今回の調査によって、次の3点に課題があることが分かった。1つ目は、「書くこと」において、文章の様式を理解すること、2つ目は、「書くこと」「読むこと」において、目的や条件に合わせて自分の考えをまとめること、3つ目は、「漢字の書き」や「ローマ字の読み書き」である。これらの課題を解決するためには、文章の様式や条件に合わせて自分の考えを確かに表現できるような学習活動を一層充実させることが大切である。特に、以下のことを意識して、これからの指導改善を図っていくことが重要であると考える。
(ア) 言語活動の特性を理解し、指導事項に最適な言語活動を吟味する
学習指導要領解説の国語編に、指導事項は例示されているような言語活動を通して指導するものとされ、それぞれの領域において、発達段階に応じた言語活動例が明記されている。これらの言語活動例を効果的に設定し指導していくことが大切である。そのためには、教師が、それぞれの言語活動の特性を理解しておくことが大切である。その上で、授業を計画する際に、指導事項と児童の実態、言語活動の特性の3つを照らし合わせ、指導事項を身に付けさせるのに適した言語活動であるかを吟味する必要がある。そして、教師自身が、授業の中で行う「お礼の手紙」や「リーフレット」、「本の帯」といった言語活動での具体例を示したり、「手引き書」等を用いて活動の手順を示したりしていくことで、学習への見通しをもたせ、必要な知識や技能を身に付けさせながら授業を進めていくことが望ましい。具体的な授業プラン等については、佐賀県教育センターホームページを参考にしてほしい。
[「使える!分かる!力が付く!小学校国語科学習指導の提案」URL]
https://www.saga-ed.jp/kenkyu/kenkyu_chousa/h24/01%20sho_kokugo/index.html
〈イ)単元を貫く言語活動の中で、条件に合わせて考えをまとめさせる活動を工夫し、確かに表現する力の向上をねらう
学習課題を決定する際には、児童が具体的なゴールをイメージし主体的に学習できる課題を設定する。目的意識・相手意識をもたせ、一定の条件の中で、考えを表現させるような状況を作ることが重要である。例えば、「『平和』についての意見文を書こう」という単元を設定したとする。「事実と意見を区別して書く」能力を身に付けさせることがねらいであれば、条件として①意見の根拠となる事実を入れること②原稿用紙2枚半以上3枚以内で書くこと③意見を強調する表現を使って書くことなどを提示して書かせる。また、「本の紹介ポスターを書こう」という単元を設定したとする。「自分の感想を伝えるための引用や要約をする」能力を身に付けさせることがねらいであれば、条件として①20字以上30字以内にまとめること②自分の感想のもとになるキーワードを書くことなどを提示して書かせる。
このように、目的に応じて必然的な条件に合わせて表現する活動を工夫することが大切である。
(ウ) 他領域・他教科の中で、国語で学んだ知識・技能を活用させる場をつくる
国語の授業で学習したことが、日常生活で役に立つことを児童に実感させるために、他教科・他領域と関連付けて指導することが望ましい。それぞれのカリキュラムを見直し、工夫して位置付けることが必要になってくる場合も考えられる。教師自身が、次のようなことを理解しておく必要がある。
①身に付けた力が他の単元のどこにつながっていくのか、次学年のどの学習に役立つのか
②他領域・他教科でどう生きてくるのか
③日常生活のどのような場面で必要となるのか
また、上記のことを意識して関連付けた指導をすることが大切である。例えば、次のようなことが考えられる。
・「読むこと」「書くこと」や「読むこと」「話すこと・聞くこと」の複合単元を仕組む。
(例)「読んで考えたことを意見文に書く」「読んだ感想をブックトークで伝える」
・国語の単元と学校行事を関連させる。
(例)「平和のとりでを築く」を読み、平和について考えたことを平和集会で発表する。
・国語と他教科を関連させる。
(例)新聞の書き方を学び、社会で調べたことを新聞に書く。
・国語と他領域を関連させる。
(例)お願いの手紙の書き方を学び、総合的な学習の時間にお世話になる人へお願いの手紙を書く。
(エ) 朝の時間や家庭学習の中で、反復的な学習をさせる
基礎的・基本的な知識・技能は、繰り返し使うことで定着していくものが多い。漢字やローマ字の習得についても、様々な場面で繰り返し使うことを意識して、意図的に学習に取り入れていくことが望ましい。例えば、朝の時間に「漢字やローマ字の書き取りタイム」を設けたり、家庭学習のメニューに「漢字を使った短文作り」「熟語集め」「身の回りのローマ字探し」などを出したりする。漢字やローマ字の読み書きの力を定着することができるアイデアを職員間で共有し、学校全体で取り組むことがより効果的であると考える。
(オ) 教師の意識調査から
「教科の特性に応じた指導法の工夫」に関する教師の意識調査の結果を見ると、授業改善を行っている学校が多くあることが分かる。
(22)「国語で、目的に応じて、話したり聞いたりしたことを基に、自分の考えをまとめる活動を取り入れた授業を行っていますか。」という問いでは、「多くの単元で行っている」「半分程度行っている」と答えた教師が71.5%、(23)「国語で、目的に応じて、自分の思いや考えを書いて表現する活動を取り入れた授業を行っていますか。」という問いでは、「多くの単元で行っている」「半分程度行っている」と答えた教師が77.3%、さらに、(24)「国語で、目的に応じて、文章の内容や表現の仕方に注意して読み、それについての自分の考えをもつ活動を取り入れた授業を行っていますか。」という問いでは、「多くの単元で行っている」「半分程度行っている」と答えた教師が74.3%あり、このことから、それぞれの領域で、自分の考えをもつ力を身に付けさせる学習指導が積極的に行われていることが伺える。しかし、結果としては、全ての学年で「自分の考えを書く」設問について「おおむね達成」を下回り、課題が見られた。よって、今後も指導を継続していくことが必要であると考える。
このような授業の工夫改善を行うことが、児童の課題解決につながっていくものと考える。 |