本調査で明らかになったことは、平成24年度課題であった「書くこと」「読むこと」について、中学3年生は平成25年度は平成24年度より指導改善が図られたものの、中学2年生は「書くこと」「読むこと」について知識・技能を活用するという点で課題が残っている。また、「伝統的な言語文化(漢字の書き)」では語彙力の定着という点で課題が残っている。そのため、以下の点を意識しながら指導改善を図っていくことが大切である。
(ア)書くこと
「書くこと」は、自分の考えを思いつくまま書くだけではなく、考えたことなどから書くことを決め、目的や意図に応じて書くことが大切である。また、書く際には資料を読み取り、分析したり、情報を整理し活用したりする能力も必要である。そのため授業では、読み取った情報を根拠として、自分の立場を明確にして意見を書くことや、条件に合った文章を書く学習活動をすることが大切である。読むことの学習に書く活動を取り入れることで、書く力を身に付けさせたい。
(イ)読むこと
文章を読み、内容や要旨を的確に捉えることや、読み取ったことから自分の考えをもったり、語句の意味や文脈の中で思考力や想像力を働かせて文章を読み取ったりする学習活動を継続的に行っていくことが大切である。指導に当たっては、「読むこと」と「書くこと」を関連付けて学習できるような指導の工夫が必要である。例えば、以下のような学習活動が考えられる。
・読み取った知識を作文に活かして書く
・文章から筆者のものの見方や考え方を読み取り、根拠を明確にして自分の考えをまとめる
・読書後に紹介文を書き、互いに自分の表現に役立てたり、ものの見方や考え方を深める
(ウ)伝統的な言語文化
情報化社会の中で、今まで本や百科事典を開かないと出会うことがなかった語彙に、日常生活で目にしたり耳で聞く機会が増えた。一方、文字を書く機会が減り、筆順や語形に注意をして正確に書いたり、文脈に即して書いたりすることができなくなってきている。文字に触れる機会を極力設け、語彙力を身に付けさせる必要がある。語彙力を身に付けさせるために、以下のような学習活動が考えられる。
・日常生活や学習の中で意味や使い方が分からない言葉があったときは、積極的に辞書を引く
・語彙を増やすため読書や新聞を読むなど、普段から文章に触れる機会をもつ
・漢字を文脈の中で使えるように、「書くこと」や「読むこと」の学習と一体的に学習する
・取り立て指導で漢字の筆順や意味、文の中での漢字の使用例を詳しく学ぶ
(エ)「教師意識調査」より
教師意識調査(15)「レポートや作文など書いて表現する活動を取り入れた授業を行っていますか。」という問いに対して、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と答えた中学校国語科の教師の割合が53.5%である。また、(16)「発表や話合い活動など表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた授業を行っていますか」という問いに対して、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と答えた中学校国語科の教師の割合が50.5%であった。半数ほどの国語科の教師が,書く能力や話し合う能力を身に付けさせる授業を行っていることが分かる。その結果「話すこと・聞くこと」「書くこと」の、知識を生かして解く問いでは「おおむね達成」を全て超えている。また、(23)「国語で、目的や意図に応じて、自分の思いや考えを書いて表現する活動を取り入れた授業を行っていますか。」という問いでも「多くの単元で行っている」「半分程度行っている」と答えた中学校国語科の教師の割合が60.5%であり、それぞれの領域単位では充実した指導が行われていることがうかがえる。
ただし、(22)「国語で、目的や場面に応じて、話したり聞いたりしたことを基に、自分の考えをまとめる活動を取り入れた授業を行っていますか。」という問いでは、「多くの単元で行っている」「半分程度行っている」と答えた中学校国語科の教師の割合が44.1%であったことから、今後「聞いたことを書く」「読んだことを書く」など「書くこと」を「読むこと」や「話すこと・聞くこと」と関連付けた指導が必要となる。 |