平成25年度佐賀県小・中学校学習状況調査及び全国学力・学習状況調査を活用した調査Web報告書

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Ⅲ 各教科の調査結果の分析   

  ※ 中学1年生の調査については、小学6年生の学習内容としているため、小学校の項で分析している。

中学校国語

 「書くこと」「読むこと」を関連付けた指導を充実させる授業づくり

 

中学2年生、中学3年生共に、全ての評価の観点において、「おおむね達成」の基準を上回った。しかし、「書くこと」「読むこと」の評価の観点に課題が見られた。設問ごとに見ていくと、「書くこと」においては、書いた文章を読み返し、読みやすく分かりやすい文章にすること、「読むこと」においては、文章を読んで要旨を捉え記述することに課題が見られた。このことを踏まえ、「書くこと」と「読むこと」を関連付けた指導を充実させる必要がある。

中学3年で実施した全国学力・学習状況調査を活用した調査については、以下のように記す。

 ○主として「知識」に関する問題

 ○主として「活用」に関する問題 

「国語A」

「国語B」

 
 
国語科においては、評価の観点と内容・領域が重なるという教科の特質上、以下のように記す。

 ○国語への関心・意欲・態度

 ○話す・聞く能力

 ○書く能力

 ○読む能力

 ○言語についての知識・理解・技能

「関心・意欲・態度」(中学3年生のみ設定)

「話す・聞く」

「書く」

「読む」

「知識・理解・技能」

 
       
結果の概要
 

各学年ごとに教科の正答率について到達基準との比較を示す。

(ア)
教科及び設問ごと正答率
 

 

 

教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率

 
 
教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別正答率 

内容・領域別正答率 

設問ごと正答率


 
 
教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別正答率 

内容・領域別正答率 

設問ごと正答率


 
(イ)

評価の観点別正答率

①中学2年生

図1 H25年度(中学2年生国語)評価の観点別正答率

全ての観点で「おおむね達成」の基準を上回った。「読む」においては到達基準50.0を2.4ポイント上回った。
 

②国語A

図2 H25年度(国語A)評価の観点別正答率

「書く」は「十分達成」の到達基準68.8に対して4.4ポイント下回った。「出された意見を整理して、設定の理由を適切に書く」が「おおむね達成」の基準を下回った。目的が明らかになっているものについての書く能力はある程度定着しているが、目的を判断しながら選んだり書いたりすることに課題が見られた。

③国語B
図3 H25年度(国語B)評価の観点別正答率

全ての観点で「おおむね達成」の基準を上回った。特に「読む」においては到達基準45.6に対して19.4ポイント上回った。「知識・理解・技能」は、「十分達成」の到達基準55.0に対して5.9ポイント下回った。

(ウ) 内容・領域別正答率
  ①中学2年生
 
 
                        図4 H25年度(中学2年生国語)内容領域別正答率
 

「伝統的な言語文化(漢字の書き)」は「おおむね達成」の到達基準50.0に対して、3.7ポイント下回った。他の内容・領域は全て「おおむね達成」の基準を上回っていた。特に、漢字の書きに課題が見られた。

  ②国語A
 
 

            図5 H25年度(国語A)内容領域別正答率

「話すこと・聞くこと」「読むこと」と「伝統的な言語文化」については、「十分達成」の基準を上回った。しかし,国語Aの「書くこと」については、「おおむね達成」の基準を上回っているものの、「十分達成」の基準を4.4ポイント下回っていた。特に、記述を伴うものは正答率が下がり、無解答率も高くなっていた。

  ③国語B
 
 
            図6 H25年度(国語B)内容領域別正答率
 

国語Bの「書くこと」は「おおむね達成」の基準を上回っているものの、「十分達成」の基準より4.1ポイント下回っていた。100字前後で答える問いが2題あり無解答率が高く、課題が見られた。書くことが苦手だということもあるが、中でも自分の考えを形成して書く問いでは無解答率が高くなっていた。

   

経年比較 

 

平成24年度の課題であった「書くこと」「読むこと」について変容を考察するために、同一学年の経年比較を行う。また、「伝統的な言語文化(漢字の書き)」について平成25年度は他の領域・内容に比べて正答率が低い。そこで、平成24年度と平成25年度の同一学年の経年比較と同出題趣旨の傾向を取り上げ、分析を行う。

(ア)

「書くこと」に関する問題についての経年比較(同一学年比較)

 

 図7 H24年度(中学2年生)H25年度(中学2年生)「書くこと」の内容・領域正答率の経年比較

 

 

 図8 H24年度(中学2年生)H25年度(中学2年生)「書くこと」の到達度分布の経年比較

 

内容・領域正答率の経年比較を見てみると、平成24年度は「おおむね到達」の基準を14.0ポイント、平成25年度は「おおむね達成」の基準を11.4ポイント上回り、大きな変化は見られなかった。しかし、到達度分布において経年比較をしてみると「十分達成」の割合が平成24年度では39.9%であったのに対し、平成25年度は34.0%と5.9ポイント減少している。また、「要努力」の割合が平成24年度では33.7%であったのに対し、平成25年度では40.8%と7.1ポイント増加している(図8)。平成24年度と同様に「相手や目的に合わせて分かりやすく書く」ことに課題が見られた。

   
(イ)

















「読むこと」に関する問題についての経年比較(同一学年比較)

図9 H24年度(中学2年生)H25年度(中学2年生)「読むこと」の内容・領域正答率の経年比較

図10 H24年度(中学2年生)H25年度(中学2年生)「読むこと」の到達度分布の経年比較

図9の内容・領域正答率の経年比較を見てみると、平成24年度は「おおむね到達」の基準を20.8ポイント上回っているが、平成25年度は「おおむね達成」の基準を2.4ポイント上回っている。さらに、到達度分布において経年比較を行ってみると、「十分達成」の割合が、平成24年度は54.1%であったのに対し、平成25年度は31.2%と22.9ポイント減少している。また、平成24年度は「要努力」の割合が23.7%であったのに対し、平成25年度では「要努力」の割合が44.3%と20.6ポイント増加している(図10)。平成25年度は、特に「文章の中心的な部分と付加的な部分、事実と意見などを読み分け、目的や必要に応じて要旨を捉える」ことに課題が見られた。

   
(ウ)

「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項(漢字の書き)」に関する問題についての経年比較(同一学年比較)

図11 H24年度(中学2年生)H25年度(中学2年生)「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項(漢字の書き)」の内容・領域正答率の経年比較

 

図12 H24年度(中学2年生)H25年度(中学2年生)「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項(漢字の書き)」の到達度分布の経年比較

内容・領域正答率において経年比較を行った。平成24年度は、「おおむね達成」の基準を16.5ポイント上回っていたが、平成25年度は「おおむね達成」の基準を3.7ポイント下回った(図11)。さらに、到達度分布において経年比較を行った。平成24年度は「十分達成」の割合が52.3%であったのに対し、平成25年度では「十分達成」の割合が26.0%と26.3ポイント減少していた。平成24年度は「要努力」の割合が26.7%であったのに対し、平成25年度では「要努力」割合が54.9%と28.2ポイント増加している(図12)。

表1 (平成24年度 伝統的な言語文化「漢字の書き」)

表2 (平成25年度 伝統的な言語文化「漢字の書き」)

平成24年度と平成25年度の伝統的な言語文化「漢字の書き」の経年比較してみると、平成25年度は平成24年度と比べて「漢字の書き」の無解答率が全体的に高くなっている。また、2年連続して「訓読みの漢字」「同訓異字の書き分け」に課題があった。平成25年度は、日常生活での使用頻度が少なく、小学校高学年での新出漢字の定着に課題が見られた。

   
設問ごとに見た傾向と指導改善の手立て

 

 

上記の「ア結果の概要」「イ経年変化」から、「書くこと」「読むこと」「伝統的な言語文化(漢字の書き)」の3つの内容・領域を取り上げ、正答率が低かった設問や無解答率が高かった設問について、分析を行うこととする。このことでより詳細に課題を把握し、具体的な改善の手立てについて探ることにした。
   

傾向1

文章を推敲することに課題がある。

[中学2年生 大問3一]  
○ 問題の概要


○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率55.0に対して、正答率50.8であり、4.2ポイント下回った。文章中から文末表現が適切ではないところを五字以内で抜き出すことを答えとして求められていることから、常体・敬体の知識としての理解に課題があると考えられる。

○ 指導改善の手立て

推敲については、次のことに注意して指導したい。

 ・文章の敬体と常体についての文法上のきまりを確認すること

 ・時と場、相手、文章の目的に応じて、敬体と常体の使い分けを確認すること

 ・書いた文章を読み返し、表記や語句の用法、叙述の仕方などを確かめる作業を、普段から書いた後にはさせること

 ・文章を書いた後には、必ず読みやすく分かりやすい文章になるように推敲をさせること

また、自分で推敲をした後に、更に交流の時間を設ける。その時間でそれぞれが書いた文章を互いに読み合い,自分の表現の参考にさせるなどの指導が必要である。

[中学2年生 大問2一]

○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率55.0に対して、正答率49.8であり、5.2ポイント下回った。書いた文章を読み返し、写真や文中の情報を読み取り、分かりやすい表現に書き換えることを求められていることから、条件に合った文章の書き換えに課題があると考えられる。
○ 指導改善の手立て

文章を書いたときは、読み返し、表記や語句の用法を確かめたり、読みやすく分かりやすい文章に書き換えたりすることが大切である。指導に当たっては、普段からこのような推敲の作業を習慣付けたい。また、単語や短文でも別の言い方で表現する練習を繰り返すことで語彙への関心や表現力を高める学習活動を取り入れることが効果的であると考える。

   
傾向2

文章に表れている書き手のものの見方や考え方について、自分の考えをもつことに課題が見られる。

[中学2年生大問5二]  
○ 問題の概要


○ 解答状況

「十分達成」の期待正答率60.0に対して、正答率62.0であり、2.0ポイント上回った。しかし、無解答率は20.7と高い。新聞記事に対する意見について、3つの条件に合わせて自分の考えを書くことを求められていることから、まずは文章を読み取り、それに対する意見について、自分の立場を明らかにして条件に合わせて文章を書くことに課題があると考えられる。

○ 指導改善の手立て

文章を読む際には、文章に表れている書き手のものの見方や考え方に共感すること、疑問をもつこと、批判することなどを通して、新たなものの見方や考え方を発見したり、様々な視点から物事について考えられるようになったりするなど、読み手としてのものの見方や考え方を広げていくことが大切である。そのため、文章を読んで、感じたことや考えたことを具体的に書く学習活動を取り入れることは有効であると思われる。

   
傾向3

漢字の書き取りに関する知識に課題が見られる。

[中学2年生大問6二3,大問6二4]  
○ 問題の概要


○ 解答状況

同訓異字の書き分け「留まる」の設問では、「おおむね達成」の期待正答率50.0に対して、正答率は32.2であり、17.8ポイント下回っている。訓読みの漢字「拝む」の設問では、「おおむね達成」の期待正答率50.0に対して、正答率は28.8であり、21.2ポイント下回っている。更には無解答率が高い。日常的に触れている漢字については読みも書きもよくできている。ただし、日常的に触れる機会が少ないものは意味が分かりづらく、読み書きできないことが多く課題である。
○ 指導改善の手立て

普段から文章の中で、漢字を読んだり書いたりする機会を増やし、定着を図るようにすることが求められる。

・漢字は読み、書きを確実にできるようにした上で、使いこなす指導をする。

・漢字の指導では、単に形だけではなく、意味や成り立ち、部首などを確認したり、語や語句、語彙指導と一体的に指導をする。

・漢字を文脈の中で使えるような指導をする。

   
これからの指導に向けて
 

 

本調査で明らかになったことは、平成24年度課題であった「書くこと」「読むこと」について、中学3年生は平成25年度は平成24年度より指導改善が図られたものの、中学2年生は「書くこと」「読むこと」について知識・技能を活用するという点で課題が残っている。また、「伝統的な言語文化(漢字の書き)」では語彙力の定着という点で課題が残っている。そのため、以下の点を意識しながら指導改善を図っていくことが大切である。

(ア)書くこと

「書くこと」は、自分の考えを思いつくまま書くだけではなく、考えたことなどから書くことを決め、目的や意図に応じて書くことが大切である。また、書く際には資料を読み取り、分析したり、情報を整理し活用したりする能力も必要である。そのため授業では、読み取った情報を根拠として、自分の立場を明確にして意見を書くことや、条件に合った文章を書く学習活動をすることが大切である。読むことの学習に書く活動を取り入れることで、書く力を身に付けさせたい。

(イ)読むこと

文章を読み、内容や要旨を的確に捉えることや、読み取ったことから自分の考えをもったり、語句の意味や文脈の中で思考力や想像力を働かせて文章を読み取ったりする学習活動を継続的に行っていくことが大切である。指導に当たっては、「読むこと」と「書くこと」を関連付けて学習できるような指導の工夫が必要である。例えば、以下のような学習活動が考えられる。

 ・読み取った知識を作文に活かして書く

 ・文章から筆者のものの見方や考え方を読み取り、根拠を明確にして自分の考えをまとめる

 ・読書後に紹介文を書き、互いに自分の表現に役立てたり、ものの見方や考え方を深める

(ウ)伝統的な言語文化

情報化社会の中で、今まで本や百科事典を開かないと出会うことがなかった語彙に、日常生活で目にしたり耳で聞く機会が増えた。一方、文字を書く機会が減り、筆順や語形に注意をして正確に書いたり、文脈に即して書いたりすることができなくなってきている。文字に触れる機会を極力設け、語彙力を身に付けさせる必要がある。語彙力を身に付けさせるために、以下のような学習活動が考えられる。

 ・日常生活や学習の中で意味や使い方が分からない言葉があったときは、積極的に辞書を引く

 ・語彙を増やすため読書や新聞を読むなど、普段から文章に触れる機会をもつ

 ・漢字を文脈の中で使えるように、「書くこと」や「読むこと」の学習と一体的に学習する

 ・取り立て指導で漢字の筆順や意味、文の中での漢字の使用例を詳しく学ぶ

(エ)「教師意識調査」より

教師意識調査(15)「レポートや作文など書いて表現する活動を取り入れた授業を行っていますか。」という問いに対して、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と答えた中学校国語科の教師の割合が53.5%である。また、(16)「発表や話合い活動など表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた授業を行っていますか」という問いに対して、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と答えた中学校国語科の教師の割合が50.5%であった。半数ほどの国語科の教師が,書く能力や話し合う能力を身に付けさせる授業を行っていることが分かる。その結果「話すこと・聞くこと」「書くこと」の、知識を生かして解く問いでは「おおむね達成」を全て超えている。また、(23)「国語で、目的や意図に応じて、自分の思いや考えを書いて表現する活動を取り入れた授業を行っていますか。」という問いでも「多くの単元で行っている」「半分程度行っている」と答えた中学校国語科の教師の割合が60.5%であり、それぞれの領域単位では充実した指導が行われていることがうかがえる。

ただし、(22)「国語で、目的や場面に応じて、話したり聞いたりしたことを基に、自分の考えをまとめる活動を取り入れた授業を行っていますか。」という問いでは、「多くの単元で行っている」「半分程度行っている」と答えた中学校国語科の教師の割合が44.1%であったことから、今後「聞いたことを書く」「読んだことを書く」など「書くこと」を「読むこと」や「話すこと・聞くこと」と関連付けた指導が必要となる。

   
   
授業実践に参考となるリンク
   
 
   
 

最終更新日:2013-10-21