「意思決定を取り入れた討論型の学習」に取り組んでみませんか!

              
小学校第6学年 「新しい日本、平和な日本へ」(本時の様子)
本時の目標
  東京オリンピックが日本にもたらした影響について、オリンピック開催の負の面にも気付き、戦後19年目に東京オリンピックを開催したことは日本にとってよかったかという課題意識をもって考えることができる。
本時の展開の概要(7/10)
  前時に1964年の東京オリンピックを開催したことにより、よかった点を調査させ、「外国へ(認めてもらうため)のアピール」、「国民の生活を豊かにする」という日本が敗戦から立ち直る目標が達成できたことを捉えさせていた。そこで、大気汚染により空が霞み、広く整備された道路には自動車の渋滞が起きているという1枚の写真から、問題点に気付かせた。これにより、戦後復興を急いだために起こった負の部分に目を向け、他に問題点がなかったか調べさせた。その後、整理すると、よかった点は「都会の住みやすさ」、「お金が手に入る」、「日本国民の自信」に対して、問題点は、「環境の悪化」、「交通事故等での命の危険」、「地方との不平等さ」という言葉で表すことになった。教師からの「どれも大切な見方だけれど、あなたは何を大切にして考えますか?」の問いに、児童は、戦後19年目で東京オリンピックを開催したことについて考え、自分の考えをもち始めた(意思決定1)。
本時に取り上げる社会的な問題【社会的な問題のパターン】
  社会的な問題「戦後19年で東京オリンピックを開催し、日本が戦後復興したとアピールしたこと 」
                                                      【研究や論争の材料となる事件】
本時の様子
過程
主な学習活動
教師の指導・支援
資料


本時のめあてを確認する。

○前時までに調べた、東京オリンピック開催が果たした役割について確認した。
  ・外国へ(認めてもらう)アピールができ
  た
  ・国民の生活が豊かになった
 
めあて  1964年の東京オリンピックは、日本にどんな影響を与えたのか考えよう。  




T



前時までに調べた東京オリンピックが当時の日本に与えた影響について話し合う。
  @調べた内容を発表し、よい影響を確認する。
  よい影響を表す言葉
「住みやすさ」、「楽さ(便利さ)」、「お金が手に入る」がよい影響として見いだされた。

 A東京オリンピック開催により、問題点があった
   ことに気付く。
  
資料を用いて調べた内容について発表させる際、4つの視点「交通網の整備」、「施設の建設」、「下水道の整備」、「電化製品の普及」で整理しながら板書した。
○よい影響の根拠が視覚的に分かるように、「住みやすさ」や「自信」などを意味付けながら話合いを進めた。
○東京オリンピック開催がもたらしたよい影響について確認した後、大気汚染により空が霞み、広く整備された道路には自動車の渋滞が起きている1枚の写真を提示し、問題点に気付かせるための問い掛けを行った。
※教師の問い(・)
・この写真から分かることは何ですか?
・問題点は考えに入れなくてよいですか?






































○資料から問題点を調べ、東京オリンピックが日本に与えた影響について再度話し合う。
 @小集団で問題点がないのかを調べる。
  ・ 小集団ごとに「交通網の整備」 、「施設の建設」、「下水道の整備」、「電化製品の普及」の4つの視点の中から指定された項目を中心に調べる。
・ 「どうして問題点になるのか」を確認しながら調べる。
 A小集団ごとに調べたことを発表し、学級全体で共有する。



 B共有した問題点が、何を表しているのかを話し合う。
  問題点を表す言葉
「環境の悪化」、「命を脅かされる危険」、「農村の過疎化による不平等さ」が問題点として見いだされた。
○児童の思考活動を重視しているので、新聞記事や本などから教師が選定し、配布した資料を基に調べさせた。
○調べる時間を確保し、学級全体での共有の必然性をもたせるために、小集団ごとに重点的に調べる視点を割り振って調べさせた。

○発表させる際には、予想が含まれることも考えられたので、資料のどの部分から予想したのかを尋ね、意味付けを加えながら進めた。
○「環境の悪化」や「命を脅かす危険がある」など、意味付けをしながら話合いを進めた。

板書(ワークシートと同じ)
よい影響と問題点を比較し、社会的な問題に気付き、論題をもつ。
社会的な問題(研究や論争の材料となる事件)
「日本が戦後復興のために、発展を優先させ、戦後19年目で東京オリンピックを開催したこと」



○東京オリンピック開催の影響について総合的に考えさせるために、よい影響と問題点を意味付けした言葉で確認することで、戦後の復興を急いだことや発展を優先させたことを捉えさせた。また、これらの弊害として、環境の悪化や地域間の格差が生まれたことを捉えさせた。
○よい影響と問題点を比較させることで、社会的な問題を見いださせ、論題を導き出した。
 
 論題 戦後19年目に東京オリンピックを開催することは日本にとってよかったのか。
○振り返りのポイントを基に、自分の考えを書く。
                        (意思決定1)


振り返りのポイント
○オリンピックがもたらした光と影(よい影響と問題点)の部分に気付かせることで、2020年に東京オリンピック開催されるにあたり、その功罪を評価し直すことが必要であることを感じ取らせた。 【評価】
○発展優先の弊害に意識が流れすぎないように、「東京オリンピックが開催されなかったら、どうなっていたか」を問い掛け、東京オリンピック開催が果たした役割に立ち戻らせ、よい影響と問題点の両面を考慮するように促した。
○単元の後半を見据え、2020年の東京オリンピックが開催されるに当たり、本時の学習で考えたことは現在でも考えなくてはならない問題であることを意味付けた。
 
実践を終えて
【成果】
東京オリンピックについてよい点だけから捉えるのではなく、問題点についても捉えることができました。そのことで、高度経済成長を多面的に捉えていくことができるようになりました。
東京オリンピックの開催の是非はについては、どちらの立場でもよい点と問題点が出ることとなります。そのため、決定していく難しさを理解する一方で、意思決定を行う大切さについても理解していくことができました。
【課題】
項目によって対比できない表になり児童の混乱を招いてしまいました。よい点と問題点が常に両方調べられるわけではありません。資料を準備して調べさせるのか、なしでよいとするのかなど解決策は考えられますが、大切にしたいのは、社会科としての目標に向かっているかどうかです。また、同時に、児童の調べる力、理解する力など実態を考慮した手立てを工夫していく必要があります。
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