平成24・25年度 佐賀県教育センタープロジェクト研究 

   
 
     

研究の概要  
 (1)
  研究テーマ
  高等学校における特別支援教育の推進
 -生徒や教育職員の意識調査に基づく、生徒の誰もが学びやすい学習環境づくり
   
(2)
テーマ設定の趣旨

〈高等学校を取り巻く特別支援教育の動向〉

 

特別支援教育については、平成19年4月から学校教育法等の改正により、新たな制度としてスタートしてから6年が経過しました。その中で、文部科学省は平成21年8月に、高等学校における特別支援教育の推進についての報告書をまとめて、高等学校における特別支援教育の必要性や支援体制の充実強化に向けた取組を各学校で行うことを求めています。さらに、学習指導要領の実施に当たり、障害のある生徒などについて、個々の生徒の障害の特性や状態に応じた指導を行うことを指摘し、高等学校における特別支援教育の充実に向けた明確な指針を示しています。

これらのことを受けて、高等学校における特別支援教育に対する意識が高まっています。平成24年度に文部科学省が実施した特別支援教育体制整備状況調査においては、各校における校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名については、ほぼ100%に近い数値を得ています。しかし、全国的には、個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成については25%程度にとどまり、障害の特性に応じた支援の充実には至っていないのが現状です。しかし、佐賀県においては、個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成について60%を超えており、全国に比べると高い数値を示しています。

〈高等学校における特別支援教育の必要性〉

 

平成22年度の高等学校における不登校及び中途退学に関する文部科学省の調査報告によれば、不登校生徒が全国で55,000人を超え、中途退学生徒は53,000人に上っていました。佐賀県においても、不登校生徒が500人を、中途退学生徒が480人を超えていて、高等学校においては大きな教育的課題となっています。そのため、本県においては、平成23年度から不登校生徒への支援の充実を図る取組を行っています。前述の報告で、高等学校における不登校や中途退学の主な要因は、学習のつまずきに関するものが不登校では約18%、中途退学では約46%を占めていると述べられています。さらに、国立特別支援教育総合研究所の報告では、不登校や中途退学生徒の中には、他人と適切な人間関係を作ることや文字を読み書きすることが著しく難しい等の発達障害の特性を有する者が多いと指摘しています。

〈研究のねらい〉

 

高等学校において、生徒が意欲的に学習に取り組み、学習内容をよりよく理解できるようになるために、生徒が学びやすい学習環境づくりを行うことが必要だと考えます。この研究での「学びやすい学習環境」とは、物的環境だけでなく、教師の配慮や工夫のような人的環境を含めたものと捉えています。例えば、授業内容のポイントが分かりやすい板書の工夫や、説明や指示を短く具体的に行ったり、図や写真などの視覚的な教材を活用したりすることなどです。教師が、このような学習環境を授業に取り入れることで、生徒の誰もが学びやすくなると考えます。

本研究では、高等学校において、生徒が学びやすい学習環境づくりを行うために、まず、生徒の学習に関する意識と教育職員の特別支援教育に関する意識を調査して、特別支援教育を推進する上での生徒の学習に関する課題を探ることが必要だと考えました。そして、その課題を基に、高等学校において発達障害の特性を踏まえた学習環境を取り入れた授業を実践し、生徒の誰もが学びやすい学習環境づくりをまとめた手引きを作成することで、発達障害の特性を踏まえた学習環境が充実し、高等学校における特別支援教育の推進につながると考えました。

以上のことを踏まえて、上記のような研究テーマを設定し、研究を進めることとしました。

   
  (3)
研究の目標
 

高等学校における特別支援教育を推進するために、高校生の発達障害の特性を理解し、発達障害の特性を踏まえた学習環境を取り入れた授業実践を通して、生徒の誰もが学びやすい学習環境づくりを探る。

   
  (4)
  研究の方法
 生徒の学習に関する意識と教育職員の特別支援教育に関する意識を調査する。
 高等学校における発達障害の特性を踏まえた、生徒の誰もが学びやすい学習環境を取り入れた授業づくりについての理論研究を行う。
 高等学校における発達障害の特性を踏まえた学習環境を取り入れた授業を実践する。
 高等学校における、生徒の誰もが学びやすい学習環境づくりについてまとめた手引きを作成する。
   
  (5)
  研究の内容
  •   高等学校における特別支援教育の実践上の課題を基に、生徒の学習に関する意識や教育職員を対象にした特別支援教育に関する意識の実態を把握するための質問紙を作成し、意識調査を行う。

実施した意識調査を集計して、結果の分析を行う。その分析結果を基に、高校生が抱える学習の課題を探り、高等学校における発達障害の特性を踏まえた具体的な学習環境を学習場面ごとに提案する。

  •  高等学校における発達障害の特性を踏まえた学習環境を取り入れた授業についての理論研究を行い、授業において、それらの学習環境の取り入れ方を探り、授業づくりを行う。
  •  高等学校における発達障害の特性を踏まえた学習環境を取り入れた授業を実践する。それらを受けて、高等学校における生徒の誰もが学びやすい学習環境づくりをまとめた手引きを作成する。
 
 
 
     
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