「児童生徒一人一人が居心地のよさを感じる学級集団づくり」について提案します!

               
現在の位置: 2 研究の実際 (5) 対応策の実施 ウ 中学校(学年)における実践 (ウ) 変容と考察
 
ウ 中学校(学年)における実践
認められているという思いを高めることを目指した学年での取組
 
変容と考察
 
 
(ウ) 変容と考察
 
1 実践後のアンケート (「がばいシート」) 結果(11月中旬)
 
図5−ウ−3 実践後のアンケート結果(項目別・学年)
                   
2 考察
【集団について】              
図5−ウ−3のグラフにおいて、ルールの確立を「学級の雰囲気」の観点から、リレーションの確立を「友人との関係」と「自己存在感」の観点から判断すると、「学級の雰囲気」の合計が1.2点、「友人との関係」が0.1点、「自己存在感」が0.8点上がっています。全体的にルールとリレーションの確立度が高まっており、集団としては生徒一人一人が居心地のよさと感じる状態に近付いていると考えられます。図5−ウ−3のグラフを見ると、5月には平均が3点に満たなかった項目が4項目ありましたが、11月には全てが3点を上回りました。その中で、「頼りにされることや役に立っていると感じることがある」が0.3点上がっています。授業に構成的グループエンカウンター(SGE)を取り入れて、段階的にメンバーを変えて人数を増やしながら互いに肯定的な印象を伝え合う活動を繰り返したことが、他の生徒との内面的な交流の場になり、リレーションの高まりにつながったと考えられます。
図5−ウ−3のグラフにおいて、「教師との関係」の観点が合計で1.6点上がり、全ての項目で上がっています。「よさやがんばりを認めてくれる」の項目が0.5点上がったのは、学年所属の教師が生徒の行事の取組の過程を肯定的に評価した内容を、気が付いたときに生徒に伝えただけでなく、授業の中で生徒にフィードバックしたことも関係していると思われます。
・学年所属の教師の日常観察から判断すると、日常の学習の場面では、1学期に比べ班活動で男女が和やかな雰囲気で話し合ったり活動したりできるようになりました。行事等に取り組むときに「みんなで取り組む」という雰囲気があり、リレーションの高まりと活動への意欲が感じられます。また行事では、9月の体育大会の時には教師の支援がなくてはうまくいかない場面も多くありましたが、10月末の文化発表会の取組では、自分たちで進んで活動することができました。
   
【個人について】              
 
 図5−ウ−4 実践後のアンケート結果(観点別・抽出した生徒)
〈Aについて〉

5月は、「何でも話せて分かってくれる友人がいる」「友人は秘密や約束を守ってくれる」に1点を付けていましたが、11月”友人との関係”の全ての項目に最高点を付けています。

学級担任は、6月末に定期教育相談で全ての生徒と話す予定でしたが、Aにはその前に個人的に話を聴いて、Aが学級担任に気軽に話したり相談したりすることができる関係をつくりました。SGEの授業では、メンバーと肯定的な印象を伝え合うことを繰り返す中で、グループ活動中の表情も明るくなり自ら発言する姿も見られました。SGEを通して、限られた友人関係から離れて様々なメンバーとの内面的交流を経験したことが要因だと考えられます。また、1学期とは別の友人とも友人関係を結ぶことができ、笑顔で活動する姿が見られるようになりました。

〈Bについて〉

5月は、”自己存在感”と”教師との関係”の中の4項目に最低点を付けていました、11月は、最低点を付けた項目がなくなっていました。

3年になってから欠席をせずに登校していましたが、5月末から欠席するようになっていました。学級担任は、Bと面接を繰り返すうちに、教育相談担当や副担任など複数の教師がかかわるようにして、Bが保健室を利用しながら授業に参加できるように支援しました。また、SGEの授業をする際に、事前にグループのメンバー構成を配慮したり授業内容を説明したりしたことや、様々なメンバーと肯定的な印象を伝え合うことで、グループや学級で活動することへの不安感が減り、学級での自己存在感を高めることにつながったと考えられます。さらに保健室で、授業で行ったSGEを別の友人や教師と行ったことも要因であると考えます。その結果、現在では遅刻や欠席がほとんどなくなっています。

〈Cについて〉

5月は、全ての項目に最高点を付けており、アンケートの内容を確かめずに適当に回答していたと考えられましたが、11月は、設問を読んで真面目に回答したと思われます。

体育大会後の授業では、SGEの前に教師アンケートとしてよい行動を紹介してその様子を動画で示したことで、教師から認められたという思いをもつことができました。その後の行事への取組ではリーダー的な役割を経験し、人前で発言したり行動したりする力を発揮する場面がありました。行事の後に行ったSGEで、これまでの自分の行動を周囲の友人からも認められたという思いをもつことができたことが、アンケートへの取組の態度を変える一因になっていると考えられます。現在は、授業に遅れたりノートを取らなかったりすることで注意を受けることがなくなり、学習内容に関して進んで発言をするなど学習に意欲的に取り組むことができるようになっています。

 

   


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