られた。今後の指導に当たっては、基礎的・基本的な知識を確実に身に付けさせ、それらを活用して課題を解決する思考力・判断力・表現力を育成するための指導の工夫が必要である。

この後、評価の観点については、以下のように記す。

 ○社会的な事象への関心・意欲・態度

 ○社会的な思考・判断・表現

 ○観察・資料活用の技能

 ○社会的事象についての知識・理解

本調査では設定なし

「思考・判断・表現」

「技能」

「知識・理解」

 

 

 

結果の概要
   
 

(ア)

教科及び設問ごと正答率

 
教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率


 
教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率


 
教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率


(イ)

評価の観点別正答率

①小学5年生 

図1 H25年度(小学5年生社会)評価の観点別正答率

全ての観点において「おおむね達成」の基準を上回った。「知識・理解」は「おおむね達成」の基準を12.5ポイントが上回ったが、「国や地域の発展に尽くした人々を理解すること」については人物と業績を結び付けて理解することに課題が見られた。「技能」は「おおむね達成」の基準を12.3ポイント上回ったが、「資料から、火災の予防や発生時の備えについて読み取ること」については火事の予防のための備えについて読み取ることに課題が見られた。

小学6年生

図2 H25年度(小学6年生社会)評価の観点別正答率 

「技能」の観点は、「おおむね達成」の基準を上回った。しかし、「知識・理解」と「思考・判断・表現」については、「おおむね達成」の基準を下回った。「知識・理解」については、「国土の様子について理解すること」について課題が見られた。「思考・判断・表現」については、社会状況と事実とを関連付けて理解できていないために、社会的事象についての説明や解釈ができなかったことが考えられる。

③中学1年生

図3 H25年度(中学1年生社会)評価の観点別正答率

「技能」の観点は、「おおむね達成」の基準を上回った。しかし、「知識・理解」と「思考・判断・表現」については、「おおむね達成」の基準を下回った。「知識・理解」については、歴史的事象の名称、人物の名称について正しく記述することに課題が見られた。「思考・判断・表現」については、歴史的事象の意味や価値を歴史的背景を十分に踏まえて理解できていないために、歴史的事象の説明や解釈ができなかったと考えられる。

 
(ウ)

内容・領域別正答率

①小学5年生

     図4 H25年度(小学5年生社会)内容・領域別正答率

小学5年生では「身近な地域」、「地域社会の歴史」が「十分達成」の基準を上回った。しかし、「安全を守る」は「おおむね達成」の基準を1.6ポイント下回った。消防署や消防団の働きについて理解すること、事故を防ぐための工夫について説明することなどに課題が見られた。

②小学6年生

図5 H25年度(小学6年生社会)内容・領域別正答率

小学6年生では「工業の生活と国民生活」、「国土の様子」が「おおむね達成」の基準を上回った。しかし、「食料生産の様子と国民生活」は、「おおむね達成」の基準を8.0ポイント下回った。食料生産に関する仕事の工夫について理解すること、養殖業が増えている理由について説明したり、日本の食料生産の問題について説明したりすることに課題が見られた。

 

③中学1年生

図6 H25年度(中学1年生社会)内容・領域別正答率

中学1年生では「我が国の政治の働き」、「世界の中の日本」が「おおむね達成」の基準を上回った。「我が国の歴史」は、「おおむね達成」の基準を2.4ポイント下回った。歴史的事象の名称や人物の名称などを理解すること、また、参勤交代を制度化させる理由について説明したり、地租改正に対する農民の不満について説明したりすることについては課題が見られた。

   

経年比較 

   
 

これまでに示した結果を受け、(ア)では、「おおむね達成」の基準を下回った小学6年生の「知識・理解」の観点について、同一学年の経年比較を行う。(イ)では、中学1年生の「知識・理解」の観点について、児童の変容を見るために同一学年の経年比較を行う。(ウ)では、 平成24年度の課題を受け、「活用」に関する問題について、指導が図られたかを見るために同一児童の比較を行う。さらに、「活用」に関する問題について社会的な問題について考えたり、解決策を論述したりする設問(以下、「論述」と表記)と社会的事象の特色や関連、意味・意義について解釈したり説明したりする設問(以下、「説明・解釈」と表記)に分けて同一学年の経年比較を行う。

   
(ア)

小学6年生の「知識・理解」の観点についての経年比較(同一学年)

図7 H24・H25年度(小学6年生)「知識・理解」の正答率の経年比較

図8 H24・H25年度(小学6年生)「知識・理解」の到達度分布の経年比較

平成24年度の調査では「知識・理解」が「おおむね達成」の基準を上回っていたが、平成25年度の調査では「おおむね達成」の基準を下回った。さらに、到達度分布(図8)を見ると、「十分達成」と「おおむね達成」の割合が減少し、「要努力」の割合は増加しており課題となっている。その原因の1つとして社会的事象についての知識の定着が不十分であることが考えられる。特に、北方領土や水俣病が発生した場所などの地理的内容の知識の定着については課題があり、社会的事象を関連付けて理解できていないことがうかがえる。

   
(イ)

















中学1年生の「知識・理解」の観点についての経年比較(同一学年)

図9 H23・24・25年度(中学1年生)「知識・理解」の正答率の経年比較

   図10 H23・H24・H25年度(中学1年生)「知識・理解」の到達度分布の経年比較

「知識・理解」について、平成24年度は「おおむね達成」の基準を上回っていたが、平成25年度は「おおむね達成」の基準を下回った。さらに、到達度分布を見ると、「要努力」の割合は9.5ポイント増加していることは課題である(図10)。その原因の1つとして歴史的事象に関する知識の定着が不十分であることが考えられる。昨年度も課題として挙げているが、今年度も明治時代以降の学習内容の理解について課題がある。登場する人物が多く、歴史的背景が国内に留まらず外国との関係にまで及んでおり、複雑になっているために理解しづらいことが考えられる。

(ウ)

「活用」に関する問題についての経年比較(同一学年)

11 H24・H25年度(中学1年生)「活用」に関する問題の正答率の経年比較

図12 H24・H25年度(中学1年生)「活用」に関する問題の設問内容ごとの正答率の経年比較

 

「活用」に関する問題については、平成24年度は「おおむね達成」の基準を3.0ポイント上回っている。しかし、平成25年度は「おおむね達成」の基準を12.1ポイント下回る結果となった。そこで、「活用」に関する問題を図12のように「論述」と「説明・解釈」に分け、分析する。

平成25年度の「論述」の正答率は「おおむね達成」の基準を12.6ポイント下回った。「論述」には社会的な問題について解決策を考えていく問題が出題されている。社会的な問題についての自分の意見をもったり、考えを表現したりする力が不十分であると考えられる。平成24年度の「説明・解釈」の正答率は「おおむね達成」の基準を上回った。しかし、平成25年度は「おおむね達成」の基準を9.3ポイント下回った。「説明・解釈」には歴史的事象と歴史的背景との関連について考えていく問題が出題されている。年表や資料から情報を読み取り、それを基に歴史的事象の意味や意義について考えていく力が身に付いていないと考えられる。

   
設問ごとに見た傾向と指導法改善の手立て
   

 

 

平成25年度の結果の概要を踏まえ、傾向1では「社会的事象に関する知識の定着」について、傾向2では「歴史的事象に関する知識の定着」について設問レベルで分析する。また、経年比較を踏まえ、傾向3では「社会的な問題について論述したり、社会的事象や歴史的事象の意味を説明したりすること」について設問レベルで分析する。

   
傾向1

社会的事象に関する知識の定着に課題がある。

[小学5年生大問4(3)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率60.0に対し、正答率は51.2であり、「おおむね達成」の基準を8.8ポイント下回った。資料から情報を読み取り、森林と水資源の関連について理解できていない児童が多かったために正答率が低くなったと考えられる。
○ 指導改善の手立て

飲料水を確保し、安定供給を図るためにはダムや浄水場の建設だけでなく、雨水を蓄える働きがある森林の保全も計画的に行われている。これらの事象を関連させて理解させる指導が大切である。

[小学5年生大問6(3)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率60.0に対して、正答率は32.4であり、「おおむね達成」の基準を27.6ポイント下回った。ガス会社や水道局など特徴ある機関と比べると、消防団は組織が地域の人々で構成されていることや活動が見えづらいため、児童にとって違いを捉えにくいことが考えられる。また、身近な地域で消防団の活動を見ることができない児童にとっては、実感を伴った理解がしづらいことが考えられる。
○ 指導改善の手立て

災害や事故の防止のために関係機関は地域の人々と協力して取り組んでいる。火災の場合は、消防署を中心に様々な機関や地域の人々が協力する仕組みが整えられている。その1つとして消防団の組織がある。そのことを確実に理解させた上で、火事に関わる関係機関を理解できるように指導していく必要がある。具体的には、消防団員から話を聞いたり、その活動の様子を視聴覚資料で調べたりする活動を取り入れることも考えられる。

[小学6年生大問7(3)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率65.0に対して、正答率は18.9であり、「おおむね達成」の基準を46.1ポイント下回った。日本の国土の範囲については東端が南鳥島、南端が沖ノ鳥島などを資料から読み取ることはできている。しかし、択捉島、国後島、歯舞群島、色丹島をまとめた名称について理解している児童は少ないことが考えられる。
○ 指導改善の手立て

我が国の国土を学習する際には、我が国の領土の北端、南端、東端、西端などの島、日本列島の周りの海を取り上げ、地図帳や地球儀などで具体的に調べていく活動が効果的である。その際、北方領土の問題についてはロシア連邦が不法に占拠し、我が国はその返還を求めていることなどについてもニュースや新聞等を活用しながら指導していくことも大切である。

   
傾向2

歴史的事象に関する知識の定着に課題がある。

[中学1年生大問6(1)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率60.0に対して、正答率は20.7であり、「おおむね達成]の基準を39.3ポイント下回った。明治政府が富国強兵を行った歴史的背景と、個々の政策の関連付けが理解できていない児童が多かったためであると考えられる。

○ 指導改善の手立て

明治時代は富国強兵を目指して様々な政策を行った。その代表が徴兵令、地租改正、官営工場の建設である。これらの政策は、互いに密接に関わり合っている。そのため、富国強兵を上位概念として徴兵令、地租改正、官営工場の建設を下位概念として理解させた上でそれぞれの政策の内容を理解させていくことが大切である。また、デジタルコンテンツや資料集を活用して明治時代の時代背景を捉えさせて考えさせていくことも効果的であると考えられる。

[中学1年生大問7(1)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率60.0に対して、正答率は27.7であり、「おおむね達成」の基準を32.3ポイント下回った。江戸幕府が幕末にアメリカなどの国々と不平等条約を結んだことについては理解しているが、不平等条約の内容や不平等な条約を結ばなければならなかった理由についてまで理解している児童が少なかったと考えられる。

○ 指導改善の手立て

不平等条約の内容には2つある。第1は、関税自主権が認められていないこと、第2は、領事裁判権を認めることである。それらを理解するためには、不平等条約によって起こった社会の混乱を理解させておくことが大切となる。例えば、関税自主権が認められていないことで日本の産業が大打撃を受けたこと、領事裁判権を認めたことによってノルマントン号事件のような納得できない裁判結果を受け入れなければならなかったことなどである。このように、不平等条約の内容と不平等であるが故に起こった出来事を関連付けて理解させる指導が大切となってくる。

[中学1年生大問7(2)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率が60.0に対して、正答率は35.9であり、「おおむね達成」の基準を24.1ポイント下回った。伊藤博文と伊藤博文の業績を関連付けて理解されていなかったことが原因として考えられる。同じように大問2(1)の東大寺の大仏づくりに協力した人物に関する問題や大問3(3)の畳や障子、ふすまが使われている作りに関する問題についても課題が見られた。人物の名称や歴史的事象の名称、政策名などの知識が断片的なものとなっており、十分な定着がなされていないことが考えられる。
○ 指導改善の手立て

歴史学習においては学習指導要領で42人の人物を取り上げることが示されている。そのうち明治時代以降に活躍した人物は10人を超えている。さらに、明治時代以降の人物、あるいは人物の業績を理解するには、歴史的背景と切り離すことはできない。そのため、人物や業績だけを取り上げて学習を行うのではなく、歴史的背景と人物や業績を関連付けて考えていくことができる指導を行う必要がある。

   
傾向3

社会的な問題について論述したり、社会的事象や歴史的事象の意味を説明したりすることに課題がある。

[小学5年生大問5(3)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率50.0に対して、正答率は31.7であり、「おおむね達成」の基準を18.3ポイント下回った。資料からスピードを出さないための工夫が、学校や商店街の近くにあることについては読み取ることはできている。しかし、そのことと学校や商店街には人が多く、自動車がスピードを出すと危険な場所であることを関連付けることができなかったことが考えられる。
○ 指導改善の手立て

事故を防ぐ工夫は様々な場所で行われている。指導においては、なぜその場所で事故を防ぐ工夫が行われているのかについて考えることができるような工夫を行う必要がある。また、具体的に地域における事故を防ぐ工夫が施された場所を調べていく活動も考えられる。

[小学6年生大問3(2)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率50.0に対して、正答率は33.7であり、「おおむね達成」の基準を16.3ポイント下回った。話合い活動などを通して、食料を輸入に頼っている日本では、輸入がストップすると食料が不足することについては理解していると考えられる。しかし、そのことと世界の人口の変化、耕地面積の変化に関する資料とを関連付けることができなかったことが考えられる。
○ 指導改善の手立て

資料を基に、世界の人口増加と耕地面積との関係に着目させ、今まで以上に食料が必要になることに気付かせることが大切である。それを踏まえ食料を輸入に頼る日本の問題点について考えさせていく指導が大切となってくる。食料不足が起きた事例を挙げて問題点を考えさせていくことも効果的である。

 

[中学1年生大問4(4)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率45.0に対して、正答率は35.7であり、「おおむね達成」の基準を9.3ポイント下回った。「大名が守るべききまり(武家諸法度)」と「当時の佐賀藩の予算」の2つの資料と歴史的背景とを関連付けながら、参勤交代の制度を義務付けた理由を考えることが難しかったためと考えられる。
○ 指導改善の手立て

大名が守るべききまりの資料からは、江戸幕府が大名の力を抑えようとしたことを、「当時の佐賀藩の予算」の資料からは、藩の予算の半分以上が参勤交代に関わる費用となっていたことを読み取らせることが大切である。安土桃山時代から江戸時代への時代の流れを踏まえながら、江戸幕府が目指した政治の在り方について考えることができるような指導をしていく必要がある。

   
   
これからの指導に向けて
   
 

本調査では、「社会的事象、歴史的事象に関する知識の定着」と「社会的な問題について論述したり、社会的事象や歴史的事象の意味を説明したりすること」に課題があることが分かった。 学習指導要領においては、社会的な見方や考え方を養い、そこで身に付けた知識、概念や技能などを活用し、よりよい社会の形成に参画する資質や能力につないでいくことが求められている。そのためにも、思考力・判断力・表現力の基盤となる知識の定着を確実に図ることが大切である。

(ア) 社会的事象や歴史的事象に関する知識を定着させるための指導の工夫

知識は、1つ1つ断片的に取り扱うのではなく、関係付けて理解させていくことが大切である。また、「消防団」や「北方領土」などの用語は確実に指導し、意味を理解させた上で定着させるべきものである。そこで、まずは、問題解決的な学習の中で、スーパーマーケットや浄水場などの見学や地域の特徴的な事象の観察などの体験活動を充実させたり効果的な資料の提示をしたりすることで、これまでの経験や既習事項と結び付けながら知識を習得させるような手立てが必要である。さらに、社会的事象の特色や関連、意味などについて考えたり話し合ったりする学習の場を設定する手立ても必要となってくる。そうすることで、理解を深めると共に知識の定着を図ることにもつながると考えられる。そのため、授業では単に暗記をさせていくだけでは不十分である。学習の流れの中から児童に必然性をもって取り組ませて理解させ、知識を定着させていくことも必要である。

(イ) 社会的な問題について論述したり、社会的事象や歴史的事象の意味を説明したりすることについての指導の工夫

社会的な問題について論述させるためには、児童に意見をもたせていく指導を行う必要がある。意見をもたせるためには、第1に社会的な問題が起きている原因や背景について理解させる手立てが必要である。具体的には社会的な問題について対立する意見を出して考えさせたり、社会的な問題について書かれてある新聞記事を活用して考えさせたりすることが考えられる。第2に社会的な問題について解決策を考えさせる手立てが必要である。具体的には社会的な問題について討論を行い意思決定をさせていくことが考えられる。

社会的事象や歴史的事象の意味を説明させるためには、事象を1つ1つ断片的に学習させるのではなく、それらを関連させながら学習させていくことが大切となっていく。よって、事象を関連付けて学習させる指導の工夫が必要となってくる。例えば、 歴史学習においては取り上げられている人物の歴史的背景を明らかにし、その歴史的背景に基づいて政策を実行していったなど事象を関連付けていくような指導が考えられる。

(ウ)  「思考力・判断力・表現力」を高めるための評価の工夫

国立教育政策研究所から『評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料』が示された。この資料では実際の指導における「社会的な思考・判断・表現」を評価する際の評価規準が単元ごとに示されている。具体的な判定基準をどのように設定するか、活動の記録を基にどのように評価していくかということについて考えていくことは大切なことである。特に、設定した判定基準ではどのような状況を「おおむね満足できる」状況(B)とするのかについて明らかにすることは重要である。例えば、「○○を活性化させるプランについて述べなさい」という課題に対しては、活性化させるプランとその理由を記述していれば「おおむね満足できる」状況(B)と判定基準を設定することである。そうすることで、目指すべき児童の姿を具体的にイメージして授業に臨むことができると考えられる。

《参考資料》

国立教育政策研究所 『評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料 小学校社会』 平成23年11月

○ 教師意識調査の結果より

教師意識調査(27)において「社会で、児童が資料などから読み取ったことを基にして考えたことを、話し合う活動を取り入れた授業を行っていますか。」という質問に対して、「多くの単元で行っている」と回答した教師の割合は16.0%、「半分程度の単元で行っている」と回答した教師の割合は26.4%であり、合わせると42.4%である。平成24年度の同じ設問では,「多くの単元で行っている」と回答した教師の割合は14.3%、「半分程度の単元で行っている」と回答した教師の割合は27.4%であり、合わせると41.7%である。これらを踏まえると、言語活動を取り入れる指導が意識され、社会科において自分の考えを説明し、表現する話合い活動に取り組むことができていると考えられる。話合い活動は思考力・判断力・表現力を育成することにつながっていくと考えられる。よって、今後も社会科において話合い活動を充実させ、思考力・判断力・表現力を育成していく取組が大切である。

   
   
授業実践に参考となるリンク
   
 
   
 
 

 

 


最終更新日:2013-10-21