「児童生徒一人一人が居心地のよさを感じる学級集団づくり」について提案します!

               
現在の位置: 2 研究の実際  (5) 対応策の実施  ア 小学校(中学年)における実践   (ウ) 変容と考察
 
ア 小学校(中学年)における実践
学級全体にリレーションを広げる単学級での取組
 
変容と考察
 
 
(ウ) 変容と考察
 
1 実践後のアンケート (「Q−U」) 結果(11月中旬)








       図5−ア−2 実践後のアンケート (「Q−U」) 結果(11月中旬) 
2 考察
【集団について】
・「Q-U」の学級生活満足度尺度において、ルールに関する被侵害得点が0.8点、リレーションに関する承認得点が1.2点上がっていました。このことから、ルールとリレーションの確立度が上がっていると考えられます。
・「Q-U」の学級生活満足度尺度では、学級生活満足群の割合が65.7%から77.2%に増加して、侵害行為認知群の割合が17.1%から5.7%に減少していました。このことから、学級内のルールの確立が高まり、嫌がらせを受けていると感じる被侵害得点が低くなったと考えられます。また、ルールの確立に向けて、「あいさつ」「上手な聴き方」「あたたかい言葉かけ」のソーシャルスキルトレーニング(SST)の授業を実施したことで、友達とのかかわり方のスキルを共有してルールの確立を高めることにつながったと考えられます(図5−ア−2)。学級担任の観察からも、授業中の話の聞き方がよくなったり、あたたかい言葉掛けをする場面が見られたりしてきました。また、リレーションの確立に向けて、協力する場面が必要なグループエンカウンター(GWT)や構成的グループエンカウンター(SGE)、生活班で練習するSSTの授業を実践したことで、リレーションが学級全体へ広がってきていると考えます。 

図5―ア−3 ソーシャルスキルトレーニングの授業前と実施後の獲得状況の比較

・「Q-U」の学級生活意欲尺度では、合計点が34点以上(36点満点)の児童が約半数を占め、1回目に比べて男女共に平均点が上がりました(男子児童0.9点、女子児童1.5点)。ルールとリレーションの確立が、児童の学校生活意欲得点の変化にもつながっていると考えられます。
・学級生活満足度尺度では、非承認群の割合が8.6%から11.8%と上がり、1回目に学級生活満足群に位置していたA〜D以外の3人の児童が移行しています。3人共に学習への取組に消極的であったり、落ち着きがなかったりして承認感を得られにくかったためであると考えられます。
・学級生活意欲尺度の「友達関係」と「学級の雰囲気」は0.5点以上上がっていましたが、「学習への意欲」は0.2点下がっていました。学年が上がるにつれて、学習内容が難しくなってきたことが学校生活への意欲にも影響していると考えられます。
【個人について】
〈Aについて〉
  1回目の「Q-U」の結果では学級生活満足群に位置していましたが、学級担任の日常観察と結果が一致せず、友達とのかかわりにおいて観察や他の教師との情報交換を心掛けました。学級担任が他の教師や保護者と連携を図り、Aが嫌なことをされたときに、どのような言動を取ればよいのかというスキル学習を行うことを確認しました。授業では、GWTやSGEの活動を通して、友達と達成感や楽しさを共感できるようにしました。2回目の結果では、「友達に嫌なことを言われる」という質問項目で、侵害得点が1点上がり、Aと周囲とのかかわりにおける捉え方が、徐々に一致しはじめてきたのではないかと思われます。
〈Bについて〉
 学級生活不満足群から、学級生活満足群に移行しています。Cとのトラブルが減ったことが、大きな原因だと考えられます。また、SSTの取組によって友達とのかかわり方が共有されたことで、Cへのかかわり方を男子児童全体で同じようにできたことや、Cへの男子児童のかかわり方に徐々に変化が表れてきたことも原因と考えられます。
〈Cについて〉
  同じ侵害行為認知群ですが、承認得点や侵害得点が少上がりました。SSTの取組で、「あたたかい言葉かけをしよう」の授業を実施しましたが、実際の生活場面でも友達に、「大丈夫よ」「ゆっくりしていいよ」等のあたたかい言葉を掛けて励ます場面が見られるようになりました。この様子から、友達とのかかわり方のスキルが徐々に身に付いてきていると思われます。一方、昼休みに遊ぶ時は、友達に厳しい口調で自分の気持ちを表現することがあり、数人の男子児童がその言葉を辛いと感じているようです。学習や生活面で友達関係の変化が見られてきたものの、友達への接し方で問題がある時には定期的に面談をしたり、適切な言葉掛けを教えたりしていく必要があると考えます。
〈Dについて〉
  2回目の「Q-U」の結果でも、学級生活不満足群に位置していました。これまでのSSTの取組で学習したスキルを実際に使ったり、GWT、SGEをきっかけに友達関係が広がったりすることはなかったようです。学級担任の声掛けで周りの友達はDに優しく接していましたが、友達とのかかわりや教師の声掛けを肯定的に受け止めることができないことが考えられます。Dは、これまでにトラブルになった場面を強く覚えていることが学級担任との面談で分かりました。今後も、継続して声掛けや観察に取り組んでいきたいと考えます。また、保護者や他の教師との連携も必要だと考えます。
 
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