「児童生徒一人一人が居心地のよさを感じる学級集団づくり」について提案します!

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C 学級集団について
 
◆学級満足度尺度における学級集団の解釈
 児童生徒一人一人が居心地のよさを感じる学級になるためには、学級に「ルール」と「リレーション」の2つの要素が同時に確立していることが必要条件となります(図3−12)。
  「Q−U」では、学級満足度尺度の結果の分布状況から、学級における「ルール」と「リレーション」の確立の様子を知ることができます。また、「ルール」と「リレーション」の確立状況の組合せから、学級満足度尺度の結果の分析は、後述の6つのタイプに分類することができます。
●「ルール」とは…
   学級内の対人関係及び集団活動・生活をする際のルー
  ルが定着している。
   → 学級の全員に理解されて、定着していることが
         必要である。

●「ルール」が定着していると…
  ★対人関係のトラブルが減少する。
  ★傷付けられないという安心感の中で、友達との交流も
     促進される。
●「リレーション」とは…
  互いに構えのない、ふれあいのある本音の感情交流が
  ある。
●「リレーション」があると…
  ★児童生徒同士に仲間意識が生まれる。
  ★集団活動が協力的であったり、活発であったりする。
  図3−12 学級満足度尺度における学級集団の解釈
 
   
◆「ルール」と「リレーション」の確立状態から見る学級満足度尺度の分布の特徴とその対応例
●右上に集まった分布  【親和的なまとまりのある集団】…ルールとリレーションが同時に確立している状態
 学級内にルールが内在して、児童生徒は主体的に生き生きと活動しています。児童生徒同士での発言やかかわり合いが積極的である。
【特徴】
★学級に不満を感じている児童生徒が少なく、望ましい学
  級集団である。
★教育活動がスムーズに行われ、その効果も高い。
★8割の児童生徒がプロットされれば、学級に自治的な雰
  囲気が生まれる。
★凝縮性が高く、満足群以外の児童生徒が浮いてしまう
  ことがある。

【対応例】
★集団の質を高める。
★児童生徒主体の活動を多く取り入れる。
★教師は委任的なリーダーシップを取り、児童生徒が自分
  たちのことを自分たちで決めて行う力を付けさせる。
★満足群にいない児童生徒は、どの群に属するかによって、

個別に支援する。

          図3−13 右上に集まった分布  
   
●縦に伸びた分布 【かたさのみられる集団】…リレーションの確立がやや低い状態
 一見、静かで落ち着いた雰囲気の学級に見えますが、学級内のかかわり合いが少ないため、児童生徒の授業や学級生活全般に対する意欲に差があります。また、児童生徒には教師の評価を気にする傾向もあり、児童生徒の承認感にばらつきがあります。

【特徴】
★ルールは定着しているが、児童生徒の承認感に差があ

る。
★認められている児童生徒が限定されている傾向がある。
★特定の児童生徒がターゲットとなやすく、いじめが起き

やすい状況になる。

【対応例】
★リレーションづくりに重点を置いて、人間関係を深める。
★教師は結果ではなくプロセスに目を向けて、評価の視

点の多様化を図る。
★非承認群に属する児童生徒の自尊感情を育てる。
★叱責や叱咤は逆効果である。近付いてさりげない声掛

けをする。
★リーダーの役割をローテーションする。

          図3−14 縦に伸びた分布  
   
●横に伸びた分布 【ゆるみのみられる集団】…ルールの確立がやや低い状態
 一見、自由でのびのびとした雰囲気の学級に見えますが、学級内のルールやマナーがゆるんでいるため、授業中の私語や児童生徒同士の小さなトラブルが見られます。また、発言力のある児童生徒に学級全体が左右される可能性が高くなっています。
【特徴】
★人間関係のトラブルが多い。
★基本的な学級のルールが、確立されていない。
★悪ふざけやいじめを受けていると感じている児童生徒が
  多い。
★見えにくいいじめが、潜んでいる可能性がある。

【対応例】
★学級内の最低限のルールを明確に示して、小さなルール

違反を見逃さない。
★全体の前で、児童生徒のルールに沿った行動をほめて、
  ルールの定着を図る。
★個人の役割と責任を明確にする。
★授業の構成に「型」や「ルーティンの活動」を取り入れて、

展開にメリハリを付ける。

          図3−15 横に伸びた分布  
   
●斜めに伸びた分布 【荒れ始めの集団】…ルールとリレーションの確立が共に低い状態
 「かたさのみられる集団」や「ゆるみのみられる集団」の状態から崩れて、それぞれのマイナス面が合わさり、問題行動が頻発し始めています。この状態の学級では、教師のリーダーシップが機能しなくなり、児童生徒の間では互いに傷付け合う行動が目立ち始めます。

【特徴】
★学級のプラス面が徐々に失なわれて、マイナス面が表れ

る。
★教師のリーダーシップが徐々に機能しなくなり、児童生徒

の間で互いに傷付け合う行動が目立ってくる。
★児童生徒が、教師に対する不信感や諦めをもつようにな

るため、教師の指導が通らなくなる。

【対応例】
★チーム支援の体制を、再度整える。
★児童生徒同士がかかわるような学習形態や活動を一時

的に少なくして、個人で「やるべきことに取り組む」「ルー

ルに沿って行動する」というような習慣を付けさせる。
★表面化する児童生徒のフラストレーションに関係する問題

行動に対処する。

          図3−16 斜めに伸びた分布  
   
●左下に集まった分布 【崩壊した集団】…ルールとリレーションが共に失なわれた状態
 「荒れ始めの集団」が崩れて、学級が教育的環境ではなくなった状態です。この状態での授業は成立しません。私語と問題行動が目立ち、教師の指示に反抗する児童生徒も見られます。児童生徒は自分の不安を軽減するために、同調して結束したり、ターゲットを決めて攻撃したりします。
【特徴】
★学級生活に不満を感じる児童生徒が多く、小グループ同
  士の対立やトラブルが絶えなくなる。
★教師の実践方法や対応が、児童生徒の心情面と一致し
  ていない。
★いじめなどが発生しやすい状態になっている。
★日々の授業の成立が困難になっている。

【対応例】
★学級担任一人で対応するのではなく、学年の教師などの

協力を仰いでチームで対応する。
★児童生徒と教師の、1対1の信頼関係を築く。
★児童生徒同士も、まず1対1の関係づくりから始めて、徐々

にグループの規模を大きくしていく。
★学習面においては、児童生徒が個々で取り組むことがで

きるプリントなどの作業学習を多くして、頑張りを認めてほ

ようにする。

          図3−17 左下に集まった分布  
   
●拡散した分布 【拡散した集団】…ルールとリレーションの共通感覚がない状態
 教師から、ルールを確立するための一貫した指導がなされていない状態です。児童生徒の学級に対する所属意識は低く、教師の指示は通りにくくなっています。
【特徴】
★一度の調査では、学級としての方向性を見い出すことが
  難しい。
★児童生徒同士のかかわりが希薄なために、大きなトラブ
  ルは起きていない。
★児童生徒が自分勝手なペースで活動して、相手を牽制し
  合っているために、トラブルが発生すると一気に崩れてし
   しまいやすい。

【対応例】
★教師は適切なリーダーシップを取り、指導の方向性を示唆

する必要がある。
★ほめる視点を決めて、児童生徒の行動目標を方向付け

て、ルールづくりを行う。
★人間関係づくりが難しい状況と考えられるため、教師が中

心となって、児童生徒同士がかかわる場面を設定する。

          図3−18 拡散した分布
 
《参考文献》 
   ・ 河村 茂雄・武蔵 由佳編著 『かたさを突破!学級集団づくりエクササイズ 中学校』 2013年11月 図書文化社
   
   
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